Vol:21 転生魔導師の特別授業
登場人物紹介
リーゼリット:主人公。前世で宮廷魔導士をしていたアルベルトという男が転生した姿。金髪に黒い目という少々珍しい見た目の美少女。魔法クラスは前世で7。今生では自由に暮らしたいと考えている。
アイリーン :聖グレーティス国、ヒュレスという街で魔法雑貨を扱う店を出している女性。冒険者もしており、ランクはB。魔術師として活動している。
ウル :アイリーンに召喚された召喚獣。アイリーンは大きい狼だと思っているが実際は…
ロジャース :ヒュレスの冒険者ギルドでサブマスターを務めている男性。ランクはA。良くも悪くも常識人。
ウィリアム :オーガ討伐作戦に参加していた魔術師の一人。クラス3。
クラス3を用いたプルガトリウムの再現、これは意外と簡単だ。
「まずファイアボールを制御する役、外周に防護結界を張る役、そして結界内部で風を滅茶苦茶にかき回す役。この3名でプルガトリウムは再現できるの。」
「それだけ!?」
「あの魔法はそれら全てを制御するのが一番難しいからね。一人でやるならクラス6相当の魔法なんだよ。」
クラス6魔法には、単体で効果を発揮させるが、その魔法自体の構成・制御が難しい単体魔法と、その魔法自体は簡単だが複数を細かく制御する混成魔法の2種類が分類されている。
偏にクラス6魔法と言っても、分解するとそうでもないものもあるのだ。
「試しにやってみようか、えっと確か…」
「ウィリアム?」
「そう、その人。」
ウィリアムとは今回編成された後衛三人のうちの一人で、先の戦いでそこまで手傷を負ったわけではないメンバー。あとの一人は聖職者のシアという女性。
彼女は先の戦いでアルファでもない普通のオーガの攻撃を食らい、右腕の骨と肋骨を数本やられて吹っ飛ばされ、複数箇所打撲というそこそこの重傷を負って今は安静中だ。不本意ではあるが治療はしてある。
さて、ということで近くで話を聴きつつも、巻き込まれるなんて露ほども思っていなかったであろうウィリアムが「え!?俺!?」
と驚いた声を出したところで、早速手ほどきを始める。
手ほどきと言っても、一人ひとつの魔法しか制御しないので教えるのは順番くらいだけど。
「アイリーンはファイアボールを制御する役、ウィリアムは結界を張る役、私は中を風でかき回す役。とりあえずやってみよう。」
私がその辺から見繕った拳大の石を岩の上に置き、それを標的にする。
「アイリーン、ファイアボールを出して。」
「わかったわ。」
「…なんか大きくない?」
「…そう?…そうかも…」
事実アイリーンが出したファイアボールは石の2倍の大きさがあった。
ファイアボールの大きさによって被害範囲が変わるから小さい方が良かったんだけど…まあしょうがない。
続いてウィリアムがそのファイアボールを覆うように結界を張る。芯となるファイアボールが大きいのでやはりそこそこの大きさになってしまった。
仕上げに私が内部を風でかき回すと同時に、アイリーンがファイアボールを暴発させる。
“擬似”混成魔法プルガトリウム。
人の頭大という大きさながら、標的とした石も、台としていた岩をも溶かし、結界と同じ大きさの穴が空いた。
「はい、これで三人態勢でのクラス6魔法の再現が確認できたね。」
私が手を叩くなりそう言うと、アイリーンとウィリアムは何か言いたげな表情でこちらを見、ロジャースは完全に引いていた。
「ということでロジャース、報告書はこれで作成しておいて。あとは私のことについて詮索しない、口外しないこと。今回参加したメンバーにも伝えておいて。」
「あ、あぁ…わかった…」
震える声で答えたロジャースは、なんだか老けたように見えた。
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「よーしよし良い子ねーウル。」
召喚したままずっと放置だったウルを撫で回していると、アイリーンがこれまたなんとも言えない表情でやってきた。
「何でここにウルがいるのよ…」
「召喚の時に私が組み込んだ余剰回路で、私にサブマスターの権限をつけていたんだ。召喚した矢先に暴れられても迷惑だったしね。」
「う…確かに私だけだったら制御できなかったかもしれないわね…」
そう言ってアイリーンもウルをわしゃわしゃし始める。
大きいから撫でるだけでも一苦労。
特に私のような子供は全身を使って撫でるようなものだ。
「そうだ、アイリーン。帰りはウルに乗って行けるみたいだけど、どうする?」
私がそう聞くと、アイリーンは食い気味に「乗って帰る!」と返事をした。
「でも、ウルって私とリズを乗せて走れるの?」
至極真っ当な疑問だ。
しかしそれは、ウルが普通のオオカミならの話。
「大丈夫だと思うよ。ウルはフェンリルだし。ウルに聞いたら問題無いって感じだったし。」
「へー。ならいいんだけど。」
「帰ったら良さげなお肉をギルドに貰おうねぃ。」
「へぇ…。え、ちょっと待ってフェンリル?」
今更か?
出掛かった言葉を飲み込んで、私は続けた。
「ロジャースは気づいていたよ?すごい顔で見てたし。あとはニックとかも。」
「フェンリルってそこらの魔物とは一線を画す…というか、ほぼ精霊みたいな存在よね!?何でそんな子が私の召喚に応じたの!?」
「多分私のせい。アイリーンの魔力だと足りないから、あの時少し足してたんだよね。」
するとアイリーンはもう疲れた様子で絶句してしまった。
まあ流石はフェンリルと言ったところで、召喚時にはだいぶ持って行かれた。確かに魔力が回復しきっていない魔法使いと、総魔力量が少ない子供の魔力で何ができるという話だが、そこは持ち前のストックしてある魔力で強引にカバーして召喚を成功させた。
そうこうしている内に撤収の準備が整ったようだ。
私はウルの背に跨った。放心気味のアイリーンに声をかけて、彼女も乗せる。
こうして、オーガ討伐隊はその仕事を無事果たし、帰路につくのであった。
その後、ウルの走行速度が恐ろしいくらいに速く、危うく粗相をするところだったのは、世界が知らない秘密だ。
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