白と黒の世界
あー、えーっと俺はどこにでもいる普通の高校生。普通の高校生だったはずだ…。のんびり過ごして一生を終えるはずだったのだ…。
「奏太、ご飯よ〜」
「わかった〜」
「早くしなさい。学校に遅れるわよ」
「はーい」
今日はいつもより少し遅めの起床だった。学校には余裕で間に合うので、あまり気にすることはなかった。ご飯を食べる時間も少し遅めになった。だが、ごく普通の朝だ。あることが起こらなければ…。俺はご飯を食べ終わったので。学校に行く支度をして、学校に行こうとした。
「お、占いやってる。双子座は何位かな〜?」
今日のアンラッキーさんは〜?双子座の皆さんです………。
「ああ、見なければ良かった…。母さん、行ってきます」
「気をつけてね」
「うん」
俺は玄関を出で学校に向かった。
学校までの距離は徒歩10分とかなり近い。俺は自転車を使うことを嫌っているので、学校には毎日歩いて行く。今日も時間は少し遅かったが、いつも通り歩いていた。そうしたら、前を歩いていた黒髪の少女がいきなり消えた…。
「は?消えた⁈」
思わず声を出してしまった。だが、そこにいた少女は跡形もなく消えていた。俺は慌てて消えた場所まで走っていった。周りを見ても特に異常はない。どうやって消えてしまったのか….。考えても全くわからない。そしてもう一歩踏み出した瞬間………
「うわぁぁぁぁぁ」
何かの穴に落ちているような感覚に陥った。目は開いているのかいないのか、それすらわからないくらい真っ暗だった。
どれくらい落ちていたのだろう。そもそも落ちていたのかがわからないが…。やっと明かりが見えてきた。小さな明かりはだんだん大きくなり、ついに全体が見えるようになった。そこは、見る限り普通の世界だった。ってそんなこと考えてる場合じゃない。今、ことのときも俺は落ち続けているのだ。
「ちょっ、ちょっと待てぇぇぇ」
そう、このまま落ちると地面にぶつかって死ぬ。やばい、やばいやばい。今まで車にはねられたり、二階から落ちたりしても何とか生きていたが、今回はその比ではない。確実に死ぬ。もうダメだ…、地面にぶつかる…。さよなら俺の短い人生…。
ガツンッッッッ
「あーー、ゔぅぅぅ」
がっつり地面と正面衝突した。
「ゔぅぅぅ、痛ってぇぇぇぇぇ。死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ」
俺は死んだんだ。死んでもやっぱり痛いものは痛いんだ…。そのまま少しの間は、あたりを転がり続けた。だが、目は見えているし、痛みとかを感じるということは…。もしかして…。
「あなた、そこで何してるの?」
突然声をかけられてびっくりした。慌てて声の聞こえた方を見ると、そこには髪の長い綺麗な少女が立っていた。
「あの、君は誰?って言うか、ここはどこ?天国?それとも地獄?俺は生きてるか?」
「いっぺんに質問しないでよ。それにこっちが質問したんだから、先にこっちの質問に答えるのが普通でしょ?」
「あ、ごめん。えっと、俺は磯貝奏太。君は?」
「へ〜、奏太って言うんだ。私は伊調瑛子」
「瑛子か。名前も見た目と同じく綺麗な名前だね」
「ごめん、そういうのいらない。で、なんだっけ?」
褒めてあげたのにすっぱりと切られてしまった。なんて奴だ。
「ああ、まず第一に僕は生きてるの?」
「あなたって馬鹿なの?私が天使か何かに見えるの?」
俺にしたら今まで見たことないくらいの綺麗さだった。だから天使と言っても過言ではない。だが、ここはやっぱり、
「いや、天使ではないよね…。じゃあ、俺は生きてるんだな」
「そうよ。あなたは生きてる」
「二つ目の質問。ここはどこ?」
「ここは地球よ。あなたが知っている地球とは違うかもしれないけど」
「ちょっ、これが地球?どう見ても違うだろ」
あたりを見渡しても、そこは白と黒の世界。これを地球とは言えないだろう。空らしきものや街らしきものはある。だが、やはり白と黒でできている。
「どうしたの?何か私、間違ったことでも言ったの?」
「いや、間違ったもなにも、白黒の世界が地球なんて間違ってるだろ」
「そう、あなたにはそう見えるのね」
「お前は白黒には見えないのかよ」
「私にははっきり色がついて見えるわ。例えば、この草は緑よ」
地面に生えている草をとって見せた。でも、僕には白にしか見えない。どうなっているんだ、この世界は?いや、今はそんなことどうでもいい。一番気になっていることを聞こう。
「最後に、歩いていたらお前がいきなり消えて、見に行ったらこうなったんだけど…」
「あなた、私を追ってきたの?」
「いやいや、追ってきたわけではないんだけど…。人がいきなり消えたら追っかけるでしょ?」
「そう、やっぱり私の後を…。あなたには話すしかないみたいね」
この子は何を言っているんだ?話すって何を?俺はとても嫌な予感がした…。
「ここは地球の裏側。と言っても地球なんだけど。そして、ここには表の人間をいれてはいけない。よってあなたを殺します」
「ちょっ、ちょっとタンマ」
「何?遺言でも残すの?」
「違う⁉地球の裏側ってどういうことだ?それに俺は殺される?」
「あなたが知っている地球の裏側ってことよ。あなたが表の人間。そして私は裏の人間。ここまでは理解できた?」
「あ、ああ。一応」
頭の中は混乱していたが、話を進めたかったので、今はそう答えておくしかない。
「続きいくわよ。表の人間を裏の世界に連れて来ることはやってはいけない禁止事項。来てしまった表の人間はここの世界で殺される」
「な、何で殺されなきゃいけないんだよ?」
「ここの存在を知ってしまったからよ」
「知られたらまずいことでもあるのか?」
単純に知っただけで、殺されるなんて理不尽だ。来たくて来たわけでもないのに…。
「地球のバランスが崩れる。そして、地球は破滅してしまうのよ」
「何でバランスが崩れるんだ?」
「それは人間の心理が関係するわ。人間は知らないこと、わからないことがあると調べようとする。例えそれが、全員ではなくても。この世界のことが表の人間に知られると、ここの人間は生きていくことができないの。だから、あなたを殺すしかないの、ごめんなさい」
「いやいやいや、俺は死にたくないし、元の世界に戻りたい。対していいこともなかったけど…」
「いいことがなかったのなら、なおさら死んでも同じじゃない」
自分でも言う言葉を間違えたと思った。ここは嘘でもいいことがあったと言うべきだった。すると彼女ははぁっとため息をついて言った。
「仕方ないわね。契約すれば、殺すのを明日にしてあげる。流石に私も理不尽だと思ってるしね。契約内容は、この世界の記憶をなくすことよ。明日までに表の世界に戻れたらだけど…、良いわね?」
「本当か?あっちにいった後で殺されたりはしないよな?」
「それはないわ。契約は絶対よ。それより早く脱出方法でも探すと良いわ」
「契約はしないのか?」
「そうね。私の手を握って」
彼女は手を俺に向けて差し出した。白くて綺麗な手だった。俺はその手を握った。特に何かが起こったわけではなかった。
「契約完了よ」
「え?何か起こったの?」
「あなたが私の手を握ったでしょ?それでもう契約はできたのよ」
「こっちの世界は何かと変なことばかりだな」
「そんなこと言ってないで、早く探しに行ったら?」
「そ、そうだった。と、とにかくありがとう」