いきなり部活ですか⁈
「俺は今から部活だけど、愛姫と美空はどうする?」
白羽さんがそう言ったが、俺は今日部活があるなんて一言も聞いてない。
「あの、白羽さん?俺は今日部活があるなんて聞いてないんですが…」
俺は知らないという事実を伝えた。そんな事は一言も言っていなかったような…。
「俺もやる気はなかったが、今決めたんだよ。ちょっと思い出したことがあったからね」
これはもしかして、部活のやる日は決まっていないのかもしれない。部長がやりたい時にだけやる部活ってことか…。俺は変な部活にどうやら入ってしまったようだ。
「うちはもう家に帰るかな〜」
愛姫がのびをしながら言った。
「僕も家に帰って、寝ようと思っとる」
天川さんは特にやることもなさそうに言った。
「そうか、じゃあ俺らはまた学校に戻るから」
そう言って白羽さんは俺の首を腕で挟んで、学校に向けて歩き出した。別にそんなことやらなくても逃げようとは思っていないのだが…。
「白羽さん、痛いですって!」
俺は腕の解放を求めたが、全く言うことを聞いてくれなかった。
「そーくん、頑張ってね〜」
「ふたりとも頑張りんさいよ〜」
愛姫と天川さんが俺と白羽さんに言った。白羽さんと首を掴まれている俺はふたりの方を見て手を振った。もちろん、俺はとても変な体制だが…。あっちにいるふたりも手を振り返してくれていた。
「今から部室に行くぞ!」
白羽さんは昼食を食べたことにより、元気が復活したようだ。俺はただただ疲労が溜まっていくだけだ。
「はーい…」
俺は力なく返事をして、部室に連れて行かれたのだった。
「で、思い出したことって何ですか?」
部室に着いてから俺はすぐに質問をした。それがあったから今日急遽部活をやることになったのだから…。
「ああ、それはこの世界の色についてだ」
え?この前に全部聞いたはずだが…。もしかしたら、その時に忘れていたことかもしれない。
「この世界の色って白黒についてですよね?」
俺はこの事しか知らないので、他のことだったら大変だと思って、念のために聞いてみた。
「ああ、そうだ。そのことについてだ」
良かった、俺が知っている色のことだった。考えてみれば、そもそもそれ以外にはないか…。
「今お前は何色が見えている?」
突然の質問だった。
「えっ、今は白、黒、赤、青、緑、黄、金、銀、ですけど…」
それがどうしたのだろう?別に見えているからと何かが変わったわけでもないのだが…。
「それがどうかしたんですか?」
「それって、こっちの世界の人に全部教えてもらったんだよな?」
何でそのことを…。いや、表の世界のことを調べている機関に居るのだから、当たり前か。
「そうです。言われたらすぐに見えるようになりました」
俺は色を教えてもらった直後から見えることも話した。
「その中には自分が見つけた色ってのはないよな?」
この人は何が言いたいんだ?全部教えてもらったのだから、自分で見つけてもらった色などあるわけがない。
「はい、全部教えてもらった色ですけど…」
「本当に見えている色はそれだけか?」
何を言ってるのだ?俺が見えていると言ったら見えているのだ。それは俺以外にわかるわけがない。
「白羽さん、何が言いたいんですか?」
ストレートに言わない白羽さんに俺は問題の答えを聞こうとした。
「やっぱり自覚がないんだな…」
え?自覚がない?
「お前、肌色、人の肌の色は見えるだろ」
肌色?た、確かに…。見えている。だ、だが、肌色なんてこっちの世界に来てから聞いていない。なのに何で俺は見えているのだ?俺には疑問がたくさん浮かんだ。
「あ、あの、何で俺は肌色が見えているんですか?」
俺は自分でも気づかなかった色があったことに驚きを隠せなかった。
「これはあくまで推測だが、こっちの世界に来た時は白と黒の世界にしか見えなかったんだよな?」
「はい」
だが、それが肌色と何の関係があるのか。
「そしてこっちの世界の人に色を教えてもらって色が少しずつわかるようになってきたんだよな?」
「はい、その通りですけど…」
やっぱり俺には白羽さんが何を言いたいのかがさっぱりわからなかった。
「その中にただ一つ、人に教えてもらわずに見えるようになった色。それが肌色だ」
確かに考えてみれば、自分も自覚がないままいつしか自然と見えるようになっていた。
「で、でも、どうして見えるようになったんですか?」
俺は自分が知らない間に見える色が増えてったことが信じられずに、つい白羽さんに聞いてしまった。
「それは俺にもよくわからないんだが、人の肌は肌色って自分の中で強く思っていたからじゃないか?」
人の肌は肌色。確かに表の世界にいる時は、それがあまり前だった。だが、裏の世界にきた途端、俺は白と黒しか見えなくなったはずだ。もしかして…
「強い思い込みですか?」
自分がこの色はこれって強く思っていれば、何と無く見えてくるのだと、推測して言った。
「たぶんな、俺もそう思っている。俺が見えている色ではないから確証は持てないけどな」
白羽さんは頭をかきながら言った。この人は凄い。たった一人で表の世界の人間について調べ上げ、さらにその先のことまで推測してしまうのだから…。
「もしかして、何故色が見えなくなったかもわかるんですか?」
もしかしたらと思って聞いてみた。そうすれば、表の世界に戻る方法と繋がると思ったからだ。
「残念ながら、そこまではわかってない。だが、もう表の世界に戻る方法はあるから大丈夫じゃないか?」
「言われてみればそうですね」
俺は笑って答えた。少し考えればわかることだった。俺はもう白羽さんに任せればいいのだ。だが、愛姫が言っていた言葉が気になった。「かんちゃんはちょっとおかしい」か…。俺は白羽さんを完全に信用したわけではなかった。だから、自分でも引き続き表の世界に戻る方法を探して行こうと思った。
「だろ?心配すんなって」
白羽さんは笑って言っていて、俺も笑って答えたが心は笑っていなかった…。




