ゆるキャラの日常①
はじめましてこんにちは。キモ可愛いと話題のゆるキャラ、ひーらちゃん(一号)の中の人、本名アリアティスです。
ヒーロー協会の傘下組織所属の18歳。ゆるキャラもヒーローも正体は秘密だから、細かいプロフィールはあえて言わないよ。
まあ、誰もひーらちゃんに興味ないけどね!
小さい子には泣かれるし、多感な時期の子にはあからさまに嫌悪される。
あぁ、この間は悪ガキに石投げられたなぁ……。
一応、ヒーローのサポート要員なので、ひーらちゃんスーツは高性能。
石くらいじゃ痛くも痒くも無いけど、心は痛かったよ(泣)。
ヒーローとゆるキャラで二枚看板になるはずが、ひーらちゃんは嫌われてる。嫌われまくってる……。
でも、協会の上層部のとっても偉い人が考えたデザインだから、なんとか首にならずにやっていけてるよ!ありがとう、偉い人!でもあなたのデザインセンスのせいだよね!
それに、メリットもあるよ!人が寄り付かないから作業はいつもスムーズだし、可愛くもか弱そうでもなく、メンタルが図太いのを評価されて、仕事は仲間に比べてたくさんあるんだ!
昔からヒーロー関係の仕事につきたいと思ってたあたしには、まさに天職なの。
そんな事を考えてた時爆音がして、真っ赤なバイクが横付けしてきた。
「丁度いいところにいたな!一号。この荷物を運んどいてくれないか?」
仕事を丸投げしてきたのは、改造バイクに派手な全身スーツの雷電さん。荷台にくくりつけられてるのは、ヒーローたちの壊れた装備かな?
かなり大量だから、アシのある雷電さんがまとめて運んでいたんだね。
でも、整備には地下にある研究所に行かなきゃ行けない。バイクじゃこれ以上は無理だから、なるほど、ひーらちゃん向けの仕事だ!
あたしは耳を操作して、ピッとサムズアップで応える。ひーらちゃんは喋れない設定なんだよ。
「助かったよ!ヒーローって実力主義つーか、すげぇ体育会系だから、オレすぐパシらされるんだよなー。オレの愛車は荷車じゃねーのに……」
雷電さんはぶつぶつ言いながら、荷台のロープを解いていく。
両耳でくるむように荷物を受け取ると、重量級の手応えを感じた。
「すっげー!軽々持つなぁ、マジ重いのに!」
なんていうか、悪い人じゃないけど、新人感覚が抜けてないなぁ。
「じゃ!あとよろしくーーーー!」
雷電さんは颯爽とバイクで去って行く。
ヒーローとして、もっと頑張りなよ~と思いをこめて手を振ったけど、バイクの爆風で布がはためいただけに見えたかも。
気を取り直して、荷物を運びますか!
地下研究所は当たり前だけど、目立たない所にある。前線で活躍するヒーローの本部と、それ以外の裏方部署は場所がかなり離れてるから、ちゃっちゃっと行こう。
あたしは能力を使って、ホバークラフトのごとく低空飛行でかっ飛ばす!
バイクと違って、騒音・排気もなく、小回りの利くあたしの能力は、やっぱり雑用……サポート向きだね!