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Others

 天にも昇る心地と言うものがあるが、天から見る光景とはなんとも虚無的に見えるものだとわたしこと、楊人ヤン レンは考えていた。


「いざ、我らのために都市と塔を建て、塔の頂上を天へと届かせよ。そして、高らかに我らの名を上がらせ、大地のすべてに散らされる事なき様にしようではないか。」

 

 キリスト教旧約聖書創世記第11章4節のある場所に到着した人間たちが定住を始め、少ししてある人間が発した言葉だ。

 巨大な塔を建て天に届けようと言う計画だったがこの後これが神の怒りを買い、人間は散らばり、言語を混乱させ、塔と都市の開発は止まってしまった。

 ものすごく簡単に言うとバベルの塔と言う話だ。


 神話の話が仮に真実だとすればバベルの塔の建設は2、3千年以上前と推定できるが、あれから時が経過して人間は高い塔を数多く建設し、機械でだが土深く、海深くに潜り、空を飛び、月にさえ到達した。

 科学技術の発展等と同時に神の実在性が薄れゆき、バベルの塔とは異なるが高い建物が並び異なる大地や言語、種族(ルーツ)の集まるこの国、アメリカ合衆国は神話の否定と科学の肯定の証明の都市だと思えたためだ。

 人間はたとえどこまで天高い位置に行くとしても神のもとへと到達することはできないか、いつの間にか気づかない間に通り過ぎているのだ。

 話しを聞きわたしがどこにいるかと言う疑問が発生すると思うが、わたしは塔ではなく、この時は詳しくは知らなかったがAGEの頂上から地面を見下ろしている状態だった。


同じ姿をしている仲間以外がこの時わたしの容姿を、全身を鎧と言えるほどの黒い防護服に身を包んで武装し、手には銃を持ち、目元のレンズが赤く大きな2つの眼に見える防毒マスクなど、遠目に見ればだれもがあの恐竜の様な怪物と同類だと誤解するだろう。


Warriors

And

Revolution

Professional


 何者かと聞かれると、自分自身さえもある意味調査中で、この身に着けた服の胸部に書かれたアルファベット以外はわたしの身分が解ることはこれ以外は不明だ。

 楊とは名乗るが、わたし自身はもうこの名を名乗る資格はないと思うし、わたしは仲間に対し、アクター、演じる者、役者と呼ばせていることがある。

 記憶喪失と言う訳ではなく、わたしには過去の記憶もあり、わたしには苦い記憶が存在している。

「―――司令官。ヴィナ副司令官との交信は後少しで可能になります。」

「―――ああ。」

「―――どうしました?」

 苦い記憶とは過去に起きたある日のことだ。

 変わらぬ毎日に変わらぬ世界、解らぬ日常の中で突然世界は崩壊した。

 正確にはわたしの生きていた世界、と言うべきで、わたしは空想の物語などで世に言われる多元宇宙の内の世界の1つ、言わば並行(パラレル)世界(ワールド)で生まれた。

 多元宇宙とはこの宇宙が、言わば世界が1つだけではないとする科学的な推測であり、並行世界とはほかの宇宙の中で異なる歴史を歩んでいる世界である。

 この話は空想科学の世界において非常に難しい説明が必要となるが、これからできる限り簡単に説明する。

宇宙誕生が150億年前であり、地球誕生が45億年ほど前と考えられ、宇宙が複数存在しているとして、すべてが全く同じ歴史を歩んでいるわけではないのだ。

この宇宙すら誕生していない可能性や地球が誕生していない可能性、恐竜が絶滅しなかった可能性など、多元宇宙の並行世界には複数の可能性が秘められている。

わたしの世界が崩壊したのは正確には1999年の12月31日の時で、原因は不明だがある日世界は文明や機能を失い、人間は生きる気力を失い半場弱肉強食の暴徒化し、言葉通りに荒廃し、滅亡へと向かっていた。

 あの恐竜の様な怪物たちも朝昼夜を問わず大量に姿を表して人を襲い、人間外の生物が世界を闊歩し戦い、人間の住める場所は限られ、減少し、絶滅まで時間の猶予はなく、本来ならわたしも死ぬ人間の1人だった。

 正確には子供と言うべきで、わたしの正体は幼い中国人の少年で、楊人と言う名前は助けた謎の2人の人間から与えられた名前で、わたしは彼らに敬意を込め、名前の前にマスターと呼んでいる。

 1人はわたしと同じアジア系だが、日本人だと思われる、自らを「アラキ」と名乗り、もう一人は白人の女性で自らを「パール」と名乗り、2人合わせ、自らを「敵でも味方でもない、正義でも悪でもない、たとえて言うと、調節者だ。」と言った。

 調節者が何を意味し、マスター2人が一体何者で、何を考え、何が目的かは一切わからないが、謎の高度な技術を持ち、助けられ、生きるすべを教えられ、世界崩壊後損傷がひどすぎ、瀕死の状態のわたしの身体に3分の2以上が機械化したこの身体を与えてくれた。

 機械化されたわたしの身体は脳までも機械化されている部分が存在し、人間としての部分は非常に少なく、時折わたしは自分が本気で人間なのかと疑う時が存在する。

鏡を見れば普通だったが、どこまでが機械化しているかわからず、眼が機械かもしれず、自分の身体や顔が人から見てどのように変化しているのかわからず、恐ろしくわたしは現在でも人前でマスクを外すことができないでいる。

マスターたちを疑うわけではないが、眼が調節され一部の不都合なものが見えないようになっているかもしれないし、服を脱いだ全体は魑魅魍魎と変わらないのではないかと思ったこともある。

 高い技術力と高い戦闘術、高い思考力をマスターたちは持ち、懸念に対しマスターアラキは、「最終的な人間の価値は人間個人の精神が決める物であり、自らを人間かと疑うと言う意思がある限りは人間として存在し続ける。」と言った。

マスターアラキの言葉に続き、マスターパールは「人間と言う存在が誇りをもって生きるに値する存在かはわからず、人間として生きず、人間外の存在として自らの誇りを持ち、貫いて生きることも大切だ。」と続けた。

2人は必要最低限のことを教え、何が目的か詳しくは話さなかったが、まだ幼くもあるが、心身共に成長したわたしの推測では2人は未来やほかの世界から来た高い技術力と戦闘力、文明性を持った存在だとわたしは現在来ている服を含め考えている。

懸念は晴れたわけではないが、わたしは救われどこかで機械化の手術や戦闘術や科学技術を教えられたわたしは本来の世界に戻され、この身体と服を使い戦い、わたしは半塲人類を指揮する指揮官のようになっている。

並行世界と別時間へと移動能力など、現実的ではないが、わたしは仲間を含め身をもって体感している状況だった。

特にわたしはその一人でマスター2人を疑っていたわけではないが、ここまで来た自分自身に対しておどろき、言葉を失っていたのだ。

服の胸部に書かれたアルファベットの単語、略して「ワープ」が明確には何を意味しているか不明だが、わたしだけではなく、わたしたちの仲間には、なさなければならないことが多く存在している。

「1998年の12月25日、わたしたちは時と世界を超え、ここにいる。」

「当時、まだ子供でしたっけ? 確か母と姉―――、あ? すみません!?」

「いや、言い、気にするな。事実だ。」

 わたしが現在何をしているかと問われると、わたしたちは、きれいに言えばこの世界を救おうとし、悪く言えば歴史を変えようとしている。

 マスターの教えによる偽善かもしれないが、わたしはこの身体と戦闘術、技術力などを与えられ、わたしはわたしの世界の全人類を指揮する存在となり、わたしの世界の二の舞を踏ませないようにしてようとしているのだ。

「特殊強化服、ヴィナたちの行った20年以上も先の世界、ゲート技術、あなたの言うことが本当だったなんて………」

「―――与えられたものだ。英雄など救世主などと言われるが、これはわたしのしていることが魔法や神の力ではないと証明し、自らを脆弱な人間だと証明したにしか過ぎない。」

「―――」

 非核などを破った核戦争だったのか、新兵器なのか、神の天罰なのかは原因不明であり、わたしの世界の歴史を変えることはできないが、わたしはわたしの世界以外をあの凄惨な姿に変わるのを見たくなかった。

「―――疑っていたわけでは――――」

「過去は変えられないし、本当の目的はわたしたちの世界にもう一度文明を復活させることだ。」

 原因を調べ、わたしたちがすべきはこの世界でのあの惨劇を防止し、仲間のディナが向かった未来も守り、わたしたちの世界にもう一度文明ある世界を取り戻すことだ。

 この世に第2、第3の楊人をわたしは造りたくなく、わたしは本物ではないと言う思考上、自らをアクターと名乗った。

「―――ヴィナと話がしたい。」

「―――あ? はい!」

 ヴィナ レインはわたしの仲間の1人だ。

 詳しくは話さないと言うよりもわからないが、一見すると人間だが、人間とは思えない力を、本人が言うには神の力を持った女性であり、強い力を持ち、副指揮官としての立場を持ち、この世界の20数年後の世界にわたし同様に調査のために同じ任務で向かわせた。

「―――通信は5分ほどです。」

「解っている。それだけ話せれば、安心できる………」

 作業する仲間を放置し、屋上の端に立ち夜景を見ているような状況だったが、わたしにも指揮官としての仁徳があるのか、ほかの仲間を含め大型の通信端末を調整していた仲間もわたしを叱責する様子はなかった。

「ヴィナ? わたしだ。」

『司令官? 楊司令官? ご無事ですか? 大丈夫ですか?』

 天使と言うよりも、彼女はわたしにとってのと言うよりも皆にとっての女神で、受話器で話すわたしの近くには仲間が集まり、聞き耳を立てていた。

 通信機越しにだが大人びた女性の、才色兼備と言う言葉に見合った能力と外見、声をしているもので、わたし個人の見解だが男であれば時が止まるし、女でも文句を言うものはいないと思っている。

 歌も歌え、少しすれば彼女のもとへと行き、ひさしぶりに仲間と彼女の歌声を聞き、一部とは言え機械化しているが心を癒したいとも思った。

「―――大丈夫だ。お前は大丈夫か? わたしは巨大な昆虫の様な人間を見た。」

『―――わたしは前にも報告しましたが、ぬいぐるみの様なソーの群れを見ました。』

「―――そうか、お前は何にしても自分のことを優先して調べろ、仲間にも―――」

 1998年の12月25日と言う時間にわたしたちが来たのは1999年の12月31日までに何が起きたか入念に調べるためであり、ヴィナを未来に派遣した理由は崩壊したにしろ、しないにしろどの世界にも共通点が存在していたためだ。

 ヴィナの様な存在の出現がこのころから、1998年のこのころから始まったためで、マスターから言われ、何を意味するか不明だが、20年数後に出現が限界点に到達するそうだ。

 世界を滅ぼす魔法などありもしないだろうし、わたしはこの時代と、マスターの与えた情報とを信じるついでに正体を確かめ、ヴィナの話す神に似た力と言われるものを持つ存在に何か鍵がある気がしていた。

 上から見ても真実は何も見えないし虚無的だが、2つの時代は、必ずどこかで接点を持ち、世界崩壊の手がかりになるとわたしは考えていたし、魔法もないのでわからず、奮闘することになったが、これがヴィナを含め、意外に結果を招くことになる。


 魔法が使えたらなんて言葉があるが、わたし、アリス フローレスの日常では夢物語のようだが溢れていたし、わたしは世の中の人間が言う魔法使いと言う存在の本物の1人だ。

 魔法少女なんて聞くような華やかな雰囲気もなく、一見すると普通の人間で、魔法を使えるようにも見えず、日本の絵本の様な魔女を思わせるような外見でないのは悪眼立ちしないためで、ハロウィンでもないためである。

 話や言葉で見なくては信じられないだろうが、魔法の国の入り口と言うようなものも存在し、普通の人間から見ればわたしは異世界からの住人であるが、わたしから見れば逆に異世界であり、わたしはこの時この異世界に侵入していた。

 魔法を使えるかと言ったら、わたしは実際の年齢は10歳だが、高度な魔法が使え、20代前半ほどへと姿を変えてここで表向きには生活していた。

ほかにも絵に描いたような、夢のような高度な魔法が多く使えるが、何にしてもよく言えば魔法を使い、悪く言えば偽装してわたしは警察官になって謎の怪物の調査をしていた。

 話のリレーの順を踏まえると彼方やドギーたちが遭遇した怪物で、わたしはあの怪物が何かを調べていたのだ。

 幼い子供で無茶と思われるが、普通の人間の増加で魔法を使うような人間は暮らして行けず安全な場所を造りだしたが、人口も人間に反比例し減少傾向で、わたしもどうしようもなく秘密で調査に駆り出されている状態だった。

 怪物の調査と言ったが、なぜ人間を襲うかもわからず、人口も減少傾向で数百年で時間的な絶滅は免れないと考えられていたが、攻め滅ぼされる滅亡は回避したいための策だった。

怪物は魔法でも神の力のようなものでもなく、幻想の竜の様な生き物でもなく人を襲い、わたしは人間がひそかに造りだした化学兵器なのではと考え、調査をしていた時、1998年の12月終り頃だった。

 もう少しで、正確には新年まで5日となった時、調査して数か月が過ぎ、何の手掛かりもなく、月ごとの提示報告も終え、数か月が過ぎようとしている中で、わたしは怪物に襲われたと思われる人間の死体の現場を見ていた。

 警官2名に、民間の人間1人で、だれがどう見ても人間に殺されたような傷ではなかったが、わたしが見ている中で同僚こと本物の警察官たちは事件現場を半場事務的に片づけていた。

 現場で事件のことで話し合う警官たち、深夜にも関わらず集まる野次馬や報道陣の声やカメラのシャッター音、パトカーのサイレン音と、警察と事件らしい雰囲気が漂っていた。

「―――現場でタバコ吸うの止めてくれませんか?」

「吸う自由。」

 現場に合わないと言えば横の少し後ろでタバコを吸っている上司となったマシュー カーツマン警視で、ネクタイが無く、家のどこかから引っ張り出したように見える少し着古したスーツ姿で、髪も寝起きの様な乱れ髪でタバコを吸っていた。

「灰が落ちます。」

「―――知るか。―――それに鑑識ももう調査済みだろうが?」

 だれがどう見てもヘビースモーカーで、紫煙をまき散らしている状態だった。

 入って数か月でよくわからず、不真面目に見えるが、階級も警視と結構上で、偽装でほとんど付け焼刃の知識のわたしと違い米国5本の指に入る法律専門の大学も卒業し、弁護士資格も持ち、多くの殺人事件も解決した一応は優秀な刑事だそうだ。

 態度は悪く機嫌悪そうに見えるが真夜中に呼び出されたせいでもあり、実際は優秀だそうで、警察に入る前は一流企業にも勤めた経験や、倒産寸前の会社を立て直すなど、高い経営手腕や深い人脈も持っているなど、警官と言うよりもビジネスマン的な印象だった。

 少し遅れてはいるが一応来たし、署長などの偉い人間にも信頼されているようだった。

捜査中に時折会うFBIのジョージ フライヤーとは大学時代の動機で友人関係であり、上層部にも血縁者がいるとのことだが、スタイルなのか、外見的や行動は不真面目を絵に描いているようだった。

「ショットガンでズドンだよ。まったく、サムのだったら笑いものにならんが、ショットガンだから特定ができんな?」

「―――盗まれたんでしたっけ? カスタムしたショットガン? まだ見つかってないんですか?」

 円筒形の携帯灰皿に灰と根の近くまで吸ったタバコを入れる中で2本目を吸出しながら口にした。

 話したショットガンとは数か月以上前に盗まれたマットの友人であり同僚、大学の後輩である白バイ警官をしているサミュエル アーヴィング警部補の彼が改造した銃のことだった。

 競技用のものを改造したそうで、威力で反動は高いが、結構仕組みもよく使いやすく改造していたお気に入りが盗まれたそうで、現場からはショットガンの薬莢、言わばショットシェルが見つかっていた。

「どこのカイル リースだ? ターミネーター潰したら返せっての。」

「冗談に―――」

「マット、いいか?」

 ショットガンは多くが小型の弾丸を撃ち出す弾丸で、線上痕、言わばライフリングがなく遠距離では弾が拡散し命中率が低迷すると言う弱点を持っているが、近距離、特に目の前での破壊力が高く、威力や弾によっては頭部は完全崩壊するか吹き飛ぶことになる。

 ライフリングを持たないため仮に犯罪に使われると仮に弾丸が発見されてもどこの銃かわからないと言う利点も存在している。

 傷を見れば動物のものだと、ワニのような爬虫類のものだと解るが、ワニなどいるわけもなく、一応は改造されるが証拠も出るわけもなく、頭も見つからず事件は迷宮入りするような状況だ。

気にせず、殺人などたくさん起きていると言うようにマットはタバコを吸っている中でわたしは注意しようとする中で、後ろから連邦捜査局の捜査官でもあり、マットの友人のジョージ フライヤーが話しかけてきた。

「―――こんな事件に国の犬、連邦捜査局が動くとはな?」

「マッ―――」

「事実だよ、アリス、―――だが、あの写真信じられるか?」

 不真面目だけでなく口も悪く、とても同じ大学で学んだ人間とは思えなく、振り返り失礼千万なことを言い、制そうとする中で、ジョーは軽く笑って返したが、マットには真剣な表情で返した。

「―――野良犬にでも食われたか、それっぽいナイフでも使ったか、何にしてもその手の好きな変態に見せたら高く売れそうだったな?」

「―――」

 内蔵や脳、身体の部品が千切れなくなり、ホラー映画で見るよりも恐ろしくて絵にも描けないような光景の無修正写真を見た男の反応がこれである。

 ある意味警察官としては冷静な判断力で正解だが、人間としては完全に失格だった。

 連邦捜査局も連邦捜査局で、ジョーは仕事として見せたのだが、彼個人の裁量のようで、ある意味気が合うのは合う部分があるようだった。

 大切なのは連邦捜査局も事件について興味を持っているようで、関連してあまり公にはなっていないが、奇妙な殺人事件と言うよりも怪物に襲われる事件がアメリカ全土で最近連発していることは確かだった。

 タブロイドなどの3流雑誌や新聞は取り上げ始めて、少しずつだが、テレビでも放送がひそかなにされていたのをわたしは数か月前に見た。

「―――事実だ。」

 状況的に不謹慎すぎるが、これこそマットの口癖である。

「―――何にしてもだ。たとえ野犬とかが襲って食ったにしろ、男も身分証はなしでてがかりなしで正体不明だし、適当な奴捕まえて逮捕するわけにもいかないし、ほとんど迷宮入りやX-File行き決定だな?」

「―――」

「あのハゲデブの機嫌がまた悪くなりそうだ―――」

 単に生まれ持った性格なのか、過去に余程人を嫌う何かがあったのか、本当に口が悪いのかわからないが、署長のほうに対し眼を向けて言った。

 確かに署長の頭の髪の量は少なく、少し体格的に大きめで肥満気味だが、自分がタバコを吸って灰が不健康なのを棚に上げた物言いである。

「リリー ブラウンにもいずれ感づかれる。」

「彼女のことを悪く言うなよ? マット?」

「高くは評価している。個人的に好かないだけだ。」

 言いながら腕を組んだマットだったが、2本目がなくなりかけ、携帯灰皿を取り出してタバコを吸うのを止め、考えるように目を反らし腕を組み直す中で言うとジョーが言葉を返し、マットは仕方ないと言うようにジョーに一瞬眼を合わせて返した。

 リリー ブラウンはフリージャーナリストでよく取材に来ている女性だ。

「―――まったく嫌な夜だ。」

「―――そう言うなよ?」

「雪も降らんし、無駄に寒いし、いりもしないクリスマスプレゼントをクリスマス以外にも持ってきやがる。」

 日付が数時間ほど前に代わり、現在は12月の26日になっている。

 あと数時間ほどで夜が明け、太陽が西から姿を表すことになり、これを繰り返すことで何千何十と言う時間が経過し、ほんの少し先でも未来と呼ぶことになる。

 マットとジョーが話している中でわたしは思わず顔を上げ、夜空を見上げた。

 建物と建物の隙間から狭いが夜空が見え、わたしたちが悲惨な現場の中にいるが、空は変わっているようで変わらない色だった。

 数日ほど前まで雨が降っていて湿った感じがするが、空には雨雲らしき雲も見えず、明日も寒いが晴れてきれいな青空が広がってそうだった。


 たとえ話をすると言うよりも、現状のわたしこと、堂城飛鳥の話なのだが、言葉通りに歴史的危機だと言われ、時を超えて原因となる危機を回避させ、歴史通りに動かそうとすることは奇妙な状況に感じる。

 いったい何の話かと聞かれるが、最初に肝心なのはある意味わたしと言うよりも、佐藤桜がだが、リードとアーウェーと同じ、似たような存在であることだ。

 正確にはリードよりで、ORGが時間移動の治安維持を目的に結成と言うべきか創設と言うべきか造った会社ワープで働いている職員、と言うよりも半分はPMCの軍人だと言え、ワープとは以下の略である。


Weapon

And

Rescues

Professional

 

現在で言う公務員であり、昔の人間が世に言うタイムパトロールであり、半分は民間なので、一般的な労働者だ。

 リードと山中がPMASCと表現したが、あれはAGSの意図的表現であり、PMCが一般的で、2人は自らを傭兵と言ったが、2人は差別意識と言うべきか何かがあるようで、一般的にはPMCの社員はPOと言われている。

 POはプライベート オペレーターの略であり、民間組織の護衛などの任務を遂行するオペレーターであることを意味している。

命令無視しているリードがいるが、わたしたちの目的はと言うと、ほかにも多くあるがリードと、山中一輝を追い、2人を協力させ、プロジェクトヤーウェーを阻止させることである。

だれかが聞けば読めば見れば、何にしても奇妙な命令に聞こえるが、わたしたちはそう命令を受け、わたしは一応ではあるが、大佐と言う階級で、この作戦の指揮を執り、直に足を運んでいる状態だ。

1999年の12月25日に原因不明だが時間移動した山中一輝と、アーウェーを追い、同時刻に到着したリード ファイヤーに協力させると言う奇妙な任務だが、これが現実だ。


整理するとこうなる。


『リード ファイヤーにプロジェクト ヤーウェーを阻止させる。』

『時間移動事故に巻き込まれた山中一輝にリードファイヤーを監視及び協力させる。』


一見すると間違いかもしれないが、奇妙すぎる話かもしれないが、確かに2人はある意味仲間だが、これがORGから受けた命令だった。

PMCの命令無視で違法な時間移動をし、ハイブリッダーのPOリードと、普通の人間だが時間移動の事故を起こしたPMCPOの山中一輝を協力させろと言うのだ。

冗談のような命令かもしれないが、正式な命令であり、正式な書類が発生し、2人には一時的だが逮捕の保留と必要物資の補給、給与支払いと言った身の保証が約束され、わたしたちは彼らを探し出して伝えに行くことになっている。

「Mr.ジョセフとの接触(コンタクト)は終わりました。2人の行方は調節者の2人に任せ連絡待ちです。ハドウと楊人は調節者の2人が担当すると言っていますので、わたしたちが接触する必要はしばらくありません。」

「―――」

(れん)? 無線聞こえてる? クラッキングは良好? ドレッド大将はオーダーは出してくれた?」

 わたしの相棒となっている桜は歩きながら上司としてのわたしに対し報告を行い、無線機越しに恋と通信を行っていた。

 深夜だが、彼女はほかにも仕事があるし、時間など気にしているひまはないと言うような様子だった。

「―――ヤマトガードとかほかの会社へ手回しできた? うん、ありがとう。大丈夫。こっちは任せて!」

 大人びて見えるがわたしよりも小さく細い体で15歳と言う年齢ながらわたしよりも立派な、兵士と言うよりもPOらしさが出ていた。

 簡単に言うとわたしたちがすることは違法な時間移動をした男と時間移動事故を起こした男2人を協力させ、ある男の巨大な計画を阻止させることを手伝うことだ。

 一見すると本当に奇妙な事態で、何が正しいのか、何が悪いのかの境界線がよくわからなくなることがある。


 迷っているひまや考えているひまはないし、わたしこと佐藤桜は前を歩いている飛鳥を押し出すような勢いで後ろを歩いていた。

『―――クラッキングは3時間以内に終わる。桜も気を付けて?』

「うん。」

 奇妙なことで仕事であることは確かだが、何にしても仕事として片づける気だし、わたしは恋との通信を終えた。

 歴史や何かを守ると言う理由ではなく、わたしは自分自身のために、自らの未来のため、自らの意志を守るために戦おうとしている。

 第二次大戦後と同様に第3次大戦後に機構と機関が冷戦状態になった数百年後にわたしと飛鳥は生まれ、わたしたちのすることは過去と未来と現在と言う時間に多大な影響を与えている。

 リードよりも未来から来たと言えるが、わたしたち自身の介入によって歴史の変化もありうるし、不確かなもので、最悪世界の崩壊の可能性も存在し、わたしたちが来たのは一種の可能性の1つだとしか言えないのだ。

 語りべは1人ではないし、わたしが知っている範囲はリードと山中を含み2人が主だが、この後も数は少ないが語りべは存在している。

この物語は複雑怪奇な交差点、クロスオーヴァーが発生しているし、わたしたちを含むこれからの物語は2転3転することになっている。

 わたしたちと表現したが空野彼方を含み、多くの人間がかかわっていることで、リード ファイヤーと山中一輝は当事者の1人2人にしか過ぎないのだ。

「―――GPS情報は確認まで後―――」

「―――」

「―――どうしました?」

 歩きながら状況報告をしていると、不意に飛鳥が何を思ったかと言うように立ち止まった。

「―――桜、本気でいいのか?」

 何かあるとだが、この人はと言う言い方は後輩として失礼だがいつもこうだ。

 3年前から彼女を知っているが、人間的と言えば聞こえがいいが、わたしがハイブリッダーと言うこともあるが、この仕事に対し深い疑問を持っているのだ。

 確かにこの仕事と言いしてきた仕事には疑問を投げかけるものも多々あり、数多く仕事をして場馴れすることや事務処理化もすることで疑問が生まれることは事実だ。

「―――立ち止まっているひまありませんよ?」

「―――――だがっ?! わたしたちが―――」

「―――イタチごっこかもしれないのは事実ですが、わたしはイタチじゃないし桜、あなたは首輪を外した犬、そして彼らは傭兵(マーセナリーズ)です。」

 感情的な飛鳥に対しわたしは冷静に返すが、飛鳥は振り向き勢いよく返そうとする中でわたしは黙らせるように口を開いた。

 イタチごっこは事実で歴史は繰り返されると言う言葉があるが、わたしたちのしていることは繰り返される歴史の中で時に干渉できる身として、時としてと言う言葉から始まり多様な立場で必要最低限の努力をすることだ。

 この時わたしは桜と言ったが、アクセント的に、英文的に言うと植物の桜を意味しているし、これがわたしの自分としての位置づけだ。


Version Cherry Blossom(SAKURA Or 2.50)


 わたしはリードと同じハイブリッダーで彼よりも数百年も後の世代の最新型だ。

 わたし自身年齢が至らずわからないが、わたしにはリードと違い理論上だがハイブリッダーとして生殖で仲間を増やせる能力が存在しているなど、多くの改良がくわえられている。

第3次大戦後の平和利用目的もあるが、変化速度なども1.34程度だが上昇し、「サクラシステム」と言うほかのハイブリッダーの遠隔操作能力も持っている。

「―――――っ?!」

 不意に眼に、性格には瞳に少し強い痛みが走った。

「桜?」

「う? ん?」

 改良されたとは言うが、わたしは精神的なものだが実は現在能力を半分以上使えない状態で25%ほどしか使えず、制御も難しい状態だ。

 眼が痛むのは推測だがハイブリッダーアイが制御できていないためだし、わたしの眼ではわからないが飛鳥から見て眼は光り始めていた状態だったと思われる。

「大丈夫か?」

「大丈夫です。ここで―――」

「大丈夫ではないだろうが!?」

 一時的なものですぐに進もうとする中で飛鳥に心配され大丈夫だと返したが、飛鳥が引き止めた。

「鈴乃から話は聞いている。無理しないでくれるか? 一応は保護者なんだ。お前を人間として―――」

「―――わたしは人間じゃない。」

「―――!」

 確かにわたしは鈴乃こと、かかりつけの医者から行動に制限は設けられているし無理もしている状態で、飛鳥の言うことも解るが、わたしは人間としての精神なんかあってないようなもので、そっけなく返した。

「―――――何で叩くんですか?」

 感に触ったと言うべきか、飛鳥はわたしの顔をたたき、わたしは後ろ向きに倒れ、起き上がる中でそう返した。

「―――なんで、そこまで、する―――」

「―――?」

「―――恋と言い、何で名乗りを上げた?!」

 真剣な問いかけで、飛鳥は泣きかけていた。

「―――だれかがやるんでしょうね? だけど―――」

「―――――?」

 言いながらわたしは飛鳥に勢いよく抱き付いた。

「―――やらされた彼らは、選べなかったんですよ? 逃げられなかったんですよ?」

「―――」

「生と死とも隣り合わせで、踊らされて、飽きたら捨てられて―――」

 飛鳥は何も言わず、わたしを抱きしめ返した。

 冬の夜は骨にまで響き痛みだと感じ、手足も動かしにくく寒さの中で服と言う境界線はあるが、暖かいものだった。

「―――変な話ですよね? わたしたち生きてるのに、生きている根拠とか人がこんな場所なんて、こんな場所守るなんて、何で、何でこんな―――」

「―――――桜、泣いてるのか?」

「―――――?」

 気が付くと何をやっているんだと言うようにわたしの眼からは涙が流れていた。

「―――――」

「―――悪かった。だがわたしの身になってくれ? こんなこと―――」

 必死に涙をふきはじめる中で飛鳥がハンカチを取り出してふきはじめたが、飛鳥も眼が涙目になっていた。

 わたしと飛鳥は少しの間この状態で動けないでいた。

 教科書の歴史は書類的な価値しか持たず、歴史の裏側と言うものはよほどの人間でない限り知られず、わたしたちはある歴史の中の一片の中に存在し、これはある意味語り継がれない部分だ。

 なぜなら本来未来から来たわたしたちがここに存在してはいけないし、ある意味歴史を変えようともしている極悪人とも言え、わたしたちが存在することが彼女ら彼らにとってある意味不都合な事実と言えるからだ。

 

 異世界が実在している。

 突然何のことかと聞かれればアリスの話で言うまでもないが、アリスの暮らす魔法の世界が実在し、僕の様なハドウ キョウカの生きている様な魔法ではなく、この世界と比べた場合だが、科学技術などもまったく異なる異世界が実在していることだ。

 アリスの世界と違い本来は気軽にと言うよりも移動などは絶対に不可能だが、僕たちは確かにこの世界に来ていた。

「あのアーウェーって言う男の話とデータは真実だったってわけだ?」

「―――」

「同じ時間、同じ場所だけど、ここまで違うなんてね~?」

 窓から見える景色を見てもうじき夜明けが近いなと思っていると同僚こと、幼馴染のサリー アンダーソンが話しかけてきた。

 彼女の言葉の通りで、僕たちはアーウェーと言う僕たちの世界で偉い人間たちが話している場に突然姿を謎の男から謎の技術を与えられ、この世界に来ていた。

 現実とは思えない科学技術で異世界に来たが、この世界の人間から見れば僕たちが異世界からの住人で、僕の眼でも見ても解る異世界が広がっていた。

「装衣もないっていうし、アメリカ合衆国だったけ? もう一つの、帝国の言ったほうは確か日本? 20年後くらい先の?」

「―――」

 話しているサリーが少し不思議そうに外の光景を見ていた。

 彼女の言う装衣とはアームドスーツとも言われる乗り込み操縦式の大型機械を意味している。

 重機などの延長で少し大きくこの世界とは科学技術が違うため、馬力などが格段に高性能だが、ハイコストなのが弱点だが、かなり一般化し、僕はここに来るついでに新型の装衣のテストパイロット、アームドスーターになっている。

「―――平和ね? 世界中戦争だったのに、ここは静か………」

「ここでも、戦争はある場所はあるらしいけどね?」

 僕たちは世界中で戦争をしている世界から来ているためか、眼の前に映る光景が信じられないほどに平和に見えたが、ここ以外では確かに戦争が起きていることは確かな事実として判明している。

「―――わたしたちの世界よりかは、平和なんじゃない?」

「―――そうだね?」

「―――それよかブリーフィングブリーフィング! 怒られるよ?」

 サリーは早歩きで走って行き、僕はそれを見ている中で歩き出した。

 アーウェーと名乗る男によってもたらされた科学技術により、僕たちの世界とは科学技術の進歩が完全に異なるこの世界へと僕たちは到着し、僕たちは先遣部隊、言わば軍隊として調査に来ていた。

 これは僕だけの意見ではないと思うし、僕の仲間が多く言うが、移動はできたが、アーウェーと言う男を僕はどこか信用できないし、何かある気がした。

 人を見かけで判断するなと言う言葉があるが、頭が無駄によさそうで、裏で何か策略を張り巡らしてそうで、この世界に来たら何か飛んでもないことでも起きる気が僕はしていた。

 この世界に到達することで現在は何も起きていないが、定住や侵略、友好と手段はいくつも存在していたが、これが明るい未来になるか暗い未来になるかもわからないと思う中で僕の背後では夜明けの空が広がり始めていた。

 まぶしい太陽の光と外に出れば感じられるであろう自然の匂いときれいな世界が僕たちを優しく歓迎しているようだったが、僕たちの存在と言い、これは現実は思わぬ方向に進む序章だったと言えた。


 『わたしに残され道は二つに一つであり成功するか失敗するかで、成功はわたしだけでなくこの世界そのものを救うことにも直結し、失敗はわたしの死とこの世界の終りへ直結しているとも言える。

 この記録が後にわたしが英雄として崇拝されている時となった時資料として使われるか、遺言となりだれかが聞くのかはわからないが、何にしても話を進めなくてはいけない状態だと言える。

 わたしの名前はアーウェー サテライト、機関の代理人(エージェント)だ。

 仮に死んだとすればこれを機構の人間たちの多くが見ることになるかもしれず、言うが間違いなくセデンとも言われている悪名高い機関を意味している。

わたしは代理人であり、第3次世界大戦中に行われていたと言う悪名高いプロジェクトヤーウェーの実行者である。


 PMCAGSに逮捕され確かにのちの、現在の機構の前進組織をだましたことになり、確かにプロジェクトヤーウェーには違法な生体実験をしているが、これは神と人間、動植物と文明、時と世界を守るために発生する必要な犠牲と責任追及の結果である。

 第3次世界大戦で人間は神と言う空想上の存在と本格的な武力戦争を繰り広げることとなったが、結果は意外にも神側の虐殺とも言えるほどの敗北に終わった。

 神は旧時代的思考集団であり、人間の科学全盛の時代も迎え、科学と魔法の区別がつかなくなった世界において神は実在が不明瞭の間は権威を一応は保てたが、第3次世界大戦でそのミリタリーバランスは本格的に一変した。

 ゲート技術放棄の強制要求を無視した制裁として宣戦布告したが圧倒的な惨敗で終戦を迎えて神側への不平等条約締結や高額な賠償金請求、研究が始まる中で神の権威は世界恐慌なみの暴落を始めた。

 神や宗教を崇拝する人間が消滅するわけでもないが、無神論者を始め、核兵器やハイブリッダーと言った神を超える存在が姿を表し、神の権威は地の底に落ち下水に捨てられたと言っても過言ではない状況だ。

 この世界を創造し破壊する力を持つとも言われ破格の力を持っていると言われその事実は確認されたが、最初のこの世界の創造者はついに姿を表さず、第3次大戦のように裁きを人に与えられないなら当然の結果だ。


 神を超える偉大な存在を造りだし、この世界を新たに統治と言うよりも制御する事こそ神に勝利した人間に求められる義務であり、神は人間に失意を与えた責任として犠牲になる義務が存在していることは必然だ。

 核兵器に見られるように理論上は地球を超え世界を何度でも破壊できる核兵器や、核兵器や神を凌駕し大量殺戮破壊兵器と言われるハイブリッダーを造りだす人間はいずれ限界を超え自らを滅ぼすと言え、制御する存在が必要なのだ。

 無神論者のような存在を無視し続けた神には人間の精神を制御する責任が欠損しているとも言え、人間には神を超え心身の制御をする存在が必要だ。


 リード ファイヤーと言う男がいる。

 PMCAGSの傭兵で階級は中佐、コードネーム、ライツオブゴースト、第3次大戦中にわたしを逮捕した男で、さきほど、正確には13分26秒前にある意味感動の再開をしたところだ。

『姿なき場所に光が存在し、幽霊のようだった。実在するとすればそれは、幽霊(Rights)の(Of)光(Ghost)』

 オーヴァーマシンの遺伝子と細胞の改造作用の副作用で眼に白眼の部位がなくなる上に青白く発光し、神を凌駕する性能を持つ言葉通りの人工の最強の怪物だ。

 20世紀後半ごろには研究が始まっていたとも言われ、機関と対極の政治思想を持つ機構の終着点の結果とも言える。


 第3次世界大戦後世界には機構以外にも連盟や連合、連邦、同盟と言った多くの国際組織が誕生し、機構は国際連合の再考組織であり、機関は第3次大戦前に結成された国際連合に対抗する組織だった。

組織的規模もあるが、一番の違いは政治思想であり、機構と機関は第二次大戦後の米ソ冷戦化を再現するように対立している。

 対立原因は何と言えば政治的思想であり、機構は人間と言った知的生命体の思考を政治として使用する人間思想主義集団、機関はAI『ジェホーヴァ』を利用した組織管理による機械管理主義集団として対立している。

 機械に管理されていると言われると機構の人間や、第3次大戦前の人間、加えて空想小説が好きな人間には外道な時代錯誤的かもしれないが、わたし個人の意見で盲信的だとも思うが、実にすばらしいものだと思っている。


 巨大な組織であり安定した経済と治安と生産性を保持し、頂点が普通の人間である資本主義や社会主義と言った最終的には人間思想主義に腐食される巨大組織と違い、機械の管理による個人の意思なき絶対的な統制が存在している。

 ハイブリッダーを機構の終着点の結果とも言ったが、ハイブリッダーたちはいずれ暴走し、世界そのものを破壊するが、ジェホーヴァは逆に人工知能として世界を管理することができると言える。

 これは確かに機械に支配されているとも言えるが、管理されているとも言えるが、部品の1つのよう使い捨てで使われているかと思われるが、これこそ旧時代的であり、機構の言い訳でしかないとわたしは考えている。

 強制ではないが、機関側の多くの人間が常識的にそう考えているし、冷戦中の東西ドイツのような壁も存在せず国交もあるし、双方の亡命なども合法的に認められている。

 人間思想主義が悪の根源とは言えず、機械管理主義の機関も機構と同様で総意の国際組織であり、冷戦の再現とも言ったが、これはある意味PMCの陰謀だと言える。

 戦争はいい商売とも言われ、戦争が終わった世界において、特に民間経営され多額の利益を上げていたPMCには苦しい時代の到来であり、何としても巨大な敵が必要であり、機構の偽の警笛を上げ金を巻き上げているとも言えるのだ。

 

 必要なのは戦うことではなく、繰り返すが的確な管理である。


 プロジェクトヤーウェーを実現する準備は整いつつあるが、研究を実現するには時の壁を超えて実行する必要が存在し、1年ほどの準備期間が必要となる。

 開始が1998年の12月25日、わたしの研究所で開始、1999年の12月31日に、最終段階へと移行する。

 失敗すればわたしは歴史の闇に葬られるし、成功しても名を残すことはできないが、人間は永久の安定した世界を手に入れることができると信じている。

 

仮に失敗するにしても第2、3と後のプランを整えている。

何にしても、数百年と言う時間が経過しているが、時を超え見る夜景は圧巻だ。

この風景が見られなくなるのは惜しいが、これからの未来を考えればどんな出来事も価値などは一切ないし、わたしはこれを研究の傍ら最後まで堪能するつもりだ。

止めることはたとえどんな超能力のような力を持っていても不可能だ。


 備考となるが、第2、第4プランである不都合な事実が判明している。

 調査で予定通り反応が出てき始め覚醒が始まっているが、すべて許容範囲ではあるが予定よりも覚醒が少ない状態であり、個体差も大きく、白化の傾向も強い状態である。

 代理人として価値はあり許容範囲なので放置しても問題ないし、次の報告で考えることにする。

 第4プランは第2プランの補助案であり、個体の能力拡張を目的としているが、拡張用の端末と言えば失礼だが、候補者が許容範囲ではあるが、一部死亡が確認された。


 第3プランは情報攪乱のための特殊工作でうまくいったと言えるが、第5プランを踏まえると無駄な気もする。


 何にしても後6日と、364日、時は過ぎ去り、あと5日と364日になろうとしている。


勝つのはわたしだ。』


 ESPと言う言葉がこの世に存在している。

Extrasensory Perception、またはpsychic Powers、超感覚的知覚、超能力と言われる能力で、略してESP、PK、持っている人間を超能力者エスパー念力者サイキッカー、一般的にはPSIサイと言われている。

架空の物語でよくあることだがたくさんの能力が存在している。

一部の代表例として他人の脳の中の心理を直に読むことや自分の心理を他人に伝達するテレパシー、意志に合わせて手を触れることなく動かすサイコキネシス、中身の見えないものを見ることができるクレヤポヤンスなどがある。

 大勢の他人の前には言えず、ここでだからこそ、これから話すことに関わるから言うが、うそのようだがわたしこと、アンジェラ ブラウンはこの力を複数持っているし、かなり強力な力だ。

 MarvelコミックのX-MENと言う作品にチャールズ エグゼビア教授と言う強力なサイがいるが、自画自賛ではなく、わたしは彼を確実に上回っているし、世界を破壊するほどの十二分な力を持っている。

 正確にはX-MENではサイ以外にも様々な超人的能力を持った人間がミュータントと言われ、社会問題となっている話だが、わたしは問題を起こしたこともないし、同じ人間にもこれまで1人もあったことがなかった。

 文章的に過去だと言うことを意味しているが、始まりは1998年12月26日のことで、わたしは前日の25日の夜に眠り、起きる少し前に夢を見ていたようだった。

 夢は科学的に睡眠時の記憶の整理現象と言われているが、わたしはこの時最初に見ていたのは嫌な過去の記憶の夢だった。

 学校に入る前、4、5歳ごろの記憶で、わたしは近所の教会の祭壇の前で泣いていた。

『ごめんね? ごめんね? アンジェラ? 神様がいなくてもわたしが守るから。ごめんね………』

 わたしはこんな力などいらないし、これが原因で母と父の中が悪くなり、何とかしてとお願いしていた。

 現実は祈りなど届くこともないし神もいないと言うような状況で、教会の扉を勢いよく開け、入って来た母に抱きしめられたが、いつの間にか夢の中で記憶が移り、わたしはクサリで全身を縛られていた。

 身体を縛る金属のクサリは重く冷たい上に金属独特の匂いが漂い、手と足には手錠、口にはクサリを噛まされ、顔には窒息することはないが袋がかぶされ、芋虫のようになって地面に倒されていた。

 正確には地面ではなく、床で、わたしは能力を使い、正確には触れたものや人物から情報を読み取るサイコメトリーと呼ばれる能力を使い、周りが異常と思うほどに見えて、場所がどこかと把握していた。

 場所は郊外のレジャー施設の宿泊施設の寝室の床だった。

 子供の明るい声がどこか遠くから聞こえるが、暗く身体も冷たく重たくて動けず、何がどうなるのかわからず、わたしは静かにだが、何が起きているのかもわからずに泣いていた。

 自らの意志で自由自在に遠く離れた場所へと移動することができるテレポートもわたしは持っている。

 サイコキネシスで鎖や手錠を外して逃げることや、テレパシーを使い助けを求めてもだれも信じてもらえないだろうし、幼いわたしは思いもつかず、これをした人間こと、父を疑うと言うことを知らなかったためだ。

『本当におとなしくしているのか?』

『―――大丈夫だ。それよりも迎えはまだ来ないのか?』

『相手はジャーマンの大学チームだ。半場密輸だからな、手間取っているんだろう。』

 透視を使い見た先には父アラン ジョーンズと見知らぬ男が話し合っていた。

 母こと、リリー ブラウンから聞いたが、この時わたしはジャーマンの研究所に強引に連れていかれようとしていたとのことだった。


 わたしがこの力を生まれた時から持っていたのか、発育の関係で手に入れたのかわからないが、この力が原因で父と母の関係は悪化の一途をたどっていた結果だった。

『わたしは何があっても反対よ?』

『医者に見せるべきだ!』

『解決できるとは思えないは!?』

 夢の中で記憶が回帰し、夜起きて、のぞき見た時に聞いたこうなる前の父と母の会話が暗闇の中で聞こえた。

『見世物にされるわよ? わたしはそんなの嫌! あなたそれでも父親なの!?』

『冗談じゃない!? お前はいつもいつも勝手だ! よくもあんな化け物生んだもんだ!?』

『アンの前で言えるの!? その言葉!?』

 暗闇だったが普段とは違い、腕を組み機嫌の悪そうな母の顔と、慌てながらも怒っている必死に訴える父の姿は忘れられない光景だった。

『言ってやるさ! お前はお母さんのせいで悪い病気にかかっているんだとな!』

『あなたまったく自分に責任がないって言えるの!?』

『お前は結婚前は男癖が悪かった癖によく言うな?! 本当にアンは僕の子か?!』

 夫婦喧嘩なんて言葉がこの世にあるが、領域を超えていたし、この言葉の後母は父の顔をたたき本気の喧嘩に突入し、わたしは思わず怖くなる中で逃げようとしてドアノブから手を離すとドアが開き、視線を感じたのか母に気づかれた。

『アン―――』

『―――』

『ごめんね? ごめんね? ごめんね―――?』

 わたしの心は父の自分の娘かと疑う心も言葉もこの時理解できなかった。

母と父の権幕と言うものに恐怖を感じ、眼は間違いなく恐怖におびえていた状況で、わたしを見た母はわたしを見て走りよると、勢いよく守るように強いが優しく抱きしめ、必死にあやまった。

「―――――」

 母はあやまり続け、この後視線は父のほうに向いている中で父が何を言ったかわからず記憶していないが、ものすごく怖い顔でこの化け物などと言われた気がしたのを覚えている。

 父は部屋から逃げるように歩き出して部屋を出掛けようとする中で、言葉を聞き母が何かを言い返したが、わたしはこの言葉も覚えていない状態だが、何かひどいことを、わたしのことを思った何かを言ったことは確かだった。


 離婚と言う言葉が間違いなく出てくる状態で、わたしと母は家を出て2人暮らしを始めている中で、家を空けることが母は多く、その隙を見ての誘拐だった。

ある日眼が覚めるとこの拘束された状態だったが、少しして、正確には昼過ぎごろ、銃声のような音が聞こえた。

「―――」

 クレヤポヤンスを使い音の方向に目を向けると、本来は見えないが、銃を持ち、狂気的な眼をした母の姿があり、銃で建物の玄関のドアを破壊して入って来たようだった。

『アンはどこ!?』

『―――お、落ち着け、リ―――』

 落ち着けと父が言い切る前に母は再び引き金を引き、銃で近くのツボだと思われる陶器製の物体を破壊した。

『アンジェラは!? わたしの娘はどこだ!?』

 母は本気だった。

『―――お、落ち着け? ミセス ブラウ―――』

『わたしの娘をどこにやった?!』

 父の仲間が落ち着かせようとするが、母は迷うことなく銃を向けた。

『悪くない話じゃないんだ?! 君の娘を―――』

『黙りなさい!』

 黙らせたと言う状況で男は口を閉じた。

『見世物みたいにされることや、化け物呼ばわりされること、兵器に利用されることかもしれないことが子供の幸せなの!?』

『―――』

『それが親のすること!?』

 刺激次第では最悪の結果もあるし、2人は本気で何も言い返せない状態だった。

『―――2つに1つよ? 選びなさい?!』

『2つに? 1つ?』

『全員生きるか、全員死ぬかよ?』

 聞く耳を持たないと言うような物言いで母は続けて言った。

『わたさないならあなたたち2人を殺してアンも殺してわたしも死ぬ、わたすなら命だけは助ける。』

 普通の人間にはわからない感覚だが、サイコメトリー、テレパシー、クレヤポヤンスと言った複合した力は肉眼で見る以上の意志の強さをわたしに見せている状態で、母の言葉は偽りではないことは確かだった。

『ミセス ブラウン、誤解だ? わたしたちは―――』

『わたしの娘は実験(モル)動物(モット)でも見世物でもない! 人間だ!』

 引き金は指にかかっているし、すでに何発も銃弾を撃っているし、母は間違いなく本気だった。

『―――お母さん!』

 わたしはテレポートを使い拘束から一瞬で脱出し、眼の前のドアに能力を使い破壊して勢いよく母に走り寄った。

 サイコキネシスと言われる能力で手に触れなくても物を自由自在に動かすことが可能な力だ。

『いやだ! いやだ! いやだよぉ! やめて!』

『―――アン、アン!』

 この時何よりも怖かったのは母で、わたしはこの時いつもの母に戻ってほしいと言う一心で母に近寄り抱き付いた。

『―――どうやってここが?!』

『―――教えてくれたのよ。この子が………』

 この時わたしは無意識にわたしはテレパシーを送っていたようで、母が見つけてくれたそうだった。

『―――まだだ!?』

『―――!』

『っよせっ!?』

 もう1人の男が不意に隠していた銃を取出してわたしたち2人に向けた。

『―――? ? ?』

 聞こえてきたのは銃声ではなく引き金の何度も空回りする音で、銃弾は発射されず、男は銃のスライドを引き、残りの弾数を確かめ始めた。

 銃弾は空で彼が入れ忘れたのではなく、わたしがテレポートで中の銃弾だけ取出し、取り出した弾丸はわたしと母の足元へ転がってきていた。

『―――離婚よ? 養育費も家も財産も何もかもくれてやるは! 二度とこの子に会わないで!』

『―――』

『いこ、アン。』

 2人が見ている前で母は立ち上がると言い終えると、わたしと一緒に歩き出した。

『―――うん』

 泣きながらだがわたしは返事を返し、建物を後にした。

 銃声を聞いたのか近くには人が少しだけだが集まっている状況で、警察は来ておらず、銃を持った母とわたしが歩くと道が開けられ、わたしたちは難なく車の前に到着し、乗ろうとした時だった。

『全人類が敵になるぞ!?』

『―――?!』

『後悔するぞ!? リリー!? その子はお前を殺すかもしれないんだぞ?!』

 乗ろうとドアを開けた時、勢いよく建物の中から男が飛び出すと怒り任せに言い、父はと言えば、最後の説得と言うように言い、2人は片方が罵倒しながら半塲下劣に笑い、片方は説得しようとする中で母は2人に顔を真剣に向けた。

『―――その時はこの子だけが生き残ればいいとわたしは思うは―――』

『―――』

『―――それが親の心理よ?』

 集まっていた人間たちが眼を向ける中で母は答えを返し、2人は言葉を失っていた。

『乗りなさい、アンジェラ。』

『―――ぅ』

『乗りなさい!』

 この時の母は本気で怖く、返事を返す寸前に怒られ、わたしは言うとおりにするしかできませんでした。


 車は母の運転で急発進し、少しの間走り続けたが、5分も経過しない内に道路の脇の森林地帯に停車した。

『―――』

 道路からは銃声がしたため通報があったか、パトカーのサイレンの通り過ぎる音が聞こえていた。

 停車して少しして声にならないような叫びをあげた母はハンドルに何度も頭と手を打ち付け、わたしは怖くて動けず、見ていることしかできず、車が壊れてしまうのではないかと思う中でしばらくして母は止めたが顔や手は血まみれだった。

『―――』

 普通の人間にはわからないだろうが、テレパシーを通じて母の心の声と言うよりも、叫び声が聞こえてくる。

『何でわたしの子が?!』

『わたしがいけないの?』

『代われないの?』

 この時聞こえてきた声を出して行けばきりがなく、脳医学的理論上人間は数秒間に何万もの思考ができるらしく、わたしはこの声全てを聞いていた。

 普通の人間の感覚に例えると眼の前に置かれ電源がついて個体が別チャンネル設定されたテレビやラジオの音を聞き流すことがなぜかできずにすべて一言一句一秒一秒の一瞬の描写全てを見て覚え頭で処理するような気分だ。

普通の人間には不可能で絶対に発狂すると思うし、わたしの身体と言い脳と言い、この時は解らなかったが、能力に合わせ、構造自体が変化し化け物と言われても仕方ない状態とも言えた。

『―――――』

『―――?!』

 幼いわたしは母を抱きしめた。

 幼い身体で、どうしていいかもわからず、母のまねをするか、同じことをすると言うようにか助手席からで、身体も腕も小さいが、確かにわたしは母を抱きしめ、母はわたしを勢いよく抱きしめ返した。

『お母さん、苦しいよ………?』

『―――ごめんね、ごめんね? ごめんね………?』

 普段よりも少し強い力でこの時わたしは抱きしめられたことを覚えている。

『でも、もう少しだけ、もう少しだけ―――』

『―――――』

『ありがとう、ありがとう、ありがとう、生まれてきて、愛してる。愛してる。愛してる。愛して………』

 この後母は大声で泣き出し、わたしも大声は出なかったが泣いていた。

『―――――っ?!』

 突然わたしは17歳、言わば現在の自分になっていた。

『―――?』

 車の中でも、どこかのレジャー施設の中でもなく、わたしは教会の中の様な場所にいて、どこかと思う中で、幼い子供が泣いているような声が聞こえた。

『―――――』

 祭壇の前で白い服を着た幼い少女が泣いている。

『―――』

 この力を消してくれと神に頼んだあの時のことを思わず思いだし、感情移入したのかわたしは彼女に声をかけ、少女に近づいた。

 どうしたのとは言うようなことを言ったが、わたし自身の声はなぜか聞こえず、わたしは何にしても彼女の後ろに立った。

 年齢は7、8歳ほどで、12月で、もうすぐ新年とは思えない薄着でわたしの服装と比べると寒そうで、周囲は少し肌寒い感じをわたしは少しだけ感じていた。

あの時のわたしより年上だがわたしと比べると十分に幼かった。

 夢の中であり、ある程度の自覚でもあるような気がし、あの幼い時の自分かと思っていたが、髪の色と言い、肌の色と言い、前に立ってみると眼は見えないが、別人だった。

『―――大丈夫。神様がいなくても、わたしがあなたを守るから………』

 必死に泣いている中でわたしは彼女を抱きしめた。

 この子はわたしとは絶対に違うし、子が異常なことで悩む親もいないし、神を信じられるかもしれないが、わたしは思わず抱きしめてそう言った。

 少女は泣いていたが抱きしめられる中でわたしを抱きしめ返す感触を感じる中で、わたしは眼が覚めた。

「――――――――――」

 離婚から10年以上が経過し、開いた眼の先には普通の借家(アパートメント)の天井が見えた。

 あの一件の後わたしは誘拐されるようなこともなかったし、母と一緒で母子家庭と言う以外は平凡な人生を生きて現在は高校生だ。

 母は仕事で忙しく家にはあまり帰らないし、わたしは眼を覚ましたのも朝の8時15分頃だった。

 寒くて目覚めたこともあったが、わたしはなんとなくと言うように出かけることにした。

 土曜日で高校の授業もなく、休みで寒いが、わたしはなんとなくだが家と言うものが落ち着かず、暇なときは外で適当に時間をつぶしていることが多かった。

 ブラの上にタンクトップにパンツだけと言う格好で眠り、その恰好のまま室内中を歩き回り、栄養食品みたいなものを適当に食べて、野菜ジュースみたいなものを適当なカップにいれて飲み、わたしは部屋に戻って着替えと化粧を始めた。

 化粧が少々年齢不相応に濃いし、服装も暗色系が多く、少し派手めで一見すると不良にも見られるが、わたしはこれが普通だと思うし、わたしはバッグを片手に背負い、家を出ることにした。

「―――母さん。」

「―――ただいま。出かけるの?」

「―――うん、ちょっとね。」

 いいか悪いか、出ようとするドアの前で母が帰って来てわたしと母は言葉を交わし、わたしは部屋を出て母は家に帰った。

『あなたはここにいていいから。』

『いつでも帰って来て。』

『ごめんね、本当にごめんね………』

 すれ違う中でテレパシーで心の声が聞こえ、感情も解るが泣いて悲しそうだった。

 わたしのことを単身で調べると言うこともあり母は報道関係と言った情報に関連する仕事に就職し、現在はジャーナリストで多忙な生活を送り、わたしと行き違いが起きている。

 話あうべきだとは思うが、向き合うべきだとは思うが、逃げていると思われるが、わたしも母も動けないでいた。

 クレヤポヤンスを使い閉じられたドアの向こうからドアに背を預けて泣き始める母が見えると言う現実と言うものから眼を背け出た外は精神的にも現実的にも風当たりはよくなく吐き出される息は寒さで白く染まっていた。

「―――」

 わたしと言う存在がこの世にいるが、母も泣いているが世の中は何事もないように普通に回っているし、外は静かな朝の光景が広がっていた。

 結構長く住んでて知っているが地方的な影響か雪が全くふらず無駄に寒く、人の気配もなく物寂しい状態だった。

「―――――」

 わたしはわたしのことをいずれ本気で知らなければいけないし、母を助けたいとは思っているが多くの問題がある。

例え助けるように慣れてもわたしよりも母が先に死ぬし、わたしはこの世界に本当に一人だけで生きて行かなくてはいけなくなると思い、わたしは故意に人との付き合いを避けている状態だった。

神などいないし、助けてもくれない、熱心な人間ならばこれを神の試練だとでも言うかもしれないが、意味もない試練だとも思った。

「―――――寒………」

 マイナスと言う気温ではないが、寒いことは事実で、わたしは外を数十分ほど歩いていたが、一時でもいいから寒くない場所へ行きたいと考えた。

 近くには防寒対策の整った施設はあるが、わたしは不意に視界の先に写った古い教会に眼が向き、気が付くと少し重たいドアを開けていた。

 教会は神の家と言われているが、用がない以外は無駄に広く当然だが神の気配などあるわけもなく、ある意味わたしの心情には不適合だが、クリスマスも終わり人の気配もなく、わたしにはある意味相当な場所だった。

 外観的には古く、廃教会と言う方が正しく、近くに墓もあり、人の気配はなかったが、中は以外にもきれいだった。

 汚れた様子もなく、椅子も整えられ、中は少し暖かく落ち着いた雰囲気だった。

「―――――?」

 足元から乾いた音が聞こえ見てみると薄い赤色の紙が落ちていて、拾ってみるとこの教会で前日合唱か何かが行われて時の配布用のプログラム用紙のようだった。

ここにも一応人が来るのかと思い見ている中で、わたしは人の気配と言うよりも、だれかが泣いているような声を聞いた。

「――――――――――」

 夢と同じ光景にわたしは思わず言葉を失った。

 確かに夢と同じ光景で、祭壇の前に6、7歳ほどの白く薄い素材の服を着た少女がわたしに背を向けて泣いている光景が見えた。

「―――――どうしたの?」

 あの夢と同じように声をかけ、夢と違い声が出たわたしは彼女に近づくと当然だが彼女はわたしではないし、夢と同様の少女で、泣いていた。

「―――大丈夫。神様がいなくても、わたしがあなたを守るから………」

 冷静に考えると何を考えていると言うような状況だが、夢と同様にわたしは感情移入する部分があったのか彼女を抱きしめ、同じような言葉を口にした。

 夢と何から何まで同じで、わたしが何をしているかと思う中で少女は少しずつだが、泣き止むのを止めはじめていた。

 この時は自分が何をしているのかとも思ったが、この子はわたしと違って普通の親がいて普通の子で、顔を合わせると何もなく無償で笑顔を向けると、普通の一日に、少し異なる一片こと、わたしが割って入っただけだと思っていた。

 この時巻き込まれたのはわたしで、彼女はすでに巻き込まれていたと言うべきだ。


 敵でも味方でもない、正義でも悪でもない、たとえて言うと、調節者(バランサー)だ。

 楊や桜たちが話していた調節者と言うのは俺たちのことで、俺はマスターアラキこと荒木勇で、相棒にパール ガルシアがいる。

 未来の話などリードの話で十二分なはずだと思うが、正確にはOrgの犬、ワープの特殊部隊で正式名称緊急事態措置対応部隊総司令部で、身分証明の際に言う言葉と調節者だと言う提言は、創設した人間が始めたことだ。

 一見すると桜と飛鳥と同じ身分だが、この部隊は司法取引をした元犯罪者による荒事専門部隊であり、2人の様な半分公務員の職員と言う普通の人間たちではないのだ。

 司法取引とは現在の一部の国家圏でも認められている司法制度の1つで、犯罪者に犯罪解決などのために協力させ代償として刑罰減軽などの取引をする制度で、第3次大戦後、ワープはこう言った司法取引者専門の部隊を創設したのである。

 緊急事態措置対応部隊と言うのは表向きの、書類上の名称であり元犯罪者たちが集められ、仲間同士だと言う合言葉だと言うように調節者が広がり始めた。

「あ~、眼が疲れる~?」

「泣き言を言うな、勇。」

 手に握った多機能型情報端末こと、スマートフォンからオレは任務に関する資料を見ていたが、眼が疲れて痛み始めていたが、隣にいたパールに怒られた。

「でもよ~、車運転して、ここ戻って~、また行って~、あ~、も~、や~。」

「作戦参加を表明したのはお前だ。」

「―――――Scrap」

 無法者(アウトサイダー)たちを集めた剛腕部隊と思われるが、理想と現実の違いと言うもので、結局は公務員のお役所仕事で、オレたちは使い捨て同然に働かされている。

 調節者部隊は創設当時は事情が存在して処分できないような人間たちを司法取引でワープの職員へと任命した仕組みだった。

現在でもそうだが最初から厳しい任務を強引に与えられ暗黙の内に処分するのが普通で、創設メンバーが現在の多少安定した仕組みへと変化させた。

「―――こっちのセリフだ。」

 仕事を終えたオレたちに待っているのは、これまで話した彼女ら彼らに関わり、敵でも味方でも正義でも悪でもない調節者としての権威で戦うことだ。

 戦うとは言えば殺すことではなく生かすこともあるし、時に敵となり味方となり、正義とみられ、悪と見られ、中立でもない独特な力をオレたちは行使する。

「―――何にしても、いくぞ?」

「―――――あと5分、いや、4分。」

「―――――まずは、眼を覚ましだした女神たちからだ。」

 貧乏じゃないし給料結構いい額もらっているが暇はない方で、パールはと言えば気力たっぷりに言い立ち上がった。

 身長180Cmと言う女性にしては超大柄で、身長175Cmのオレよりも大きい女にして、ハイブリッダー最強の戦闘能力を持つヴァージョンディノタイプラプターと言う怪物で、オレは彼女の相棒で、彼女がオリジナルとしたハーフハイブリッダーだ。

 体力なんて理論上半場無限大にあり、疲れなんて本来感じないようなものだが、人間の身体は精神論的なものも存在し、オレは能力をあまり使いこなせず、生まれ持った怠惰な性質もあり、疲れ切っていた。

「勇。わたしたち同様の厄介な2人も待っているんだぞ?」

「―――オレは蛇か?」

 休むなと言うようにパールは後ろからオレの服の首の後ろを手に取り、持ち運び始めた。

 お前の言うことなんて聞く耳持たんと言うようにパールはオレを運び始め、一休みしていたオレたち専用のオフィスから出た。

 オレとパールが何でこんな立場になったか、細かく話すには、彼らとのかかわりが必要になるし、ここで1つ確かなことで教えられるのはオレと山中一輝、リード ファイヤーとパール ガルシアがある意味深い関係であることだけだ。

 たくさんの人間が出てきてこれからも出てくるかもしれないが、だれもが話してもいるが、これからが本当の始まりだし、一見何の関係もないような過去と現在と未来、加えて異世界の話だが、これから複雑な交差が始まるのだ。

 本来は混じるはずのないような、異なっているような物語が交差を描くことで、この物語は進み、そして真実の姿を導き出す。


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