俺VS小向雛乃=和解
「朝、変に突っかかって悪かったな」
昼休みになり、俺はチビに謝りに行った。朝はムカついて言ってしまったが、今よく考えると全般的に俺が悪い。だから、俺は自分の気持ちをスッキリさせるために謝っておいた。
「こっちもごめん。からかい過ぎた」
チビも頭を下げて言った。なかなかこういう事をするような奴ではないと思っていたので、意外さを感じた。
「あら、喧嘩はしないの?」
瑛子が来て俺たちをバカにするように言った。そこまで朝の喧嘩が面白かったのか。
「たった今、和解をしたんだよ」
俺は言ってやった。こうでもしないと、いつ瑛子に言われるかわからない。
「そうだ、もう和解したんだから喧嘩はしない」
チビも俺と同じ意見だったらしい。
「そう、邪魔をしたわね」
瑛子は俺たちが喧嘩しないと言うとすぐに自分の席に着いて勉強を始めた。全く、俺らの喧嘩を楽しみに話しかけて来たのかよ。性格が悪いにもほどがある。俺は瑛子のこういうところが苦手だった。
「ねぇ、あたしのこと名前で呼んでよ。和解したんだし…」
何やらもじもじしている。そこまで恥ずかしいことだろうか。俺はそんなに恥ずかしくはないのだが…。
「わかった、雛乃」
いや、やっぱり前言撤回だ。とても恥ずかしい。普通に名前を呼ぶ最初だって恥ずかしいのに、今回はさっきまで喧嘩してた相手だ。それを名前で呼び合うなんて…。
「そ…、そ…、そそ…」
何だよこいつは。自分で言っておきながら、言えないってか?
「早く言ってみろよ」
俺は雛乃を急かすように言った。なぜなら、俺だけ言ってあっちは言わなかったら理不尽だからだ。
「そ…、そう…、た…」
セコイ!しかも声が小ちゃくて全然聞こえない。
「聞こえないんだが」
「そうた…」
今度は少し大っきくなった。だが、俺はいじるように言ってやった。
「何〜?聞こえないんだけど?」
「うるさい、そうた!」
教室全体に響く声を俺は耳元で言われた。鼓膜が破れるかと思った…。
「良い加減にしてよ、あんたあたしをからかい過ぎなのよ!」
結局さっきの和解は三分も持たなかった。もちろん原因は俺だ。雛乃の言うとおり、からかい過ぎた。
「悪かった」
俺は反省の言葉を言った。
「そう、わかれば良いのよ、わかればね」
そう言って、雛乃は自分の席に戻って行った。何なんだよ…、たかが名前を呼ぶくらいで…。
「お姉ちゃんが男の人の名前を呼ぶなんて初めてですよ!」
伶華ちゃんが喜ぶように言った。
「だって、いつもあだ名や苗字ですもん。奏太くんはお姉ちゃんに気に入られましたね」
ニコッと笑いながら言われた。そうなのか、雛乃は名前で呼んだことがなかったからあんなにもじもじしていたんだと今思った。それに誰かに気に入られると言うことは何だか嬉しかった。そして今日の授業はテンションが上がったまま終わった。




