伊調家に帰宅する途中…
「はあ、本当に雛乃は面倒くさいわ」
「お前もな」
「え?私は普通に対処しただけよ」
あれが普通の対処なのか…。俺にとっては一方的にイジメているようにしか見えなかったんだが…。まあ、いつもやっていることなら大丈夫か…。俺は双子の姉のことを心配しようとしたが、あいつの性格を考えて心配はいらないと判断した。
「ところで、あの本は大丈夫だったか」
「うん、これからは気をつけてって言われたけどね」
良かった…、怒られなかったんだな…。
「ふぅ、良かった」
つい口に出てしまった。
「どうしたの?」
伊調瑛子の頭の上にはハテナマークが浮かんでいた。俺の気持ちはわからなかったんだろう。わかって欲しくもないが…。
「いや、ただ注意だけで良かったなって思っただけだ」
「ふーん、あっそ」
学校まで乗せて来た車はもうなく、歩いて伊調瑛子の家まで帰ることになった。
「はぁ〜、長いわね…」
「そうか?」
伊調瑛子の家までは、別にそこまで長い距離ではない。だが、いつも車で移動しているお嬢様には少し退屈なようだ。体力的には全然大丈夫のようだったが、やることがなさ過ぎてこの時間が嫌なようだ。
「退屈ね〜」
「そうだな」
さっきからずっとこんな事しか言ってない。
「何か暇を潰せることはないの?」
「しりとりはもうやったしな〜、うーん…」
思いつかない…。さっぱりだ。同じことをやっていてもつまらないし…。少したってから伊調瑛子が話しかけて来た。
「そう言えば、愛姫にそーくんって呼ばれてたわね」
「あー、そうだな。俺にとっては呼ばれ方なんてどうでも良いんだかな」
そう、本当にどうでも良い。他人にどう呼ばれようが、俺が反応できればすべては解決する。
「それでさ、私のことはなんて呼んでたってけ?」
「伊調瑛子だけど、それがどうした?」
なかなかフルネームは長い…。
「しょうがないから、名前で呼んで良いわよ」
「そうだな、俺も長いなと思ってたから良い機会だな」
わざわざ苗字をつける必要もない。姉妹がいるわけでもないし、同じ名前の奴がいるわけでもない。
「それで私はなんて呼べばいいの?」
「何でもいいよ。俺が反応できればな」
「そう、なら奏太って呼ぶわ」
いきなり名前だけかよ!くんをつけるとかしないのか…?
「俺はお前を…」
「瑛子で良いわ。名前で良いって言ったもの」
「そうか」
名前だけになるとなぜか親近感がわく。誰でもそうだろうが、初めのうちは名前で呼び合うのが何だか恥ずかしい…。
「奏太、ごめんなさい」
「何のことだ?」
いきなり謝られても何に対してかわからない。
「その…、私の過去を重ねてあなたを殺そうとしたこと…」
「わかったって。いい加減その反省の言葉は飽きた…」
こいつは何か事あるごとに謝ってくる。流石に俺も聞き飽きたし、これ以上言われると逆に怒りそうだ。
「もうこれ以上言ったら逆に怒るからな」
「わかった…」
それから俺たちは何も話さずに瑛子の家に向かって歩いて行った…。




