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ヒーロー協会のゆるキャラ。  作者: 銘水
奮闘編
3/68

ゆるキャラの日常②

 建物と建物の隙間を通り抜け、たどり着いた地下研究所入り口には、先客がいた。頑丈な鉄の扉をオープンにして、あたしを待ってくれているみたい。


「よう、ひーらちゃん。また雷電あたりに仕事押し付けられたんだろ?大変だな」

 気さくに声をかけてくれるのは、強面というか、狼顔のワイルドなヒーロー。


 さっきの雷電さんみたいな正統派ではないけど、ニヒルな雰囲気のあるダークヒーロー、その名もウルフナイト!

 艶々の黒い毛並み、子供が泣くくらい鋭い眼光。凶悪なデザインの装備でも、格好良いからひーらちゃんと違って、人気があるの。


 いわゆる、ライバルからスピンオフして主役になるタイプ。

 そして、彼は数少ないひーらちゃんのファンなんだ!


 いつもこんな風に、先回りしたかのように現れて、ちょっとした手助けをしてくれたり、飴やチョコをくれたり、頭撫でてくれたり、ツーショット写真を携帯の待ち受けにしてたり、私室をちっとも売れないひーらちゃんグッズで埋め尽くしてたりと、かなりディープなファンぶり。


 ちなみに、なんでプライベートまで知っているかというと、彼、実は幼なじみなんだ……。

 ヒーローもゆるキャラも正体は極秘だから、あたしが一方的に気付いてるだけなんだけど。

 でも間違いないと思う。


 髪(毛)や瞳の色合い同じだし、変化系の能力で変身してるっぽい。

 そもそも、ひーらちゃんファンという、有り得ない共通点があるからね!

 こんな悪趣……個性的な趣味が一致するなんて、普通ないし。


 いや、中のあたしが言うのもなんだけど、ひーらちゃん、本当に可愛いくないし。目死んでるし……。 愛着はあるんだけどねぇ。


「しかし、雷電。あいつ、どうしてくれようか……」

 ぐぐっと彼の牙が剥き出しになり、低い唸り声が響き渡る。

 本気で怒ってない!?

 いやいやいや、あたし元々研究所に用はあったんだよ!?ヒーローのサポートをするためにひーらちゃんはいるんだし。

 

 何より、ヒーローに恩返しをしたいっていうあたしの望みにも合致するというか、あぁ、喋れないってもどかしい!耳も塞がってるから上手く伝えられない……。

 布の手を振って伝えようと、努力するけど無理だろうな。


「ひーらちゃんがあいつを庇いたいのはわかった」

 通じた!すごいなネルス!(←彼の本名)

「だが、下積みはヒーローに必要なことだ。甘やかしは堕落に繋がりかねん。仕事はちゃんとさせろ、いいな?」


 幼なじみの欲目かもしれないけど、雷電さんと違ってしっかりしてるな~と感心する。

 でも、あたしのせいで雷電さんが怒られるのはちょっとね……。

 そんな迷いも、彼は的確に読み取っていく。


「今度から気を付けると約束できるか?それで、今度また写真を撮らせてくれるなら、今回はうるさく言わんでおく」


 裂けた口の端が上がる。ずい分と獰猛だけど、きっと笑ってるつもりなんだね。

 あたしは大袈裟に首肯して同意を示す。


「じゃあ、仕事頑張れよ」

 彼はポンっと優しくあたしの頭を撫でた。スーツ越しだけど、なんかあったかい。

 今、あたしは夢に、“望み”に一番近い所にいるんだ! 

 言われなくても頑張るよ!

 そんな思いをこめて会釈すると、あたしは研究所へと下って行った。

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