りんご飴
「そーくん、これも食べよっ」
愛姫はさっきから、アイスだのクレープだの、甘いものばかり食べている。
「お前良い加減にしろよ。太るぞ」
「気にしない、気にしない」
良いのかよっ!普通女の子だったら気にするところだろ⁈愛姫は本当は男だったりして…、なんて俺は思った。もちろん、愛姫は女の子なんだが…。
「鶫ちゃん、何か食べたいものとかあったら言ってね。今日は俺が払うから」
カッコつけて言ってみたが、ありがとうございますと普通の反応をされて、俺が恥ずかしくなった。
「あの、りんご飴が食べたいです」
鶫ちゃんが指差した先には、幟にりんご飴と書かれていた。お祭りでもないのに、こっちの世界はりんご飴が普通に出回ってるのかと俺は感心していた。表の世界では、お祭りの屋台でしか見た事がない気がする。
「へぇー、りんご飴か。懐かしいな」
「そーくん、食べた事あるの⁈」
愛姫がびっくりしたような口調で言って来た。
「そうだけど…。それがどうかしたか?」
俺は食べたことあると言ったが、まだ幼い頃だったので、味なんて覚えてない。正直言うと、とても美味しかったという記憶ではない。ただ、お祭りが楽しかったという記憶の中にりんご飴という単語があるだけだ。
「いや、うちも食べたことないから、どんな味なのかなって」
「俺もあんまり覚えてないんだよ。まあ、食べて見るのが一番早い」
そう言って、俺は幟が出ている店まで行って、りんご飴を三つ買った。
「はい、愛姫。これは鶫ちゃんの分ね」
戻って来てから、二人に買って来たりんご飴を渡した。
「ありがとっ!」
「ありがとうございます」
それぞれお礼の言葉を言って、食べ始めた。正確には、舐め始めた。
「これ意外と美味しいかも」
「そうですね、思ってたより美味しいです」
二人には好評のようだ。ただの飴とそこまで変わらないのだが…。
「そうだな」
一応乗っておいた。味自体は普通だったが、何も言わないと愛姫になんて言われるかわからなかったからだ。それにしても美味そうにりんご飴を食べる二人。初めてっていうのもあるかもしれないが、美味いのだろう。俺はりんご飴を舐めながら思った。
「これもう一個欲しい!」
愛姫がねだって来た。俺はもちろん断るつもりだ。
「あの…、僕も欲しいです…」
……。どうしよう、二人に頼まれてしまった…。これを断ったらやばいかもしれない…。俺は財布の中身を見て、ため息をついた。
「わかったわかった、買ってくるよ」
そう言って俺はまた、さっきの店に行って二本買って来た。正直、俺は一本食べたら一年はもういらないと思えるくらいのものだ。だが、この二人には違うらしい。二本目も美味しい美味しいと言いながら全部食べてしまった。
「美味かったか?」
俺は二人に尋ねた。
「うん、美味しかった」
「はい、とても美味しかったです」
俺は特に気にもしてなかったので、感想は聞いたが、そのまま流していた。だが、次の言葉は違った。
「やっぱり、人におごってもらって食べるものは美味しいね」
「ちょっと待て、わざと俺におごらせたのか?」
少し考えればすぐわかることだった。愛姫は実は金持ちで、金は常に持っている。だから、俺は二本目まで愛姫におごる必要はなかったのではないかと思った。
「今日はそーくんがおごってくれるって言ったじゃないか」
俺はお前におごるなど一度も言っていない。鶫ちゃんには言ったが、お前には絶対に言ってない!
「お前に言った覚えはない!」
愛姫は少し考えたあとに言った。
「そう言えばそうだった…。ごめん」
いや、そういうつもりで言ったわけではないのだが…。
「まあいい、今日は全部俺が出してやるよ」
「ホント?やった」
愛姫はとても嬉しがっていた。反対に鶫ちゃんは尋ねてきた。
「本当に良いんですか?奏太さん」
「ああ、良いんだ。あのまま愛姫をほっとく俺が危ないからな」
そう、愛姫なら俺をいつでも殺すことはできるだろう。不良や大人に勝ってしまうくらいなんだから。
「じゃあ、お言葉に甘えて」
「おう」
こう言ってしまったらもうあとには引けない。もう、どうにでもなれ。




