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反転世界  作者:
12/66

条件

「そーくん、おはよ〜」

なぜか部屋の鍵が開いていた。そして愛姫が、俺のベットの上に座っていた。

「って、おい!どけよ」

俺は愛姫をベットから突き落とした。

「痛った〜、何するのよ〜」

「それはこっちのセリフだ!」

俺は聞きたいことがたくさんあった。あり過ぎて何から言えば良いかわからなかったが、思いついたまま言った。

「何で俺の部屋にいるんだよ⁈」

「なるみんが開けてくれたの。だって、もう10時過ぎてるよ?」

はぁ?なるみん、誰だそれ ?聞いたことない名前に少し戸惑った。

「起きましたか?」

「あ、なるみん」

俺はなるみんと呼ばれた人を見た。その人は昨日、俺たちの部屋を手配してくれた人だった。

「おはようございます」

「あ、おはようございます…。あの、なるみんって…?」

俺は恐る恐る聞いてみた。

「はい、わたくしは斬谷稔美と申しますので、名前から取ったのでしょう」

「そ、そうですか…」

この人も災難だなと俺は思った。

「あなた様は磯貝奏太様ですよね?なので、奏太様とお呼びしてもよろしいですか?」

「あ、はい」

人生で初めて様をつけられた。何か不思議な気分だった。

「奏太様、朝食はもうできておりますので、食べにいらして下さい」

「すみません、すぐ行きます」

昨日の夕飯といい、泊めてもらったことといい、そして朝食といい、何とも優しい人だった。

「そーくん、ご飯美味しかったんだよ〜。早く行ってきなよ」

「そうだな…」

俺はベットの横に出してあった服に着替えた。愛姫に聞くと、服は斬谷さんが用意してくれたようだ。着ていた服はボロボロになっていたから俺はありがたくもらっておくことにした。


「遅かったわね」

朝食を食べに来ると、伊調瑛子が座っていた。本を片手にコーヒーを飲んでいる。

「ああ、昨日はいろいろあり過ぎてたし、こっちに来てからは全然寝てなかったからな」

寝てなくても、気絶していた時間が少しあったので、少しは楽だったが…。

「えーっと、あの、その…。いろいろとごめんなさい…」

「は?何のことだ?」

いきなり謝られたので、何のことかさっぱりわからなかった。

「だから…、その…、あなたを殺そうとしたこと…」

「ああ、それか。昨日和解したからもう気にしてないよ。過去が過去だけにしょうがないから」

「ごめんなさい…」

本当にこれまでのことは何だったのかと言いたいくらいゆっくりとした時間だった。すると突然、伊調瑛子が言った。

「磯貝奏太。あなたをこの家に住まわせても良いわよ」

「?」

さっぱり言っていることがわからん。住むって…、この家にか?

「えーっと、どういうことでしょうか?」

「だから、これまでしてきたことの償いというか…」

伊調瑛子は俯いて言った。なるほど、根はいい奴なんだな。確かに今の俺は、住む場所もなければお金もない。殺されなくても、餓死しそうだ。そこを救ってくれると言うのなら、こっちとしてはありがたい。だから、この誘いは乗るしかない。

「じゃあ、お言葉に甘えて…」

「ただし、条件があるわ」

ですよね〜、そう来ると思った。

「この家では私の言うことに従いなさい。主に雑用をやらせるけど」

くっ、どうする俺。雑用をするか餓死するのを選ぶか…。そんなの決まってる!

「雑用をやらせてもらいます…」

「いい返事だわ」

「あ、俺からも頼みがあるんだが良いか?」

俺は愛姫のことが心配だった。このまま家に戻ったらどうなってしまうのかが…。

「愛姫も住まわせてくれるか?」

「え、煌田愛姫も?」

当然と言えば当然だろう。俺は家がないが、愛姫は家がある。それに、俺とはいろいろと違う。それを俺は無理にオッケーとしてもらおうとしているのだ…。彼女は少し考えたあとに言った。

「しょうがないわね。いいわよ、許してあげても。でも、その代わりに条件はつくわよ、あなたと同じのね」

クスリと笑いながら言った。これは俺自身が決めることではない。愛姫本人が決めることだ。俺は愛姫も含めた三人であとで話をしようと言った。


「何?そーくん、話って?」

愛姫がやっと来た。呼んでからだいぶ時間が立っているのだが、こいつは気にしないのだろうか…。

「遅いわよ、煌田愛姫。何分待ったと思ってるの?」

全くその通りだ。本当に待たされた。

「ごめんごめ〜ん」

どっからどう見ても謝る気ゼロだ。

「この話はなかったことに…」

伊調瑛子が言いかけた瞬間、俺はやばいと思った。とにかく直感でこの言葉を続けさせるわけにはいかないと思った。

「おーし、本題に入ろうぜ」

伊調瑛子が言い終わる前に何とか本題に戻そうとした。食い気味にいったので、伊調瑛子は少し不満げな顔をしたが、本題に入ることができた。

「じゃあ、本題ね。煌田愛姫、あなたをこの家に住まわせても良いわよ」

相変わらずの上から目線。何とも強烈だ。

「愛姫、お前は今親と喧嘩中なんだろ?その間だけでも良いから住まわせてもらえよ」

俺は愛姫を気遣うように言った。

「ん〜、そーくんがそう言うなら…」

何なんだ…、この俺への信頼は…。俺が何か良いことでもやってあげたか…?考えてもさっぱりわからない。

「そーくんって誰?」

やっぱ来た、その質問。俺が質問した時と全く同じだ。

「俺のことだよ…」

俺は自ら名乗り出た。

「そう、あなたのことなの…。なかなか、残念はニックネームね」

とても嫌な言い方をされた。自分でも特別気に入ってないから別に良いのだが…。

「残念とは何だよ!最高の間違えじゃないの?」

「意味はそのままよ。もしかして頭まで、残念なの?」

あーあ、喧嘩が始まったよ。本題はどうするんだよ…。俺は呆れて見ていた。そこへ斬谷さんが来た。

「お嬢様、本題は大丈夫でございますか?」

おお、良かった。ここで唯一話のわかる斬谷さんのお出ましだ。

「そうだったわ。あなたを住まわせる代わりに条件があります」

「条件?」

俺としてはこのやり取りは二回目なので見たくはなかったが、仕方がない。

「そう、この家で雑用をしてくれれば、住まわせてもいいですよ」

「雑用か〜」

愛姫は少し考えて答えた。

「いいよ。どんなことでもかかって来い!」

雑用が面白いと判断したのかわからないが、とにかく良かった。これで、俺と愛姫は伊調家のお世話になることができた。


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