転入
「やっと着いたか…」
そこまで長くなかったが、ついついやっとという単語が出てしまった。
「早く行きましょう」
「ああ、わかった」
わかったが、周りの視線が気になる。車が学校に着くと、一斉にこっちを向いた。そして車から降りるとものすごい視線を感じるのだ。
「あの、視線が凄いのですが…」
俺は小声でメイドの少女に言った。
「そうですか?瑛子様と一緒に登校する時はいつもこんな感じですよ。でも、いつもより若干見られてるかもしれませんね」
それは俺を見たことないからだろうか?まあ、表の世界に住んでいた奴だから、見たことないのが当然なのだが…。こうして俺は、表の世界から裏の世界へ転入してしまうことになった。ただ、転入と言う言葉であってるかどうかはわからないが…。
「ところで俺は今からどこに行けば良いんだ?」
「職員室です」
そうか、俺は転入生になっているわけだ。全く違う世界の人間なんだがな…。そのあと俺は、彼女が職員室に案内してくれると言ったので、着いて行った。
「ここが職員室です」
職員室という表札がかかっていた。もしかりに、ここが職員室でなかったのなら、何なんだって話になるが、言わないでおいた。
「俺は今から何をすれば良いんだ?」
さっきから同じような質問してばっかりだな。何か申し訳ない…。
「まずは担任との挨拶でしょう。そのあとに、担任と一緒に教室に来ることになるでしょう」
さすがメイドをやっていることだけあって、説明がとてもわかりやすい。
「そう言えば、君の名前聞いてなかったね」
「そうでした、すみません。申し上げるのが遅くなりました。私は仕原恵といいます」
「仕原さんか、これからよろしくな」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
彼女は話し終えると、自分の教室がある方へ歩いて行った。俺はこの世界に来てから、初めてまともな人に会った気がした。斬谷さんもまともなんだが、なぜか話しかけづらい。でも、あっちは仕事でやっているのだから、邪魔をしてはいけないなとも思う。その点仕原さんは同い年くらいだし、礼儀はしっかりとしているが、きちきちという感じではないので、とても話しやすかった。やっぱ俺、あいつらだけだと精神的にもたなんだなと思ってしまった。
彼女と別れた数分後に担任と挨拶をした。そして俺は、なぜか通うことになった学校のクラスに向かった。別にクラスに入る前に緊張などはしなかったが、何で俺がこんな目に…と思っていた。そしてクラスに入って自己紹介をしていた。
「磯貝奏太です。これからよろしく…」
俺が顔を上げた瞬間に飛び込んできたものは、瑛子、愛姫、双子、メガネの少女、仕原さんだった。
「マジか⁉お前ら同じクラスだったのかよ…」
俺は瑛子と愛姫が同じクラスとは聞いていたが、まさか全員同じクラスとは…。
「あら、私が頼んでこのクラスにあなたをおいてもらったのよ」
瑛子は当然のように言った。だから、お前はどんな権力してるだよ、瑛子よ…。
「それはお気づかいどうも…」
これでは学校でも家でも全く変わらないではないか!いや、むしろ学校の方が疲れる。なんたって…
「お、転入生っヘッポコじゃないか!」
こいつがいるからだ…。俺の天敵め。
「だから、俺は磯貝奏太で、ヘッポコではない!」
ここで言っておかないと、大変なことになる気がした。クラスのみんなにヘッポコ扱いされる…。
「っていうか、お前ら双子は下級生じゃないのか?」
「磯貝くん、それはこの子たちに失礼よ」
俺を注意したのはメガネの少女だった。だか、見た目はどう見ても年下だぞ?身長も低いし…、何というか、ロリって感じだ。
「さらに失礼なこと考えてるのかしら?」
ダメだ。こいつには何もかも見透かされてるようだ。
「私たちは年下に見られることが多いんですよ」
こう言ったのは、双子の妹ちゃんだった。
「見るからにちっちゃくて可愛いもんね〜。ヒナとレイは」
愛姫も、参加してきた。
「身長だけで年下と判断するのは良くないですよ」
と仕原さんが言った。確かに俺は見た目だけで双子が年下と判断した。それはやってはいけないことだったのかもしれないと俺は思った…。そのあと俺は空いていた席に座った。もちろん周りは騒がしい。考えてみれば、この世界には学校が一つしかないのに転校はおかしいな。それでざわめいてるのか、それかただ俺の知ってる奴らがうるさいだけなのか…。




