豪華な夕食
「お嬢様。夕食の準備ができました」
「わかったわ。すぐに行きます」
どうやら夕食ができたらしい。
「あなた方の分もありますので、どうぞ食べて行って下さい」
「あ、はい。ありがとうございます」
「やったー、ご飯だよ。ご飯」
何だこいつは。異様にテンションが高い。気絶させられた時にでも、頭をやられたのか?そう思いつつ、俺は伊調瑛子について行った。
「さあ、早く食べましょう」
食卓には何とも豪華な食事が用意されていた。今までに見たことのないような料理ばかりだった…。
「何してるの。早く座ったら?」
料理に気を取られていて、立ったままだった。
「うち、こんな料理初めて見た」
そりゃあそうだろ。何たって初めて会った人に、何かわからないほどの料理を食わせたんだから…。
「俺も初めて見たな、こんな料理…。」
「ふーん、そうなんだ」
全然興味ないって感じで言われた。こんな料理を毎日食べている方からしたら、何言ってるのって感じだろう。
「やばっ、うめぇ!」
「うん、こんなに美味しいの初めてかも!」
「まあまあね」
それぞれの感想が出た。やはり凡人とは格が違うのだと実感してしまった…。
何だかんだで、俺と伊調瑛子は和解ができた。それに意外と良い奴ってこともわかった。まあ、過去が過去だけにしょうがないことだったのかもしれないなと俺は思った。
「ねぇ、あなた達今夜は家に泊まっていったら?」
「良いのか?」
「うちとしてはちょー助かる!いつも野宿だからね!」
泊めてくれるのにも驚いたが、野宿という単語にも驚いた。
「そう、良かったわ。稔美さん部屋の手配をお願い」
「承知しました」
近くに立っていた女性が返事をした。
「なあ、野宿ってどういうことだ?」
「うち、両親と喧嘩してるの。だから家に帰りたくないんだよ…」
「家出ってことですね」
彼女は頷いた。それにさっきまで高かったテンションがとても低くなっていた。家族の話はしたくないんだと思い、それ以上聞くのはやめておいた。
「で、何で表の世界の人は家に帰らないの?」
はぁ、こいつは馬鹿だ…。基本的なところが抜けている…。
「あのなぁ、俺はもともとこの世界の住民じゃないんだよ。だから、家なんてこの世界にあるわけないんだよ」
「そうですよ」
「え?そうなの?」
「そうなんだ」
全く、街のことには詳しいのに基本的なところは抜けているとは…。残念な奴だ…。
「お部屋の準備ができました」
「そう、ありがとう稔美さん」
泊めてくれる部屋が用意されたようだ。これだけ広いのだから、部屋もたくさんある。というか、探検して見つけた。何でそんなにあるのかわからなかったが…。
「部屋に案内してあげて」
「わかりました。お二人はわたくしについて来て下さい」
俺と赤髪の少女は女性について行った。
「ここが、お部屋になります。ご自由に使って下さいませ」
「ありがとうございます」
「ありがと〜」
すごく広い…。高級ホテルにでも来たかのようだ。各部屋にテレビやトイレ、風呂まであるらしい。
「ねぇ、表の世界の人、こっちも見てよ。広いよ〜」
「おお、広いな」
同じような作りなので、いちいち反応するとこっちの身が持たない…。
「それより、表の世界の人ってのは何とかからないか?」
「あ、そういえば名前聞いてなかったね」
「それもそうだな」
俺は何回か聞いているから何と無くわかるが、こいつは俺の名前を知らないだろう。
「うちは煌田愛姫。愛姫って呼んでいいよ」
「俺は磯貝奏太。よろしくな、愛姫」
今更よろしくは変だと思ったが、一応礼儀として言っておいた。
「うん、よろしくそーくん」
「そーくん?」
いきなりニックネームかよ。びっくりしてしまった。
「奏太くんだからそーくん。良いセンスしてるでしょ?」
全くしてない。というよりそのままだから、何も言えない…。
「ああ。それより今日は疲れた。俺はもう寝る」
「え〜、つまんないよ〜」
「また明日な」
俺はドアを閉めて、鍵もしっかりとかけた。外で何か言っているようだが、全然わからなかった。愛姫とは向かいの部屋なので、壁を叩かれることもないだろう。とにかく今日は疲れた、寝よう…。




