研究者の考察②
「ヒーローの特殊能力は、例外もあるけど、主に三つに分けられる。体内の魔力を変換して、肉体を強化したり、超常現象を引き起こす超人型~。
ハイ・テクノロジーによる肉体改造で力を得る改造人間型~。そして、超越した存在をその身に降ろした、憑依型~。
アリアちゃんは、特に珍しい三番目のタイプだと思うんだ!未だ謎に満ちた憑依型は、サンプルが少なくて、研究が進んでいないんだ。
出来うることなら、能力に目覚めた瞬間からデータ取りたかったな~」
……一息に言って、ぼくは冷静になる。
ポロッと言っちゃたけど、アリアちゃんの能力の芽生え=過去のトラウマだったよ!
「ごめん、無神経でした……」
いくらぼくでも、反省はする。ちゃんと謝れないのは人としてアウトだよね?
うなだれるぼくを見て、アリアちゃんは、少し笑った。
「気にしてないよ。それに、能力が目覚めた時って、意識が朦朧としてたから、あたしもよくわかってないの。……でもね、ぼんやりだけど、誰かに助け出されたのは覚えてる。
凄く優しい声で、でも、泣いてる風にも聞こえた。間に合わなくてごめんね、お願い、生きて……必死に呼びかけてくれたなぁ」
アリアちゃんは、遠い目で天を仰いでる。
ここじゃない、過去にさかのぼってるのかな~?
心なしか、頬が赤いよ。紫色の目もきらきらしてる。まるで恋する乙女の顔だね?
「あたしの能力名“月色砂子”は、助けてくれた人が名付けてくれたんだよ。月色の砂子をばらまいたみたい、とても綺麗な力だねって」
アリアちゃんを助けたヒーローは、怪人達を倒したあと、救助と医療チームが駆けつけたのを見届け、名前をつげず去って行ったそうな。
十年前の悲劇、《7・7事変》は悪の組織が一つ壊滅し、多くの死者も出た前代未聞の大事件だけど、立役者のヒーローは名乗り出ず、目撃者も幼い少女だけで、不可解な事件として、未だ語り継がれてるんだよね~。
謎のヒーローは、誰もが血眼になって探したけど、ついにわからないまま伝説化した。
眉唾な存在だけど、アリアちゃんは、ずっと探し続けてる。
「アリアちゃんって、執念深いよね~。幻のヒーローを追い求めて、あんな格好までしちゃうんだから。……まだ探すんでしょ?」
「当然!」
即答か~、一秒も迷わなかったよ、この子。
「絶対に見つけだして、お礼を言うんだ。弟とあたしが助かったのは、あなたのおかげだって。
お兄ちゃんと、お母さんの仇もとってくれた。
いくら感謝しても、足りないよ」
アリアちゃんからは揺るぎない決意が伝わってくる。いつだって、真っ直ぐなんだよね~。
……………これが、アリアちゃんのヒーローマニアの根源。ネルスくんの恋心が歪んでしまった原因。
アリアちゃんは諦めないけど、ネルスくんだってアリアちゃんを諦めない。なんて見事な一方通行だろ~。
「キミならいつか見つけちゃいそうだね」
その時、キミたちの関係はどうなっちゃうのかな~?
ぼくはソレを、見届けたいと思う。
アリアちゃんの能力の解明だとか、ネルスくんがヤンデレ化するかとか、気になることはたくさんあるけどさ、二人の事情を知る者として、ハッピーエンドを願わずにはいられないよ~。
未来はどうなるかわからないけど、ぼくはキミたちのこと、暖かい目で見守ってるからねっ☆
とにかく書きたかったことを書けて、スッキリした。
でも文章力が……。文字難しい。