事故
「そーく…痛っ」
俺は珍しく早起きだった。そして俺がちょうどドアを開けたときに、愛姫が俺を呼ぼうとしていたらしい。おかげで愛姫にドアが勢い良くぶつかった。そして愛姫はデコを押さえてしゃがんでいた。
「ごめん、わざとじゃないんだ…」
「う〜、痛いよ〜」
「だからごめんって」
半泣きの状態で顔を上げていた。いつもは見れない顔だった。この愛姫が泣いている顔なんて全く想像できない。だが、それがとても可愛いかった。
「うわっ、可愛いっ」
やばっ、つい口がスベった。俺は慌てて言い直した。
「お、おお、おし、朝食でも食べに行くか」
まだ瑛子が呼びに来ていないが、毎日呼びに来させるわけにはいかない。
「そーくん、今うちのこと…」
「早く行こうぜ」
愛姫が言いかけたときに俺はそれをかき消すように言った。
「どうした?」
「うちのこと…、いや、何でもないよ。早く食べ行こ」
俺の気持ちを悟ってくれたらしい。愛姫がしっかりとわかっているかはわからないが…。とはいえ、何でスベったんだ思った。可愛いと思ったのは本当だが、言おうと思ってないのに、口に出てしまうのは良くないと思う。今更だが、俺は心の中で自分の口を叱った。
「あら、今日は早いじゃない」
瑛子は朝食を食べ終わり、コーヒーを飲んでいた。
「まぁな、たまには早起きもするさ」
俺は基本的に寝坊はしないタイプなのだが、こっちの世界に来てからは一日一日にいろいろな事があり過ぎて、本当に疲れが溜まって朝起きれないのだ。
「瑛子、おはよ〜」
愛姫がデコを押さえながら歩いてきた。
「どうしたの?おデコを押さえて」
瑛子はとても気になったようだ。とても赤くなっているし…。
「そーくんがドアを開けたときにうちがドアの前に立ってたんだよ…」
どっちにも悪気はなかった。ただ、俺が今日たまたま早く起きたがための事故だ。
「そう、それはどっちが悪いなんて言えないわね」
「うん…」
愛姫は軽く頷いた。何回も言っているが、俺はわざとやったわけではない。たまたまだ。
「早く食べて学校に行こうぜ」
自分でもわからないが、いつになくテンションが朝から高かった。
「そうだね」
愛姫は席に着いて、朝食を食べ始めた。それに続いて、俺も朝食を食べた。




