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反転世界  作者:
51/66

最後の一人

「みんなおる〜?」

こう言って生徒会室に入って来たのは俺が知らない人だった。

「あ、そらちゃんだ」

愛姫が指を指して言った。あれが生徒会最後の一人か。ずいぶん許そうな人だなと俺は思った。

「美空、一時間遅れよ。時間は昨日しっかりと伝えたはずよ?」

瑛子が問い詰めるように言った。

「いや〜、ごめんごめん」

とても軽い感じで謝っていた。髪の毛はそこまで長くなく、セミロングくらいだ。

「美空、もう少し時間には気をつけた方がいいぞ」

「わかっとるって」

白羽さんの助言も軽く流していた。生徒会にはやっぱりまともな人間がいないなとまた思った。

「あれ?あなたが副会長さん?」

俺の方を見て言った。

「は、はい。磯貝奏太です」

俺は年上か年下かわからなかったので、敬語で言っておいた。

「僕は天川美空(あまかわみそら)、この生徒会の会計をやっとるねん」

「時間にはすごくルーズだけどね」

天川さんの自己紹介が終わると同時に瑛子が口を出して来た。

「美空さん、おはようございます」

鶫ちゃんが挨拶をした。この子はどんな人にでも、礼儀正しくしている。愛姫とは真逆だ。

「けど、そらちゃんは生徒会の中で一番仕事ができるよ?」

愛姫が瑛子に言った。だが、生徒会の中で一番仕事ができない愛姫が言っても全く説得力がない。

「まあ、確かにそれは認めるわ。だけど、時間に遅れるのは良くないわ」

あなたがおっしゃる通りでございますよ、瑛子さん。どれだけ天川さんが仕事を出来ていても、時間に遅刻していたら社会では通じないだろう。

「まあ、今日のメンバーは全員揃ったし、ちゃっちゃと終わらせようぜ!」

白羽さんがみんなに言った。愛姫はオーと言って作業に戻った。

「あの、天川さんは何年なんですか?」

俺はまだ敬語を使った方がいいのかわからなかったので、本人に直接聞いてみた。

「僕は三年やで」

先輩だった。これで後輩だったら恥ずかしかったが、先輩ならこのまま敬語を続けていける、よかった。

「どしたん?」

天川さんが俺に尋ねてきた。

「あ、いえ。敬語を使えばいいのかわからなかったので…」

俺は頭をかきながら言った。

「敬語なんてどっちでもええねん。自分の好きにしたらええと思うで」

何ともすごい関西弁なのだろうか。こっちの世界にも方言があるんだと感心しつつ俺は作業に戻った。


「瑛子、終わったで」

天川さんが来て、一時間経ってから言った。

「そう、もう終わったの。私ももうすぐ終わるから少し待ってて」

終わったってまさかもう今日のノルマを終わったのか?来てからたった一時間しか経ってないのに⁈

「もしかして、ノルマが終わったってことですか?」

俺は恐る恐る尋ねてみた。

「そうやけど、それがどないしたん?」

やっぱりか…。本当に終わってたらしい。俺はあと三分の一くらいは残っているのに…。

「そらちゃん、うちのも手伝って〜」

瑛子が助けを求めていた。こいつが助けを求めない日など存在するとだろうかと俺は思った。

「ええよ、どれやればええ?」

天川さんが愛姫に聞いた。すると愛姫は自分の持っている書類のほぼ全てを渡した。愛姫が持っているのはほんの数枚になってしまった。

「僕がこんなにやらんといかんの?」

天川さんは笑いながら言っていた。どう見ても割合がおかしすぎる。何故渡した愛姫が少なくて、天川さんが多いのだ。

「愛姫、ズルいぞ!」

俺は言ってやった。

「まーまー、終わればいいんだし…」

白羽さんが俺を止めた。何故愛姫の味方をするのだ?あれはどう見てもおかしいではないか。

「奏太さん、終わればいいんですよ」

鶫ちゃんにも言われてしまった。みんな何故そこまで愛姫をかばうのか俺にはわからなかった。

「愛姫、少しは自分でやりなさいよ」

瑛子が愛姫に注意した。良かった、瑛子は俺の味方らしい。

「ふぅ、終わったで」

え⁈終わっただと?今この会話がなされている間にもう終わったのか?

「やっと私も終わったわ」

今度は瑛子が言った。当然瑛子はやれる奴なのでわかっていたが、天川さんは瑛子が終わる前に終わっていたし、さらに追加をやって瑛子と同じくらいに終わっていた…。凄い、凄すぎる…。

「何とかぼくも終わりました」

瑛子に続いて鶫ちゃんも終わったらしい。流石に優秀な一年生ってことはある。だが、天川さんはあまりにも早過ぎて、鶫ちゃんが遅く感じられた。何たって、俺たちがやっている時間の半分で終わらせてしまったからだ。

「相変わらず美空は凄いな」

白羽さん言った。

「いやいや、そんなことあらへんで」

謙虚に天川さんが答えた。やっぱり三年生となると凄い人がいるものだ。

「おし、やっと俺も終わった」

鶫ちゃんが終わってから数十分後に白羽さんが言った。そして残っているのは、俺と愛姫だけになった。ここで愛姫に負けると俺がダメだと言うことになってしまう。何としてもそれだけは阻止しなければ…。そう思って俺は必死にやった。その一方で終わった四人はくつろいでいた。

「終わった〜、もう終わったよ〜」

なっ⁈まさか愛姫が俺より先に終わらせるなんて…。俺は今までにないくらいヘコんだ。

「愛姫、まだ残ってるけど…」

瑛子が愛姫に言った。残ってるって書類がか⁈じゃあ、あの終わったは何だったんだよ…と俺は思った。

「違う意味の終わっただよ〜。うち、もうできない〜」

そっちの終わったかよ。あれだけ手伝ってもらっていたのに情けない。

「仕方ない、僕があとはやったる」

そう言って天川さんが愛姫の席に座って作業をやり始めた。俺はそれをつい凝視してしまった。何せとてつもないスピードで一枚一枚を終わらせているのだ。俺は自分のノルマをやることをすっかり忘れていた。

「終わったで」

愛姫と変わってたった二分で全てを仕上げてしまった。俺がポカーンとしていると、鶫ちゃんが話しかけて来た。

「奏太さん、全然終わってないですけど、大丈夫ですか?」

どうやら俺を心配してくれているようだ。

「あ、ああ、大丈夫だ」

俺は正気を取り戻して作業を再開した。

「ぼくも手伝います」

そう言って鶫ちゃんが書類を何枚か持って行った。

「しょうがない、俺もやってやるよ」

白羽さんも手伝ってくれた。

「僕もやろか?」

天川さんも手伝ってくれるらしい。瑛子と愛姫以外は意外と普通に優しい人ばかりだと思った。

「まあ、みんなでやって早く終わらせましょう!」

瑛子が大きな声で言った。他の人はそれに答えるように黙って作業を続けていた。愛姫はソファでぐったりしていたが…。

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