概要
西暦2099年、科学が進歩した世界ではヴァーチャルリアリティゲームが主流となっていた。
その中で自らギルドのギルドマスターとなり、各々のギルドを育てるゲーム、【ギルドメーカー】というゲームが一部のゲームファンの人気となっていた。
傭兵、商人、冒険者、変わった所では旅芸人やファンタジーの定番、魔法、様々なギルドを立ち上げる事が出来るゲームである。
ヴァーチャルリアリティゲームという枠組みでのちょっと変わった育成ゲーム。
これはそんなゲームに魅せられた青年のお話である。
ガヤガヤと程々に広い室内に響く喧騒。
昼間から酒を飲む厳つい男にパタパタと忙しそうに給仕する女性、布袋から取り出した素材を職員に渡す青年に其れを鑑定している鑑定士。
依頼書と睨めっこをしている少女に依頼書の内容を喋っている文字を読んで小遣いを稼いでいるであろう浮浪児。
ここ、ギルドでは様々な人が仕事求め、又は暇を潰し、依頼を頼みに来ていた。
【冒険者ギルド】
ここはそう呼ばれている。
いつ出来たのか、また何の目的で建てられたのかは誰も知らない。
ある日、突然、その場所に其れは建っていたのである。
「マスター。」
「なんだ?」
そんな建物の内側にあるカウンターで、一人の少女が座っていた。
一見して眠そうな垂れ目に緩く波打っている銀色の腰程まで届く長い髪。
透き通った白磁の如き肌にサファイアを埋め込んだみたいに綺麗な眼。
カウンターの机に隠れて見えないがその体躯に見合った華奢な体型にそこはかとなく庇護欲をそそる少女は隣に座っている黒髪黒目の特にこれといった特徴の浮かばない男に声を掛ける。
声を掛けられた男は何となしに眺めていた雑誌のページを捲りつつ、隣に座る少女に意識を向けることなく返事をする。
「暇ですね。」
「…そうだな。」
少女の言葉にマスターと呼ばれた男は不機嫌そうに雑誌のページを捲る。
喧騒が辺りを覆うギルド内でこの二人の空間だけがやたらと静かであるのだ。
彼等の座るカウンターの上には小さな釣り看板が掛けられている。
【冒険者ギルド 相談窓口】
こう書かれているのだ。