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転生魔導師奇譚  作者: Hardly working
第一章
25/47

Vol:23 転生魔導師と再会

2022/08/16:世界観の設定にかかわる内容を手直しいたしました。大変申し訳ございません。


登場人物紹介

リズ:リーゼリット - 主人公。天才宮廷魔導士の男が転生した姿。記憶と魔力を引き継いでいるため、齢10歳にして異常な戦闘力を持つ


ウル - 今回は登場しないアイリーンという魔女の召喚獣。種族はフェンリル。なぜかリーゼリットに懐いている。


?? - 久しぶりの登場。今回はこの人の視点です

 私が遠征から久々に帰ってきたら、街で騒動が起きていた。

 なんでも街中に魔物が現れたらしい。

 現れたというか入り込んだというか。

 街に大々的な防壁があるわけでもないので、まれに入り込むことはある。そういったのが入らないようにしたり、入り込んだのを駆除したりするのが私たち冒険者と呼ばれる集団だ。


 帰ってきたばっかで疲れちゃってるというのが正直な気持ちだけど、放っておいて街に被害が出るのはよくない。私は駆除の仕事に参加することにした。

 話によると魔物は街の中心部に向かったということだから、私も急いでそちらへ向かう。

 あの辺りには行きつけのおいしいごはん屋さんがある。もし壊されて休業なんてことになったら、私はそこそこ荒れるかもしれない。いや多分。や、絶対荒れる。何としても死守しないと。




 私が現場に到着すると、居た。

 ジャイアントワイルドボア。名前の通り大きな猪だ。しかし肉が美味しくなく、どう加工してもマズい。もうちょっと倒す気になれる要素があればな、って思うヤツだ。まあ、革や牙は使えるし、実入りゼロというわけではない。

 ちらと横を見る。よかった、あのお店は無事だ。

 では、駆除させてもらいますかね!

 わたしは杖を構えた。周囲への被害も考えて…ここは風!鋭く!


「エアロ…!」


 ザンッ!


 猪の首がぼとりと落ち、間もなく胴がどさりと倒れる。地面には血だまりが出来上がった。

 あれ?詠唱が終わる前に発動した?

 いやいや、簡易詠唱はできてもまだ省略や無詠唱はできない。ということは、別の魔法使いが――

 そこまで思い至ったところで視界に入ったのは、数エンク先の建物の上にいる大きな狼だった。


 いや…ヤバいでしょ、アレは。

 大きさからしてグレーターウルフとかだと思うけど、異常なのはその白い毛並み。明らかに通常のものじゃない。

 もしかしてさっきの攻撃もこの狼が?

 だとしたら私も普通に射程範囲内だよね…。


「あーそこの人、大丈夫ですかー?」


 突然、後ろから声をかけられた。女の子の声だ。私は弾かれたように振り向いた。


「っ!?」

「ウルー!周辺警戒!もしかしたら群れかも!」

「わっふ!」


 さっきの狼の声…?いや、それより。


 見たことのない刺繡が施された、金髪の少女。その髪ではあまり見ない黒い瞳の、きれいな顔立ちをしている。


「リーゼリット?」


 私はその子の名前を呼んだ。


「んん?」


 彼女は怪訝な顔でこちらを見た。ん?あれ?違う?

 あ、そうじゃない。幅広の帽子をかぶってるんだった。いけないいけない。


「よっしょっと…これでどうだ。ね?」

「ニア!?」


 わーよかったー覚えててくれたー。



 血の繋がりはないけれど私の妹で、それでいて私の小さな師匠。


 あれ?


「リズって今いくつだっけ?」

「10くらいかな?」

「出立、早くない?」

「ちょっと理由があってね。問題起こしたから、自主的に出てきたんだ。」


 あんないい子だったリズが問題を!?あ、いや何かあったんだろうな。悪いことをしたわけじゃないだろうし、今度メノーに帰って、みんなに聞いてみよう。


「ニア、この街にいたんだね。」

「まあメノーからだと必然的にそうなるしね。」

「もっと先の街とかに居ると思ってたよ。あ、ウル、どうだった?」


 リズがそう言うと、後ろから「わっふ」と返事がした。


「ひゃあああ!!」


 いきなりのことで飛び上がってしまい、腰が抜けてその場に座り込んでしまった。

 さっきの狼が私の後ろにいるとなったら仕方ないよね。


「あ!ごめん!」

「ううん…大丈夫…。この大きい狼、リズが飼ってるの?」

「いや?知り合いの召喚獣だよ。なぜか懐かれてるから、頻繁に一緒にいるだけ。」

「召喚…。」

「そうだ、この後空いてる?ご飯とかまだだったら、一緒に食べない?ニアが出てから何してたのか、教えてよ!」


 ずいぶんと急な話だけど、私も久しぶりにリズとゆっくり話したい。


「とりあえず、衛兵とギルドの方に連絡しないと。」

「じゃあ、早く行こう!」

「遠征帰りで疲れてるんだよ~ちょっと待って~。」

「お、どこに行ってたのか教えてね!」


 こうして、私は数か月ぶりに妹に出会い、一緒に歩くのだった。

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