ゆっくりな時が…
「奏太くん、おはようございます」
俺の名前を呼ばれた。声に聞き覚えはあるが、誰だったかわからない…。というか奏太くんと呼ばれたことがあっただろうか…。
「あっ、妹ちゃんか」
振り返ると双子の妹ちゃんが立っていた。
「私は小向伶華って言ので、伶華でいいですよ」
そう言えば、俺は双子の妹ちゃんとしか呼んだことしかなかったっけ。
「伶華ちゃん、おはよう」
「おい、ヘッポコ。馴れ馴れしいぞ」
今度は姉の方か…。全く朝からうるさい奴だ。
「何だよチビ。別に呼び方なんて何でも良いだろ?」
「そうだよ、お姉ちゃん。私は気にしないよ?」
「伶華が気にしなくても、あたしが気にするよ。こんなヘッポコにちゃん付けされるなんて、可哀想だ!」
いや、これまでも俺は妹ちゃんと呼んでいたんだが…。それに可哀想なのはお前だろ。チビって言葉に反応しなかったんだから…。
「おい、チビ。俺を舐め過ぎじゃないか?」
「お前こそ、あたしを舐め過ぎよ」
「なんだよ、やるのか?」
「やってやるよ」
早速喧嘩にまで発展した。もし今日の占いがあったら、絶対に最下位だろう…。朝から誤解されるし、喧嘩にはなるし…。
「うるさいわよ。少しは静かにできないのかしら?」
そう言ったのは倉田さんだった。喧嘩を止めてくれるのはありがたいが、もう少し気を使った言葉でも良いような気がする。
「ごめん、喜衣」
「すまんな、倉田さん」
「わかれば良いのよ」
俺たちは喧嘩を辞めて、お互いに席についた。
「奏太さん、おはようございます」
「ああ、おはよう」
任原さんが挨拶をして来た。今日の朝は一緒に登校しなかった。メイドの仕事でもやっていたんだろう。何というか、文武両道というのか、そんな感じがした。それから昨日と同じように授業が始まった。全くわからないわけでもなく、わかりすぎるわけでもない。ちょうど良い難しさだった。
「やった〜、今日も授業終わった〜」
「どうする?今日はゲームセンター巡りでもする?」
愛姫とチビが話していた。だが、愛姫は当然生徒会の仕事があるので、行けるわけがない。
「愛姫、わかってるわよね?今日は生徒会でしっかり仕事をしてもらいます」
嫌だ嫌だと言っていたが、瑛子に強制的に連れていかれた。俺はそのすきに帰ろうとしたが、任原さんに腕を掴まれた。
「いけませんよ、奏太さん。今日も手伝ってもらいます」
「それって、瑛子に言われたんだよな?」
もし自分で言っているのなら、扱いを変えなければならない。変えるというのは、俺の敵になるってことだ。
「はい、もちろん瑛子様がやれと言われたのです」
ふぅ、良かった。危うく俺の敵になるところだった。俺の中では、今のところ心が休まる話し相手は伶華ちゃんと任原さんだけだからな。あとの奴らはいろんな意味で疲れる。倉田さんは良い人だけど、話し辛いんだよな…。
「奏太、早くしなさい」
愛姫はどうしなのだろうか。瑛子が教室に戻って来て、俺を呼んだ。
「わかった、わかった。今行く」
俺は生徒会のメンバーに入ったつもりはないが、なぜか生徒会の雑用をすることになってしまっていた。




