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反転世界  作者:
38/66

見える色

夜になって俺はふと思った。のんびりし過ぎじゃね?と。確かに殺される必要はなくなったが、俺は元の世界に戻りたい。だが、そのために借りた本は学校に返してしまったし…。どう帰る方法を探すか…。まずは状況整理をしよう。

・裏の世界にいる

・殺される心配はなくなった

・帰る方法を知らない

どうする?まずは方法を知らないと、どうしようもないか…。それに俺が今見えている色も気になる。こっちに来て結構経つから忘れがちになっていたが、俺の見ている色と他の人が見ている色は違うのだ。例えば、俺が黒だと思っていた髪の毛が金色だったりするのだ。色が違った時は俺はびっくりしてしまう。本当の色だと思っていた色が、違う色だったなんて。少しの間は目が慣れない。それは当たり前か…。こっちに来た時も全然慣れなかったし…。その時ドアが叩かれた。

「何だ〜?愛姫か〜?」

俺は愛姫だと思って出た。ドアを開けると、立っていたのは斬谷さんだった。

「奏太様、お着替えを持って参りました」

「ありがとうございます」

斬谷さんがいつも俺の着替えなどを持って来てくれる。毎回毎回持っていてくれるので、もうとっくに慣れてしまった。

「そこに置いておいて下さい」

「かしこまりました」

彼女はそう言って着替えを置いた。俺はまだ色のことが気になっていたので、試しに聞いてみた。

「斬谷さんって綺麗な黒髪してますよね」

「いえ、わたくしは銀髪でございます」

斬谷さんが少し困惑したように言った。今まで俺は黒だと思っていた…。まさかここにきて違うとは…。なかなか衝撃がある。髪の色で人の雰囲気はだいぶ変わるからだ。でも、俺にはまだ銀には見えなかった。

「あの、本当に銀髪なんですか?」

一応確認してみた。この人が嘘を言うとは思えないが、確認しておきたかった。

「はい、奏太様には見えないのですか?」

「はい、俺がこっちに来た時は本当に白黒にしか見えませんでした。でも、何がきっかけになったかはわからないんですが、今は少し他の色も見えるようになりました」

俺は全てを話した。なぜなら、別に隠すほどのことではないし、この人なら人の秘密は守ると思ったからだ。

「そうでございましたか。では、まだほとんどの色は見えていないと…」

「そうですね…。今わかっているのは白と黒を入れて七色ですね…」

俺は一瞬自分の手元を見た。

「まだ五色しか増えてないのでございますか…。どのようにしたら見える色が増えるなどはわからないのでしょうか?」

と斬谷さんが言ったので、俺は前を見た。

「あれ?見える…」

「どうしたのでございますか?」

俺は見えていた。それは斬谷さんの髪の毛の色だ。俺はさっきまで黒だと思っていたが、銀と言われ驚いていた。だが、いくら見ても銀には見えなかった…。見えなかったのだ…。だが、今ははっきりと見える。銀髪の斬谷さんが…。

「あの…、銀髪って言ってましたよね?」

「はい、そうでございますが、それがどうなさいましたか?」

「今ははっきりと見えるんですよ、斬谷さんの銀髪が…」

斬谷さんは少しキョトンとしていた。もちろん俺も何故いきなり見えたかはわからない…。だが、少しだけわかったことがある。俺が白と黒以外の色が初めて見えたのは、色のことを言われたすぐあとだった。

「斬谷さん、お願いがあります!」

「なんでございましょう?」

「俺に他の物の色を教えて下さい!」

彼女はえ?という表情をしたが、わかりましたと言った。

「例えば、このハンカチは紫色でございます」

そう言って、彼女はポケットからハンカチを取り出した。だか、俺には白色にしか見えなかった。

「紫なんですよね?」

つい、聞き直してしまった。だが、斬谷さんがこんなことで嘘を言うはすがない。

「もちろんでございます。わたくしにははっきりと、紫色に見えます」

そんなのか…。人と見ている物の色が違うなんて、複雑な気持ちだった。そういえば、さっきは手元を見たら色が変わった。俺はもしかしてと思ってやってみた。

「ん〜、変わらないか…」

「どうしたのでございますか?」

斬谷さんが尋ねてきた。あっちからすれば、今の俺は不自然なことをしていたに違いない。

「いや、さっきは手元を見たら色が変わったので、今回も変わるかなと思ったんですが、変わりませんでした」

俺はやってみた結果を報告した。彼女は(あご)に手をあて、少し考えた。

「申し訳ございません。どうやらわたくしでは、お役にたてないようでございます」

「いえいえ、俺も全然わかってないので、他の人に分かれなんて無理がありますよ」

と俺は笑って言った。だが、表面は笑顔でも、心の中は笑っていなかった。結局わかったのは、銀色が見えただけだ。何も進歩していない。いや、一歩は前進はしたか…。

「奏太様、わたくしはこれで失礼いたします」

「すみません、仕事の途中で呼び止めて」

「いえ、こちらこそお力になれず、申し訳ございませんでした」

彼女は頭を深々と下げてから俺の部屋から出ていった。結局、色がついたからといって表の世界に戻れるわけではないし、脱出方法としては平行線のままだった…。


俺はベットに横になっていた。どうも気になる。何が気になるのかと言うと、色についてだ。俺はこの世界に来たときは白と黒しかなかった。だが、今は赤、青、黄、緑、金、銀が見えている。それらに共通していることは、人から教えてもらったということだ。俺は自分だけで、他の色をまだ見つけたことがない。全てが人がその色を言って、その後に俺が見えるようになる。これは表の世界に住んでいた人間は全員こうなるのか?はたまた、俺が特殊でこっちに来た時に何かを失ったか、手に入れたか。いくら考えてもさっぱりわからない。こんな時間も全て無駄になってしまうのだろうか。やっぱりそれもわからない。全ての始まりは俺が裏の世界に来たことから始まったのだ。

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