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反転世界  作者:
58/66

俺VS小向雛乃

キーンコーンカーンコーン

ホームルームのチャイムがなってしまった。

「ギリギリセーフ!」

愛姫が教室のドアを開けながら言った。だが、少し遅かった。

「奏太、愛姫、二人とも遅刻よ」

教室に入るとまず瑛子に言われた。

「そうですよ、少し遅いです」

続いて伶華ちゃんにも言われた。

「愛姫もペッポコも遅刻だ」

今度はチビに言われた。こいつに言われると何故か知らないが、怒りが湧いてくる。

「そんなのわかってるわ!」

つい強い口調で言ってしまった。俺はこのチビと話す時はいつも喧嘩口調になってしまう。そういう免疫でもあるのだろうか。

「何だよ!遅刻した分際で!」

わかっている。だか、こいつが相手になると自分を抑えれなくなる。

「だから悪かったって!」

「はぁ、あなたたち、良い加減にしたら?」

そこに鋭い指摘が飛んできた。これは倉田さんだ。倉田さんは俺を見つめて数秒黙った。

「なるほど、あなたが寝坊したわけね」

あ、はい。その通りです…。嘘、偽りのない真実です…。

「はい、すみません…」

俺はやっぱりこの人が苦手らしい。他の人と同じように接する事ができない。それもまあ、人の個性ってやつだろう。どんな人が好きで、どんな人が嫌いか、そんな事は自分にしかわからない。それで俺は倉田さんが苦手になっているだけだろう。

「そーなんだよ、全てはそーくんが悪いんだよ」

愛姫が俺を全ての原因だみたいに言った。事実、その通りだから弁解はできない。だが、愛姫が大声で言ったおかげて全員の冷たい視線が俺に向けられた。誰だって寝坊くらいする時はあるだろうに…。こうして、今日はドタバタしてスタートした。


「奏太くんが寝坊するなんて意外です」

休み時間に話しかけて来たのは伶華ちゃんだった。俺はそこまで真面目に見えるのだろうか。授業中はたまに寝ているのに。

「そうか?俺はこっちの世界に来てからは、ずっとこんな感じだぞ?」

俺は当たり前だと言うように答えた。表の世界では、ほとんど寝坊などした事なかったんだがな…。

「こいつはペッポコだからしょうがないよ」

笑いながら、伶華の双子の姉雛乃が言った。俺はこいつの事をチビと呼んでいるが。

「うるさいな。お前は昼寝しないと生きていられないくせに。チビだからな」

俺はからかうように言ってやった。こいつは身長が他の女の子と比べてやたら低い。だから、そこを重点的に攻めてやった。

「チビでも朝はしっかり起きれるもんね〜」

相手も俺を舐めたように言う。今日の失態を見れば当然のことだ。

「あなたたち、喧嘩する次元が低すぎるわよ。そんなのだと、小学生くらいよ?」

倉田さんに言われた。他の人から見るとそこまで次元の低い喧嘩なのか…。俺は結構落ち込んだ。チビと同じ次元に立っている自分が情けなくて…。

「倉田さん、もう少しオブラートに包んで…」

伶華ちゃんもやっぱり思っているらしい。オブラートに包んでって事はもう少し優しく言ってと言っているものだ。俺にはその優しさが逆に心を傷つけた。

「伶華、それはそれで傷つく…」

どうやらチビも同じ事を思っていたらしい。俺はあいつより次元の高い人間だといつもは思っているが、今回は思ってる事も同じだったので、同じ次元にいると思った。

「別に喧嘩くらいほっとけば良いのよ、喜衣。それに伶華もこんな奴らに構わない方が良いわよ。ろくな事ないから」

瑛子が次の授業の予習をしながら言った。倉田さんはそれもそうねと言って、本を読み始めた。どうやら俺たちは止められるに値しない奴らだと思われたらしい。

「瑛子さんもそれは言い過ぎだと思います」

伶華ちゃんが瑛子に講義してくれた。俺とチビは反抗する力、いや、心がもうすでに折られてしまっていた。

「伶華ちゃん、良いんだ、俺たちはダメな人間なんだ…」

「そうだよ、あたしたちはダメ人間なんだよ…」

今回は意見が合った。とてもマイナス思考な意見だが…。

「気にしないで、私はお姉ちゃんと奏太くんがいい人って知ってますから」

何とも良い言葉だ。やっぱり性格の一番良い子は伶華ちゃんだろう。

「「ありがとう」」

ついに言う言葉がハモった。俺はここで初めてチビと分かり合える気がした。

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