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Agents

 人によって年数の経過は異なっていることは明確だ。

 わたしことジョセフが話すこと、彼女や彼らの話すことを含め、これらの話はすべて過去の話となるし、回顧録とも言えるが、人によって流れている時の経過は非常に異なっている。

 この話に置いて多くの人間は3年と答えるが、わたしにとっても3年だが、ある意味わたしには3年とは言えないのかもしれない状態だ。

 普段は無口の2人の語り始めた長い話が終わり、話がわたしに移り、話した言葉に何の意味があるかはおいておき、わたしが事に関わることになった日の話を、1998年12月25日の時の話を始める。

 2人が劇的な出会いをする中でわたしは何かの因果だったのか、当時のわたしは2人から少し離れた場所にあるAdvanced Generational Enterprise本社の警備員として働いており、その日もわたしは警備の仕事をしていた。

 警備員として働いていたが別段生誕祭に外せない用事があるわけでもなくわたしは独り身、言わば独身で家にいても一人で寂しい状態になる。

時間つぶしに酒も飲む気にも行く気にもならず、時間も潰せるし手当も出るほうが有意義なのでこの日の勤務を選んでいた。

リードの話していた特殊警備13部4係とは違い、わたしは普通に警備部の社員として働いていた。

 特殊警備13部4係は遺伝子研究の最前線であるAGEの極秘研究を守る特殊部隊と表向きには出ていたが、裏向きにはAGEの研究被験体や元軍人や犯罪者を集めた無法地帯部署だと言ううわさが末端のわたしにも流れていた。

 科学用語の中にゲノムフロンティアと言う言葉が存在し、AGEは生物科学研究の最前線である遺伝子(ゲノム)研究と言う名の辺境(フロンティア)研究の最前線企業で、上層部は研究の多くを見せず教えず、知らせず、社員には末端で悪いうわさが出るのは当然だった。

 特に当時は映像業界のCG革命の到来期で、映像機器越しには現実には存在しない怪物たちが映像越しに数多く出現し、新しい時代を迎えようともしていた。

 数年ほど前にマイケルクライトンのSF小説が原作でスティーブンスピルバーグが映画監督で映画化した「ジュラシックパーク」の続編が製作され、人間は映像越しとは言え恐竜を現実によみがえらせてしまっていると言えた。

 映画だけではなく、日本が開発全盛の家庭用ゲーム機でもCGの多用が始まり、架空の怪物が人間を襲い始め、ゲノムフロンティアに潜む可能性から悪評が立つのは当然とも言えた。

 科学者たちが遺伝子を生物の設計図と言い、これを研究し改良し、別の生き物が、悪い言い方架空の映像越しの怪物が生まれ現実化するのではないかと言う懸念が当然発生していた。

 表向きには近代医療の観点から見て難病と指定されるガンやエイズの治療や免疫抗体、生来持つ障害をなくす研究にも関わり、不老長寿の実現が近いとして遺伝子研究は高い注目を集めていた。

 表向きと説明したが裏があり、不死身の怪物を造りだせることも可能なのだ。

 一番の危険は不死身の怪物よりも遺伝子改良された生物が兵器として転用されることであり、理論上特定の個人だけを殺せる細菌兵器や、逆に1人を残しほかが全滅する細菌兵器を生み出すことも理論上可能だ。

 公開演説中の政治家だけを殺したりすることや、周囲を包囲され、暗殺されかけた際に自己防衛の最終手段として使用し自分だけが生き残ることが可能な兵器が造れると言うことだ。

 理論上の話と言えばそこまでだが、内なる宇宙とも言える遺伝子研究には希望と絶望が見え隠れしており、この後の時代も賛否は両論であるが何にしてもわたしはここで働いていた。

 あれだこれだとうわさは広がっているが真実を知ることができるわけでもなく、不平不満もあるわけでもなく、わたしはいつものように社内を見て回り終え帰路につき始めていた。

「―――珍しいな、わたしにお客様か。」

 帰路とは言えまだ社内で薄暗い通路を歩いていると、わたしはその独特な姿に気が付いて言葉を発した。

 人型をしているが全身真黒で2つの眼が赤く光っていた。

「動くな。」

「ジョセフ スミスだな?」

「そうだが、場所を選んでくれないか? ここは仕事場なんだが………?」

 彼らの英語は少々片言で硬いが、発音はいい方だった。

 一見すると怪物のようだが、彼らは怪物ではなく2人の人間で、身体は武装した服で手には銃が握られ、顔は防毒マスクが装着され、赤く光る2つの眼はライトが装着されたゴーグルにしか過ぎないのだ。

「―――来い。」

「恐れなくてもいい、わたしはこの国の生まれだ。銃を持った者には逆らう気はないよ。」

 手を上げ無防備であることを知らせるが彼らはわたしのことを知ってか、非常に恐れているようで、指示を出すが少しだけ脅えている状態だった。

「―――」

「銃を下してくれ、とてもじゃないが落ち着かない。」

「―――黙って歩け。」

 銃を背中に向けられたわたしは無抵抗だったが、銃を向けられ、軽くだが話しかけると少しして冷たい返事が返って来た。

「堂城大佐、佐藤大尉、連れてきました。」

 言葉が片言な気がしたが、適中したようで、少しすると1人が前に進み報告した言葉は他国の言語、正確には日本語のようだった。

「―――君たちが責任者か? 場所を選んでくれないか? わたしの立場は承知しているつもりだが、不要な混乱を招くことになる。」

 表向きにはわたしはこの会社で働く黒人の中年警備員のジョセフおじさんであり、わたしの裏の立場など現実には信じられず馬鹿げているが、この状況的にはある意味説得できる状況だ。

 わたしが何者かとここで聞かれると、わたしは代行者と言われる立場にある。

 なにの、だれの代行者と聞かれると、信じられない話だが、神の代行者だ。

 リード ファイヤーの話の延長的だが、神は実在しているし、代行者とは言葉通り神の力を与えられた存在だ。

 与えられたとは言い、わたしには神と同様の力が手に入っているが、神としての職務と思われることは一度もしたこともないし、する気にもならないことで、こうして警備員として普通に働いている。

 前任者も信じられないことに物覚えもついていない赤ん坊で、わたしは前任者に会った時に突然この役目を与えられたが、ある者にはわかると思うが意味のない事態だった。

 神話に見られるように人ではできない神の起こす奇跡や天変地異が起こせるかと聞かれると可能だが、意味もないことだと思いしていない状態だ。

 意味もない事態だと言ったが、この世界において神とはすでに空想の中の存在であり、力を得たからこそ分かるが、巨大な力を持つだけで、決して偉大な存在ではないのだ。

 中世から現在の一部の国家で貴族と司祭、言わば宗教集団が強い権限を持っているが、これは神の代行者としてのまがい物の権威であり免罪符だと言い金を巻き上げ、神に選ばれたと言い威張る以外はわたしと同様の立場だ。

 無論統治が成功した具体例もないわけではないが、いつのころからか政治と宗教、言わば統治と神は分離される政教分離が進み、まがい物にしても真実にしても神の代行者は権威を失っていった。

 神の名のもとに特定の個人や集団に天罰を下すことや聖戦などは偽善の象徴や犯罪とも言えるし、力もあるが手も足も出ずの状況だ。

 わたしの話す話が真実で代行者が実在するにしろ、精神発狂者の狂言で新興宗教の勧誘の一歩前にしろ、わたしと同じ立場の人間が果たしてどれだけ存在するかわからないが、神にはこの世界を管理する気も力もないと言うことだ。

代行者には特に上と呼ばれるものから指示も無く、何もしなくても、おそらくは何かをしてもだが、言葉通りに音信不通の状況で、わたしはこの状態を20年以上も続けている。

「―――わかっていますが、わたしたちにも時間がありません。」

 少し説明が長くなったが、佐藤大尉と言われた方が流暢な英語で答えた。

 日本人の女性、と言うよりも少女で年齢は10代前後半ほど、幼くも見えるが表情を示す顔があまり動かず、年齢よりも年配に見え、少々冷たい感覚を覚えた。

 彼女たちが何者かと言えば、わたしは詳しくはしらず、調べればわかるが調べず、簡単に言うと、正義の味方の代理人や裏方のような存在だとわたしは思っている。

 神の権威が薄れつつある時代の中で最終的に人間を動かすのは結局人間であり、人間が人間を管理する必要が存在し、彼らはその管理者や責任者とも言える。

 正義の味方など空想の存在だが、わたしに与えられた力と言い、これが一番正しい答えだと言え無用に知識を得て危ない橋を渡りたくないし知りたくもない上、交代制で話しをしているし、話すのは彼女たちの領分だと思われる。

「危機が迫っています。あなたにはわかりませんか?」

「―――桜、落ち着け。」

「―――――」

 桜と言われた少女は腕を組むとそう言い、もう一人のほうは正式には堂城飛鳥と言い、押させるように言うが、否定できず彼女の言うとおりのことが起きている。

 普通の人間には到底理解できない感覚で、人間ではない力の恩恵なのか、第六感と呼ばれる感覚が活性化しているのかわからないが、わたしはこの時普通ではないことが起きている感覚を感じていた。

「わたしにどうしろと? 審判の日から機械(メタル)の殺人鬼が来ると言っても病院送りだ。」

「―――――アメリカ人と言うのはどうしてこう―――――」

「物のたとえだよ、わたしらしく、ソドムの街やバベルの塔、ノアの洪水のほうがよかったかね?」

 言葉通りで警告してもだれにも信じてもらうこともできず、冗談のように言ったわたしに対し、もう一人の女性は目を反らし、少し困り腹立たしそうな物言いで言った。

 少女よりも年上で女性は2、30代ほど、桜と少女は呼ばれていたが、桜と比較した場合いだが微妙に日系人らしくなく、日本人と言うよりも少し中国か東南アジア系の女性のようにも見えた。

「―――どちらにしても、話は解りやすい方がいいだろう?」

「―――――」

「君たち東洋人から言えば理解されない思想だろうな? だがこれが我々のやり方だし、わたしのやり方だ。何にしても、交通事故のようなものでどうしようもないことだ。」

 感じてこそいるが、私個人では対処できることでもなく、言葉通りに交通事故のようなもので対処ができないのだ。

 万全な対処をしていても事故に遭遇すればするし、死ぬ時は死ぬし、どんな人間でも対処できるものでもないし、残酷だが、信じる者も信じないものも救われず、生き残ることこそ奇跡であり人間はそうして生き延び、知恵を発達させてきた。

「―――――最善の努力はするよ? だけど期待はしないでほしいな? それに、わたしは本来警備員のおじさんだ。老いも近いし、世界を救える力など持っていないんだ。」

「―――」

「だからこそ君たちがここに来たんだろう?」

 自分勝手、卑怯千万、職務放棄で責任転嫁の他人任せだと非難されそうだが、わたしにできるのはこうして彼女たちに任せる事だけだ。

「―――わかりました。ありがとうございました。」

「―――次来るときはここでない場所にしてほしいな。遠路はるばる来たと思うし、ゆっくり話もしたいし、次は食事でも一緒にどうかね? おごるよ?」

「―――」

 何にしても言葉を続ける中で不意に2人は深く礼をすると後ろに数歩下がったかと思うと姿を消し、わたしだけがその場に残されていた。

 神のみが知ると言い、神のおぼしめしと言い、神の御威光の賜物と言う神には偉大な時代があったが、神の価値も地に落ちた世界で、神の代行者となったわたしは、これ以上の最悪が訪れるとはこの時知らなかった。

 この時のわたしはと言えば彼女たちが話、わたしの感じている先の危機よりも、よく行く店が開いているかいないかを心配をしていた。


 灯台下暗しと言うことわざが存在し、遠くのものはよく見えていたとしても、近くの物は近すぎてよく見えていないと言う意味だ。

 どこのだれが末端の社員の1人がこれから起きることに深く関係すると思ったかと聞かれるとまったく思わなかっただろうし、わたしこと、折原聖那も思っていた1人だった。

 時間は彼こと、ジョセフが勤務を終え帰った十数分ごろのこと、Advanced Generational Enterprise本社の中にわたしはいた。

 社内は都市の中心部に位置しているが非常に高くて広く、正確にはわたしは50階以上の高さの場所にいた。

「―――ジョセフおじさんのお帰りだ。」

 大量に並んでいる監視カメラのモニター越しの1つにコート姿で帰る警備員ことジョセフの背中を見た社内の特殊警備13部4係の1人がそう軽めの口調で言い、わたしのほうに眼を向けました。

 特殊警備13部4係はAGEの研究内容を守るために雇い入れた傭兵集団であり、部署名としての位置はあり支払いの立場上仕事はしているが、半場無法地帯化し、彼も銃を腰に下げ服装も武装こそしているが私服と言う感じが強く兵士と言う感じがしなかった。

「にしてもジョセフのやつやけに遅か―――」

 わたしのほうに眼を向けると、思わずと言うように口笛を吹きました。

 わたしはこの時、タオルを巻いていたり、服を脱ぎ、下着姿であり、性的な眼で見られても仕方のない格好をしていた。

「聖那さん? 大丈夫ですか?」

「ぇぇ、大丈夫です。」

 色気を感じるかは個人的には疑問な状況で、わたしは白衣姿の人間たちに囲まれ、声をかけられる中でわたしは返事を返した。

「血圧100から50、脈拍55、正常値です。」

「脳波、心電図、脈拍同様です。」

 手には点滴もされている状態だし、医療用の寝台で半分寝かされている状態で、半場病人化健康診断の状態だった。

 何かと病気かと聞かれるかと思うが、言うまでもなくわたしは病気で、加えてこの病気は意図的に引き起こされたものだ。

 医学的観点から言えば普通に風邪などの病気にかかることや、けがなどの外傷を負うこと、極めつけの手術はある意味外部からの意図的な病気とも言えるが、わたしの場合は違っている。

 病気と言ったが、わたしの現在の身体の状態は非常に健康そのものだが、人間ではない力が手に入っている。

 原因はいつか分からないが、身体に投与されたナノマシンだ。

 聞いたことがあるかもしれないがナノとは10の9乗分の1の寸借に位置する極小単位の1つであり、ナノマシンは人間が造りだした最小の機械で医療分野の中で高い注目を集めていることでも有名だ。

 脳や臓器の中のような人間の身体の侵入不可避な部位へと侵入し遠隔操作や自意識を持たせ治療を施すと言う革新的な発明だ。

 空想の物語でも多く登場し、暴走や再生、驚異は知らされているが、理論上の話であり机上の空論で実現は遠い未来の話だと誰もが思うしわたしも同様だったが、現実は違っていたのだ。


 このナノマシンを造りだしたのはわたしの父こと、AGE日本支社技術医療研究員折原敬護だと思われ、このナノマシンは医療技術に使われるものではなく、兵器としての高い利用価値を持っている。

 異常なほどの体力や治癒速度や再生能力を持ち、異常なほどの再生能力や人間とはもはや言えない能力も持ち、言葉通りの人造の怪物が想像され、わたしはなってしまった。

「―――――」

 手に入れたわたし事態信じがたい状態で、わたしはこの時日本で見た父の職場のAGEの地下研究室のことを思い出していた。

 

わたしから見て幼く、2、3歳ごろに母こと、父は妻を亡くした。

仕事が忙しい中でも男で1つで十二分に愛情を注いで育て優しい父として考えていたが、家庭と仕事を一緒にしたくなかったのか仕事場のこともわたしはよく知らず話さずの状態で、知ったのは数か月ほど前だった。

高校二年となり、17歳の誕生日を迎えて数か月後のことで、仕事場で突然の爆発事故が起き、父が起こしたのか不明だが、父が行方不明になっていた。

爆発の衝撃で木端微塵になったと推測、有力視され、なんとも言えず言葉を失っている中で、わたしは警察に聞き込みをされる中であることを思い出していた。

家の鍵と一緒に持たされていた謎解きの話やファンタジーに出てきそうなデザインの鍵のことで、わたしは警察が帰った後に思い出した。

何の鍵かもわからない中で、父の同僚の鈴村大五郎に聞くと、研究所の一部の職員のみが入れると言う地下研究室の鍵だと判明した。

鈴村と同僚の辻昭さんと一緒に入った地下研究室には被験体として老若男女を問わない多くの人間が陽の目を見ることもなく外界から遮断され半場監獄化し、一部の人間が発狂した状態で父が死んだことも知らずに生活していた。

監獄化しているとは言え外部との通信手段がない以外は個人の生活、言わばプライベートや食事や衛生管理に電気や水道と言った必要最低限の生活基準の設備も整い、心身共に健康な状態な人間が多かったが問題は一部の人間たちだった。

新薬の実験や人間の心理実験に代表されるように無論ある程度外界から隔離されて生活することはある程度は存在し鈴村と辻も父がある臨床実験をしていることは知っていたと言い、発狂した一部の人間たちはだれがどう見ても研究の犠牲にされていた。

ナノマシンの犠牲者とも言え、日本支社の創設メンバーでもあり有名大学の医学部卒の父は上層部とも顔が聞いたとのことで、社に承認を得て極秘の臨床実験をしていたようだった。

AGEは有名ではないが巨大な企業であり、日本では医療技術専門の研究が行われ、研究に必要な資金と設備は十二分に整っている状況だった。

問題がないとわかった人間たちは実験の中止だと伝え解放したが、多くは研究の犠牲を、もしかすれば自分がこうなることを予期もしていない状態で、わたしもあの家庭的で優しい父がこれをして絵空事のようなナノマシンの技術を実現したのかと本気で疑った。


本名は明かせないが犠牲者こと、サンプルを紹介しておくことにする。


A さん 男性(32)

レントゲンで見てわかったが脳の中心から金属が大量の針のように伸び頭から何本も飛び出しハリセンボンや裁縫の針山のようになっているが死なずに震えて生き続けている状態だった。

針は手術したが言うまでもなく摘出できず、身体が栄養失調状態でもあり、衰弱もしていたため手術中に死亡した。


Bさん 女性(28)

心臓、肺、食道など胸部が、皮膚、骨を問わず人体の仕組みを精巧に機能する機械化し、発狂はしてないが、元に戻る方法がないと言う現状に対し絶望し強い自殺願望を持ち、現在日本支社のメンタルクリニックで療養中である。

精神的には落ち着き、社も賠償金請求などにも応じ事実をいずれ公表するとも言ったが、彼女の身体は二度ともとに戻ることはない状態だ。


Cさん 男性(18)

左右の腕の肘から下が武器のように変形している。

腕事態が銃、手の指も1つ1つが鋭利な刃物やペンチ、ドライバー、ワイヤー、ピッキングツールなどに変形していた。

日常生活が行えなくなっていたために発見数日前に、言わばわたしたちが来る前に現状の苦難に耐えられなかったのか、刃物に変形した指を自らの首に差し込み自殺していた。


ほかにもいるが、特にわからないのが最深部にいた身元不明の女性30人以上の集団で、彼女たちは現在AGEの病院で全員が治療を受けている状態だ。

巨大な水槽にホルマリンか何かの薬品漬けにされた身体や臓器、死体も見つかり、父が生前何を考え、何をしようとしていたのか一切不明だが、常識をいつしているのは当然の状況だった。

何にしても普通の事態ではないのでわたしが意見を言うまでもなくAGE日本支社ことAGEJは警察や報道機関とも協力し事実公表に動き出していたが、ここで3つ問題が起き公表に歯止めがかかった。

 1つはAGEのスポンサーこと株主からの命令で折原敬護の身に万が一のことが起きても研究結果は事実公表せず、アメリカ本社に受け渡すことであり、研究資料は本社の職員こと特殊警備13部4係が半場強奪していった。

 2つ目は警察上層部からの通達で、上層部がAGE本社と通じているようで、通達や捜査しないことに強引に合意させたようだった。

 3つ目の報道機関もAGE本社によって裏から制御され、事実は陽の目を見ることはない状態になっていた。


 納得できない部分もあるが、高校生のわたしが権力の前に何かができることもなく、悲しむ暇もなく明日明後日の学校生活や葬式をすべきか行方不明とするべきか、わたしは法的にどうなるかと言う問題の中では手の出しようがありませんでした。

鈴村と辻も何も言えずの状態で、AGEの上層部の中にはわたしの知らない父の友人が多くいるようで名乗りを上げ、いつの間にか養子や海外留学の話も進んでいた。

表向きには事故で父を亡くしたかわいそうな娘のわたしはAGEJの大切な創設メンバーの娘であり、話に来たAGEの人間は事実を目撃した人間であるが、悪いことにはしないから黙っていてほしいと言う様子が丸見えだった。


鈴村と辻をはじめとする一部の職員が動き出し、公表に向けて動き出し、わたしも鈴村と辻が引き取ると言いだし、地盤の安定も始まっていた。

この時、少しして気が付くことになるが、わたし自身にナノマシンが投与され、ある事実が隠されているとは思いもしなかった。

知ったのは事件から数週間後のことで、話がうまく進まない中で家にわたし宛に父から郵送があったことだ。

調度鈴村と辻が来ていて一緒に開けた少し大きい箱の中にはビデオテープが入っていて、再生すると父の映ったビデオレターであり、父の告白が始まりある事実が分かった。

父はアメリカにいたある時ある場所でこの時代の物とも思えない科学技術と推測される謎の研究資料を手に入れ、悪魔に魂を売るように研究に没頭し、研究資金が欲しく、AGE本社に身を売ったらしかった。

妻ことわたしの母も死亡し、海外に出張で娘ことわたしを同僚の辻の家に半場置き去りにし、半場自棄になっていた時の状況で資料を手に入れ、残ったわたしを生かしたく、理論を実現し、実現可能ならば最高妻をよみがえらせようとしたとのことだった。

家族と幸せに暮らしたいと願った父は道を踏み外し人体実験をしていたことを認め、実験に成功したナノマシンをわたしに投与したと言ったが、自分が生きているにしろ、死んだにしろ激しく後悔していると言う様子だった。

悪魔に身を売った上に、娘まで巻き込んでしまったと映像越しに泣いていた。

わたしこそ折原敬護の研究結果であり、AGEはわたし自身の中にあるナノマシンを狙っていたとも言えたが、見ている時わたしの身に、異変が起きたと言うよりも、ナノマシンの力が覚醒した。


脳を記憶の器とたとえるとして記憶でいっぱいになっている中でナノマシンの影響で大量の情報が脳に押し込まれて脳が破裂するかと思うような感覚に襲われ暴れまわり、わたしの身体は奇妙な変身もしていた。

自分ではわからなかったが、鈴村と辻が言うには動物のようになっていたようで、わたしは家中を暴れまわる中で膨大な情報の中から制御法を手に入れた状態を落ち着かせ事なきを得たが、父がこちらにも情報を入れていたようである情報も得た。


AGEはナノマシンの兵器転用を考えているが、研究は折原敬護に任せきりで実態を知らず、わたしが成功例と言うことも知らないことだ。


ビデオレターはある意味父の遺言とも言え、わたしは父が悪魔に身を売ったような状況になったこのナノマシンの力を使い、このナノマシンについて詳しく調べることにするため、ひとまずアメリカに渡った。

ナノマシンによって専門の科学知識がわたしの頭の中に与えられ、わたしの状態から判断し、兵器として実用化されたナノマシンは核兵器以上の脅威であり、悪魔となりかけた父を変えた怪物の正体を見極める必要があったためだ。

1人でも言ったかもしれないが、同行すると言い鈴村、辻と一緒にアメリカのAGE本社に行き、わたしは鈴村、辻と協力しAGEでの立場を利用し、事件の調査を始める土台を数週間で整えることができ現状がその証拠だ。

わたし自身が証拠とも言えるが、最初のようにもみ消しも考えられ、わたし一人だけでは心もとなかったことも事実だ。

理論的に言えばだれかがいずれ発明するかもしれないが、あの研究結果と言い、人類が持つには早すぎるし、AGE本社に気づかれる前に父に代わりわたしは必ず潰さなければいけないと思った。


ここはAGE本社の研究室の1つで、父がアメリカにいたころに使っていたと言う場所で、ひとまずわたしたちは遺品整理を名目にここに居座ることにした。

推測するに父のことを、研究のことをすでに調べ終え、娘も感傷に浸りたいとでも思ったか、わがままとも思われず本社も意外とすぐに許可を出した。

「―――――」

 半分倉庫にもなっていたとも言われ結構広く、数週間ほどなら何人か暮らせる空間と、加えて備蓄が備わっていた。

 感じるとしかほかに言いようのない状態だ。

 何を感じているかと言うとナノマシンの力で身体が様々な機械へと変わり、機械と一体化したような感覚で、わたしはその感覚の中で、確かに同じ存在がいることを感じていた。

「―――AGE本社以外にも研究を見つけた企業が存在しているのかもしれないな。」

「―――だとすれば脅威です。敬護、お前は………」

「確かなことは、行ってみるしかない、と言うことか?」

 少しして鈴村と辻が姿を表し話し合っていたが、わたしに声をかけてきた。

鈴村はわたしの父よりも年上で初老の少し肥えているが汗もあまりかいている様子なく、落ち着いた雰囲気の男性で、わたしに対して心配そうに声をかけてきた。

辻はと言えば父と同じほどだが、父よりも気性が荒そうで髪を大きい音を出して困ったと言うようにかいてわたしのほうに眼を向けた。

「―――ひとまず、行ってみます。」

 わたしは立ち上がり、2人に対して言い、歩き出した。

 周囲の人間たちも合わせるように準備を始め指示され動き始めたが、わたしが目指すのは眼の前の夜景だ。

「―――――」

 発展か発達し過ぎたか、忘れたがどちらにしても科学は魔法と区別がつかないと言うが、わたしに起きていること自体その代表例と言える。

 一番に言いたとえ話はピーターパンで、劇中に登場する妖精ティンカーベルの背中のように、昆虫のような透明で身長よりも巨大な光る羽根が左右に2つずつ、計4つ姿を表した。

 何にしてもナノマシンの力で、後ろで鈴村と辻はおどろいているが、わたしは落ち着いた雰囲気で羽根を動かし始めた。

 航空力学的に見ると実用性に乏しく強度も弱く、絶対に飛べないように見えるが、わたしの身体は羽音も羽根の動きも少ないが、身体が重力から解放されるように浮かび始めた。

 眼の前のいつの間にかと言うほどに扉に改造された窓が全開に開く中で、わたしは一気に外界へと飛び出した。

 こうして飛び立ったわたしは確かに同じものを、似たような存在を探していたが、後に見つけ出すが、答えは意外でよりにもよらないものだった。


聖那がジョセフの会社の関係者であると言う接点を持っているとするならば、オレことジェームス ダグラス、愛称としてドギーを使うことにするが、聖那とは異なるが同様にジョセフと接点を持つ人間の1人だ。

何の接点かと聞かれると、ジョセフの話した代行者としての立場としてだが、オレはジョセフと少し違うが、似ているようで違う特殊な立場に地位を置いている。

神の起こすような奇跡や天変地異、知識は持っていないが、神の代行としてある意味人並だが生物が絶対に避けられない事態に深く関与している神の代行者の1人だ。

正確に何者かと言うとオレは数多くいる死神の1人であり、本来は人間で神に変わって職務を代行している立場と言う、少し複雑な立場だ。

同じ立場の人間は結構複数存在している。

ジョセフとの違いは生と死と言う生物が絶対に回避不可能な境界線であり、ジョセフと異なり人間と深く関わり合いが多くなることだが、反面ある程度の上からの指示や暗黙の規則、危険と言うものも存在している。

細かい規定はあるが、大切なのは何者に対しても平等であり、中立を保ち、敬意を持つことであり、時として訪れる残酷な現実を受け入れながらも職務を遂行することだ。

「―――――っむ?」

 言うことは言うが格好とつけただけの言い方で、悪く言うがこの仕事は神や宗教の代理人たちの代理、言わば下請けや雑用と言う方が妥当だ。

「ハロー?」

 時間は夜の2時過ぎ、日付は26日に代わり、睡眠をとっていたオレは眼を覚まし電話を取った。

 元がオレは人間でもあるし、下請けの雑用とも言い少し酷い仕打ちをされても悪いことをされても結構文句が言えない立場だ。

こういう夜の仕事もまったくなかったわけでもなく、この日、と言うよりもここ数日だが仕事もない状態で少し気が緩んでいたが、何とか電話を取ることができた。

「ミスターダグラス?」

「―――ああ。」

 天使の声だ。

 心地よい声と言う訳ではなく電話越しの相手は本物の天使(エンジェル)で、神の声を神に変わって伝えに電話をかけてきたのだ。

「―――――」

「仕事だ。黄色人種の男性2名だ。」

 覚めてない眼を覚ましながらと言う状況だが言葉は続いた。

言葉通り雲の上で暮らし神の代理と言うある意味お上で公務員のお役所仕事のような連中の天使どもはそちらの事情も知らないし、こっち事情で動くことが常識だと考えるように無意識に天罰を与えるような素早い物言いだった。

自分たちが困っていれば無駄に話し合うだけで、下の人間を無駄に苦労させたり、罪を着せたり金を巻き上げようとする点は現在の政治と同様だ。

批難するようだが天使を含め宗教の神や代理人は仕事もしないで給料を貰っている貴族のような存在で、オレたちは平民のような存在だ。

神たちには身分制度が残っているのだ。

 16世紀以後に人間たちの多くの国々はこのような身分制度に対し反乱を起こしフランスの市民革命やアメリカ合衆国建国、奴隷制度廃止と言った歴史に残る身分制度根絶の数多くの功績を残しているが、神は絶対的な存在で革命改革は皆無だ。

 世襲制は当然で能力無視、懐古主義と言うよりも職務怠慢を通り越して、脳にカビが生えているか乾燥して使い物にならない集団の集まりだ。

 使い物にならないと言えばうわさにしか過ぎない話だが、関連して聖書や神話などに恐竜時代や以前の時代の記録があまり見られないが、これは神の先祖が記録の残さなかった職務怠慢が原因で、(ドラゴン)は再現しようとして失敗した生物と言う説が存在している。

 竜が神に近い存在とも言えるのも納得の答えだが、恐竜と言えば、滅んだのが6500万年前だが、神の寿命は最高でも一億年ほどと言われ、永遠の存在でないことも判明している。

 多少仕組みが異なるが普通の生物と同様で子供を産み増やし、増殖し、情報が少ない中で仕事内容を受け継いでいった状態で、宇宙創成も神たちの間でも語り継がれ、これは人間には知られたくない事実だそうだ。

語り継いだと言えば聞こえがいいが失礼な発言だが神たちの思考は恐竜よりかは新しいが2千年以上も、紀元前の思考であり、非常に時代遅れな思想集団であるが、米国合理主義的に言うと不合理だが、下の意見も一切聞かずに命令するだけの状況だ。

意見具申すればば人間の分際でとも言われ、かんしゃくや発狂、ヒステリーのような反応を起こすので、言うだけ無駄なので黙っておくことが正当な手段だ。

不満がないと言う訳ではなく、毎日でもなくあまり会わず人間の世界で暮らしていて我慢は一応できるが、無神論者の進出など、職務怠慢の料金は十二分に発生しているが、ジョセフのような代行者の存在や意志も尊重して手を一切ださない状態だ。

ほかの動物と違い特に人間は思想の関係上管理が難解で代行者に任せきりにして責任転嫁し、下手に動こうとせず責任を取らないようにしているのだ。

 死神なんて恐ろしい身分に思われるが、結局は彼らの仕事の都合で間にあわなかったり、規則上管理や対処できない死者を扱う代行者と言う身分だ。

「―――――」

 言葉は覚えていないが、メモを書き内容を書きとめた。

 いつものことだし、電話を終えるとオレはベッドから起き上がりシャワーを浴びるためにバスルームに向かった。

 朝でも昼でも仕事が来るので眼を覚ますにはシャワーが必要だ。


死神の立場は中立である。

 死は何者に対しても平等であり神もまた同様であると言え、死神は死者の霊魂を慎重に扱い、差別せず平等に扱い丁重に処理することが求められる。

 何にしてもオレはシャワーを終えると着替えた。

 服装に特に指定もあるわけでもなく自由で中には普段着で仕事をする同僚も見たことがあるが、オレは基本的に黒いスーツ姿にしている。

 仕事になるが死神が何をするかと言えば神や天使の回収できなかった霊魂、言わば魂を回収するのだ。

 文明発達と同時に医療技術や科学技術が発展し、狂いでも出ているのか、何にしても影響か増加しているが放浪状態や強力な地縛霊、悪霊になるのを防止させることが1番の目的だ。

 魂にも寿命が存在し人によっては時間の経過で自然消滅する場合もあるが、現在では死神の代行業が発達し激減したが下級の神や天使や悪魔、魑魅魍魎の嗜好目的での再生や、使用売買などの防止をすることが第二の目的だ。

 ゲーテのファウストに代表されるように自然の摂理を捻じ曲げることは許されないし、悲惨な最期を迎えることが現実だからだ。

 ファウストは悪魔メフィストフェレスと契約しゲーテの話では神の力で救われるが、実際のモデルとなった人物が実際契約したか不明だが悲惨な死を遂げている。

ある日何が起きたか不明だが部屋中に脳や歯、目玉と言った頭の部品を四散させて死んでいたようで、地獄いきも決定していると言う追い打ちもかけられた最後だ。

 場合によっては助ける仕事も来て危険な眼にもあったことがあるが、多くは無視されることも多く、実際問題これよりも3番目が一番厄介で、回収後の各宗教引き渡しで、これが一番厄介で死神の本分となる仕事だ。

 現実キリスト、イスラム、仏教、その他数百以上の宗教が正式な宗教として認められているが、見極めて人間たちが言う天国や地獄に引き渡さなくてはいけないのだ。

 回収した対象が死を受け入れず抵抗することもあるし、イスラム教などの唯一神道の宗教全体を否定することになるが、死神を含め、多神道が現実であることを受け入れさせ、無宗教や無神論者の場合も存在し中立地帯に進ませることや、説得と言った交渉術も必要となる。

 死後の世界も複雑であり、死後身体はないが一応は魂は消滅するまで人並みの生活はある意味与えられ送れると言える。

「イエロー2人、日本人じゃないといいんだが………」

 電話越しに知らされた回収する予定となる魂は2つだが、黄色(イエ)人種(ロー)と知らされ思わず嫌そうに言ってしまった。

 多国籍の未知の宗教や無宗教家や無神論者も困るが、次に、と言うよりも一番困るのが日本人だ。

 多くが仏教徒だと思われているが、根本には日本神道と呼ばれる国教が存在している。

 仏教と同様の多神道だが、八百万、日本では正確にはYAOYOROZUとも呼ばれるほどたくさんの神がいかなる場所にでも存在していると言う宗教だ。

 TSUKUMOSHIN(付喪神)と呼ばれる神も存在し、KIBUTSUHYAKUNEN(器物百年)、簡単に言うと無生物にも百年ほど経過することや持ち主の強い思い入れがあると架空の生物や怪物、極め付けに神になる可能性があるそうだ。

 仏教徒のようなほかの宗教と違い厳しい戒律はなく、他宗教や他国家の行事や文化を受け入れとりいれるためか信仰心は少し薄く無神論者は少ない利点があるが半場無宗教家化している。

無頓着とも言う方が正解で家系(ルーツ)的なものも存在しているが本人が知らないことが多く判断が難しいのだ。

 どの宗教に属さないとして中立に引き渡すと後で神が名のりでたり、先に死んだ家族が後で名乗り出たと言う情報は日本人が多いのだ。

 一見するとアメリカ人も同様に思われるが、オレ自身実感するが、キリスト教の精神は知らない内に心の中にしみついて生きているように感じる。

「―――ま、考えても仕方ないか。」

 少しの間が考えたが、考えても仕方のないことだし、遅れて文句も言われたくないし、考えるのを止めて出ることにした。

 生誕(クリス)(マス)は終わり、地域的なものか雪も一滴も振らず、昼頃には止んだが雨が降って地面が濡れ少しだけ乾いた地面が遠くに見え、寒いだけの居心地の悪い空間が外界には広がっていた。

 ある意味命を扱う仕事だが、事務的となって不謹慎にも思われたかもしれないが、これが死神の仕事だ。

 この時オレはよく考えればよかったと思う暇もないことが起きるとはこの時本当に予期していなかった。


 天使とは言葉通り神の代わりに天から来た使いを意味しているが、悪魔と邪神とは仲間の神や天使を裏切った神であり天使であり、裏切りの基準も神個人の裁量や見解も多く、明確には大差は存在していない存在だ。

 神と力は互角の者もいれば足元にも及ばない存在も存在しているが、何にしても区別がつけられ悪魔と言う存在は忌み嫌われて恐れられ、神と天使は偉大な存在として敬意を持たれ敬われている。

 宗教神話が架空の物語だと言われてばそこまでだが、わたしことアルティア アークライト、アリーの場合はそうはいかない存在だ。

 アメリカに50以上の支社を持つ家具大手店舗サイツ社の本社の裏口に、日本製のオートバイに乗って来た女性がわたしで、表向きは大株主の1人としてきたが、このわたしをだれが悪魔だと考えるかと聞かれたら馬鹿な話だとだれでも答えるが本当だ。

 バイクに乗れるし体型もいいし確かに悪魔的だとも言われるのは放置して、確かにわたしは悪魔だし、加えて悪魔最強の戦闘種族で絶滅間近の「影の血族」の数少ない1人、と言うよりも確認されている限りは最後の1人だ。

 悪魔とは言うが、悪魔としての仕事などかけらもしたこともないし、わたしは人間として生活しているし、ある意味偽装だが人間たちにまぎれ正式な手続きを受けて人間の世界で生活しているのだ。

 最強の戦闘種族とも言い、悪魔としてかなり上級に位置し、世に言うゲームにでも出てきそうな魔王たちでも1人だけで十二分に恐れさせるぐらいの力量も持っているが、ほとんど振るわずじまいの生活もしている。

 人間としての生活に対してだれかに不満かと聞かれたらまったく不満でもないし、自分の力や神の存在を信じさせる気にもならないし、わたしたちは少しずつ人にまぎれ滅していくべきだと思っている。

 影の血族の滅亡は母から聞いたが十数年以上前のある時に一族の決議があり、総意だと言う話や説もあるし別段存続にも興味もないし、納得もしているが、不満なのはこれから話す仕事の話とそれに関係する話しだ。

「―――」

 車を地下2階の駐車場に入れたわたしはバイクをおし、駐車場の一番端の壁に近づき、壁に軽く触れると壁が観音開きの扉のように開いた。

「―――ケヴィン?」

 隠し扉かと聞かれたら紛れもなくそうだし、実はこのサイツ社は表向きには家具製造会社だが、この隠し扉で推測できるかもしれないが、ある意味本当の目的と言える裏向きの顔が存在している。

神と言った本来実在が疑問視されている幻想上の存在達が特定の理由などを含め、人間の世界で独立して生活できるように援助や教育指導、特例の場合だが一時的な保護をしているのだ。

 影の血族は実は悪魔としての歴史が浅い上に人間としての生活が長くわたしが最後で死んだ母も祖母も曾祖母も人間にまぎれて生活していて理解できなかったが、始めて知ったが多くが常識知らずばかりの馬鹿集団だった。

 悪い言い方にも聞こえるが、人間の文明の文化や機械の利便性を理解していない上に危険で下劣だと卑下するのが当然や常識で、現実を受け入れないことが多いのだ。

中に入り照明を灯しバイクを止めた後、ヘルメットを脱いで片手に抱えた状態でわたしが呼んだ男ことケヴィン ミラーは表向きにはサイツ社の課長だが、実は彼はと言えば人間で言う没落貴族の家系の天使だ。

彼は受け入れ真面目に生活しているが、多くは挫折していることが多く、引き返せるものは引き返すが、ケヴィンはまじめなこともあるが、引き返せない部類に分類分けされていると言うことも手伝ったと言える。

原因はダムス パニックと言われる事態で、彼以外にもこの犠牲者は多く存在し、これは何かと聞かれるとくだらない予言に感化された上層部の表向きは無駄な人員の削除、言わばリストラで、裏向きには反乱分子撲滅のための永久追放だ。

くだらない予言が何かというと実はこれは中世の歴史上の人物ノストラダムスの予言であり、信じられないが神たちがこれを仲間間の反乱の予言だと判断し、表向きは無駄な人員の削除だが、裏向きに反乱の候補者を人間の世界へと永久追放したわけだ。

戻りたいが戻れない状態で予言も外れ、一部は戻したりしているらしいが、対応が追いつかず、戻せないものも多く、人間の世界をよく知った存在達に生活できるように指導させようと考えたわけである。

 社員の30%ほどがわたしを含みこう言った非人間外の存在で、残りの人間を100%とした場合事実を知り協力してくれているのが20%未満だ。

 わたしは影の血族と言う身分も存在し、上層部とも関係が存在し、人間の世界の生活にも詳しく、仕事もせず上層部と見て比べると格段に自由だと見られ、お役目に白羽の矢が立ったわけだ。

 慈善事業と言う訳でもなく半場嫌々だがわたしをふくめ賛同者も多く、わたしたちで言う偉い立場の人間たちや大きな声では言えないが、巨大な宗教組織からも高い前金を受け取り、逆らえない状態なのだ。

 上層部から見て一見すると自由そうだがわたしだってこちらの生活もあるし、現在は仕事の都合で英国にいるが夫ディランと、息子のカークが存在し、家族もいるのだ。

 結婚直前に知ったがディランはダムス パニックの被害は受けなかったがケヴィンと同様の天使の没落貴族の家系の生まれで天使たちの旧時代的な思想に失望し人間世界にわたっていたそうだった。

 自殺や最低の行為だと批難されながらも必要最低下の生活を手に入れ、人間世界では名もなき男だったが偶然わたしと出会い、きっかけとなったかアメリカンドリームをつかみ、現在は海外をまたにかけるビジネスマンとなっている。

 本人はわたしに会えたことの恩返しと言い、いいと言うが、サイツ社の裏の仕事も悪いが援助や手伝いさせてもいるし、カークもほとんど任せきりで一緒に渡英している。

 話しに関係して上層部は期待できないし、ディランも総意だが、区別や大差はないとは言ったが、半分天使半分悪魔のカークにはこの事実を隠し、これからも人間として育てていくつもりだ。

 ケヴィンが何にしても来ないのは忙しい身の上で、わたしも同じような立場で、文句も言えずわたしはため息を思わず吐き出したが、何にしても金属製の大型の机の上の金属製のケースに目を向けた。


Reaction

Influence

Damage

Energy

Radiator

System


 ケースの上部に書かれているアルファベッドで、略してライダーズ、ライダーシステムだ。

 近づいたわたしは少し硬く止め金を外すと、少し心地いい乾いた金属の音が周囲に響く中でケースを開けると少し大きい腕時計、と言うよりもブレスレットのようなものが入っていた。

「―――おお? 奥様? 来ていたのですが?」

「―――奥様なんてやめてケヴィン、アリーでいい。」

 中身を見ている中で、扉が開き、細身で初老に近い紳士こと、ケヴィンが姿を表し、軽く走って近づいてきた。

 年齢に髪形や顔、服は違うかもしれないが、整えられた髪や穏やかな表情、品のある着こなしはDCコミックスのヒーローの1人、バットマンこと、ブルース ウェインの執事、アルフレッド ペニーワースを彷彿させる外見だった。

言葉遣いもわたしのアクセントが強い英語と違いきれいな英国英語で、わたしを敬うように声をかけたが、わたしは少し仕方がないなと言うように言った。

没落貴族だった彼は生活できているが、前の生活の癖が抜けないようで、事情もあり、社員として一応は高い地位にはあるが、わたしのことを敬意を込め、奥様と呼ぶことがあるのだ。

「では、アルティア様。見てわかりますが、それが完成品です。」

「―――子供の玩具みたい? カークがよろこびそう。本当に大丈夫なの?」

 言われて手に取るが言葉の通りで、ライダーズは日本のTOKUSATSUとも言われる SFヒーロードラマの道具のようで、テレビを見始める盛りのカークが本当によろこびそうな外見をしていた。

「あくまで理論上で、実験も数回ほどですからね? しかし、奥さ、アルティア様が制御、拡大、縮小できれば十分な信用になると思いますし、後は実戦次第です。」

「―――」

「カーク坊ちゃまが使う日が来ないといいですね。」

 TOKUSATSUでは原理は不明だがこう言った道具を使い戦闘用の服へと瞬時に着替えることがあるが、これもある意味似たような道具と言えた。

 ファンタジー系の話をよく知っている人間ならば鉛のような一部の金属が魔法の力を劣ら、軽減させると言う話を知っていると思うが、ライダーズはこれの応用をしようとしているのだ。

 金属に電気を流したり、磁力を発生する金属を使ったり、ステンレスなどの人工加工した金属を用いた装置を造り人間外の存在の能力の制御、拡大、縮小をしようと言う非科学と科学の混成物とも言える装置の開発計画と言う訳だ。

「そう言えば、一度は物心のついたカーク坊ちゃまに会いたいのですが………?」

「―――――ダメ。カークには会わないで。」

「―――――わかりました。」

 軽くだが少しでも気を和らげようと言うようにケヴィンは言った言葉だったが、わたしは少しと言うよりも見てわかるほどに嫌な反応をして返したが、ケヴィンは軽く眼を閉じ頭を下げて返した。

 成長した姿は見せたいが、カークにこの世界のことに深入りさせたくなかったし、ケヴィンも了承していたからこそ、成り立つ状況だ。

「ディナの命令で始めたけど、本当にわたしを被験体にするの?」

「―――わたしも魔王様に意見具申できればいいのですが………」

「解ったわよ? 何にしても装備していってくるわ?」

 わたしが少し不安そうに言う中でケヴィンは困ったと言うように言う中でわたしは勢いよく返し、腕に装着してヘルメットをかぶりなおした。

 会話からわかるようにディナは魔王の名前で、このライダーズ開発は魔王からの依頼であり、表向きには人間の世界で暴走する人間外の存在の鎮圧目的で開発されている。

正確には鎮圧する使用者の能力拡大や専用の手錠などの拘束具の開発が目的だ。

「奥さ、アルティア様、わたしがすると言うのは―――」

「却下。それとアリーでいい。」

 バイクに乗りキーを回しエンジン音が勢いよく室内に響き渡る中で、心配そうな顔でケヴィンは申し訳なさそうに申し出るが勢いよく却下した。

「アルティ―――」

「行ってくる。」

 ケヴィンもそれほど年寄りと言う訳ではないがわたしと比べると頼りないし、荒事はわたしの仕事だ。

表で開けた時と違い扉は自動で開き、ケヴィンが声をかける途中でわたしは言葉を返し、勢いよく愛車を飛ばした。

「無線の電源を入れることを忘れず―――――?!」

駐車場にはわかる人にはわかる話だが米国の車とは違う独特のエンジン音が響き渡り、わたしが過ぎ去ろうとする中で、ケヴィンはわたしに対し最後の抵抗だと言うように口を開き、大声で自らの意志を伝えた。

何してもわたしはこれからこのライダーズの実験のために出ることになるが、これがまさか奇妙なクロスオーヴァーを生み出すと言うか、巻き込まれるとは思いもしなかった。


スーツ姿で車に乗った死神など実に絵にならないものだと考える人間が出そうだ。

仕事に何にしても出たオレドギーは何をしているかと言うと現場に向かうために自分で運転する車で移動している。

スーツ姿だし冷たい激しい雨の日に黒いコウモリ傘をさし、雨量によるかもしれないが黒いレインコート姿で歩いて向かうと言うのが物語ではよろこばれそうだが、季節だが雪も降らず無駄に寒いし車での移動だ。

バスにでも乗れば映画のように雰囲気も出るかもしれないが自分の車で移動する。

この世に腐るほど存在する夢想家の相手は放置してほかの人間の話に任せるとして、何にしてもオレは現場に向かって車を走らせていたが、車の助手隣には同僚であり先輩のアミが乗っていた。

「上は何が不満なんでしょうか? ドギーは仕事は早いしまじめだし急な仕事にも対応してくれるのに………」

「これが人間と神の壁だ。それにオレには記憶のことを含めて前科があるだろう?」

「―――そうですが………」

 外見は日系の10代前半ほどの少女だが立派な先輩で、彼女はオレと違い、生まれながらの死神である。

 外見や言動的にはある意味と言うよりもまるで子供だが、こう見えてオレの3倍以上も生きているし神の力を使い容姿を変えることもできるように、言葉通りの人間離れした能力を多く持っている。

 不意に姿を表したが車の前で待っていた状態で、アミは上層部から本来は普通の人間である死神のオレが職務を遂行するか確認するために派遣した見張り役こと監視する正規の死神だ。

 変な表現かもしれないが、死神にも正規非正規の種類が存在し、アミは正確には人間との混血だそうだが、正規で血縁による踏襲で、オレのような元人間はある条件で代理業を始めることになっている。

「―――それ以上の働きはもう十二分に―――」

「何にしても事故で身体の、頭の損傷が酷くて本当に覚えてなかったことは事実だ。」

「………」

 察しがいい人間がいればわかると思うが、車が運転できることと言い普通にある意味暮らしていて違和感が全くと言うほどにないが実はオレは記憶喪失だ。

ある事故で死にかけた時にあることが目的で死神になることに了承したらしいが、身体の損傷の関係か事故以前の記憶が全くと言うほどにない状態で契約を完全に忘れている状態で、処分を受けた前科がある。

「何にしても、オレ、と言うか彼にはこれが一番いいんじゃないのか? オレもまったく覚えてないし、友人たちもある意味神の贈り物だと言って話さないし忘れてよかったとも言っている。」

 事故後目覚めたオレは必要最低限の生活ができる能力はあったが過去の記憶が一切なく、何が起きたか不明で、付き合いも悪くなかったと言うが友人たちはそろって過去のことを一切話そうとしないし、忘れてよかったことだとよく言われている。

 部屋の中も殺風景でアル中になりかけていたとも言われ少しだけだが酒臭く、深入りしない方がよさそうにも感じた。

「前にも話したが以前の記憶らしい夢も見るが、何も思い出せないし、監視は面倒で迷惑だろうし何にしても早く終わらせよう。」

「迷惑じゃありませんよ。」

「―――お前に迷惑をかけた過去はかわらないさ。」

別の意味で過去を持っていないオレはドギーこと、ジェームス ダグラスとして生きることしかできず、彼の過去が何があるにしてもオレは死神の代行者となった。

車は鍵を刺してエンジンをかけ、運転方法さえ知っていればだれにでも動かせる乗り物だが、中の人間の脳や魂は医学上代用はないが、ある意味オレは運転手が変わった車のように、自分が脳や魂が変わった人間のように感じていた。

急に運転を任されたが、運転ができるならば運転させてしまうのが世の中の現実であり、身体と言い、車と言い、人形や言いなりと言う訳ではないと思うが何にしても指示されたとおりに変わらずに動いていた。


怪物狩りだ。

飛び出したわたしことアリーが何をしに会社に来て何しに出たかと聞かれると、答えとなるのは怪物狩りだ。

怪物と言ったがなんと言う怪物かと聞かれると正体は不明だ。

神が造りだした幻想上の生き物や、キメラと言われる合成された獣、人間たちがUMAと呼ぶような怪物にも属さない謎の怪物だ。

どんな生き物かと聞かれると、一言で言えば恐竜によく似ているもの多く、皮膚が黒く、眼が照明のように赤く光り、人間など神や悪魔を選ばずに突然現れて襲うそうだ。

人よりも大きい種や小さい種、ほかも昆虫型や食虫植物型と詳しく言えば大きさも千差万別で、神さえも知らない内に生まれていたとのことで、紀元前には存在していたと言うような記録も発見されている。

ライダーズの開発の主要目的は使用者の能力制御、拡大、縮小だが、もう一つとしてライダーズにはこの名もなき怪物の対処のために戦うことを目的に開発し、わたしは自らの力で実験しようとしているのだ。

「―――」

『―――お、アルティア様、聞こえていますか?』

「―――ええ、聞こえてる。ディナの報告した場所に向かっている。」

 躍動的なエンジン音と前方から吹き荒れる風の音、加えてクラッチやブレーキ、アクセルと言ったバイクからの音が耳に響いている中で、車に搭載していた無線機からケヴィンの声が聞こえた。

 社内とは言ったが正確には郊外にある表向きには家具製造工場であり、わたしは都市に伸びている細長い道路を走っている状態だ。

 車で2、30分ほどの距離だが、森や砂地が多く、道路がなければけもの道とも言える道なき道が広がり、この時少し湿気を感じる木々がトンネルになったような森林地帯を走っていた。

『―――スイッチを入れ忘れないでくださいね?』

「―――――ああ、そうね? 忘れるところだった。」

 肝心なことをケヴィンから指摘され、忘れていたわたしはライダーズの起動スイッチを押した。

 バイクから両手は離さなかったが、スイッチを押せたのはわたしの、影の血族の力のためだ。

片方が黒い影のようだが片腕が突然2つに分かれ、ライダーズの起動スイッチを誤作動防止のために3秒以上長押しが必要なスイッチを押したのだ。

 どういう仕組かと言うとわたしたちは影を自由自在に使いこなせると言うよりも、影事態が本体で、バイクに乗っている身体は本体ではなく、能力を使って造りだした虚像、言わば幻影だ。

 幻影とは言え能力を使い質量、言わば重さや物に触れ動かす力や外見、内臓器官まで人間やほかの生物を精巧に再現することができる。

 本体自体が姿形を持たず自由自在に変形自在で質量もないが、姿形が自由自在で質量を持った幻影を持ち出すと言えばわかると思うが、単体でも広い攻撃範囲と攻撃力を持ち、これが悪魔最強の戦闘種族と言われる理由だ。

 本体自体も損傷することも少なく知能も人間並みで、最強と言うよりも無敵だとも言えるが、弱点を持っている。

 1つは寿命で、原因不明だが普通の神や天使、悪魔と違い人間と同様で長くて50~100年ほどしか生きられない、2つ目はわたしを含むが以外にも非好戦的で、3つ目は非常に人間らしすぎることだ。

 起源の16世紀ごろから正式な手続きを踏んで人間として生活し、人間らしいと言うよりも能力を除けば人間に知られずに共存している状態とも言え、神や天使、悪魔らしからぬ生物で生活を送っている。

 最強の戦闘種族とも言われるが人間の雑念などのようなものが集まり、影と融合し生まれた小悪魔に似たような弱い生物とも考えられていた。

わたしが最後の1人と言ったと言えばわかると思うが、個体数が起源当時から非常に少なく生まれた時から静かに絶滅に向かっていたことは明確だった。

この力が知られ振るわれたのが実は仲間の邪神や悪魔たちにで、17世紀ごろ能力に眼をつけ、保護と言う名の束縛や雇おうとした際に、思想などの違いが原因で全面戦争になったことで発覚したそうだ。

 戦争などは人間の歴史で見られるように思想の違う結果の果てでもあるが、当時人間たちの歴史上では自由を求めるなど思想に大きい革命があり、旧体制的思考の神たちと対立したことは仕方ないと言えた。

 戦争は影の血族を1人の死者を出さないと言う圧勝に終わったが、彼らの多くは人間として生きることを望み、手出しせず静かに絶滅させるならもう攻撃はしないと言い、神たちと条約締結に署名させたとのことだ。

 署名させた紙が一族の減少の関係で回ってきたが、効力が無効だと思うほどに古い紙に成り果て、わたしも最後の1人だし、意味もないので破り棄てていた。

『Release!』

「―――?!」

 本当に子供のおもちゃのようで、スイッチを入れた瞬間に人工音声だと思われる声がライダーズから聞こえた。

『―――――起動確認用の自動音声です。インプットコードは覚えていますか?』

「―――覚えてる。」

 軽くだがおどろく中で少ししてケヴィンが無線で何が起きたか説明し、わたしは何にしても返事を返した。

 彼の言ったインプットコードは、ライダーズを使う際に数字入力式を採用したために使う数字のことだ。

『―――どうしました?』

「―――本当に子供のおもちゃみたい、カークがよろこびそう、本当にこれ大丈夫なの?」

 大丈夫かと聞くように言うケヴィンに対し、失礼だがため息交じりにわたしは一番の心配をケヴィンに対して向けた。

『―――扱いやすいように開発しましたからね? きちんと作動しているんでしょう?』

「ええ、文句は言えないと言うことね?」

 人間ではわからない感覚だが、確かにライダーズは作動し、わたしは感覚を実感していた。

『ご健闘を―――』

 ケヴィンの無線は切れ、わたしは何にしても走り出し、森林地帯を抜けた。

 景色が開けると耳に届くエンジン音と周囲の景色が変わり、あと十分とかからない距離まで来ていた。

 少ししてだが、速度違反などしても無駄だし、何の必要があるのかわからないが、白バイらしき警官が数人ほど停車している姿が見えた。


 人間の死に方は千差万別で、文句を言う気はないと言えばうそになる。

これから行くのが物凄く寒い冬で人気の無い裏通りならばだれでもなおさらだと言うのはオレドギーでなくても言うまでもなかった。

大通りに車を駐車し、オレは適当にメモした仕事内容とアミの用意した仕事の書類に目を通し、出発することにした。

「車頼むな? 駐禁を取られたくないし、運転もできるな?」

「―――はい、気を付けて。」

「―――大丈夫だ。警察も来てないし、銃も持っている。すぐに終わるさ。」

 車を出てアミに言うと引き受け、オレは返事を返すとドアを閉め、歩き出した。

 職業柄怪しまれることもあり、殺人現場や違法的な場所と言った危険な場所に出入りしたこともあり、警察への対処や銃の所持は欠かせないものになっていた。


 深夜で文句を言われそうだが、人の気配もなく、わたしこと都市内に入ったアリーは目的の怪物たちが集まっていると思われる裏通りへと入った。

 地域的な関係で雪が降らず、数日ほど小降りだが雨が降っていたせいか時折大きい水たまりが道路にはあった。

「―――――」

人間ではわからない感覚だが、わたしは怪物の気配を感じるとバイクを壁際に駐車し、銃を取り出した。

ストレイヤー(以下SV)ヴォイヤーインフィニティ、コルト社の名銃M1911A1、別名45(フォーティーファイヴ)を原形にした同45口径の大口径拳銃で、予備の弾奏もたくさん持ってきている。

女が持つには物騒で無理だと思われるかもしれないが、わたしの身長は5フィート10インチ近くもあるし、体格的にはある意味問題はない領域だし、身体も鍛えているので十二分に扱えると思っている。

能力もあるし、必要もないと思われるし、ライダーズの試験もあるが、不用意なこともしたくないと思ったし、銃だけでも撃退が可能であると考える間もなく、怪物たちが近づく気配がしていた。


ブラックジョークや差別的で不謹慎になるがトリコロールカラー、言わば3色そろい踏みだ。

予定外の仕事を現地で与えられることは死神にはよくあることで、オレことドギーは地面に転がった3人の死体を見ていた。

報告によればイエロー2人と聞いたが、転がっているのは1人がイエローの普段着の男と、ブラックとホワイトの警察官(オフィサー)だった。

医療技術の発達によるある意味強引な延命、事故と言う不測の事態、知能的な戦略による状況からの脱出など、何にしても仕事柄狂いが出ることはよくあることだった。

「強盗か? こいつは?」

 予定が外れるのもいつものこととして、推測の域だが思わず言葉が漏れた。

 状況判断だが強盗か何かをして相棒と逃げていたが銃撃戦となり、本来は2人が死ぬが相棒が生き残り逃げ延びたと言う台本が仕上がるのは無理もない状況だった。

「―――――」

 傷が普通でもないように見えたが、何にしても仕事だと言うようにオレは服の中から仕事用の道具を取り出した。

 円筒形の金属で携帯灰皿のように見えて信じられないが、魂、言わば精神体回収用の容器であり、オレは回して容器を開けた。

 科学的原理と言うものはオレも知らないし、考える気もないが、魂と呼ばれるものが肉眼で見ることが少しだけ可能となり、3体の死体から光が出ると容器に向かって吸い込まれて行った。

 魂が抜け出て徘徊することもあり、行方不明となることもあり、予定と違うが、何にしても仕事は終わった。

「―――?!」

 適当で事務的で非人道的と非難されて言われそうだが、これが仕事だし否定もできないが、言う人間も仲間もいないので何にしても帰ろうとした時だった。

「―――銃声?」

 言葉通りで銃声のような音で、確かに前日が誕生祭と言うこともあり、花火か何かがあってもおかしくないが、夜中も過ぎているし、間違いなく銃声と判断してオレは身体を壁のほうへと移動させ、身を伏せ緊急用の銃を取り出し、弾丸を装填した。

 デザートイーグル50AE、イスラエルの会社が造りだした50口径と言う大口径拳銃で、象を倒すほどの威力がある。

 予備の弾奏は持ってきてないがステンレスフレームにブラックスライド、アンダーマウントに小型だがダットサイト、内部を磨き上げ(ジャ)()不良(ング)の確立を減らし、オレ独自の小改造をしている。

 訓練と称し時折撃ちに外出はしているが、銃の腕には職歴を含めて自信はないが、改良による性能向上で命中率や弾丸の少なさ十二部に補えると思っているし、非常の護身用なので数発撃てればいいと思って持っている状況だった。


 闇の中で迫ってくる眼を光らせた恐竜のような怪物に向かって銃弾を撃ち込んで倒して行くと言う光景で、一見するとゲームのような光景だが、笑いものにもならないし、楽しくもないし、ゲームのようにライフの数やコンティニューもなく必死な状況だ。

 何にしてもわたしアリーは戦い始めていた。

 映画などで見たが、間違いなく本物と言うよりも、本物よりも恐ろしい怪物たちだった。

 一度でも攻撃されたら終わりだし、銃弾にも制限があるし、ゲームと違って一方方向からではなく全方向から来るしと最悪な状況だ。


 軍隊などの教本などを参考に覚えた構えや動きを見よう見真似で前へと、銃声のした方向へと向かっていく中で、オレドギーの視界の先に怪物が姿を表した。

「―――――?」

 恐竜のような怪物が出るとアミから聞いたことがあり何の冗談かと思っていたが、姿を表したのは間違いなく恐竜と言うよりも恐竜に似た怪物だった。

「―――」

 だれかに向かっていき、銃撃されていると言う状況のようだった。

「―――」

 どこのだれかは知らないが、弾も無駄にはしたくないし、不用意に関わり合いもしたくないし、仕事も増やしたくないし、オレは気づかれないように後ろに下がることにした。


 集団で行動し、連携をとり、会話をするように見えると、怪物の知能はこれまで調べた限り信じられないが人間並みか、それ以上かもしれない知能を持っていることが推定できるが、それ以外の生態は全くと言うよりも完全に近いほどに謎に包まれている。

 確かに生き物なのは確かでわたしアリーが銃を撃ち込むと地面に倒れて死ぬが、ここから先が生態がわからない理由になるが、信じられないことに死んだ後に溶け出すのだ。

 捕獲しても同様で、輪郭が失われ、地面に水が吸収されるようにとけだし、跡形もなく消え、密封や厳重に保管しても無理なようだと解っているので、銃で撃つ以外の調べ方もなかった。

 知能も高いと推測したが、仲間間以外では交友を持たないようで、わたしにたいし非常に獰猛な様子を見せていた。

「―――ちょ? ぇ? 待ちなさいよ―――?」

 背後に気配を感じ勢いよく逃げる中で、怪物が立っていた場所に落ちてきてわたしのバイクをつぶした上に、持ち上げて勢いよく放り投げようとしている。

「―――」

 待ちなさいよとは言うが待つわけもなく怪物は勢いよくバイクを放り投げてきた。


 恐竜の怪物をピンにしてバイクでボーリングする趣味があるのかと聞けば冗談になるが、オレドギーが見たのはそう言う状況だった。

 音もなく逃げようとして背を向けた時、女性のような声が聞こえた後、背後から何か嫌な音と、金属の壊れた音が響きわたり、思わず振り返ってしまい、振り返った後状況判断で思わずそう考えた。

「ぉわっ?!」

 振り返った瞬間に足元に人よりも大きいものが鈍い音を立てて落ちてきたかと思うとあの怪物の内の1頭で、視界の先にはほかにも同じような状態の怪物が数頭見え、廃車同然の壊れたバイクが地面に1台転がっていた。

「―――――!」

 死んだかと思ったが、眼を光らせこちらに顔を向け、オレは思わず銃を向けたが、怪物はすぐに地面に倒れ、死んだ。


 ボス格の登場のようだった。

 ゲームのような表現かもしれないが、多少知能がある生物にも指揮系統と言うものが存在し、昆虫のアリやハチが具体例で女王種の言われるような強く大きく、賢い種が存在し、それだと思われるのがバイクを放り投げてきたのだ。

 気づくとほかの怪物は下がり、逃げ始めていた。

「―――――!?」

 体長は先ほどたくさんいた怪物が2、3mほどだが、この怪物は3、4mほどもあり、わたしことアリーに対し、バイクを投げた後勢いよく走って攻撃を仕掛けてきた。

 反撃のひまを決して与えないと言うように走り込みをかけ、腕や足を振り回し攻撃を仕掛け、わたしは後退するしかなかった。

 普通の人間では攻撃を貰い確実に死んでいるが、わたしの身体は本体が影であり、影も損傷することもなく、最初の一撃が当たったと思われる中で姿を消し、高速でバク転して後退した。


 不都合な事実は必ず起きると言っても過言ではなく連鎖的なことも多く、火の粉が自分の身に降りかかる前に急いで逃げようとオレドギーが背を向けた時に都合の悪いことが2つの事態が起きた。

 1つは振り返った瞬間に少し先に立っていた怪物と眼が合ったことと、言うまでもないがバク転して後退して来た女と、言わばアリーに見つけられたことだ。

「―――」

「危ない!」

「?!」

 銃声は聞こえていたが、銃声もなくなりあの怪物の餌食になった可能性が高いと思ったし、オレは思わず振り返るとライダースーツ姿の女、言わばアリーの姿はあったと言う訳だ。


 何で人がと思うひまもなく、同サイズの怪物が少し先にもいるようだし、危ないとは言うが、危ないのはよそ見をしているわたし、アリーの方で怪物が突っ込もうと突進してきていた。


 アリーが飛んだ。

「―――ぁ?」

 突然横から高速で何かが、正確には怪物がだが、アリーに突っ込もうとしていたが、アリーは勢いよく回避し、天高く舞い上がった。

 通常の人間の身長の2倍以上、言わば3m以上跳躍し、空で静止しているかのような光景で、オレ、ドギー以上の人間であることは確かだった。

「―――伏せて!」

「―――」

 ヘルメットをかぶり顔が見えず、ライダースーツ姿だが、アリーは見上げているオレと眼を合わせた時に勢いよく言い、オレは言葉に反応して伏せると銃声が数発ほど響き渡った。

「―――」

「―――大丈夫?」

「―――やるな?」

 伏せた後ろで怪物がのどでも詰まらせたような声を出した後地面にあおむけに勢い良く倒れる中でアリーは言葉通りに目の前に着地して声をかけ、オレは立ち上がってアリーに声をかけた。


 人間外の気配が彼ことドギーからした。

 人間ではわからず感覚的なものだが、5感と言うか第6感が働くと言うべきか、わたしことアリーはと言うか、わたしたちにはわかるのだ。

「―――もう一匹いるぞ?」

 立ち上がり声を上げたドギーは怪物が死んだことを確認したいのか少しだけ後ろを見たが、前を見ると勢い良く言い、銃を向けた。

 わたしも人のことは言えないが、小改造している50口径の大口径拳銃だった。

「―――ええ、だけど、13匹は倒した。」

「―――魔女かお前は?」

「いいえ? 悪魔よ? そう言うあなたは?」

 実際はもっと倒した気もするが、ユーモアも必要だし言うと、ドギーはわたしの軽い冗談を返し、わたしは正直に返した。

「―――気配から見て? ハーフ?」

「―――死神代行、と言うかあいつは何だ?! 怪物、と言うか人間ピンにしてバイクでボーリングする趣味があるのが?」

 話していると残った怪物がわたしのバイクに眼を向け、手に取って再び投げようとする中で、ドギーがわたしに対して冗談だが質問した。

「―――車種によると思うわ? わたしならハーレーでやる。」

「とにかく、さっきの礼だ! くらえ!」

「ぁ」

 冗談を冗談で返しているひまはないが、話している中でドギーが銃の引き金を引いた。

 くらえと言った瞬間引き金が引かれわたしの声は小声で聞こえず、同時に怪物の手に持っていたわたしのバイクが勢いよく爆発した。

「―――」

「―――まだ動くか?!」

 わたしのバイクがとも言いたいが、ドギーは物の見事にタンクを狙いバイクはガソリンが燃え出し炎上を始め、怪物も合わせて燃え始め悲鳴を上げる中で、ドギーはまだ生きていると判断して怪物に銃を撃ち込んだ。


 人間ではないと思っていたが、悪魔がなぜここにいるかも、人間としての色が強いと言うよりも人間のオレ、言わばドギーでは理解できないが何とか怪物は撃退できた。

「―――」

「―――わたしのバイク。」

「―――?!」

 思わずと息がこぼれる中で、アリーはヘルメット超しにそう言った。

「―――――ぁ~、すまん………」

 おどろいたが、これしか言えなかった。

「―――いいわ、助かったし、それに潰されてたし、投げられたし。」

「―――」

 言いながらアリーは炎上しているバイクのほうに眼を向け、オレはどう返していいかわからなかった。

「じだ―――――」

「それよりも逃げましょう? じゃっ!」

 事故なのだが立場が立場で、加えて現場が現場で警察も呼ぶことができず、示談にするかと言う間もなく、アリーは歩き出した。

「お―――」

「警察に捕まったら元も子もないは? 大丈夫。管轄はここでしょう? 顔も覚えたし、運がよければまた会うし、バイクのことは本当にいいの、それじゃ!」

「―――っく?」

 オレがおい本当にいいのかといいかけるなかで、アリーはすばやく言い、瞬時にその場から姿を消した。

 炎上したバイクのほうを見ていても仕方なく、アリーの言葉ももっともで、警察がいつ来るかもわからないし、オレも引き上げると言うよりも、この場から退散することにした。

 警察も来るし、アリーの言う通りでつかまれた元も子もないし、オレは銃を服の中に戻し、走り出した。


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