研究者の考察①
研究者視点。
やっほー☆ぼくの名前はリアムくん!気軽に、りっくんとでも呼んでね!マッドでカルトな研究者だよ☆
仕事はヒーローの武器や兵器、アイテムの開発・改良。ひーらちゃんのスーツやネルスくんの変身の調節もやってるから、二人の正体も知ってるよ~。
趣味というか、個人的な研究のテーマは、ヒーローの特殊能力について解明すること。
一応、ぼく自身もヒーロー資格とH・Nを持ってるけど、名ばかりで研究漬けの毎日さ。
今日も、実験と称して幼なじみのアリアちゃんに協力してもらってる。
ほら、如何にも怪しい筒型のガラスケースの中ね~。今はゆるキャラスーツも脱いでもらってるよ。
素のアリアちゃんは、中味はぶっとんでるけど、とても可愛い女の子だよ。
なんて言うか、不思議な雰囲気があって、ハマる奴はドツボにハマるんだよね~。
ネルスくんみたいに!
今だって、薄暗い室内、怪しげな機材に囲まれ、ガラスケースに閉じ込められた少女なんて、見ようによっては背徳的なシチュエーション、ネルスくんが見たら興奮しつつ、問答無用でぼくをぶちのめすと思う。
ぼくには下心なんてないのに~。
大体、ネルスくんってムッツリなんだよね~。恋心がぐっにゃぐっにゃに歪みまくって、ストーカー化してるし。
ひーらちゃんの正体、自力でつきとめて追いかけてるし~。さっきも、アレ待ち伏せだよね?怖くない?
アリアちゃんのヒーローへのこだわりを間近で見てきたせいか、あいつは非常に屈折してる。
ネルスくんだってヒーローに憧れているものの、好きな子を捕られたような気がして素直になれず、
アリアちゃんを助けたヒーローには、感謝と、同じくらいの妬みを向けた。
アリアちゃんにはヒーローになって好かれたい、でも自分自身も見て欲しいと、なんともめんどくさい感情を持ち~。
ひねくれ曲がった挙げ句、ネルスくんは王道ではない邪道ヒーローになってしまいましたとさ。
アリアちゃんも罪な女だよね~!
「ねぇ、リアム。準備はまだ終わらないの?」
おっといけない、アリアちゃんを待たせてたんだ~。
「準備はOKだよ!アリアちゃん、“月色砂子”を展開してくれる?」
「了解」
アリアちゃんは瞳を閉じると、能力を解放した。
ふわぁと、月光を浴びた桜吹雪のような、淡く輝く薄片の集合体が出現し、アリアちゃんの周囲を明るく彩った。
月色砂子の光を纏うアリアちゃんは、いつもの三倍増しで綺麗になる。
豊かな銀のツインテイルは、光の波のよう。
白く浮かび上がる花のかんばせ。長い睫毛が白磁の肌に影を落とし、桜色の頬や唇は、より艶を増したみたい。
ここにネルスくんがいたら、見惚れて、ていうか穴が開くほどガン見して~こっそり写真を撮ると思う。……あいつの趣味は、アリアちゃんの写真コレクションだから(キモ~)。
それよりもぼくは、アリアちゃんのデータを表示する画面に釘付けになる。
ガラスケース内の物質は、熱量・質量・生体反応、全てが数値化されて転送されるんだけど~。
「なんで反応出ないかな~?」
アリアちゃん自体のデータは、サーモグラフの画像とともに、しっかり反映されている。
実験のために両腕の義手を外しているから、服以外の無機物の反応もない。
しかし、すぐそこにある月色砂子は、一切の情報が表示されない。かといって、エラーでもなく、空気のように機材に無視されてるカンジ~?
唯一、両腕の切断面、月色砂子が発生している二の腕の部位が、やや熱いとわかる程度かな。
「う~ん、アリアちゃん、一、二枚でいいから、月色砂子をこっちに送ってくれる?」
「これくらいの距離ならギリギリ行けるよ」
ガラスケースの僅かな隙間から、月色砂子がひらひら舞ってきた。
ぼくは、指先ほどの大きさの発光体に触れる。
ちょっとひんやりした~、金箔みたいな感触。
たしかに実在する物質なのに、つまんですり潰すと、光の粒子になってガラスを透過し、アリアちゃんの中へ還っていく……。
光の粒子状になると、物理法則も無視するんですけど~。なんなの、コレ?
もちろん、指にはなんの残滓もない。
以前、あのガラスケース内の重力を操作した時なんか、アリアちゃんは、突っ伏してたのに、月色砂子は変わらずぷかぷか浮いてたよ~。
「フッフッフ~☆ネルスくんといい、アリアちゃんといい、なんとも解明しがいのある能力だよね!
燃えるな~!!」
魔法と科学が融合した今の文明でも、わかってないことは驚くほど、多い。
研究者として、興味は尽きないよ~!!