13年後
わたしが最初に理解できることは調節者と名乗った謎の男によく似た男に会ったことだった。
理解できないのは彼にあったと言う娘の話しだ。
話しを聞いて行けば確実な矛盾の生じる話だが、娘の身に起きたことと、出会った人間や生き物たちに、わたしが持っていた調節者の傘とトレンチコート、それに娘が持っていた彼の上着は矛盾を解決する証拠だと言えた。
矛盾を解決すると同時に彼の存在の証明の否定は、13年と言う時を経過し、成長した娘の存在を否定することだ。
正確には時間は後時から経過して12年と3カ月以上、桜の季節が終わり、庭の生い茂る木々が華やかな彩りから、豊かな緑へと変わること、春と夏の中間的季節が始まりだ。
眼が覚めると暑いとも寒いとも言えないが、夏を迎えかける心地よい季節の朝で、近くでは鳥のさえずる声が聞こえていた。
10年以上と言う長い時間が経過した中で、わたしはあの時おなかにいた子を産み、育て、そのために働いていて、この日も荷物を取りに一時的な上不規則な仕事の証明とも言える朝帰りだった。
娘に申し訳ないと言う気分もあるが、働かなければ生活もできない事実も存在し、娘も幼い時から理解を示す成長をしてくれ、わたしはと言えば、荷物を取りに来ただけだが、娘の部屋に向かっていた。
絵にかいたような遅刻をすることはないが、わたしに似て朝が苦手で、調度起きる時間だが目覚ましなどを鳴らした後二度寝する光景が考えるまでもなく浮かんだ。
思った通りで、部屋に向かう途中室内から携帯電話からと思われるが少し前に流行したと思われる歌と、目覚まし時計と思われる「森のくまさん」が聞こえたが、ドアを開ける寸前に聞こえなくなった。
開けて寝ている場所を見ると後少し、まだ大丈夫と言うのが絵に描いたようにシーツで身体を覆い隠し丸めて眠っているのがまるわかりの姿が見えた。
「ぅ? ん~?」
開いた音が聞えているのか、起きようとしているのか、中で動き回っているのが、見え、親のわたしが見る限り、幼い時からあまり変わってないなと思った。
「起きなさい! かなちゃん!」
「―――うんみゃっ?」
あまり変わっていないように感じるとは言え、12年と言う歳月は娘を十二分に成長させ、現在はと言えば中学生になって数か月と言う時で、少しずつだが、大人への成長を順調に進めていた。
立派とまでは言えないし、あの謎の男に返したような生活まではできていないが、わたしは全力を尽くしてきたつもりで、親ばかとも言われるかもしれないが、いい娘に育ったと思っているし、これからも期待し、育てていくつもりだ。
勢いよくシーツをはぎ取って起こす中で、娘はまだ起きる気なんてなかったと言うか、シーツも巻き込んで眠っていたようで、少し奇妙な声を上げて姿をあらわした。
投げ出されて転倒した状態で、両足がわたしの立つ場所の反対側の壁に当たってまっすぐに上を向き、胴体こと顔はわたしから見て逆を向いていた。
「―――お母さん?」
「そう、あなたの母親、空野彼方の母親、空野聖歌のお帰りです。ただいま!」
眼は寝ぼけているようには見えず、開いているが寝ぼけている状態が続いているみたいだが、わたしを認識したようで、お母さんと聞く中で、わたしは間違いないと言うように返し、ただいまと言うのも忘れなかった。
冗談のような名前だが、娘の名前は彼方で、わたしはあの時に聞いた言葉を思い出して、突発的かもしれないが、彼方の名前を決めてしまった。
「―――お帰り―――」
逆さを向いた身体を直し始め、座り直しと言うようにわたしの顔を見ると、眼も覚めた表情でわたしがただいまと言ったようにお帰りと言うある意味現状に見合う言葉を返してきた。
「朝帰り?」
「荷物取りに帰った! ついでに起こしに来たの~」
「わ?」
壁にかけている状態の数か月分しか着た時間の経過していない中学校の新しい制服を見た後、考えてみればと言うように質問する中で、わたしはおどろくのも無視し、彼方に抱き付き頬ずりした。
部屋の中はわたしの判断だが年齢不相応に質素な部屋だが、整頓され、きれいで、壁にかけている中学校の制服はこの部屋に彩りを与えていると思った。
「何? 突然帰ってきて迷惑? うれしくない?」
「―――う、うれしいけど―――」
自分でも漫画みたいな行動だと言うことは自覚しているが、反応の悪いと言えば失礼だが、冷静な彼方に表情を一気に変えて不満かと言うように顔を近づけたままで聞き、彼方は違うよと言うように返した。
「―――そ、それで―――?」
「―――なに?」
うれしいならいいと言うようにわたしが顔を話す中で、彼方は事情はわかったけどと言う反応で、わたしはと言えばほかに何かあると言うように聞くが、彼方はなんと言えばと言うような表情をしていた。
「―――ま、まぁ、起きたし、眼も覚めたし、降りてごはんでも食べよ―――」
「ご飯作る!」
別に何無いと言うように彼方は動き出す中で、わたしは彼方の言葉を聞き取り、迷わず行動に出ると言うように返した。
「―――ぁ? いいよ? お母さんいそ―――」
「よしね! 待ってなさい!」
聞こえなかったわけでもないし、いいよと言う意味が違うと言うのも理解しているし、荷物取りに帰っただけだが、わたしは言うとおりに待っていてと言うように返し、部屋を飛び出した。
「―――ぉっ!? いっだ!?」
勢いよくと言う状況で、飛び出す中でわたしは部屋の外に置いていて中に重いものが入っていて動かないダンボールをあやまって蹴ったと言うか足をぶつけた。
「―――もう? しょうがないな?」
「―――いっだーっ?! 痛いっ!? いだーっ!?」
「―――お母さん? 大丈夫?」
音は大きく、ドアも開けたままで、間違いなく彼方に聞こえた状況で、ぶつかる中で彼方の言う通りなしょうがないと言うような声が聞こえる中で、わたしはぶつけた痛みで暴れていた。
起こされた彼方はと言えば、わたしが暴れている中で部屋から顔をだし、痛いのはわかるし心配だけど、朝から騒ぐのは近所迷惑だよと言うように言った。
母こと、聖歌の仕事は不規則で、わたし彼方の朝は普段はと言えば静かと言えば変かもしれないが、目覚まし時計と携帯電話のアラームで始まり、少しすれば起きて軽くだが食べて、学校に行くのが日常だ。
普段の食事はと言えば簡単なもので、気が乗らない場合は食べずに寝ているが、現状はと言えばあれから十数分後のことで、聖歌の造った朝ごはんを食べることになった。
食べることになったが、広いシステムキッチンから換気扇を回し始めて少し減ったが焦げ臭いにおいと煙がまっていて、換気扇の独自の回転音の下に存在する食べ物は散々なものだった。
「―――わたしなんて、わたしなんて―――」
「まあまあ―――?」
「わたし最悪だ~?」
十数分ほど前は未調理前の普通の食べ物が、原形不明とまでは言えないが、こげの塊になって皿の上に一応食べ物ですよと懸命に主張するように置かれていた。
絵に描いたような失敗をするほど聖歌は料理ができない人間で、失敗したと言うように机に顔を伏せ、わたしがはげまそうとするが、聞く耳持たずと言う反応だった。
不幸のどん底に落ちたとまでは言えないが、派手にと言えば変だが、暴れて落ち込んでいる状態で、わたしはと言えば、気にしないでと言うように言いながら口に入れた。
食べたのは黒いが少し黄色い部分が見られると言うか、正確には一般的にスクランブルエッグと呼ばれるもので、素材の味は一応少しするが、大半は焦げで、食べない方がいいと言う苦々しい味だった。
ほかの食材も存在するが、似たような状態なのは言うまでもない話だ。
「お仕事がんばっているんだから―――」
「もうやだ~? もうやだよ~?」
素の性格なのか、演技なのか、娘のわたしが言う資格はないと思うが、子供のような反応で、わたしはそんなことはないと言うように言いかける中で、首も大きく振り少し暴れていた。
「かなちゃんに迷惑かけてばっかり~?」
「おいしかったから。わたしも高校生になったらバイトするから。」
「ありがとうかなちゃん。大好き~!」
あなたは全然迷惑はかけていないし、立派な母親ですとも言っても聞きそうにない状態で、自虐的な反応は続き、わたしは食べ終えると言うか、口の中に押し込み終えてそんなことないと言うように返す中で、聖歌は感謝した上抱き付いてきた。
「―――もうすぐ学校行くから。それとお母さん荷物取りに帰ったんでしょう? 仕事だ―――」
「やだ~? も~ちょっと~? かなちゃん遅刻してもいいから~? 休んで一緒にいよう~? お母さんのこときら~い?」
会話だけ聞けばどちらが親か少しわからなくなる状態で、わたしも学校に行く時間が近づいているで、また頬ずりをし出す中で引き離そうとすると、親が言うと少し不味いことも平気で口にしていた。
「それとこれとは別。」
「かなちゃ~ん?」
「大好きだから。愛してるから。我慢して、いってきます。」
本気で休むと言うことはないが、言うといじめでも受けているのかと言うような別の行動にも移りかねないし、わたしは少し冷たく返し、聖歌を引き離した。
待ってと言うようにわたしを呼ぶが、わたしは気持ちはわかるけどと言うように返し、追いかけてくることもないと思うし、部屋に向かうことにした。
聖歌が家に帰ってこそ来たが、わたしたちと言うか、わたしにとっては何気ない日常で、わたしはこの時この日が皮切りになるとは思いもしないと言うのが当然の心理だった。
手を伸ばして娘を呼ぶと言うような迫真の演技とも言えたが、彼方はわかったからと言うようにわたしを放置してリヴィングを出て行って、食事の準備を整えた時と同様と言うか、5、6分ほどと言う少しの時間が経過していた。
学校へ行く準備を整えている状態で、後少しもすれば制服を着た彼方がわたしに顔を見せに来ると言う中で、わたしは顔を下に向けたままで、彼方は見ていないし、わたしも鏡を見たわけではないが、実際は疲れ切って死んだような眼と顔をしていると思った。
仕事が不規則で忙しくで、身体的に負担が多いことは事実だが、実際現実問題わたしが考えているのは彼方のことだった。
小学校が私服で、制服になじまないと言うか、着慣れたがある意味着慣れない服を着るし、慣れ親しんだキーホルダーを中学校用の新しいバッグに移し、最近の携帯の進歩と言い、見えないが新しいものに手間取っている気がした。
眼を軽く閉じると、着替えに手間取っているかもしれず、バッグの中身を再確認するような光景が頭に浮かぶが、年頃にもなってきているし、わたしが手を出し指図するのも少し不味いとも思う頃で、手を出しづらかった。
5体満足で生まれ、健康に育ち、いじめや成績、友人関係などの学校の問題も際立ってなく、親であるわたしもシングルマザーだが、1人で2人分、夫婦以上の価値を持てるように努力をしているつもりだ。
妊婦の財産を持ち逃げした男に未練と呼べるものは全くなく、正当な裁判まで起こしてこの一軒家も手に入れて、養育費も払わせ、払わないと給料を差し置させる誓約書も書かせたし、現状の収入も安定して、表向きにはシングルマザーだが幸せな家族だ。
「―――――」
絵に描いたとまでは言えないが、わたしが考えていたのは、彼方のことに関係して、13年前に起きたことで、思い出していた状態の中で、彼方が準備を終えたのか、階段が下りてくる音が聞え、リヴィングのドアが開く音が聞えた。
「―――お母さん。いってきます―――。」
「―――――ん―――」
「―――仕事、がんばってね―――?」
彼方が来たんだなと思い、わたしは手だけ上げて元気だよと言うように見せると、彼方はわたしもう行くよと言うように言い、わたしも言葉は出ないが、声を返すと、彼方はお休みと言うかのように言ってドアを閉めた。
「―――」
歩く足音が聞え、玄関の扉の開く音としまる音も聞こえ、彼方が登校した中で、わたしは顔を起こした。
彼方がわたしの真意にどこまで気づいているかわからないが、わたしは考えるだけむだだし、仕事で荷物だけ取りに来ていたし、後で考えようと言うように、眠気を飛ばすためにテレビの電源を入れた。
『大使館襲撃 4人の邦人が死亡』
『―――で起きた日本大使館の襲撃事件は、反民主主義の過激派組織、『レッドダガーズ』を自称するテロリストの犯行で、犯人は現在も逃亡中で、5人の邦人が死亡、20人以上の―――』
「中東と言い、極東のここと違って、アフリカあたりもますます騒がしくなって来たわね―――?」
電源を入れられ、眠気覚ましにボリュームを少し高めにしたテレビの画面に映ったのは朝の定番とも言えるニュース番組だった。
夜に放送されるバカ見たいな女のいら立つようなむだに高い声ではなく、品がよく低く響き渡る声の男のアナウンサーが冷静な口調ながら、画面に表示された数日ほど前の物騒なニュースの続報を話していた。
仕事柄国際情勢の情報が必要で、なかったわけではないが、最近はアフリカの発展途上国などの問題が日本にも大きく伝えられるほど激化し、ついに大きなことが起きたなと言うようにわたしは口を開いてしまっていた。
『―――レッドダガーズはインターネットのサイトに犯行声明を残しており、反民主主義を進めるにおいて日本を『米国の合理主義に毒された極東の機械猿ども』とも非難し、鉄槌を下すしと―――』
「―――――」
『―――新しい情報です。亡くなった人間の中には、現地に仕事で訪れていた報道カメラマンとして最近有名にもなった望月雷也さんもふくまれていることが明らかになり―――』
読み上げている彼がどこまで奥深い事情を知っているか知らないが、冷静に読み上げ、わたしが見ている中で、即座に入って来た新しい情報も伝えていた。
「―――間違いなく死んだ。あなたはいったい何者だったの? 調節者とは何を意味しているの?」
『―――続きまして、2日前に発見された、女性の白骨死体が見つかった事件について新展開で、白骨化した時間が―――』
朝の一時と言う時間の中で、わたしはこれから話すことに置いて、この時無意識と言うか、必然的にと言うか、思い出したように肝心なことを口にしていた。
彼に似た男にわたしはあったと表現して、これから起きると言うか、これから話す中で、彼は姿をあらわすが、わたしの言う通りで、彼は死んでいる。
死人に口なしと言うが、テレビでも同様と言え、わたしの求める答えに対し、テレビはわたしから見て意味のない言葉を話し続けていた。
家を出て登校を開始したわたし彼方は、いつも通りと言うように学校に向かっていた。
歩き出して5、6分後、朝食が原因だと思うが、胃に多少不快感を持ち、少しして心の中でだから食べるなと言うのを抑えていたのが吐きだされるかのように少し大きいゲップが出た。
原因もわかっているし、だれか見てなくてよかったなと言う状況で、わたしはと言えば昼は普通の物を食べようとも思った。
「―――ぁ?」
少し前に小学校を卒業したかと思えばもう中学校の中学生で、入学式なども終わり、桜の舞い散る華やかな季節も終わり、登下校の道にも慣れ始めていた朝の一時だと言え、わたしは少し先に同級生の姿を見た。
「道―――」
みちと書いて道と読む男の子と言うか、男子で、苗字は神宮寺、わたしの幼馴染で、わたしと同じ中学校の、無論男子のだが制服を着て前を歩いていた。
仲もいい方だが、それは置いておき、わたしと同じと言うか、大きめの物を着て、小学校の時の私服と違い、少し似合わないと言うか、幼いころから知っている身として似合わないように見えた。
「―――枝葉さんも―――」
前を歩いているが、右隣には道の近所に住む牧野枝葉と言う現在大学生の女性がいて、2人の顔を見ると真剣な表情で話し合っていて、わたしは遠目に見て少し聞き耳を立てて話を聞いた。
「―――――から、―――ですよ?」
「―――けど、―――なら、―――で、―――」
「―――も言ってますが―――」
年齢差こそあるが、枝葉さんも一緒によく遊ぶこともあるが、2人は家の事情の関係と言う少し複雑な大人の事情も存在するようで、割って入れると言う雰囲気が感じられた。
わたしは無意識に見られるとまずいとなんとなく思い、電柱越しに隠れるように動いてから見だした。
会話は何を話しているか聞き取れない状態で、わたしはと言えば、道や枝葉にも事情があるし、わたしが割って入って意見を言うものではないとも考えだしていた上、これから起きることで考える思考も飛んでしまった。
話し手と表現される人間は数多く存在していて、わたし、霧島真矢もその1人で、わたしは彼方の幼稚園とか言うかなり幼い時から言葉通りの本当の幼馴染でもあり、わたしも同じように同じ道を登校していた。
桜も終わったなと言う時期で、中途半端で、早くもっと暑くなってプールとか、それに山の川で泳いでとか、それが終わったら食欲の秋でおいしいもの食べてとか言うような、ある意味早いと言うか、不毛な思考をしていた。
不毛な思考と言えばそこまでだが、楽しみも少ないし、遊ぶだけ遊んで勉強するだけして、寝るだけする以外ないことも現実だ。
「―――おはよ? 真矢?」
「あ? おはよ? 桃子?」
幼馴染で学校へ行く道も同じで、近くに住んでいるとは言え、登下校も時間も違っているし、この日も彼方の家のコールを鳴らしてみると反応なしだった。
母親こと、聖歌に似て少しほかの人と合わせるのが苦手な部分も存在し、仕方ない1人で行くかと言うように歩いていると桃子が声をかけて来た。
普通はももこと読むのだが、とうこと読み、わたしと彼方、それに桃子で基本的に3人グループになっている。
「―――ぁ、彼方?」
「ぇ? あ? 本当だ?」
一緒に行こうかうんいいよと聞くことなく一緒に歩き始め、彼方もいればいいなと思う中で、不意に桃子が見てと言うように先を指さすと、言うとおりに彼方の姿が見えた。
「―――」
「―――」
先に行くか、遅れているか、追いつくか、小学校の時から現在でも可能性が多く存在するが、彼方はと言えば電柱越しに先を歩く道と枝葉を見ているみたいだった。
道と彼方は世にいう微妙な関係で、お互い嫌いではないが、好きとか言うのは恥ずかしいと言うのがだれが見てもわかる雰囲気で、彼方は道を見て、枝葉さんとはどうなのかなとか言うように見ているように見えた。
道はまだ伸びるかもしれないが背が少し低いが、男としてはいい方だし、顔もいいと思うし、幼馴染のわたしが知っていて、悪く言うが、堅物な部分もあるが性格もよく、どこか大人びていて好きで、かっこいいとか言って狙う女子も多く存在する。
成績も運動も人より少し上で、家も神社の管理とかをしているそうで、誠実なのは明確で、お互いに一歩踏み出せばいいのにと言う雰囲気だが、お互いに距離も近いのに奥手でそれほどではないと言うように思いとどまっているようにも見える状態だ。
「―――真矢?」
「ん?」
「わたしが後ろに回るから。ね?」
枝葉も近所の大学生で、どこか子供っぽく背も少し高いほどで、少し疑わしい表現だが、大人のお姉さんで、あの話し合いと言い割って入りにくいんだろうと言う雰囲気だった。
細かいことを抜きにして、2人は十二分にお似合いだけど、あと一押しと言う関係にするにはその一押しがむずかしいなと思う中で桃子が声をかけて来た。
どうしたのと言う反応をわたしがする中で、桃子はわたしの考えていることでも多少読んででもいるのか、少し邪悪な笑みを浮かべる中で口を開き、わたしも意図を開き、わかったと言うように合図した。
「―――何やってんだろう? わた―――」
「か~なたっ!?」
「わ!?」
2人して意気投合し、忍び寄る中で、彼方が何か言っている中で、わたしは彼方の名前を呼ぶと勢いよく彼方に後ろから抱き付いた。
大成功と言う状態で、わたしには気が付いていなかったようで、彼方は思った通りにおどろいていた。
言葉通りの一押しと言う状態で、彼方もだが、桃子もだが、何気ないと言うか、普通の中学生の朝の光景で、思いもしないようなことになるなんて思わないのが現実だ。
真矢はわたし桃子の言おうとしたことを言わなくても理解したようで、手はず通りと言うように彼方の背後に忍び寄ると、彼方に勢いよく抱き付き、おどろかせることに見事に成功した。
大成功とも言えるが次はわたしの番で、わたしはと言えばあわせてうまく彼方の後ろに回り込み、真矢とは眼で合図し、次はわたしの番と言うように合図した。
朝の空元気と言うか、景気づけや眠気覚ましとも言えるが、これが楽しいのだ。
「―――真矢ちゃん―――」
「おっはよー!」
「―――おっはよー、じゃないよ―――、突然―――」
抱き付いた真矢を彼方は確認するとおはようと言うように反応する中で真矢は朝のあいさつはこれ以外にないと言うように言うが、彼方はそれとこれとは違う気がすると言うように返した。
「あ? ごめん? 重いよね?」
「も~? 真矢ちゃ―――」
「彼方!」
言われて見ればと言うように真矢は彼方から手を離す中で彼方は真矢に向き直り、朝から突然脅かさないでと言うように言いかける中で、真矢は彼方の両肩を勢い良く持つと勢いよく真剣な表情で彼方を呼んだ。
「―――?」
「もう一押し、思い切って押すの! 早くしないと道変なのにとられちゃうよ?」
「あ、あの―――?」
おどろいたと言う表情を見せ、後ろに2、3歩下がって調度よくわたしの間合いに入る中で、真矢はいい加減にしろと言うように話を進めるが、彼方は意味が解らないと言う表情をしていた。
「思い切って押すの! アタック! あなたが一番手に入れやすいんだからね!? 変な奴が変なことする前に手を打ちなさい!?」
「―――そんなんじゃないよ、道、なんか―――わひゃっ!?」
真矢も思っているのは同様だと思うが、微妙な2人の関係を思い切って進めればおもしろいと言うもので、真矢は言ってやったと言うような中で、彼方はそれは少し違うと言うように言い始めた。
否定すると言うわけではなく、悪くもないと思うが、本当は別の理由がと言うような表情で、眼も少し真矢から反らす中で、わたしは不意打ちだと言うように勢いよく彼方に抱き付き、おどろくのも気にせず胸に触れもみ始めた。
「道には枝葉さんもいるのよ~?」
「―――と、桃子ちゃん!?」
「おはよ、彼方?」
本質的に言うと2人の関係に指図するのも余計なお世話と言うものだが、見ていると歯がゆいとはこう言うのを言うのかと言う状況で、わたしはもみながら油断はできないよと言うように彼方に伝えた。
もまれる中で最初はおどろいていたが、次第に暴れはじめる中で声と動きでわたしと確認したか、呼ぶ中で真矢もだが手を離すと恥ずかしそうな顔でわたしを見ているが、わたしは涼しい笑顔であいさつした。
「―――変態オヤジとかじゃないんだから―――」
「うまくいったね? 桃子? いぇい!」
「いぇす!」
止めようねと言う彼方を無視し、真矢は親指を立てた後平手をだし、わたしはあわせてハイタッチした。
「も~? 2人とも~?」
「いいじゃない、減るものじゃないし?」
「それに女の子同士だから?」
共謀してやったねと言うように彼方が言いかける中で、真矢はこれぐらいでと言うように返し、わたしも少し悪いとも思うが、あわせて落ち着かせるように言った。
「ね? 特権? わかる?」
「言われたら確かにそうだけど―――」
「ま、とりあえず、本日の応援は彼方の胸に免じて終わらせる。」
悪い冗談が少し過ぎるとも思うがわたしは続け、彼方は納得はできないが、2人がそこまで言うならと言う反応を見せる中で、真矢がとりあえずはこの話は一応終わらせると言うように言った。
「―――それに、少し育ってもいるしね?」
「!?」
「何? 本当!?」
真矢の言っている理屈を説明してほしいんだけどと言うように彼方がわたしを見る中で、わたしは胸をもむ動作を再現しながらもう一押しと言うように言う中で彼方が触って分かるのと言う表情の中で真矢が過剰に反応した。
「小学の時から先に大きくなりだしてもう結構大きいのにまだ育つか? 恋をすると美人になるとか言うけど、身体も美人になって2つの胸も大きくなるの? 許さんリア充!?」
「―――そ、そんなんじゃないよぉ?!」
「―――とりあえず、学校行こうか?」
彼方の胸に眼を向けながら言う真矢の言う通りで、彼方はわたしたち3人の中で胸が大きいと言うか、触ったわたしが言うがやわらかく、彼方の言う変態オヤジ的な表現だが、年齢的に成熟しかけた心地よい身体をしている。
3人の中で背は低いが体型が少しふくよかで胸だけでなくほおも引っ張るとよく伸びそうなほどやわらかそうに見え、細身なわたしや背が高く生まれ持ったスポーツ体型と言うような真矢と違い、少し幸せ太りと言う体型とも言えた。
細かい理屈は無視して、かわいい部類で、真矢の過剰反応も半分以上冗談と言うように見えるが、胸にうらめしそうな眼を向ける中で、彼方は本気で恥ずかしいと言うような表情をして腕で胸を覆い隠した。
真矢の見事な演技にわたしも拍車をかけたいが、常在戦場と言うかわたしたちは登校中の学生で、彼方たちの会話にわたしは冷静な口調で割り込んだ後、勢いよく背を向けた後、遅れるよと言うように少し早足に進み始めた。
「―――桃子ちゃん!? 待ってよ!? また~?」
「待て~? はじめてブラ一緒に買った借り返せ~? 胸よこせ~?」
わたしが進み出す中で、彼方は気づいて追いかけ、真矢はと言えばまだ続けていると言う状態で、逃げるか待て、うらめしいと言うかのように言って、腕を前にだし、彼方を追いかけるのが見えた。
真矢も桃子も少し悪い冗談が過ぎるとも思ったが、時がたてば忘れるほどのことで、わたし彼方たちはと言えば、少しして3人でいつもの通りと言うように登校していた。
真矢は小学生の時からで、桃子も同じように思われるが実は転校生で5年からだが、事情も知らないと言うか、普通の人間が見れば仲のよさげな3人の姿で、わたしも真矢もそんな年数は気にすることはしていなかった。
忘れているが忘れていないと言う状態で、先ほどの一件の話しも少し混じってはいたが、話しながら登校している中で、少し遠くと言うか、後ろからだと思うが車のエンジン音が聞こえた。
「―――最近なんか物騒だね?」
「例の無差別殺人の見回りね? わたしたちも気を付けないといけない? 特に彼方。」
「大丈夫だよ―――」
振り返ってみるとサイレンは光っているが、鳴らしていないパトカーがこの少し狭い道を低速で通り、わたしたちを追い抜いて行き、交差点を右に曲がり姿が見えなくなる中で、わたしは思わずと言うように漏らした。
桃子の返す通りで、言いたくもないが実は最近この辺で世にいう無差別殺人が流行っていて、周辺は先ほどのパトカーと言い、学校でもだが注意を呼びかけられていた。
彼方が危ないと桃子は言うが、よほどのことがない限り凶悪事件なんて巻き込まれないと思ったし、軽く笑って返した。
「あ?! そう言えば進展が起きておもしろいことがあったって知ってる!?」
「?」
根拠がないと言えばないが、パトカーも走っているし、警戒も呼びかけられているし、わたしもこんな時に変な行動をすることはないし、安心していた中で、口を開いたのは真矢で、思いっきり聞いてほしいと言うように言って携帯を取り出した。
「やりすぎるとまた透子さんに怒られるよ?」
「うん、もう怒られた。」
真矢は世に言うネット中毒で、携帯こと、スマフォでもその状態で、課金制のゲームでも遊んでいるみたいで、お金がかかりすぎるのか、彼女の母こと透子によく怒られているのを見たことがあり、わたしが注意するが真矢はそれがどうしたと言うように返した。
「大丈夫、ばれなきゃ犯罪じゃないんですよ。それに止められるもんでもないでしょ―――」
「―――」
「それよりも、見て見て?」
気にする様子もなく操作を始める中でわたしと桃子がこれまたやるねと言うように顔を向けると、桃子もそうねだけどいいんじゃないと言う表情の中で、真矢は携帯の画面を見せた。
『半日で白骨化?』
「数日前に白骨死体見つかったじゃない? 実はあの死体が半日前まで生きてたみたいなんだって?」
わたしたちが十二分に見てない中で真矢はまるで自分が見つけた大手柄と言うように話すが、かなり物騒で奇妙と言うか、不可思議な話だった。
「信じられる? 半日前まで生きてたんだよ? だけど次の日真白な骸骨!」
「―――――」
「持ち物以前に服もなし! 念のためにと警察がしたDNA鑑定で驚愕の事実発覚! だけどどうやったのか? 何が起きたのか一切不明!」
常識的に考えるとかなり怖い話をしているが、真矢はと言えばおもしろいと言うように話だし、わたしはと言えばまた変なことに興味持ってと言うように真矢を見ているしかなかった。
「―――なぞね? 骨や皮、臓器をはぎ取ったのかしら? 売買目的? 異常性癖? まさかカニバリズム?」
「桃子ちゃん―――」
仕方ないなと言う表情をしている中で、桃子はと言えば、合わせるように余計に怖い話をするし、わたしはと言えば2人とも止めようねと言うように声をかけた。
「でしょでしょ?」
「だけどわたしたちに何とかできる話じゃないよ!?」
「―――彼方の言うとおりね? こんなことできるのがいるとしたら、出くわした瞬間にもう骸骨にされているかも?」
真矢は気になる調べたいだれか答え教えてと言うように返す中で、わたしは冷静に考えてと言うように返す中で、桃子はひどく現実的で怖い答えを返し、わたしと言うか、真矢は一度黙った。
「気を付けないとね?」
「桃子ぉ~?」
「後は警察に任せて、とりあえず、学校に遅れないようにしないとね?」
話しにいい具合で桃子が食いついてきたが、いい具合に言い止められ、桃子は追い打ちに変なことはしない方がいいと言うように続ける中で、真矢はそんなのないし面白くないと言うように返そうとする中で、桃子は現実的な模範解答を出した。
「―――あ? やば?」
「眼の前の危機を乗り越えないとね?」
「あ? 待て!? フライング!」
桃子の答えに対し、真矢は考えてみればと言うように携帯で時間を確認すると、少し不味い時間で、桃子は落ち着いた笑顔でだが急ごうと言うように言う中で、背を向け走り出し、真矢は叫ぶが止まらず走り出した。
「待ってよ~?」
「いっちば~ん! 真矢に一矢報いた~!」
「させるかー!?」
時間的には歩いても一応は間に合うが、真矢も追いかけ始め、わたしも追いかけ始め、桃子はこっちまでおいでと言うように真矢に言い、真矢はと言えば先ほどの話はどこに行ったと言うように真剣に桃子を追い始めていた。
朝起きてご飯食べて、友達と話しながら学校に行く途中も中でも帰る途中でもふざけあって、遊んで、勉強して、いつもの変わらない1日の光景で、この日がわたしから見ての始まりの1日になるとは思いもしなかった。
中学生のわたし真矢が登校中に2人に話した不可思議な事件を解決できるかと言えば不可能だが、実際問題欲しいのは事件解決ではなく、日常にない刺激だ。
2人して興味ないと言う反応だが、桃子と言い興味深いと言うように反応し、彼方も怖いもの見たさにわたしについてくることは期待できそうだった。
毎日退屈で、中学も小学も結局義務教育とか、大人の事情はわからないし、勉強することは同じで意味も変わらないし、欲しいのは繰り返すが刺激だ。
刺激と言えばわたしたちが現在着ているこの制服は結構かわいくて評判がいいが、着慣れると普通の服で、刺激の少ない物体になっていた。
「―――あ? そう言えばあのうわさ知ってる?」
「うわさ? うわさならいいよ? また変な情報仕入れて来たの?」
朝に話した事件の時と言い、昼食時に思い出してみればと言うように2人に話を振る中で、彼方は言うとおりにまた変な情報手に入れて来たねと言うように返した。
言う通りと言えば言う通りで、わたしはインターネットもだが、そこらかしこから変な情報を手に入れて、話題に取り入れようとすると言うか、退屈な毎日を吹き飛ばしたくて奮闘していた。
「―――朝の事件の話の続き?」
「ノンノンノン! スクープ! 神さまになれるって話!」
「神さま?」
桃子が懲りないのね真矢と言うように聞く中で、わたしは甘いと言うように返す中で、彼方は意味不明だと言うように返した。
「最近広まっているの。」
「―――神さまになれる? どういう意味?」
本題はと言うようにわたしは話すが、彼方は意味が解らないと言うように返し、表情も見たままそのものだった。
「―――死ぬの?」
「違う違う違―うっ! 神は万能とか言うでしょう?」
「―――うん。」
少し考えてはみたと言うように軽く眼を反らした彼方は別の意味で神さまになる方法を言い、自覚していない天然はこれだから困ると言うように否定し、質問する中で彼方はそれだけはわかると言うように返した。
話す相手と言うか、本人には言っているしかまわないと思うが、彼方は自覚がないが絵にかいたような天然と言うか、ある意味理解不明な発言や行動、答えを返す場合が存在している。
「だから、なんでもできるようになるの、勉強も運動も抜群に! お金持ちでも人気者でも、ナイスバディの美人にでもなんでもなれる!」
「―――だから―――?」
「何でもできるの! 突然ある日そんな不思議な力に目覚めるの!」
かわいい容姿に少し大人びた身体に天然な性格が要因か、彼方は意外と男子に人気があるが、この性格は世に言うつかみどころがないで、実を言うとなれないと意思疎通は少し難解で、別の意味で難攻不落の落ちない女だ。
わたしはと言えば仕入れた情報を話すも彼方は頭で整理もするがまだ理解できてないと言うような表情で、わたしは話しを続けた。
「―――この幸せ者~?」
「むにゃ!?」
「わかってないな~? この~?」
待って整理するからと言う表情の彼方に対し、わたしは手を伸ばし、ほおをひっぱり、少し遊びながら彼方を注意するも、彼方はどうしてと言う表情をした。
「はゃひゃふ、はひふふほ?」
「夢とかないの? 道とラブラブとか? 考えてこと無い?」
言ってみれば言った通りの話しなのだが、彼方は理解できない状態で、わからせてやると言うようにほおで遊び、彼方が辞めてとか言うようなことを言っている中で、考えてもみろと言うように返した。
ある程度遊び終えた後離したが、彼方はと言えば酷いよ、少しだけどと言うように引っ張った方を本来の状態に戻すかのように自分の手でもんでいた。
科学的に言えばわたしたちは変わりゆく時の中で少しずつ変化し、現在はと言えば身体だが、ほかにも変化していることは多く存在するが、表面的には変わり映えしない毎日を過ごしていた。
過ごしていたが、わたし桃子からの始点はここで、真矢がわたしたち2人に振った話だった。
彼方が少し理解できないと言う表情の中で真矢が少し暴走したが、現在はと言えば少し落ち着いた状態になっていた。
「せっかくおもしろそうなのに~?」
「むにゃ~?」
興味深いと言うか、おもしろいと言うか、怪しい話やらをたくさん仕入れては話題にして、乗り気ではない彼方に対して軽くお仕置きをした状態で、彼方は猫みたいな声を出して顔をもんでいた。
「ほら、真矢、そのうわさなら、わたしは聞いたことがあるから。」
「ホント!?」
思わず彼方をかわいいと思ったことは放置してわたしは真矢の話を聞いたことがあったし、わたしが聞くからと言う中で、真矢は話しがわかるのうれしいよと言う表情をした。
「―――最近この辺の学校とかで広まっている話でしょう? だけどその前に怪物に襲われたって聞いたけど?」
「そうそうそれそれ? ビンゴ!」
わたしの言う通りで、最近そう言った奇妙な話が出回っていて、携帯と言うか、インターネットなどでも紹介され、都市伝説などとして少し話題になっていて、真矢もそれだと言うように反応すると言うか、食いついてきた。
「―――怪物?」
「彼方、本気で知らないの?」
「うん―――」
まったく知らないのは彼方だけのようで、顔を元に戻し終えたと言うような表情の中で、聞いて来たが、怪物と言う何かとんでもない言葉を聞いた気がすると言う反応で、真矢が本当に知らないのかと言うように聞く中で、彼方はそうだよと言うように返した。
「正体不明のなぞの怪物に襲われたとか、その時助けられて女神のような女性に助けられたとか、怪しい薬飲まされたとか、―――まあ、それでいろいろあって、信じられない力に目覚めたって―――?」
「で、でもただのうわさだよね?」
怖いもの見たさと言うか、聞きたさに真矢の説明を聞いていると言う表情で、わたしが見て知って聞いた情報と似たようなもので、彼方もあくまでと言うようなことを返していた。
細かい部分も話す必要も存在するかもしれないが、真矢の言う通りでの、このうわさは断片的なもので根拠は存在しないのが本来の状態だったが、わたしが違っていた。
「―――そうでもないみたいなの? 近くの進学校、知ってる?」
「あの黒基調の制服の?」
「あ、あれかっこいいよね~?」
彼方の言葉にわたしは思った通りに違う情報を持っていると言うように返すと、真矢があれかと言うように聞き、彼方はあれだよねと言うように返してきた。
わたしたちが通ってる中学から少し離れた場所に別の中学と言うか、幼稚舎から大学までの一貫校が存在し、わたしはその話を出した。
「肩の赤い線がかっこよくて~? あ、でも―――?」
「あたり。」
「―――だよね?」
思い出してみればと言うように彼方は話し出すが、考えてみれば服の品評の話しではないし、確かに言うとおりに格好よくて、彼方も笑顔で、このまま話に花が咲きそうだったが、考えてみればと言うように聞く中で、わたしは間違いないと言うように返した。
本題が違っていたと言うことに気付き、落ち込むがわたしと真矢はと言えば話を続けることにした。
「―――怖がらなくていいから? さっきも自分で言ったでしょう? うわさなんだから?」
「―――うん―――」
「それでそれで?」
ファッションの話しの方がいいよと言うような表情の彼方を少し強引に落ち着かせ、一応はわかったけど次はお願いね桃子と言うように反応を返す表情を見せ、真矢はと言えばそれもわかるが早く話してよと言うように聞いてきた。
「―――その学校の、わたしたちと同じ1年生、確か入野遥香? って言う子がそうらしいの―――」
「名前までわかってんの? 桃子すっごい? どこの情報?」
「風のうわさみたいなもの、だけど、うわさに尾びれがついたと言うか、すごく風変りしたからそうじゃないかって―――」
落ち着いて真矢と言うように話す中で、真矢はいい情報手に入れたと言う反応だが、わたしは根拠はないよと言うように返した。
「風変り?」
「背が結構高くて、気にして猫背でいじめられてて、髪も長くて眼鏡で、暗い性格だったんだけど、ある日バッサリ髪切って背筋伸ばして毅然とした態度―――」
「―――バラ色じゃない!? すっごい!」
要因はどうにしても変わったと言うのが気になったか、わたしも実名までだしたで説明を続け、真矢はわたしの言う根拠はないと言うような反応も無視し、間違いないと言うように反応した。
「―――イメチェンとかじゃ―――、お母さん言ってたけ―――」
「それもあるけど―――、あ、そうだ?」
「何々?」
証拠はないとも言え、彼方の言う通りで、思い切ってと言う部分も存在するが、わたしはこれだけではないことを思い出し、真矢も早く話せと言うように聞いてきた。
「You Tube―――」
「ユーチューブ?」
「ようつべぇ~?」
速く話せと言うような真矢に対してあせらなくても話すと言うように言い、彼方と真矢は対照的な反応をした。
彼方はあの動画サイト言う反応で、真矢はと言えば世にいうネット用語だと思われる呼称で返し、2人の人間性の差がある意味見て取れるとも言えた。
「元は裏サイトみたいなのに彼女が変わった数日後に変な動画出たらしいんだけど、そのサイトでは削除されたけど、コピーされて流れてアップロード、転載? されたみたいで、それに、彼女らしい人間が映った動画が存在するみたいで、あ? そうだ?」
「何何?」
「―――わたし委員会の仕事。」
2人がどんな人間かは放置して、両方大事な友達と思っていると言うわたしの思考も放置し、わたしは自分の情報を出す中で、考えてみればと言うように、真矢が続きを話してと言う中で、現実に戻った話をした。
「―――ッガク!?」
「あ? がんばってね? 大変だね?」
「桃子ぉ? 酷いよ~?」
真矢は漫画でおどろいた時に出る擬音語を口に出しながら、言葉通りのこんな時にと言う反応で、彼方は聞いていて冷静に気遣い、真矢はそれはないと言うように立ち上がったわたしのスカートを手に取った。
「真矢―――」
「続き続き~? プリーズテルミー?」
「―――真矢ちゃん。ダメ。」
気持ちはわかるけど考えてみると時間がまずいほど経過しているし、授業や行事、それに言った通り委員会の仕事も存在し、行こうとする中でのある意味まずい会話だった。
離してお願い続きは後でと言うように真矢を呼ぶがダメと言う反応の中で、彼方が少し強引に真矢のわたしのスカートを持った手を離させた。
「彼方~?」
「彼方、お願いね?」
「あ? うん?」
後少しだけと言うように彼方に言うが、ダメだからと言うような表情の彼方に対し、わたしはその彼方に真矢を任せ、彼方はわかったから任せてがんばってと言うような表情でわたしを見送り、手を振るのが見え、わたしも手を振って教室を出た。
背を向けると真矢の待ってと言うような声が聞こえたが、無視し、教室を出ると調度よく同じ委員会の生徒が歩いているのが見え、わたしは委員会の仕事に向かった。
始点と表現したが、わたしは揮発剤と言うか、点火をして放置したのかと後に思った。
この恨み、晴らさで置くべきかと言えば言い過ぎで、後数か月もすればころあいなのは事実だが、わたし真矢は桃子に話を中断され、いら立っていると言うか、おさまりがつかず、もどかしい状態だった。
好奇心が旺盛だと言うのは自分でも認めるし、そう言えば聞こえはいいが、悪く言うと猪突猛進で、何にでもと言うか、変なことに足を突っ込もうとして少し痛い眼にあった事実も存在するのだが、止められると余計に気になるのが現実だった。
「―――――」
「真矢ちゃん、桃子ちゃん話さないとは言ってないし―――」
「いいもん、どうせ彼方には道がいるもんね?」
他人の色恋沙汰にも手を突っ込んで、人をからかって、だけど彼方と道は相性はいいし、お節介ではなく友達として軽く一押しのつもりでいつも言っていた。
「ラヴラブで、―――彼方?」
いいとこの大事な部分が聞けず、頭の中を少し不快にさせ、眼を反らし、机に伏せすねたような反応で言ったが、彼方が反論せず、何事かと思い、わたしは彼方のほうに目を向けると、道を眼が合っているようだった。
「―――――このっ! リア充!」
「わ?!」
笑顔と笑顔、道が手を振ると彼方も手を軽く振って、幼馴染のほほえましい光景が終わりを遂げる中で、わたしは彼方に勢い良く抱き付きました。
「思い切って行っちゃいなさいよぉ?」
「そんなんじゃないよぉ?!」
よくある日常的な光景、退屈で平和な日常、だから面白いことを探してた。
「よし、決めた!」
「?」
あの噂もインターネットで知って、近所で起きていたことで、興味津々で、彼方とおもしろいことをしたくて、一押ししたくて、何にしてもわたしはあることを決意して立ち上がることにした。
「神様になる!」
「?」
この時から少しした後、この時にわたしは彼方を巻き込んだと思ってた。
何にしてもわたしは好奇心につられて、調度よく食事も終え、彼方も食事を終え、彼方の手を取り、勢い良く走り出して教室を飛び出そうと思いました。
「あ」
「あ」
わたしが悪いと言えば悪いが、彼方自身自覚はしているが鈍い点もあるが、突然手を引っ張られたのに彼方はおどろいたか、手が離れ安定感を崩し、わたしの数歩後ろで床に倒れかけまた。
「危ない!」
「ほゆっ!?」
間に合わないけど、大したことにはならないとも思うが、不意に勢い良く走り寄る影と、声が彼方に近づき、彼方を倒れる前に支えた。
「むにゃ~?」
「大丈夫? 彼方?」
どこの青春ドラマかアニメかと言うかのような見事なタイミングの光景で、倒れかけた彼方を道が見事に腕で優しく支えていた。
「うん。」
「気を付けないとね?」
倒れかけている彼方の体制を立て直すと、道は親が子を叱るようにわたしのほうに眼を向けてきました。
「真矢もだよ?」
「何よ~? わたしのせい~?」
「―――まったく。」
案の定だと言うような物言いで道は言い、仕方ないと言うような表情をしてした。
確かに引っ張っていこうとしたこちらに悪い点があるが、道には少し大人びた部分もあるし、言葉を返すことができないと思っていたが、あることが、正確には、道が彼方を支える関係で、胸を触っていることに気が付いた。
何にしてもこの時は余興にはなると思った。
真矢に引っ張られ転倒しかけた彼方を助け、真矢を注意するも、いつもの調子で聞く耳持たずな様子で、一方で彼方はと言うと好きで引っ張られていると言うような様子で、怒りもせず笑いもせず、少し困ったと言うような顔をしていた。
この後もいつものように真矢が連れ去っていくから何にしても念入りな注意が必要だと思った時、真矢が少し愉快そうな顔をして腕を組み、口を開いた。
「それよりも、いつまでそうしているつもり?」
「?」
彼方にも事情があるし、いつまでもこうしているつもりはないが、真矢は僕、言わば同に対し注意するような、笑うような物言いで言ってきた。
「胸。」
「?!」
「あ!」
真矢の言葉は一言だったが、すぐに気が付いた。
半分抱きしめているような状態で、支えた時の関係か、片方の腕は彼方の胸に間違いなく触れ、加えて片手の力はそう強くはないが、片方の胸をわしづかみの状態だった。
「あ、あの、そんなんじゃ!?」
意外と大きくやわらかいとか思う事態を半分無視し、半分把握して焦りながらも腕を離し、数歩ほど後ろに下がって彼方と距離を取り、謝るが、彼方は恥ずかしそうに顔を下に向けて、加えてある程度だが、クラス中の視線がこちらに向かっていた。
「そんな気は、なくて―――!」
「―――」
「あ、あの、彼方―――?」
謝るも彼方は顔を下に向け、声をかけるも反応もしない様子で、恥ずかしそうにしていた。
「ご! ごめん!? いいから! ありがとう!」
なんと言えばいいのか、謝るが彼方は反応しなかったが、急に勢い良く言うと教室を勢い良く飛び出していった。
「彼方!?」
脱兎のごとくと言うべきで、飛び出していった彼方を真矢は追っていった。
「いいな! 道! モテモテだな?!」
「ラッキースケベ!」
「分けろー! 幼馴染ー!」
追いかけるのがいいのか、追いかけないのがいいのか解らない微妙な立場で、教室ではからかうような言葉飛び交い始めた。
「そ、そんなんじゃない!?」
謝ったし、いいと言ったが、このままでいいはずもないような状況で、クラスの仲間は他人事だと言うような物言いで、何にしても本人もいないし、何かいいことが言えない状況だった。
後で話すことになるが、この時あの些細なうわさを確かめることと言い、彼方たちが関わることになるとは思わなかった。
不意な事態で教室を飛び出した彼方と追い、何とか追いつくことができたわたしこと、真矢は、彼方を捕まえ、何とか落ち着かせつつも、目的地である場所へと前進していた。
不慮の事故と言う事態だし、一応は謝ったし、教室がどうなるかわからないけど、放置して彼方を落ち着かせるために話あっていた。
「いいじゃん? 脈ありだよ? 彼方? 時には大胆になって、餌付けみたいなことしないとだめだよ?」
道には悪いことをしたかもしれないが、2人の関係には思い切ったことが必要だと思い、彼方に勢い良く、はげますように返した。
「やっぱり道誤解されるかも、戻って―――」
「いいからいいから! ヨッシャ! ツギイコ ツギ!」
気にし過ぎと言うような状況で彼方は後ろを振り返り、教室に戻ろうとしましたが、一応あやまったし、戻っても道の立場が逆に危ういだろうし、彼方の背を押して何にしても目的の場所に向かうことにした。
神様になるとか言ったけど、何にしても必要なのは情報で、情報が手に入りそうな方向へと運よく彼方が走り、後は背を軽く押せばいい状態だった。
「―――と言うかどこ行くの? 真矢ちゃん?」
「知識の泉!」
「へ?」
よく考えるとどこに行こうとしているのかわからない彼方に対しわたしは明るく楽しく言い、知識の泉こと、図書室へと入った。
何をどうするのかと言うような顔をしている彼方の背を押している状態で中へと進み、本題は本を読むのではなく、室内のパソコンが目当てで、迷うこともなくわたしは開いている席を見つけ、椅子に勢い良く腰かけた。
情報化社会、簡単に言うとインターネット全盛の社会を示す言葉で、たくさんの情報がある世界で、必要な情報を必要な時に探せると言う意味が存在する。
わたしたちの中学校では教室を含め学校の特定の場所には対応するためにインターネット接続されたパソコンが置かれ、空き時間に自由に生徒が使用していいようになっていて、わたし彼方の前で真矢はそれの前に座っていた。
授業や部活に使用されるパソコン室も存在するが、わたしを連れた真矢は何にしても図書室のパソコンを使うようだった。
「さぁーっ? 目的はぁ?」
室内を見ると同じようにインターネットを使っている人が見受けられ、多くは授業などに使っているが、真矢は完全に私用目的が丸見えだった。
「真矢ちゃん、携帯使おうよ?」
「これ以上お母さんに怒られたくないし、見やすいし、探しやすいし、加えてこっちの方が性能良いのよね~?」
「―――」
上機嫌の真矢に対し、携帯を出してわたしは一応反論するが、真矢は少し不満げに返事を一気に返し、わたしは気を落として黙り込んだ。
「You Tube、ようつべ~。」
「―――」
「―――どうやって知らべるか?」
真剣かどうかは解らないが、何にしても先ほどの桃子の話に非常に興味があった上で、パソコンの性能がいいのは確かなようだが、肝心な真矢は少し問題があるようだった。
「彼方、インフォメーション!」
ここでわたし、言わば彼方の出番です。
思い付きと行動力は真矢にはかなりありますが、思考力がないと自分でも言い、肝心な時に思考力としてわたしを使っていた。
「―――そうだねぇ?」
前にホワイトとかブルーとか色とか外国の話してしていた気もわたしは頭の中でしていたが、何にしても放置してわたしは考え始め、画面を見つめ、キーボードに触れた。
「もう削除されているかもしれないよ?」
「何にしても、検索検索!」
元気いっぱいに言われ、わたしは何にしても検索を始めた。
「―――どうしたの? 入野遥香って調べれば―――?」
「ないと思うよ?」
「―――」
何を知らべればいいかもわからずわたしが少し硬直していると、真矢は直接的なことで言いが、わたしは無理と言うように即答し、真矢は黙り込んだ。
「神、うわさ、えっと、あの学校名―――」
何にしても、真矢が情報を求めているので、先ほどの話を思い出し、キーワードになる言葉を入力し、検索した。
時間にして数秒とかからない間に、膨大な情報が表示され、どれがいいのかわからないのが一目瞭然だった。
「やっぱりこうなるんだよね~?」
「とにかく一番上のを見てみよう?」
何にしてもキーワードを絞って探した膨大な情報で、困っていたわたしに対し、真矢はわたしの持っていたマウスを半場奪い取るように操作し、一番上の情報をクリックした。
先ほど検索した時と同様で、時間にして数秒ほどの時間も経過しない内に映像が切り替わり、動画を映し出すサイトのようで、何かの映像が映し出されていた。
映像はデジタルカメラか、ビデオかの手持ちで撮影した映像のようで手振れか激しくゆれ、映像は薄暗くて解り難く粒子のような乱れが見えた。
何にしても映像、こと動画は始まり、映像を映し出しているが、最初は何が起きているかわからない状況と言う方が正解で、雑音のようなものが聞こえた。
いつまでもこんな映像が永遠に続くのかと2人して映像を見ていたが、少ししてすぐに雑音にまぎれて、雑音とは異なる音が、正確には人間の女性だと思われる声が聞こえ、映像は多少揺れているが、正常な映像を映し出した。
薄暗い周囲の光景に、眼の前にはフードを被った男だと思われる姿が見え、撮影者か近くで先ほどの女性の声だと思われる少し荒い呼吸音が聞こえた。
『―――う、もーやめーくーさい、こー人、ちかーで―――』
もう、もうやめてください、この人、痴漢です。
機械の調子が悪いのか、撮影方法が悪いのか、何にしても要因はあると思われるが、聞こえる声は途切れ途切れで、言葉を合わせ、言っていることの意味をある程度理解できると言う状況だった。
『聞こえなかったんですか? 警察に通報しますよ?』
脅えてこそいるが、女性の声は正々堂々とした物言いで、撮影するとは一見ふざけているが、彼方はどうかわからないがわたし、言わば真矢はいい戦法だと思った。
「―――――」
状況的に判断して、痴漢常習犯を訴えようと撮影した映像のようなのは言うまでもなかったが、映像に映った男は顔も見せず、特にそれと言った動きを見せる様子もなかった。
『―――――?』
奇妙だ。
最初に気づいたのは映像越しの女性か、彼方かわたしか、何にしても、映像に映った男の様子がおかしいのだ。
呼吸音か肺か何かが悪いのか、女性の呼吸かもしれないが、呼吸が不意に強く荒くなり、首を横に軽く振り、肩を動かし、震えているようにも見えたとえると、悪く言うようだが発狂しかけた人間のような動きだった。
異様な動きに反応して脅えて後ろに下がったか、撮影中の映像に映った男が少し小さくなったと言うよりも、距離が開いた。
簡単に言うとホラー映画のような映像で、様子が奇妙な映像の男の人を何かと見ていた瞬間に異常が起きた。
表現が微妙だがこれが一番妥当で、調理などで肉や魚を引きちぎるような鈍く湿った音が映像越しに聞こえたかと思うと、フードが破れる寸前まで横に広がり、顔の部分から血液だと思われる液体が勢いよく吹き出し、顔から下を血で濡らした。
『―――――』
言葉にもならない叫びと恐怖、この言葉が一番妥当で、女性の声は聞こえず、彼方とわたしも映像を凝視していた。
変化があったのは映像のほうで、女性が恐怖で腰を抜かしたか、映像が女性の立ち姿勢だと思われる位置から一気に腰を抜かしたと思われる視点に移動し、男を見上げて撮影する状態に変化した。
気づく間もなく、無意識かわたしも恐怖か真剣に見るためか机に膝をつき、真矢と一緒に映像を凝視していた。
映像はこれで終わらないと言う状態で、男の身体は奇妙な動きを続けながらも横に広がり服は破れる寸前で、腕や少しだけ見える足元も服が破れる寸前にまで膨れ上がっていた。
『―――――な? 何? 何?』
映像を見ているこちらが聞きたいと言うような状況の中で、女性は問いかける中で、顔の部分の血が少し止まり、顔の見える部分に、何か黒く丸く物体が一瞬見えた。
「―――」
目玉だった。
一瞬眼のように見えたが、断定はできなかったが、目玉かと思った瞬間、フードが破れ、巨大な目玉が飛び出し、服も引き裂かれ脂肪のような膨れた肉が身体中を覆い、フードをかぶっていた男は目玉の怪物に変身した。
映像の視点が勢い良く変わった。
正確に言うと、撮影していた女性が撮影していたカメラか携帯かを落としたと思われるが、映像は怪物が歩き出した後、女性の悲鳴が聞こえ、視点が急降下し、乾いた音を立てて地面に落ちたと思われる音が響いた。
『神業! 目玉の怪物を噂の美少女が瞬殺!』
入力したキーワードの映像が出たのか、キーワードをもとに適当な映像をインターネットが探し出して拾ってきたのかは解らないが、キーワード通りの言葉の持った奇妙な動画を見ることとなった。
後で彼方とも真矢は話すことになるが、造り物ではないかと話したが、映像を見直した後、真矢は重要なものを見つけることができた。
何にしても動画は続き、映像は撮影していた側から言えば衝撃で不運に画面に傷が言ったかもしれないが、見ている側は幸運と言うべきか、撮影しているレンズが上となり、空と、上向きだが怪物の身体を映していた。
逃げる女性の足音か近くで地面を削るような音が聞こえていたが、何が起きていたかは正確には解らず、怪物と言うか、肉片の動く湿った音が近くで聞こえた。
「―――?」
「―――?」
激しい音とともに砕けた。
女性の必死な悲鳴が聞こえる中で、怪物が足をすすみ始めた瞬間、突然激しく大きい音と同時に、怪物の目玉の部分が砕け散りカメラに血か肉片の一部が落ちて映像を少しだけ見えにくくした。
「―――」
人間とも、動物とも思えない重く低い、おそらくは怪物の断末魔に合わせ、怪物は大きな音を出して倒れ、見えにくいが、身体の一部分だけは見えていた。
「―――」
いったい何が起きたかと言えばこっちが聞きたいが状況の中で女性の声か、少し遠くで少々荒い呼吸音が聞こえていた。
「―――ぁ?」
拾われた。
突然映像に女性、正確には彼方と真矢より少し年上のような、10代前後半ほどの映像が暗いためか、生まれついた顔が解らないが、冷めた眼をしたように見える髪の長い少女の顔が見え、映像を映していたカメラを拾った。
『危なかっ―――――』
危なかったなとか、加えて終わったとか、危ないところにとかと、何にしても何かを言い終える途中で動画は最後に撮影終了を伝えるだろう明るい電子音が聞こえると終わった。
これが手掛かりの一つで、少しの間何が起きたのかわからず、彼方と真矢は終わった映像を少しの間見つめていた。
時間も無限ではなく、いつまでも止まった映像を見ていても意味もなく、少しして真矢は彼方に顔を向け、わたしは遅れたが真矢に合わせるように顔を向けお互いに意味不明で不思議だと言う表情だった。
「どう思う?」
切り出したのは真矢で、言葉に合わせるように先ほどまで問題のだと思われるパソコンの画面を指さして聞いてきた。
「―――作り物? 映画の撮影とか?」
「ん~?」
言いながらわたしは立ち上がり、画面に眼を向け、真矢はと言うと動画について何か情報がないか調べ始めた。
「あ~、駄目。」
「ぇ?」
「転載。」
何か情報がないかと真矢は調べていたが、すぐにため息を吐き出し、何事かとわたしが見ると、真矢は画面の言った言葉通りの文字を指さした。
『You Tubeで削除された後(匿名)中学校裏サイトからアップロードされたものを再転載しました。
映像の真偽は不明ですが、手持ち撮影及び低画質撮影のため本来から映像は悪いそうです。
サイトでも削除され転載の転載のため低画質低音質です。
サイトによると最後に映った少女が学校の生徒に非常に似ているらしいです。
学校側にも送り質問しましたが、返答待ちです。』
動画の説明の部分で、この動画造った人間と、アップロード、言わば投稿した人間は別であることを表示していた。
『↓うそ自慢止めろよ?
↓これ本物だよ、だって俺本物みたし、この子知ってるし同級生だ―――
画質と言い音質と言い、造形と言い、傑作だ。本物のようだ。
これ何の映像? 映画? 高画質高音質でフルみたい!?
いいところで途切れるしこの造りもののどこが怖いんだよ?
デッドスペースやモータルコンバットみたいなグロ洋ゲーやってみろって?
クレイジーってのはああいうのを言うんだぜ?』
何気なしにと言う状態で動画に対してのコメントを見てみるが、少し荒れているようだった。
『再生回数 64,648 高評価324 低評価322』
再生回数も1万回以上を突破しているが、低評価も高評価も五分五分と言う数で、なんとも言えない状態だった。
「でもこれだよね~? せっかくの手がかりなのに~?」
「他も見てみる?」
「ん~?」
外れか当たりかどうかわからず、困ったと言うような反応の真矢に対し、わたしは意見を出すが、真矢は動画のチェックを始めた。
『↓コメントが削除されています。
↓コメントが削除されています。
↓うそ自慢止めろよ?』
コメントを見続けるが手掛かりのようなコメントは一切なかった。
「何よ~? 答え削除されてるし~?」
「あたりまえだよ、プライバシーとかに触れるし―――?」
「何か手がかりは~?」
うそをつくなと言うコメントに対してうそをついたと言われたコメントをした人間が返事を返したと思われる形跡があるが、不安そうな真矢に対し、わたしのもっとな意見通り制限がかけられ、対策がされた後だった。
「んっ?!」
「?」
動画を適当な部分で止めたり視聴したりをはじめ、何にしても手掛かりが欲しいようで、真矢が動画を見ていると、不意に勢い良く立ち上がり、よく見るためか顔を画面に意気意欲近づけた。
「んん?」
「真矢ちゃ~ん?」
「んんん?」
怪しまれてるよと言っても聞かないし、周囲の人間たちが真矢の少しおどろいた声に反応し、何事かと、数人は騒音としてとらえ白い眼を向けわたしが声をかけてはいるが、真矢は気づいてないのか気にしてないのか、どちらにしても画面を強く凝視していた。
「彼方! ルックルック!」
「?」
他人の眼も気にせず真矢は勢い良く言い、わたしに見るように画面を指さして指示を出し、周囲も一部は苦そうな顔をしているが、一時的なものとして作業を再開しだし、わたしは画面に眼を向けた。
「む~?」
何にしても真矢はうれしそうで、軽く浮かれている雰囲気で、わたしは先ほどまで真矢が見ていた画面の部分に眼を向けた。
真矢に言われてわたしが眼を向けた場所は画面の右上の端の近くで、怪物ではなく後ろの風景の方で、公園のかなにかのようで広い土に大きい遊具のようなものが見えた。
「ぁ?!」
「わかった?! さっすが彼方?!」
よく見ると少し遠くにある公園で、証拠に恐竜の形をした滑り台が見え、加えて滑り台の足元が砂場になっていることも一致していると思った。
遠くで映像に粒子があって解り難いが、わたしは瞬間的に理解し、真矢は勢い良く言って彼方をほめた。
「さっそ―――――」
さっそく情報を集めに行こうとか言うようなことを言おうとしたのか、何にしても言いかける中で、昼休みを終える予鈴が鳴った。
「―――時間だね?」
「―――ウソっ?!」
画面から顔を戻して真矢と眼を合わせたわたしは顔を上げ、音が鳴っているだろうと思われるマイクの方向にか、顔を向け、真矢は硬直しているが、慌てた様子になった。
「とりあえず帰ろ―――」
「あ、あとちょっと、あとちょっとだけ!?」
とりあえず帰ろうと言う言葉をわたしがかけようとする中で、真矢は最後の抵抗と言うようにPCに勢い良く顔を向け、調査を再開した。
「帰るよ?」
「いや~彼方~?」
言葉通りにPCの机にかじりつきかけている真矢をわたしは椅子を引き引き離し、引き離すと席に上級生と思われる女子生徒が入ってきてPCの操作を始めた。
「ああ~?」
「いつもシャットダウンすみません。」
真矢が手を伸ばすが届かず、上級生は図書委員か、何かの役職のようで、PCを素早く操作してシャットダウン、言わば電源を切る状態に操作し、わたしは合わせて上級生に対して謝った。
「いいのよ? 仲良くしなさいよ?」
「にゃ~?」
上級生の生徒はわたしが礼を言うと、振り返ると笑顔を返し、真矢は軽くだが悔しいのか暴れ出していた。
「相変わらずね?」
上級生はと言うとほほえましいといかのような笑顔で言いわたしたちを見送った。
「一緒に行くから。」
「彼方~?」
座っていた真矢を慣れた手つきでわたしは起こすと、少し重たい荷物だと言うかのように真矢を引っ張り始め、真矢を落ち着かせるように言うと、嫌がる真矢を引きずって図書室を出て行った。
ある日ある場所のある学校の、よくありそうな光景だった。
時間にして推定数時間後のこと、何にしても真矢と一緒に教室に戻り、授業を終え、学校を終え、目的の場所へ向かっている途中のわたし彼方の意識は半塲途切れているような状態だった。
立ってはいるが歩いておらず、眼も半開きの状態で、意識も自分で起きているのか寝ているのかわからない状態だったが、不意にわたしは自分が眠っているような状態に気が付き、目を覚ました。
「ほぇ?!」
寝ていたのかと、なぜか寝ぼけているのかわからない、こんなことだと真矢に何か言われると思いわたしは勢い良く眼を開いた。
「―――――えっ?」
見覚えのない光景だった。
一言で言えば言葉通りの風景で、暗く、人通りどころか人の気配すらなかった。
「寒っ!?」
加えて周囲は非常に寒く、凍え歯が震えて乾いた音をたてて鳴るほどの温度で、吐き出される息も白く、急に冷蔵庫の中に入れられたような温度になっていた。
「ここ? どこ?」
いつも通りに学校を終え、真矢と一緒に出掛けたことまでは覚えているが、いつの間にか空も暗くて夜遅くにも見え、見知らぬ場所にいた。
「真矢ちゃん?!」
先ほどまでと言うかいつかは解らなくなっているが、前を歩いていた真矢の姿は前にも横にも姿はなく、少しの間探したが一切姿は見えなかった。
「―――、―――――、―――」
吐き出される息は先ほどと変わることなく白い状態で、気温と言う温度は紛れもなく冷えており、季節的に判断して衣替えも必要な時期のはずだが、マフラーやコートが必要なほどの気温だった。
「―――真矢ちゃん―――?」
どこかわからないが、何にしてもわたしはどこかを突き止めるためにも、真矢を探すことも考えて歩き始めた。
「―――?」
バッグの中の携帯電話が鳴っている。
正確には振動、言わばヴァイブレーションが震えている状態だった。
「あ、あれ? 携帯?」
何にしても真矢かもしれずわたしはバッグを開き、携帯電話を取り出した。
ストラップが付けられ、少しだけだがデコレーションがされている携帯で、振動していた。
「?」
電話が来ていなかった。
電話が鳴っているが電話ではなく、メールでもなく、目覚ましのようなアラームでもなく、理由もないのにヴァイブレーションが起きていた。
「?―――あ? 止まった?」
いったい何が起きているかわからず、思わず画面に触れるとヴァイブレーションは何事もないように止まった。
着信もメールもなく、ごく普通の携帯電話だった。
「―――――圏外? 初めて見た?」
圏外
簡単に言うと携帯電話のような電波を用いて通信する機械の電波の範囲外と言う意味で、わたしの携帯事態が自らを使えないことを教えていた。
何にしても電波問題は最近は少なくなってきているが、何にしてもわたしにとっては珍しいもので、電波はどこにあるのかと探すように空を見上げた。
「―――」
身体が多少はなれてこそ来たが寒いことに変わりはなく、空にはきれいな月が見えるが、地面にいるわたしは非常に寒い思いをして、眼の前には自分の吐いた白い息が広がっていた。
「―――――!?」
物音がした。
静かなのでよくわかると言う状況で、わたしの右後ろだと思われる位置だった。
「―――――?」
何かと思い振り返るが、特に何かがあるような様子はなかったが、再び物音が、正確には後ろのゴミ箱のようなものから物音がした。
「―――!?」
銀色の細長いゴミ箱で、フタが開いたままで溢れ近くに落ちているほどのゴミが落ちていたが、何にしてもわたしはゴミ箱に対して近づいた。
「ねず、み?」
状況的に考えられる一番妥当な答えは生ごみの類を漁っているネズミの動く音だと言え、わたしは思わず言葉を漏らした。
「―――?」
ゴミ箱のゴミの中で、緑色の物体が埋もれて動いていた。
正確には大きさはわたしの合わせた両手の平に乗せられるほどの大きさで、柔らかく暖かそうな明るい黄緑色の毛に覆われた物体が動いていた。
「―――何? コレ―――?」
近くに真矢でもいればこっちが聞きたいと言いかねない状況の中で、わたしは思わず言葉を漏らし、言う中で物体は軽くだが動いていた。
「おも、ちゃ―――?」
電池式の玩具で、電池の類が残っていて動いているのかと思い、思い切って手に取り、わたしは持ち上げてみた。
「?!」
動いたし生温かった。
生き物ならば調度お腹の部分か、強くはわたしはもたなかったが、手に持った部分が動き、手に触れた物体には生き物特有の生暖かさがあり、わたしは手を離し、物体はゴミの中に逆戻りした。
「―――っえ?」
鳴き声のようなものが聞こえた。
犬とも猫とも、ネズミとも言えない小動物だと言うことを証明する高く可愛い声で、ごみの中に落ちると身体を起こし、何が起こったかわからないと言うような様子で声をだし、わたしの方向に振り返った。
「―――」
眼が合った。
物体は正体不明だが紛れもない生き物で、わたしと眼を合わせた。
「うひゃぁっ?!」
全身緑色の毛に覆われ、手足も短く全体的に丸い身体に眼も丸く円らな瞳をし、わたしは可愛いとは思ったが、生き物は身体の向きを変え、不思議そうにわたしを見たが、わたしはようやく我に返り、おどろいた。
「―――」
思わずおどろいて後ろに勢い良く下がり、足を踏み外しわたしは後ろ向きに転んだ状態だったが、生き物もわたしのおどろいた悲鳴におどろいたようだった。
「―――ネズミ? じゃないよね?」
わたしの悲鳴を聞き身体中の毛を逆立てていたが、落ち着いたのか毛は元の状態に戻り、わたしも一体なにかと言うように再び眼を合わせた。
「―――あ?」
ゴミ箱を飛び下りて近づいてきた。
人になれているとかどうかわからないが、お互いに見つめ合っていたが、動いたのは生き物で、逃げるわけでもなく、わたしに近づいてきた。
「あ、え?」
わたしの手元に近づいた生き物は、わたしは気づいてなかったが、転んだ時に軽くだがすりむいた手の傷をいたわるようになめ始めていた。
「あ? 大丈夫だよ―――?」
正体不明だが、何にしてもわたしは敵意がないことを確認し、何の生き物かはわからないが、生き物の身体に触れてみた。
逃げる様子もなく、わたしと眼を合わせていた。
頭や身体を撫でてみると、黄緑で覆われ身体小さいが以外にも暖かく毛も柔らかく、嫌がる様子も見せず、うれしいというかのように眼を閉じていた。
「可愛い、あ?」
何にしてもこんなことをしている場合ではないと言える状況だった。
生き物のほうはと言うと不思議そうな顔でわたしの顔を見ているが、わたしは周囲を見渡し始め、自然的なものか、立ち上がった。
探しているのはここがどこかと言うことと、真矢がどこかにいるかと言うことだが、姿は一切見えなかった。
「―――――?」
人の気配もなく、無情な寒さのためか口から吐き出される息は以上に白く、正体不明の生き物が足元にいる。
どうすればいいのかと思いかけた中で、どこか遠くで誰かが走る足音のようなものが聞こえた。
「―――!」
間違いなく誰かが走っている足音で、水たまりでもあったのか、水たまりを勢い良く踏んだような水のはねる音が響いた。
「ぁ―――?」
行ってしまった。
水のはねる音がしたが、状況的なものか、感覚が飛び済まされていたのか、反響で良く聞こえたのかわからないが、足音は遠くから聞こえ、聞こえなくなってしまった。
走っていた足音は何処かも解らず、何にしても足音の主は何処かへと行ってしまった。
「―――――あ、大丈夫だよ?」
どうしようかと言うような状況の中でわたしが足元を見ると、あの不思議な生き物が、身体を起こしてわたしの足に人になれた雰囲気で触れ、大丈夫かと聞くようにわたしを見ていた。
「ここ何処かわかる?」
何の生き物かもわからないが、害もないようだし、わたしは言いながら生き物を両手で優しく支えるように持って立ち上がり、生き物は質問の意味が解らないと言うような反応だった。
「わかるわけないよね?」
質問した自分が馬鹿だった。
何にしてもわたしは心の中でそう考え、心の奥底にしまうと生き物から眼を一時的に反らした。
「猫、でもないし、耳ないし、ネズミにしては大きいし、色が変だし……?」
胸の高さまで上げ、顔を合わせて一体なにかとわたしは見てみるが、何にしても正体不明な生き物だった。
「―――?」
こんな精巧な動物の形をした玩具など存在するはずもなく、手に持った質感はまぎもれなく生き物であることを知らせていた。
「―――何?」
後ろから何かが聞こえた。
何かが動くような音で、わたしが振り返ると、眼だと思われる場所が2つ少しまぶしいほどに赤く光った巨大な物体がわたしの後ろに立っていた。
「―――」
一体なにかとよく見ると、巨大なトカゲのようだった。
「?!」
横に広い身体で、どちらかと言えばカエルに近いが、カエル特有の発達した後ろ脚はうかがえず、短い脚で重い身体を腹這いに歩いている状態だった。
鳴き声か鼻息か、軽く口を開けたかと思うと、威嚇か何かと思われるが、わたしの前でおどろく間もなく遠くまで響き周囲にこだまする低く大きな声を上げた。
「お父さんか、お母さん―――っう?」
開けた口は大きい上に、どう見ても食べられたらひとたまりもないような犬歯が大量に並び、開けた口の口臭か、風下に乗ってか吐き気を感じるほどの痛んだ生ごみのような臭いがしてわたしの鼻に届き、わたしは思わず手で鼻を覆った。
「―――くさい―――」
世に言う激臭で、見ている眼も涙が滲み始めていた。
「―――えっ?!」
何にしても返さないとまずいし、返してもまずいかもしれないが、善意を見せたら何とかなるかもしれない、瞬間的にか、後でか何にしてもわたしは考えて生き物を地面に置いたが、わたしの手を離れると、逃げるようにわたしの足にしがみついた。
「―――」
手足は短く前足はわたしの足に触れているが、先ほどよりも強い力で、脅え嫌がっているように見え、わたしは思わず巨大な生き物と足元の小さい生き物を見比べ、小さい生き物を両手に優しく抱え、立ち上がった。
「―――じゃないんだね?」
後ろに下がっていった。
生き物2匹が親子関係ではないようで、あの大きさだし、何をされるかわからず、わたしは言うと表情を変え、後ろに数歩ずつ慎重に下がっていった。
よく考えればおとりにしたり放っておけばいいものだが、わたしの頭にはそう言ったことが浮かぶことはなく、少しずつだが後ろに下がり始めた中で、眼の前の生き物が大きく口を上げ、先ほどとは違う大声を上げた。
紛れもない咆哮と言うべき声で、ヒキガエルやウシガエルの鳴き声に似たより低くおしこめたような不気味な声で、先ほどよりも遠くに声が響き渡ると、生き物は足を前に進めた。
「!?」
逃げた。
追いかけてくることは必然なので、わたしは胸に小さい生き物を抱えた状態で生き物に勢い良く背を向けて勢い良く走り出した。
歩き出した生き物も合わせるように足を前に進み始め、生き物特有の裸足の湿った足音が周囲に響き渡り始め、怪物はわたしたちに向けて勢い良く走り出していた。
生き物を胸に抱え、肩にはバッグを抱え、バッグの本体が走っている影響で腰元で暴れて身体を何度もたたいているが、わたしは何にしても走った。
何にしてもノープランと言えた。
突然何処かも解らない人気もなく寒い場所で奇妙な生き物に遭遇し、巨大な生き物に追いかけられている状況のわたしに、加えて反射的に逃げたと言うこともあり考えもなしに、言わばノープランのまま走ることとなった。
先ほどまで生き物が埋もれていたゴミ箱が巨大な生き物が衝突し半分ほど踏み潰し、半分ほどを吹き飛ばして進み、大きいが迫力と言い、速度と言い、大きい生き物のほうが足が速いようだった。
「―――」
追いつかれる。
紛れもない事実で、わたしと巨大な生き物との距離は確実に近づいていた。
「どうしよう? どうしよう?」
よく見れば細い路地や、建物の階段が見つけられたが、行き止まりだと言う可能性や、階段を上っていると間に合わないと考えたか、何にしても生まれ持った感かもしれないが、走ることに夢中だったのかわたしは路地や怪談へと逃げなかった。
「―――――?!」
人影が見えた。
走って揺れる視界、道の中心に人が立っていた。
「あ―――」
「伏せて!」
「?!」
助けてとわたしが言いかける寸前、人影は勢い良く言葉を放った。
「伏せて!」
「―――」
従うしかなかった。
声はおそらく女性で、距離から判断してだが身長はわたしよりも少し高いほどだが、放った声は勢いと迫力に満ちた声で、わたしは地面に勢い良く伏せた。
「―――――え?」
一瞬だが細く明るく白い光線が人影から放たれ、頭上を飛んで後ろの走っている生き物に向かって行った。
一番妥当な表現だとするとこの言葉で、伏せた瞬間に一瞬だが、わたしの眼には確かにそう見えた。
「―――」
身体を起こし、後ろを見てみると、後ろの大きい生き物は立ち止まり、身体を大きく震わしながら空を見上げ、断末魔と言う言葉が一番妥当だと言える苦しそうな叫び声をあげ、一気に地面へと倒れ、周囲に大きな音を響かせた。
「―――」
倒れた後も少しの間動いていたが、最後の身体の反射的なものだったのか、生き物は少しして言葉通りに見事に沈黙した。
「―――大丈夫?」
「あ、は―――っい?!」
声に反応して振り返ると自分がいた。
理解できない話となるが、生き物が倒れた後、わたしの後ろにはいつの間にか先ほどの人影が歩み寄り、声をかけられ、わたしが振り返ると、わたしによく似た少女が立っていた。
「え?」
「ごめんね? おどろかして?」
顔、身長、物言いなど個人を判別する方法はたくさんあるが、自分を判別する方法は自分であること以外にないが、わたしの眼の前にいるのは紛れもなくわたし自身だった。
わたしの胸の前に抱えられていた生き物は声に反応し同じように振り向き、2人のわたしを見比べていた。
「ええ?」
「慌てないで? あなたはわたし、わたしはあなただから。」
「えええ?」
眼の前のもう一人の自分と言うべきか、わたしともう一人の彼方はおどろいているわたしに対し落ち着いた口調で話しかけるが、わたしはおどろくことしかできない中で、もう一人のわたしはわたしの前に膝をついて座った。
「可愛いね?」
「ぇ? うん―――?」
もう一人のわたしは座ると手を伸ばし、わたしの胸の前に抱えられていた生き物に手を伸ばし頭をなでた。
もう一人のわたしの服装は一言で言うと、少し不思議な、ドレスのようだが、華美な装飾は少なく、動きやすそうな格好だが多少装飾がされ、全体的にきれいでおしゃれな格好をしていた。
「ぁ―――っぇ?」
抱きしめられた。
顔を上げ、あなたは何者だとわたしが質問しようとした瞬間、もう一人のわたしが、わたしを勢い良く抱きしめた
「ぇ? あの?」
「お願い、あなたがわたし―――だったの。」
突然何をするのかと、意味が解らない状況の中で、わたしは何事かと質問しようとするが、もう一人のわたしが言葉を口にしたが、言葉は少しだけだが、震えているようだった。
「―――泣いてるの?」
「わたしが、あなただったの―――――」
問いかける間もなく、もう一人のわたしは泣いてるような物言いとなり、誰が見ても、誰もが声を聴けば泣いている状態になっていた。
「―――何が、あったの?」
「なんでもない! 何でもないの! 何でも―――――」
「だったら、泣かないで―――」
何があったかわからないが、泣き出すもう一人のわたしに対し、わたしは質問するが、もう一人のわたしは泣いてこそいるが、何かあるように見えるが、勢い良く返し、わたしは言葉を返しながら、もう一人の自分を抱きしめ返した。
「―――わたしまで、悲しくなっちゃう―――」
言うとわたしはもう一人を抱きしめ返し、もう一人も勢い良くわたしを抱きしめた。
「―――それなら、お願い―――」
「―――お願い?」
「あなたは、わたしを助けて、わたしが、あなたを助けたように―――」
少し間が開いたが、もう一人のわたしは身体を少しだけ話、わたしと眼を合わし、言葉を放つと、わたしは何かと聞くと、もう一人のわたしは泣きながら、眼から涙を流しながら言葉を返した。
「―――」
「約束、だよ?」
「―――うん、わかった。何かよくわからないけど、頑張るよ―――」
泣いているもう一人の自分に対してどう言えばいいかもわからないが、わたしは約束だと言われ、泣き崩れかけているもう一人の自分に対して落ち付いた様子で言い、もう一人のわたしは言うと、わたしを勢い良く抱きしめた。
泣いていた。
突然現れたもう一人の自分こと、わたしは本気で泣いており、わたしはどうすることもできずに、彼女を抱きしめることしかできなかった。