アンチ・ひーら
私はひーらちゃんが嫌いです。
不躾にすみません。私の名前はユーリ。ひーらちゃん二号の正体です。
お前もひーらちゃんだろう、と思われたでしょうが、ひーらちゃん二号はあくまで仮称です。いずれ正式な名前をいただくことでしょう。
何故ひーらちゃんちゃんが嫌いかと申しますと、そうですね、まず、ゆるキャラ制度の成り立ちから語りましょうか。
ゆるキャラ制度とは、ヒーロー条例の第一条、《五体満足で、特殊能力を持つ、健全な男子であること》の例から漏れてしまった能力者を、救済するために考え出された制度です。
ヒーローには及ばないまでも、能力者は多々おります。わけても優秀な者を準ヒーローとして、ヒーローを全力でサポートさせる、簡単にいうとそんな仕組みになっています。
ヒーローになれず、ヒーロー協会の傘下組織に甘んじるしかなかったものには、夢のような計画でした。かくいう私も、女であること、戦闘向きでない治癒能力しかなかったため、諦めた口でした。
そんな折のこのゆるキャラ制度。
飛び付く者は多く、ライバルばかりでした。
しかし、栄えある“ひーらちゃん一号”に選ばれたのは、医療スタッフとして実績を重ねた私や、戦闘能力こそないけれど、従軍経験豊かな戦士でもなく、無名の少女でした。
…………正直私は、一号の資質を疑問視しています。
あまりの不人気ゆえに、即座に二号の増員が決定されたひーらちゃんですが、本来なら唯一のテストケースとして、ヒーローを支援する筈だったのです。高い能力を求めるのも必然でしょう?
ですが、一号はビジュアルのせいもあるでしょうが、子供に毛嫌いされ、人心を掴むことができませんでした。
場合によっては、ゆるキャラ制度さえ立ち消えになったかもしれないのです。有り得ない失態です。
表舞台を降ろされてからは、雑用係みたいなことをして、ようやく首を繋いでいる有り様です。
あまつさえ、ヒーローとしては新人ですが、砕けた雰囲気で人気の雷電さん、実力派のウルフナイト様におもねるなど、ヒーローに近づく口実でひーらちゃんになったとしか、思えないのです!!
そんな人を、どうして好ましく思えるでしょう?
人気がないゆるキャラをのさばらせるなんて、あり得ません。市町村のキャラでだってリストラされます。
協会の偉人の面子もあるでしょうが、ひーらちゃん一号の身の処置を、協会はもっと考えるべきではないでしょうか?