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転生魔導師奇譚  作者: Hardly working
第一章
2/47

Vol:1 転生魔導師の誕生

2022/09/02 修正

「は〜いリズ〜ご飯ですよ〜」


 目の前のシスターが新生児模倣で口を開けさせようと、大きく口を開けるが私は頑なに拒否した。


 だって不味いじゃん、それ。


 いや不味いって言うと語弊があるんだけど、食感が耐えられない。ゲロ食ってるみたいなんだもん。


 結局私の必死の抵抗は虚しくも無効化され、口の中に離乳食をねじ込まれた。こんちくしょう。


 アルベルト・グレイルとしての生涯を終えた“俺”は、リーゼリットという名前の女の子としてこの世に生まれた。




 そう、あの時俺が組んでいたのは、転生のための魔法だったのだ。

 俺はその昔、禁術と呼ばれる魔法群の中に、興味深い魔法をいくつか見つけた。

 魂や記憶に関連するものだ。

 その魔法は相手の魂を閉ざして廃人にしたり、死体から記憶を抜き取ったりするものだったのだが、うまく使えば転生できると踏んだ。


 結果、(アルベルト)は無事魂と記憶を(リーゼリット)として転生させ、新たな人生を歩き始めたというわけなのだ。


 ただ、魂は人なので人にしか転生できない点と、性別はどうにもならないこと、魂の覚醒や記憶の同期までが少し遅れることが欠点だった。これは実験していなかったのでしょうがないとは言え、転生に成功している時点でどうしようもないし、些細な問題だ。

 強いて言えば一度も使わなかった我が()と、ここに何故来たのかという情報が無い、ぐらいが問題だろうか。

 まあ無いものは仕方がない。ガールズライフを楽しもうではないか。




 さて、私ことリーゼリットは、孤児である。

 教会に捨てられた孤児のようだ。だからさっきからゲロ…もとい離乳食を、シスターが口の中にねじ込んできている。やめてくださいね。


 口調を俺から私に変えたのは、私なりに切り替えをするためだ。

 これは一種の覚悟だよね!ないもんはない!





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






 月日が経ち、6回目の夏を迎えた。

 私、7歳の誕生日。

 だいたいね、だいたい。私がここに来てから計算なので幾分か差はあると思う。

 そして、6年もたてば人も増えるというもの。今は5名の孤児がこの教会で暮らしている。

 私と同じ頃にやってきた同い年のジャック、私よりも前からいた9歳のニア、私が来てから2年後に来た5歳のレノとアン、そしてそのさらに1年後に来た4歳のロー。


 そして私たちは今


「おーいリズー!」


 ジャックの声だ。ニアを含めた三人で、山へ薬草採集に来ている。


「あ、ジャック!そっちはどうだったの?」

「大量大量!いっぱい生えてたぜ!」

「まさか全部取ってないでしょうね…」

「バ…そんなわけないだろ!前に怒られたからな!今度はちゃんと少なめにとってきたぜ!!」


 得意げに報告するジャック。正直こいつは頭がいい部類ではない。

 いたずらを考えて教えてやると、絶対どっかで失敗して自爆する奴なのだ。私はジャックが降ろしたカゴを見た。

 大量に入ってる



 まだ育ち切っていない薬草類が。



 私はジャックの頭を引っ叩いた。


「育ち切ってないヤツはとるなって言ったじゃない!」

「どれが育ち切ってないんだよ!わかんねぇよ!」

「私は!アンタに!どれが!いいヤツか!ダメなヤツか!ここに!来る前に!教えた!はず!ですけど!!!???!??」


 そう、私はジャックに、教会に置かれていた図鑑を使って説明をしていたのだ。丁寧に。10分くらいだが。


 そしてジャックは、「おう!わかった!」と自信ありげに言ったので、安心して連れてきたのだ。


 それがこのザマである。正直コイツがここまでアホだとは思わなかった。


 私たちは、教会が置かれている村の採集依頼をしている。ギルドによって募集されている内容だ。

 とは言っても、村にギルドがあるわけではなく、出張所のようなものが役場にあるくらいだ。

 教会が私達を育てていくにも資金は必要だ。よって、そういった危険度の低い仕事をこなして、お金をもらっている。

 もちろん教会には布施や宗教本山などから支援があるが、それとは別に自ら生きていくための方法を学ぶために行われている。



 まあこの宗教、私はめちゃくちゃ嫌いなんだけどね。



 遡ること数年前…いや待て、生前というのが適切か?いや前世か。

 アルベルトだった時のことだ。


 14歳くらいの頃に、この宗教──グレーティア教の国、聖グレーティス国に複数名で課外学習に来た。教師も一緒だ。

 他国を知るためのものだったのだが、グレーティス国の外周にて戦闘に巻き込まれたのだ。

 オークの群れとグレーティスの騎士達。

 まあ大したことはないんだが、騎士側に数名の負傷者が出ていた。巻き込まれてしまった以上、こちらも応戦し、俺も回復魔法で補助を行なった。


 しかしそれがいけなかったのだろう。

 騎士団と同行していた者の中に、治療術師として修道女が一人いたのだ。

 その女が、騎士を治療した俺に向かって、


「治療術は神の奇跡!あなたのような半人前の!それも魔法使いごときが使っていいものではありません!恥を知りなさい!」


 と、つっかかってきたのだ。


 俺は この尼頭イカれてんのか と。


 回復魔法は魔法だ。神の奇跡とかじゃない。

 この宗教で使われている治療術とやらも普通に回復魔法だ。


 結局その狂信クソ女は周りの騎士がこちらに感謝する中、謝罪も感謝もなしにその場を去っていった。

 グレーティア教の者全てがああだとは思っちゃいないが、俺の中での教団のイメージは最悪だ。



 そんな過去があって、私はこのグレーティア教が嫌いだ。



 転生して昔とはおさらばした身だけど、そこだけはどうしても譲れなかった。

 だからお祈りなどは全部拒否している。喋れるようになった頃からだ。

 当初はシスターや神父が俺にやらせようとしたがことごとく拒否した。その結果、神父・シスターが側が折れた。2年かかったが、私は頑として譲らなかった。




 それはさておき


 仕方が無いので、私はアホ(ジャック)が採ってきたやつを合わせて納品する事にした。

 この仕事は出来高なのだが、育ち切ってないヤツは減額がある上、お叱りを受けることが多い。

 ニアが代表で納品するが、アホのせいで怒られているのをよく見る。



 教会へ帰ったら、私とジャックの誕生日をみんなで祝ってくれた。日付が近いから併せた誕生日だ。

 私はご馳走様をたらふく食べた後、いろいろな話をして眠りについた。


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