Vol:25 転生魔導師とパーティ
登場人物紹介
リズ(リーゼリット) - 主人公。天才的な魔導師が自ら転生した、金髪黒眼の美少女。教会の孤児院育ちの10歳。甘いもの好き
ニア - リーゼリットと同じ孤児院で育った赤髪の少女。12歳くらい。リーゼリットから魔法を教わり、彼女より先に孤児院を出て、現在は冒険者をしている。
セナ - ニアのパーティメンバーで短い黒髪の少女。13歳くらい。少し脳筋の入った前衛アタッカー
ナーシャ - ニアのパーティメンバーで長い銀髪の少女。12歳くらい。セナの暴走をイジりつつも止めるストッパー。弓を使う。
私は石剣を身体の左側面に構え、前に出した右足に体重を掛けた。
セナは相変わらず木剣を構えたまま、こちらの動きを待っている。
踏み出すフリをして、突風魔法で前に飛んだ。お互いに腕を限界まで伸ばしても切っ先が掠らないような距離を一瞬で詰める。
「うわっ!!!」
セナがギリギリのところで後方に転がるように避けたため、勢いのまま振った剣は空を切った。
「ニア!聞いてないぞこんなの!」
「言ってもどうせ『この眼で見てやる!』って聞かないでしょ?」
立ち上がりつつニアに文句を言いながらもこちらから目を離さなかったセナの雰囲気が変わる。
しかし私はお構いなしに左手を伸ばし、最低出力のウォーターアローを顔に当てた
「ぶっ!がはっ!げっほごほ!!鼻に入った!!」
「どう?」
「まだ…だっ!」
セナは戦闘続行するらしく、踏み込んで切りかかってきた。
速度としては最後に見た小ジャックのそれより上かもしれない。けど、
「フィジックシールド。」
コォン!という小気味の良い音が響き、セナの振り抜いた木刀は透けた青い甲羅のようなものに阻まれ、弾かれた。
物理障壁。名前の通り物理的な攻撃に対する障壁で、受け切れる衝撃と障壁の大きさは利用者の魔力量に左右される。
人ひとり分くらいなら大した魔力は使わない。(まあ10人単位でも私には大した量でもないんだけど。)
「ぐっ…!」
右手を痛めたらしい。衝撃が直で跳ね返ってくるようなものなので、あの振り方だと相当のダメージが入っているはず。
「すごーい、ニアよりも展開速度早いんじゃない?」
「うん…そりゃ…まあね。あはは…」
ナーシャとニアが話をしているみたいだけど、そこに関しては触れてあげない方がいいんじゃないかな。
と、気がそちらに向いていると、左手に剣を持ち替えたセナが回り込んで切り付けてくる。
振られた剣を受け流し、もう一度ウォーターアローを飛ばして牽制をかけて、バックステップを踏んで距離をとる。
セナの方も今度は慣れたのか、顔面で受け止めることはなかった。
「はー!もういい!これ以上やってたら風邪ひく!」
「セナびっちゃびちゃじゃん。」
「こいつが水ばかりかけてくるから!!」
「超至近距離でファイアボールぶつけられないだけましだと思うよ?」
最後のニアの言葉で、セナとナーシャは何を言っているんだ?というような顔をしていたが、とりあえず私は合格。晴れてニアのパーティに参加できたのでした。
あれ?参加するって言ってないよね?
「いやーそれにしても恐ろしかったねあの動き。」
「初動で飛んできた攻撃をギリギリで躱した時のセナの顔、面白かったね。」
「うるさい!あんな攻撃されたら誰だってびっくりするだろ!?」
ナーシャのからかいに怒るセナ。それを横で見てケラケラ笑うニア。これがこのパーティの日常なのだろう。
私たちは再びギルド併設の酒場に来ていた。
ニア曰く私の歓迎会らしいが、私の「加入するなんて言ってない」発言はものの見事に躱され、丸め込まれ、なんだかんだで結局加入することになってしまった。
「まあ、そんなこんなでリズが加入してくれたので、パーティとしての安定性は増したことだし。これからも頑張っていこ~!かんぱーい!」
かんぱーい!などと言っているが私たちは酒を飲める年齢ではないので、コップの中身はジュースだ。
「景気がいいなぁ『爆焔姫』ぃ!何かあったのか?」
近くの席から野次が飛んできた。
てか『爆焔姫』って何?
「私の妹がパーティに入っただけよ!奢らないわよ!」
ニアってこんなに逞しい娘だったかな…?
「ねぇ爆…爆焔姫?って何?」
「あーそれな、ニアのあだ名だよ。隣町で仕事をしている時に使っていたのが火の魔法ばっかだったから。」
「あの時使った魔法って何だったっけ?オーガが出てきた時の。」
「え!?あぁ、えっと…ファ、ファイヤーボールの派生…かな…。」
「あーそうそう!ちっちゃいファイヤーボールを爆発させて、その時出る炎の向きを変えるとかなんとか!」
んん?その説明だとフレアという魔法が当てはまるんだけど?しかもクラス4の魔法だし…
ニアの方を見ると、私から完全に視線を外している。
ん〜!?その反応は確信犯か!?危険だとは分かっているけど目先の危機を脱する為に使ったな!?
「ニア?」
「…はいぃ…。」
セナもナーシャもニアの反応に目を丸くしている。側から見れば普段は男勝りな感じなのに妹に叱られて縮こまる姉だが、その実ヤンチャした弟子とそれを叱る師匠の図だ。事情を知らなければビックリするだろう。
しかし今それはどうでもいい。
「どうやら早急にクラス4を修得したいみたいね?」
「いや!う…そう…じゃない…わけでもないです…。はい…。」
早速、パーティに入って記念すべき1回目の「やる事」が決まったようだ。
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