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転生魔導師奇譚  作者: Hardly working
第一章
21/47

Vol:19 転生魔導師の片鱗

遅れました。


疲れました


寝ます

 私が『それ』に出会ったのはつい最近のこと。

『それ』は異様な存在だった。

 最も、そのことに気がついたのは2度目の邂逅の時だけど。


 1度目は私が半ば追い返す形で終わった。なにせ薄暗い店の中だったし、体躯も小さいので子供が悪戯しに来たと思ったから。


 2度目はすぐだった。その翌日に私が出した特別依頼を、『それ』は受けてきたのだ。


 輝く金髪に整った顔立ちの、かわいらしい少女。しかしその瞳は髪の色に似合わない深い漆黒を携え、その瞳の色よりも深い知識量を持つ、謎の少女。

 エルフであれば、その背丈と知識量に納得がいこう。しかしエルフの髪は金髪であっても瞳は緑や青だし、何より耳が長い種族だ。確実に違う。

 長命の種族で彼女のような特徴を持つ者達を、少なくとも私は知らない。知る必要もない。

 彼女の言葉、「目で見えることだけが全てではない。」これは魔力という目に見えぬ物を扱う魔法使い特有の言い回しで、このニュアンスだと「見えないものは気にしたってしょうがない」である。要するに知ろうとするなというわけだ。


 彼女の能力は確実に私を上回る。それだけは理解している。


 そして今、私は再確認する。


 リーゼリットは、異常だ。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 何が、どうしてこうなったのだろうか。


 ロジャースはただひたすらに考えていた。


 戦場で考え事をするなど悠長な話だが、既に戦場とは呼べない様相をしている。


 オーガ達は死屍累々。アルファも相当に消耗している。


 そう、本当にアルファがいたのだ。

 居るであろうと考えて行動をとっていたが、それでも討伐隊の戦力は容易く崩れてしまった。

 文字通りの化け物。その膂力で以って繰り出される攻撃を受け、命を落とさないまでも重傷を負った仲間。

 吹き荒ぶ暴風の如く、尽くを破壊しようとするような暴力に我々は晒された。

 はずだった。


 先程まで我々は死を待つばかりだったと言うのに、たった1人で状況を覆し、圧倒的有利にまで動かしたのはアイリーンとニックが連れてきたリーゼリットという少女だった。


 なんなんだあの少女は。あの2人の推薦だからと連れてきたが、それどころの話じゃあないぞアレは。

 齢32、Bランクでも上位そろそろAランクも見えてきたと自負する俺ですら見たことのない魔法を使っている。

 特にあの剣。三振りの剣を使っているが、それぞれが独立して動くようで、死角から攻撃を繰り出したり、かと思えば真正面から切り込み、防御までこなしている。


 どう見ても魔法使いの戦い方じゃない。それに…


 ロジャースは横に座る者に目をやった。

 体調2エンクはあろうかという大きな狼。

 聞けばアイリーンが契約したグレートウルフだと言うが、どう見てもフェンリルじゃねーか!

 なんでAランク越えの魔物とCランク生物の違いがわからねぇんだよギルド登録破棄されちまえ‼︎


 それにコイツを何もない空間から呼び出したのはリーゼリットだ。スクロールを用意して使ったなら別だが、何もない空間に魔法陣が現れたかと思うと召喚術が発動してコイツを呼び出しやがった。俺たちをひとしきり拾い上げてここまで連れてきた後、アイリーンの隣に座っている。もはや犬だな…。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 副召喚士(サブマスター)権限を使ってウルを呼び出した私は、巻き込まないように全員避難させ、本気で魔法を使っても大丈夫というところまで状況を持って行けた。


「ふぅ…。」


 ウルを召喚するときに、こっそりと仕掛けておいた権限が役に立った…。


 仕掛ける予定は無かったが、アイリーンが召喚獣を制御しきれなかった場合に私が対処できるよう、念のために施した。

 というか、私がそんな事をした上に、これまたこっそりと召喚するための魔力をカサ増ししたせいで、フェンリル(あんなの)が出てきてしまったのではないかと推測している。


 とりあえずそれはどうでもいい。


 流石はアルファと言ったところだ。C-Bランク帯の冒険者じゃ歯が立たない。

 私の石剣も有効打にはなっているが、大きなダメージは与えられていない。

 であれば…。


「全て焼いてしまいましょう。光炎魔法、展開魔法陣。混成魔法プルガトリウム。」


 クラス6 混成魔法 プルガトリウム


 火魔法と風魔法を組み合わせて発動する高熱焼却魔法。

 魔法結界を使って外に漏れ出る事を防ぎ、圧縮したファイアボールを生成、制御を手放した瞬間に起こる大爆発を風の魔法でさらに掻き回す。

 三つの段階を素早く、かつ完璧に制御しなければならない魔法だ。


 本来であれば50小節を超える詠唱、もしくは対応する魔法陣を描かなければならない。

 流石の私も無詠唱でコレを制御するには骨が折れる。

 なので、光炎魔法を用いて魔法陣を描き、それを使ってプルガトリウムを発動した。


 光炎魔法は火魔法の圧縮。文字通り燃える光(レーザー)を発生させる系統の魔法となる。接触点が焼き切れる魔法だが出力を抑えると温かい程度にまで落とせる。制御によって形状を変化させることができる為、極めると如何な紋様でも描き出せるのだ。





 結果として、アルファは消滅…いや焼滅した。

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