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転生魔導師奇譚  作者: Hardly working
第一章
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Vol:24 転生魔導師と再会(2)

登場人物紹介


リズ(リーゼリット) - 主人公。天才魔導師が転生した金髪の少女。人生を謳歌するのが一番の目的


ニア - リズと同じ教会で育った少女。12歳ぐらい。赤髪。リズから魔法を教わったため、非常に効率よくクラス3のライセンスを取得できた。


セナとナーシャ - 初登場。ニアのパーティメンバー。黒髪のセナは剣を、銀髪のナーシャは弓を使用している。




アイリーン - 名前だけ出る、魔道具屋の女主人。実は魔法のマスタークラスがニアと同じ。


ウル - 名前だけ出る、アイリーンの召喚獣。魔狼フェンリル。そろそろ街の人が慣れてくれた。

 久々に会ったニアは――


 まあ変わってはいなかった。あたりまえだよね。数か月しか経ってないし。

 しかし服装はだいぶ変わった。

 真っ先に目に入るのは大きな帽子だ。色は黒で、白いリボンのような帯がアクセントになっている。そして何よりも(ひさし)がデカい。


「その帽子、大人用?」

「デザインが良かったんだけど、私に合うサイズはなかったんだ。すぐに大きくなるから大丈夫って言われて買ったんだけど、やっぱ大きいよね。」

「大きいどころじゃないよ…」


 そんな話をしていると、店員さんが料理を運んで来た。

 私たちは今、ニアおすすめの食堂「樫の木亭」で晩ごはんを食べている。もちろんウルはアイリーンの元に帰した。

 なんでも、ニアはさっきの魔物の件でこの店が休業することを危惧していたらしい。

 ニアってこんな食い意地の張った子だったかな?


「ん、このハニーマスタードチキン美味しい。」

「でしょー!オススメなんだよここ!」


 お世辞抜きで普通に美味しい。鶏肉はパサパサしているわけでも、油が多すぎるわけでもない程よいジューシーさで、少し酸味のある甘いソースが口の中に広がる。


「それで?私がここにきてそこそこ経つし、ウルを知らないってなると、ニアは今まで何してたの?」

「用事があって隣街で2ヶ月くらい居たからね。」

「そうなんだ。ランクとかって上がった?」

「Cまで上がったよ!魔術師ギルドで試験を受けて、クラス3も貰えたしね!」


 おお、だいぶ順調なようだ。私の効率的な教導と本人の才もある。まだクラス4は魔力量的に不安があるけど、成長につれて習得できるかもね。


「あ、そーだリズ、私たちとパーティ組まない?」

「私たち?」

「そう!ここにきて一緒になった子たちがいてね。パーティを組んでるんだ。そこにリズも入らないかなーって。」


 へぇ、私たちみたいに孤児院出身の子なのかな?

 でもそれはいいとして、攻撃系の魔法使い二人を擁するパーティって構成どうなってるんだか。


「人数とそれぞれの役割は?」

「剣と、弓と、あとは私の魔法。この三人だよ。」


 素晴らしいくらいに脳筋パーティだね。攻撃のことしか考えてない。


「大丈夫?それ、攻撃された時どう防ぐの?」

「私の障壁魔法があるからね!」


 ニアには満遍なく魔法を教えてあるので、確かに可能だ。

 だけど違う、そうじゃない。そうじゃないんだけどそうなってしまっている以上は仕方がない。


「入ってもいいけど、それニアで勝手に決めて大丈夫なの?」

「そこは大丈夫。こっちでちょっと仕事があって、明日二人とも来る予定だから。」


 そうなのか。であれば問題無い、かな?

 入るにせよ入らないにせよ、挨拶くらいはした方がいいよね。

 ご飯を食べたあと、今日は一旦解散して明朝にギルドで集まることにした。




 翌日。

 あのバカみたいに重い扉を開けてギルドに入るも、それらしき姿は無かった。

 あれ?寝坊?

 そこまで考えたところで、思い出した。

 こちらのギルドとしての建物は、あまり待ち合わせなどに使われていない。

 私は外へ出て隣の建物、つまり酒場に向かった。

 外にいても酒の匂いと騒々しい空気が漂ってくる。

 中に入ると、居た。よく見た顔と、見知らぬ二人。あれがニアのパーティメンバーだろう。

 と、ニアがこちらに気づいたようだ。


「おー!こっちだよー!」


 どこかカフェのような雰囲気を醸し出すが、現実はおよそ女子の待ち合わせ場所とは思えない様相をしている。


「何もこんなところじゃなくても。」

「色々と都合が良いからね。リズ、セナとナーシャだよ。二人とも、彼女がリーゼリット。」

「こんにちは、リーゼリット。私はナタリア、弓使いよ。」

「これがニアの妹ねぇ。どこまでやれるんだか。」

「自己紹介しなさいよ。」

「セナ。剣使ってるよ。」


 ナーシャは長い銀髪を纏め、セナは黒色の短髪だ。ニアは赤髪だし、私の金髪を混ぜて派手な色のパレットが出来上がっている。


「それじゃ、早速行くか?」


 唐突にセナが切り出した。


「行くって何に?」

「試験だよしーけーんー。ウチでやっていくならそれなりに腕が無いとな。」


 素晴らしい脳筋っぷり。私まだ入る入らないの話すらしてないよね?

 ニアの方をチラと見ると、彼女は肩をすくめて「やれやれ」みたいな顔をした。いつもこんな感じなんだ…


 そんなわけで、私たちは街から出たところ──というか、アイリーンがウルの召喚に使った場所に来た。

 まあここなら迷惑かけることもないだろうし。


「よーし、どこからでもかかってきな。全力で。」


 セナは準備万端という様子で屈伸運動をしている。


「ニアー!全力でいいの?」

「ダメだよー!」


 私は当然の質問をし、私の出力を一端とはいえ知っているニアは当然のごとく禁止した。事情を知らないセナとナーシャはキョトンとしている。


「よくわからんけど来な!」

「わかった!」


 私は手元に振り易い大きさの石剣を生成した。もちろん、刃は潰してある。それでも鈍器としてはかなりの物だろう。


「何だよそれ…。」


 呻くようなセナの声を無視して、軽く振ってみる。問題なさそうなことを確認したら、左手を胸の前に、右手を下げたままやや前に出した。


 ジャックとロナルドに叩き込まれた、ヴィエナス騎士独自の構え。

 剣を握ると意外にも自然と体が動いた。

 とは言っても、私は剣より魔法の方に重きが置かれた似非なんだけどね。


 セナはただ待っている。石剣を見た時の動揺も消えたらしく、私の動きを見るためなのか、先に動くつもりはないようだ。


 じゃあ、遠慮なくやりますか。

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