天才メガネ少女現る⁉
「さあ、着きましたよ。ここが図書館です」
「相変わらず馬鹿でかいわねぇ」
「で、でけぇ…」
学校自体もとても大きいのだが、この図書館もとても大きかった。ただただ、大きかった。
「さ、早く行きましょう」
「あ、ああ」
俺は少し呆気に取られていて、反応が遅れてしまった。
「どうやってこんなでかい図書館から、目的の本を見つけるんだ?」
「そういう機械があるんですよ。キーワードとなる言葉を入力して…」
後ろからクスクスと笑い声が聞こえた。
「あんた、そんなんもわからないの?ぷっ」
笑うのを堪えているらしい。俺としては、いっそ大声で笑ってくれた方が良いのだが…。
「悪いかよ。図書館なんて行かねぇからな。全くわかんねぇよ」
「あたしでも図書館くらい行くわよ?」
「あの、お姉ちゃん?お姉ちゃんもそんなに変わらないと思うよ。私について来た、一、二回しか来たことないんだから…」
俺は思わず笑ってしまった。上から目線だった奴が自分とほとんど変わらないなんて…。ぷっ、笑わずにはいられない。
「もー、伶華。そういういらないこと言わないでよ!あたしが馬鹿みたいじゃない。こんなのと一緒にされるなんて侵害だわ」
顔を赤らめて言った。
「俺も一緒にされたくない。こんな馬鹿とは…」
図書館でもやっぱり喧嘩になってしまった…。喧嘩してる時間はないのだが…。
「あの、少し静かにしてもらえないですかね?」
うるさ過ぎたため、誰かに注意されてしまった。
「ここは図書館です。他に人もいるので、配慮して下さい」
「あ、ごめん」
メガネをかけて、手には本を持っていた。以下にも文学少女ですという感じが伝わってきた。
「倉田さん。もういたんだね」
「伶華さん、集合時間より少し遅れてますよ」
「ごめんなさい…」
集合時間?用事というのはこのことだったのか。っと、俺も本来の目的に戻らなければ…。
「ねぇ、妹ちゃん。さっき言っていた機械はどこにあるの?」
「それなら、あそこにあります」
通路の向こう側を指差していた。指で指している先を見ると、ヘンテコな機械がちょこんとあった。
「あ、あれか。ありがと」
「いえいえ」
「ねえ、この人誰?」
不思議そうな顔をしていた。当然だろう。なんせ、こっちの世界には数時間前いなかった人間なのだから…。
「この人は表の世界の人ですよ」
「そうそう。このヘッポコは表の人間なのよ」
妹ちゃんのあとに続いて姉が言った。『ヘッポコ』はいらないと思うのだが…。
「ヘッポコ?」
あー、そっちに反応しちゃったか〜。なんて奴だ…。俺はがっくりと肩を落とした。
「いや、ここはやっぱり表の人間に反応しましょう」
くそっ、こっちの気持ちがもて遊ばれてるみたいだ。実際そうなんだが…。
「で、この人が表の人間と…。なるほど、そういうことね」
たった数秒考えただけだった。
「何がわかったんだ?」
「何であなたがいるか」
「嘘つけぇい」
「わかるんです。倉田さんはわかってしまうんですよ。私たちとは思考回路が違うっていうか、何と言うか…」
妹ちゃんが言うのなら本当だろう。全くもってこの世界には、とんでもない奴がいたもんだ。いや、裏の世界に来てからまともな奴に会ってない気がする…。口に出そうだったが、それは心に留めといた。俺は目的の本探しを始めた。
「お、あったあった。これか。『
表の世界の書』なんか怖い感じだな。いかにもって感じだし」
俺はやっとのことで、帰れる方法が記されている本を見つけることができた。とても分厚く、古ぼけた本だった。とても読む気にはならなかった。
「見つけたの?探してた本とやらを」
「何か用か?」
話しかけて来たのは、双子の姉の方だった。
「監視するって言ったけど、何もしないし、つまんなくなってきちゃった」
確かに、こいつは僕が本を探しているとき、一人でボーとしていた。流石、図書館に全然来ない人だ。自分もそのうちの一人なんだが…。
「あ、そろそろ時間ですね」
「そうね。今日はもう終わりにしましょう」
奥で勉強していた、双子の妹ちゃんとメガネの少女が話しているのが聞こえた。妹ちゃんはこっちに歩いて来た。
「あの、本見つかりましたか?」
「ああ、おかげさまでな」
「良かったです」
「この本をまだ全然読んでないんだが…」
見つけて終わりなんて悲し過ぎる。何としても、中を読まなければならない。
「借りればいいじゃないですか」
「借りる…?」
頭の上にはハテナマークが出ているだろう。図書館初心者なんてそんなものだ。
「どうやって?」
「私の名前でその本を借りましょう」
「そうね。それが良い考えだわ」
メガネの少女が便乗して言った。
まー、俺がわからないことが行われた。内容はさっぱりわからない。俺はもう、頭がパンクしそうだった。
「はい、どうぞ。一日だけ借りることにしました」
「お、おう。ありがとう」
「いえいえ、頑張って下さいね」
「もちろん!できることは何でもやってやるぜ」
そのくらいの勢いがないともう戻れない気がしていた。時間ももうない。寝る時間を惜しんでやるしかないみたいだな…。
学校から出てくると、双子の姉がもう真っ暗だと言っていた。もちろん、俺には真っ黒にしか見えないので、朝か夜かなんてさっぱりだった。
「最後に良いこと教えてあげる」
こう言ったのはメガネの少女だった。
「この子達の髪の色は金色よ」
何を言っているのだろう…。メガネの少女はクスッと笑ってどっかに行ってしまった…。たぶん、家に帰ったのだろう。
「私も教えてあげましょう。私の目は青色です」
「あたしは赤よ」
彼女たちは何を言っているのだろう。ふと今見たら、髪が金髪だった。さっきまでは黒だったのに…。と言うか、そう思い込んでいた。
「じゃあ、またいつか」
「もうあんたとは会いたくないわ」
双子がそれぞれに言った。そして二人は走っていった。少し離れた場所でもう一度振り返って、妹ちゃんは手を振ってくれた。姉はべーっと舌を出していた。そのときに少し、ほんの少し見えた。目の色が…。姉は赤、妹は青だった…。もしかしたら気のせいだったかもしれない…。