前夜
「お待ちしておりました」
そう言ったのは斬谷さんだった。机に並べてあるのは、無駄に豪華な料理だった。
「美味しそう〜」
よだれを垂らしながら愛姫が言った。とても見ていられない。これでもこいつは、金持ちの子供かと言いたかった…。
「そう?普通じゃない?」
「いや、すげぇよ。俺にとっては」
相変わらず普通と言ってくる瑛子。こいつは本当のお嬢様だと思った。俺とこいつの普通の差があり過ぎる…。いろいろとおかしい奴らばかりだなこの世界は…。
「冷めるわよ。早く食べましょう」
「そうだね。冷めたら勿体無いもんね」
「そうだな。腹も減ってることだし」
俺たち三人はケタ違いにでかいテーブルに並べられた食事を食べることにした。
「美味かったな、相変わらず」
「そうだね、種類があり過ぎて、どれから食べればいいかわからなかったよ」
「そんなの食べたいものを食べればいいだけよ」
ダメだ、瑛子は絶対好き嫌いが多いぞと俺は思った。それに、出ている料理を全て食べ尽くす愛姫も、ある意味凄いと思った。男の俺でも、全部は食べきれなかったのに…。どんな腹をしているんだよ…。
「明日は学校だわ、愛姫も行くのよ」
「え〜、面白いことがあるなら良いけど…」
学校とは勉強する場所であって、面白いことをする場ではないと思うと密かに思った。それに愛姫は駄々をこねる小学生かと言いたかった。
「学校には行けよ。一応生徒会の総務やってるんだろ?」
「一応じゃないよ。しっかりやってるよ」
学校に行ってないお前が言っても説得力がない。
「いや、来なかった分の仕事が残ってます。明日からはそれの処理をしてもらいます」
「うぅ〜」
どうやら逃げる言葉がないようだ。流石に生徒会長に言われたのだ、さすがに逃げることはできないだろう。可哀想だが、これが宿命なのだ。
「だから今日は早く寝て、明日学校へ行くわよ」
「わかったよ〜、学校行けばいいんだろ?」
「そうよ。じゃね、私は自分の部屋に行くわ」
そう言うと、瑛子は歩いて行ってしまった。
「そーくん、やっぱり行かないとダメかな?」
半泣きの状態で尋ねて来た。とても言いたくなかったが、運命だから仕方ないだろう。
「行かないとダメだな。明日は頑張って行って来い」
愛姫は俺の言った言葉でトドメをさされたようだった。肩を落として、自分の部屋の方に歩いて行った。俺もあとを追っかけるようにして、部屋に向かった。
「そーくん、おやすみ…」
「おい、おやすみ」
何とも元気のないおやすみだ。愛姫からは考えれないほどだった。そこまで学校に行きたくないのだろうか。面白いことにしか興味がないのは十分わかっているが、友達くらいいるだろうし、その友達と話していれば面白いだろうに…。俺は勝手にそう思っていた。
ふう、なんだかんだで今日も忙しかった。こっちの世界は気が休まる時がないな。いろいろと面倒くさい奴らばかりだし…。だいたい、この世界の色は何なんだ。来た時は、白と黒の世界だったが、今は白、黒、赤、青、緑、金、黄色が見えている。だいぶ最初と比べると見える色は増えたが、どうなっているんだ…?あのメガネの少女に聞けばわかるのだろうか?脱出する方法も結局分からず仕舞いだし…。まあ、殺される心配はなくなったのだから、ゆっくり探せば良いか…。って、あっちの世界では今どうなってるんだよ、俺は⁈いない状況だったら、流石に母さんとかも悲しむだろう。はあ、また心配ごとが増えた…。でも今は脱出方法がわからないから仕方ないか…。また、ゆっくり考えよう…。




