始点
彼方がいなくなった。
放課後になり、彼方を連れ、自信満々にわたし、言わば真矢は彼方と一緒に動画が撮影されたであろう目的地の公園へと向かっている途中に彼方がいなくなりました。
桃子はと言うと放課後に帰ったのか委員会の仕事でもあるのか姿がいつの間にか見えず、誘いたかったが、携帯にも出ないので放置していた。
前を元気満々で歩いていた後ろを確かに歩いていた。
ある意味いつも通りだが、振り返るといつの間にかだが、姿がなかった。
「―――」
『彼方ドコいるの?』
メールを送るが返事もなく、少しの間探し回ってみたが見つからず、と言う状態だったが、奇妙な場所で彼方を発見した。
「………?」
何でと言う状況で、確かに目的地の公園のほうが近いと言え、近くに休める場所もなく一休みしたいと思った場所に、言わば公園の中央の砂場に彼方が倒れていた。
「彼方? 彼方?」
走り寄り声をかけ肩をゆすると、彼方は何とか生きていたようで、反応し眼を開き起き上がった。
眠たそうに眼をこすり、周りを見渡しているが、ここがどこかもあまりよく分かってないと言うかのように見えた。
特に怪我と言うものをしているような様子もなく、砂場に横に倒れていたので身体に砂がついているが、なぜここにいるのかわからないがとにかく無事だった。
眼が覚めると目の前に真矢ちゃんがいました。
いつの間にかわからないが眠っていたのか、真矢に起こされ眼を開けると、周りは見覚えのない場所で、よく見ると足元は砂場で身体は砂だらけだった。
空の色はまだ青く、近いかもしれないが夕方とも言えず明るい時間帯で、先ほどの暗く狭い場所とは違い、広く明るく、眼に見て少しまぶしいと思いました。
何が起きているかわからないが、もう一人の自分の姿も見えず、夢なのかと思っていると、真矢が服の周りについた砂を払い始めていました。
「ほら? 立ってたって?」
「あ? うん?」
砂が払いきれないようで払い落とす中らを省かれたが、言葉の意味を理解して立ち上がり、一緒に砂を払い始めました。
「彼方、何があったの?」
「―――ねぇ? ここ、どこ?」
見事に言う言葉が、タイミングが合いました。
服についた砂を払い終え、バッグも払い終えた後、お互いに顔を合わせるとお互いに質問したが、声がそろいお互いに何を言ったか微妙にわからなくなった。
「彼方から」
「真矢ちゃんから」
以下同文と言う言葉ぴったりな状況でした。
「じゃあ、わたしが。」
「―――うん。」
仲良しです。
仲がいいからうまくいかないし、面白いほどにうまくいく時があります。
「彼方何でここにいるの?」
「………わかんない、と言うかここどこ?」
「―――っ」
オーバーリアクション。
大げさな感情表現と言えばわかりやすいが、質問してきた真矢に対し、正直な感想を返すと真矢は大げさに一気に顔を前に倒した。
「―――」
「―――」
正直に答えたが真矢は次に何を聞けばいいか迷い、こっちは言葉も何も返せずお互いにどうするかと言うような状況に発展し、何か言おうかと声は出ないが口を動かしだしたとき、電話が鳴りました。
「あ、ごめん、電話?」
「―――」
霧島真矢のメール着信時の女性のロックミュージックだった。
「わたしからの?」
「ぁ」
取り上げられました。
強い力では持ってなかったが、取出しメールを見ようとすると真矢が勢い良く取り上げました。
「みせて~?」
『彼方ドコいるの?』
自分の形態だと言えば奪い返せるかもしれないが、奪い取る気もなく返してくれると思うので画面のほうへ目を向けると、真矢らしい文章が書かれていました。
「―――」
「真矢ちゃん?」
反対の手を服の中に伸ばし、取り出したのは真矢自身の携帯で、何かを確認、正確に送ったメールの内容の確認を始めました。
「―――――誤作動だよね?」
「え?」
「誤作動だよね? 見て?」
最初言った言葉が不思議そうな小声で何を言ったか理解できず、聞き返すように言うと、2つの携帯の画面を見るように見せてきた。
「―――?」
「送信時間と受信時間、30分ぐらい差がある。」
何事かとみるが、先ほどの文章が書かれた内容であり、何が誤作動なのかまったくわからない映像だったが、真矢は明確な答えを出してくれました。
「え? 昔よくあったよ?」
「え?」
「小さい頃、お母さんの携帯のメールがよく遅れてた。」
不思議そうな顔をしている真矢に対し、慣れた物言いで答えを返し、経験したことを離しました。
「ガラケーっていうんだっけ? 小さい頃お母さん使ってたんだけど、時々わたしからのメールが遅いって言って買い替えて―――」
「聖歌さ~ん。」
ストレート、言わば率直とも言うべき答えを返すと真矢は困ったと言うかのように言葉を返しました。
「振り出しに戻った!」
「?」
「だから彼方何でここにいるの?」
振り出しに戻った。
携帯を返してもらいながら、よく言われると確かに根本の問題は解決していないし、真矢は再び質問してきました。
「突然消えちゃっ―――」
「―――――?」
「彼方?」
めまいと言うべきか立ちくらみがしました。
あの時のことを話そうか、あの奇妙な場所のことを話すべきかと考えた瞬間、特に飛んで行った光の光線を思い出しかけた時、不意に周囲の景色が暗くなり、身体の力が抜けました。
「ちょっと?!」
「―――――」
「ちょっと? 彼方? 大丈夫?!」
倒れかける中で真矢は支えてくれました。
「―――ん、大丈夫。」
視界も黒い影のようなものがかかり、重く苦しいもののようにも感じ、真矢に支えてもらったながらも以外にもめまいと言うべきか立ちくらみはすぐに止まりました。
この時はこれがどんな意味かも分からず貧血か何かのような一時的なものだと判断しました。
真矢に支えられている状態とは言え、すぐにでも普通に歩ける状態に感じがしました。
突然いなくなり、心配していたが、反面見つけたかと思うと次は倒れた。
何が起きているかわからないが、彼方を見つけることができたが、地面に倒れていたし、質問したがなぜいなくなったかが自分でもわからない様子のようで、話している最中に立ちくらみでも起こしたか倒れかけた。
「大丈夫だよ? 歩けるよ?」
「―――」
「ほら? 元気元気♪」
気分が悪そうで顔色が一瞬で青くなったようにも見えたが、彼方は少し顔色がまだ悪い気もするが、元気だと言うように言って歩き出した。
「―――帰ろ? 家帰ろ? 顔色悪いよ?」
「え?」
「顔色悪いから! ほら!」
元気そうには見せているが、本人は解らないのだろうが顔色は少し悪いし、少し強引だが引っ張って家に帰すことにしました。
「真矢ちゃん?」
「聖歌さんいる?」
「―――仕事で、よくわかんない?」
小さいころからだが彼方は結構無理することが多いし、見栄とかは張ってないと思うが少し身体が弱いし、何が起きたかわからないが何にしても異常な事態だし、少々強引にだが彼方を帰ることにした。
うわさの真相なんかどうでもいいし、彼方のほうが心配だし、何にしても足早に家に帰ることにしました。
これが後のことに関係するとは夢にも思わなかった。
意外と大丈夫ではなかったようです。
立ちくらみのようなものはなくなったし、元の状態に戻っていつものように元気そのものだと言えますが、正しくは思えると言う方が正しいようで、手を引き前を歩く真矢は少しだけ強く手を握って家まで帰りました。
確かに微妙だが身体も弱い気もするし、何が起きているかわからないことも事実だが、真矢の握る手と足取りに心配と言う文字がにじみ出ていました。
「よし、ついた。鍵鍵?」
「本当に大丈夫だよ?」
家の前に立つと真矢は鍵をよこせと言うように要求し、自分で開けられると言うように鍵を取り出して言おうとするが、鍵を素早く奪い取られ、真矢は鍵を使い、素早く家のドアの鍵を開けてくれました。
「ほら、はいって?」
「うん?」
大げさとも思いましたが、真剣な表情で言い、手を差し出し、好意に答え手に取って家の中に入りました。
「とにかく、休んで? 一緒に行かなくていい? 部屋?」
本気で心配していました。
玄関の中に入ると真矢は入らず、一応は他人の家として作法と言うものもあるのを考えている様子でした。
「うん、大丈夫だよ。」
「大丈夫じゃないから、いい、彼方? よく休んで? 邪魔したら悪いから帰るね? メールもしてね? こっちからもするからね?」
「うん、大丈夫だよ。」
たいしたことはないとか思いながらも真矢は心配した物言いで言うが、あの一瞬の時とは違い、一切なんともなく、いつも通りだと言うような普通の返事を返すと真矢は離れました。
「じゃあね?」
「うん、じゃあ。」
具合が悪そうな人間への配慮と言うべきで、言うと真矢は足早に去っていき、すぐに見えなくなってしまった。
「―――」
いったい何が起きたのか意味が解りませんでした。
気が付くと見知らぬ場所にいて大きいのと小さい変な生物ともう一人の自分と出会ったが、再び気が付くと見知らぬ場所にいて真矢に発見され、立ちくらみを起こしして心配され、家に帰ることになった。
「―――夢?」
何にしても見えなくなって少しした後玄関のドアを閉め鍵をかけ、何が起きたかと考える中で、真偽は解らないが、一番納得のできる答えを出しました。
「夢だよね? 気のせい気のせい。」
言いながら笑顔になり、玄関に背を向け、夢として片づけ、とりあえず自分の部屋に向かいました。
バッグを置き服を私服に着替えると、着替えた服をもって下の階におりました。
立ちくらみの類もなかったことだと言うかのようにごく普通に歩き、リヴィングに向かいました。
「―――昔の漫画みたい。」
少し先で服が、大人の女性ものの高級そうなスーツが酔っぱらって倒れた女性の様にものの見事に床で人型になって放置されていた。
スーツにおいてはシャツが一緒に脱がれ、中には少し派手な色の色調の下着が見えていました。
「―――靴下。」
足元を見ると靴下が落ちていたのを拾いました。
「沁みついちゃうよ、お母さん。」
紛れもなくお母さん、母、聖歌の朝着ていた服で、誰の眼から見ても解る事態だが脱ぎ散らかして放置して仕事に行ったようです。
「―――と」
スーツと一体化したシャツを引っ張り出し、ズボンの中にも入っているパンツを取出し、スーツとシャツは近くの壁のハンガーに立てかけ、シャツなどをもって歩き、床に落ちている洗濯物を回収して洗濯機のあるバスルームの前に行きました。
「―――」
洗濯開始です。
数年ほど前の間での最新型で乾燥機付きの少しいいモデルで、母が大手電気店で30分交渉して値下げして購入した一品です。
あとは終わるまで一休みや晩ご飯の支度と勉強です。
「ふぁ…」
あくびも軽く出たし、変な夢も見たし、何が起きたかわからないし、朝は少し早く起こされたりで眠り足りない気もしていました。
「―――少し寝よ。」
歩きながら言い、自分の部屋に入りこむと、勢い良くベッドに倒れ込むように横になりました。
両足は床の上で浮いている状態だけど、柔らかくて心地よく、空に浮かんでいるような寝心地、よくは知らないがそういう広告を聖歌はしていたから買ったとのことでまいど思うが気持ちいい寝心地だった。
「―――――?」
寝たか起きていたかわからないが、少しして変な物音がしました。
「―――っ?」
気のせいではなく同じ音がもう一度聞こえ、ベッドの深みに入り倒れかけたが何にしても眼を開けて起き上がりました。
「―――――」
バッグでした。
バッグが動いていました。
どういうことかと聞かれると、物音の根源を探すと、机の上に置いたバッグから奇妙な音が聞こえ、微妙にだが動いていました。
「―――っん?!」
引きました。
誰でも同じ反応だと思いますが、おどろいて思わず後ろに引いてしまいました。
「ひゃっ?!」
変わらずにバッグは動き続けていました。
「……………?」
誰もほかにいないし1人で確かめるしかありませんでした。
バッグに慎重に歩み寄り、ベッドの足元の端にいていた部屋の掃除用のほうきを手にして近づきました。
「―――ぅ、ぇい!?」
何にしても事態が動かないので止まった瞬間に勢い良く近づき、バッグのファスナーを勢い良く全開にし、部屋の端のドアまで一気に後ろに下がりました。
「こ、こい! 来なくていいけど………?!」
自分でも何を言っているか訳がわからない状況の中での言葉で、ほうきを剣のように武器代わりにして構えました。
「―――」
何にしても隙間からは数冊の教科書やノートと筆箱しか見えず、動きはなく、再び近寄ることにしました。
怖いもの見たさではなく、翌日に学校に行き時困ります。
「―――――ぇ?」
あの小さい生き物が顔を出しました。
バッグの目の前まで迫り、中が一体全体どうなっているかと見ようとすると、あの夢の中の生き物が、全身黄緑色の正体不明の物体が姿を表しました。
「へ? うひゃぁっ?」
おどろいて後ろ向きに勢い良く転びました。
「きゃあん?!」
正確にはこちらから見て背中を出した状態で、何かと見ている中でこちらの気配に気づいたのか振り返ったので二重におどろいて後ろ向きに勢い良く転びました。
生き物はと言うと、何が起きたかわからないと言うかのようなとも言えるが、生来持っているものとも言えるかもしれないが、会った時と変わらない円らな瞳と、変わらない姿でこちらを見ていました。
娘こと、彼方の悲鳴が聞こえました。
仕事が一段落して家の前まで帰ってくると彼方の悲鳴が聞こえました。
何が起きているかわからないが、何にしても帰って来たわたしこと聖歌は家に勢い良く駆け込みました。
「っ?!」
鍵がかけられていました。
鉤っ子にした責任は無論母親ことこちらにもありますが、緊急事態かも知れず入れないことは少々腹立たしくも、怒ってもしょうがないので、バッグの中から大急ぎで鍵を探すことにしたが、これが結構見つからないのだ。
後に話すことにもなるが、解っているとは思いますが、家では誰の眼から見てももう一度言いますが、家ではわたしこと聖歌は馬鹿ママです。
母こと聖歌が帰ってきたことはとりあえず気づかなかったし、無視するとして、何にしてもバッグの中からあの夢だと思っていた生き物が姿を表し、生き物の方も不思議そうな顔でこちらを見ていました。
触り心地のよさそうな柔らかそうで明るい黄緑の毛に覆われている生き物で、見ていてかわいいと思っていると動き出し、バッグを飛び出し、机を降りると近づいてきました。
「ぁ? やだ?」
近づいてきた生き物は意外にも跳躍、言わばジャンプする力が強く跳躍した2回目は膝を飛び越え、首の近くに勢い良く着地して顔に抱き付いてきました。
「あはは? くすぐったいよ?」
少しだけだが毛が固く、心地よい痛がゆさがあり、触れた瞬間だが軽くだが笑ってしまいました。
「こら?」
じゃれると言うのか、戯れると言いますか少しの間だけこうして遊んでいたい気もしましたが、何にしても現実的なことを考えないと行けず、両手で抱え、顔から話しました。
「………」
紛れもないあの生き物でした。
「バッグの中に入ってたの?」
質問するが、人間の言葉の意味を理解するはずもないし、生き物は質問の意味が全く分からないと言うような様子だった。
「あの中に入ってたんだよ?」
向きを変えて生き物の見せてみたが、案の定わかるはずもないと言うような反応で、何にしても見せたので、顔をもとの向きに戻した。
見れば本当に思うのだが、個人の観点だとは思うが、全体的に身体は丸く、全身に生えた明るい黄緑色の毛は柔らかく体温も暖かく非常に気持ちのいいもので、かわいいと思いました。
「―――夢じゃない? ということはこれ―――――」
「か~な~た~?」
「?!」
あのことが現実だと言えた。
いつの間にか母こと、聖歌が帰って後ろに立っていました。
「あ?! お?! お母さん!? お帰り!?」
誰か何が起きたか説明してほしいが後ろの聖歌は説明できるはずもなく、真矢も答えを知ることもなく、何にしても緊急事態だったのでおどろきながらも聖歌のほうを向き、生き物を背中に隠しました。
「み~た~わ~よ~?」
誰がどう見ても勢い的に怒っていることがまるわかりでした。
生き物は嫌いではなくわりと好きな方で、飼ってみたいとは思ったことがあるが、母子家庭と言う家の事情もあるし、第一聖歌が動物が好きかもわからず暗黙の領域で飼うのをあきらめていた状態でした。
加えて一度も飼っていいか聞いたことがないし、いいか悪いかがわからず、一度でいいから聞いておけばよかったと思いました。
「あ!? あの?! 何にもないよ!? ホントだよ!?」
連れ込んだとなればどうなるかもわからず、自分はともかく最高この子の命の保証もできないものだと言えた。
「うそ言わな~い? いるでしょう~?」
手を伸ばしてきました。
とって殺して食べることはないと思うが、母親ながらもやりかねないと思っている中で、生き物が鳴き声を上げ、突然後ろに隠したので何事かと聖歌のほうに顔を向けてきました。
「あ? 駄目だよ!?」
「か~な~ちゃ~ん?」
「―――」
声の出る電池式のぬいぐるみです。
冗談だとしても通用することは不可能な状況なのに、動いて可愛い声など出し、声などかければ墓穴を掘ることは言うまでもなく、迫ってきていました。
「でかしたぞ♪」
「……………ぇ?」
眼の前で突然笑顔でウィンクして親指を立ててくれました。
「前からあこがれたの~♡」
両手を頬に当て先ほどとは違うゆるんだ笑顔で身体全体を揺らし始めました。
「あなたが捨てられたいぬとかねことか拾ってくることに~♡」
言い表した状態のままで回転して踊り始めました。
「かなちゃんのことだから一度はあると思ってたのに、一度もないから、お母さんてっきり教育間違ったかと思って心配してたの~~~♡」
これが世に言う自分の世界に浸っている状態と言うべきかのか、聖歌は心の奥底からうれしそうな声と、よろこびを身体全体で表現していると言うように踊っていた。
「―――ぁ」
「お金なら心配しないで!? お母さんの給料なら後子供2人、いぬ3匹、ねこ5匹まで大丈夫よ!」
「―――」
買うとか以前の問題を解決しないといけないんですお母さん。
心の中で言うも事情も知らない聖歌に対して言うべきことだが、聖歌はと言うと本気で真剣な物言いで言い、電卓で計算しながら言った。
「何のために働いていると思ってるの? 世話用の人も雇えるわよ? わたしだって協力するし、ビシビシやってくわよ? 母子家庭だからって遠慮しなくていいんだからね?」
「―――――」
飼育決定親大認可でした。
「それにしても、それ一体何?」
「ぇ? あ、これは………?」
「ま、いっか?」
「―――!」
種類なんて知らないし、こっちが何か聞きたいが不思議そうな聖歌にどうかと答えようとする中で聖歌は突然勢い良く背向けた。
「その子の歓迎祭よ~♪ 出前取っておいしいもの食べようね~♡」
「―――」
子供の話を聞いてほしいです。
どこのだれがどう見ても普通の生き物ではないし、突然家に来て困っているんです。
「―――」
大丈夫かと心配しているのか、緊張の糸が解け、床に膝をついて座っている状態のこちらに対し、服の部分を引っ張ってすり寄ってきました。
「―――――ねぇ?」
あのことが現実だと言うことが確認できたが、あの大きい怪物も、もう一人の自分も現実だと言える中で状況的に謎の生き物に対してある疑問が浮かびました。
「あの生き物みたいに大きくならないよね?」
襲ってきたあれぐらいなったら飼えないし、襲われたくありません。
「ことば、解らないよね―――――?」
両手で抱えて視線を合わせて聞くが、絶対人間の言葉も解るはずもなく、気が沈みました。
「―――何にしても、一応は飼っていいみたいだから、追い出すのもかわいそうだし………」
言葉は解っていないけど、人に慣れた様子で可愛い鳴き声を上げていました。
あの夢だと思っていたことが現実であったことに加え、夢だと思っていた謎の生き物が目の前に姿を表し、手の中で可愛く鳴き声を上げている。
可愛いのは嫌いではないけれど、これが後のどのようなことにつながるか何にしてもわたしは知らない状態で、なんとも言えず少しの間抱えたまま動くことができませんでした。
彼方が奇妙な生き物こと、後で『リュー』と名前を付けることになりますが、意気消沈していたころ、本当は放課後真矢と彼方についていき一緒に遊びたかったが、何の因果か面倒な委員会に回されていなかった人間の話になります。
簡単に言うとその人間、わたしこと木之本桃子はマンションの自室で勉強をしていました。
彼方たちに話していませんが、5年生、正確には4年生の終わりからわたしは少し複雑な家庭事情があって親と離れて一人で暮らしています。
気分的なものか生まれつきか、1人の時わたしは明るい場所が大嫌いなようで部屋中の電気を消し勉強机の電気だけをつけて勉強をしていました。
「―――?」
問題が解けた。
正確には答えたが見えたのです。
難しい数学の問題で、ペンが止まりいらだち、部屋の都合かすっかり悪くなって勉強時はかけている眼鏡をかけ直そうとした瞬間、眼とは違うものが、違う映像を映し出した。
難しく解り難い表現だがこれが一番妥当で、眼に映った以外のどこかの光景が不意に見えた。
「―――――っ?!」
後で知ったことだが、『プレコグニション』、言わば世に言う空想やテレビの中で起きる予知能力と言われる能力の開花だった。
冗談のような出来事だが本当で、能力に差はあるが彼方や真矢も似たような力に目覚めることになる。
一瞬のうちの頭が破裂するような、締め付けられるような頭痛に襲われて頭を抱える中で、膨大な量の目で見たとのは違う映像の、正確には膨大な量の未来の映像が見えた。
「―――――――――――――――!?」
何が起きているかもわからず、誰かが見れば異常事態で、暗い部屋の中で頭を大声ではなかったかもしれないが悲鳴を上げ、抱え暴れ狂うような状態となりました。
「―――」
見えた。
正確には調節ができたと言うべきかもしれません。
ラジオのように調節することができるようになったのか、多少の頭痛や感じるが、この暗い部屋とは違う光景が見えた。
先ほどまで見えた膨大な量の光景を整理すると、自分が見たものが未来の光景であることを理解したのだ。
見えたとは言うが、周囲の温度や感触、音、臭い、味、言わば視覚を始めとる5感すべてで未来を体験していた。
「―――な、に?」
話しても信じてくれないだろうがこれが事実で自分でも信じられない光景と状態だが、見える光景を頭の中で整理していくつかの情報を得ることができた。
CGをたくさん使った映画やゲームのような激しい光景の中で、わたしと真矢、加えて彼方、見知らぬ少女が怪物と戦っていると思われる光景。
どこかは解らないが日本のどこか、東京か大阪か、大都市だと思われるが人の気配がなく、地震のような災害でも来たのか壊れかけ、ビルの隙間から緑色の植物が生えかけ、自然に帰りかけた大都市の光景。
夜の公園で、手に大きいぬいぐるみか何かを持っている彼方が誰かと言い争いなっているような様子だったかと思うと、相手で銃だと思われるが発砲し、彼方が撃たれてしまう光景。
探して出していけば切がないが、光景を見る中で、手掛かりとなるべき情報もえることができた。
場所は正確には解らないがまるで闘技場を思わせるような場所で、スーツ姿の男が不敵笑いながら言った言葉。
「すべてを超越する戦いを始める」
自信たっぷりに、心の奥底から楽しそうに、他人が聞くとなぜかわからないがどう聞いても不快感が心の奥底から湧き上がるような物言いで言い笑っていた。
真矢と見覚えのない少女が暴れて言い争う光景と、普通の人間では理解することができないが、彼女が同じものを持ち何かを知っていると言う感覚だった。
自分の身にこの時何が起きたかわからないが、見えた光景が何を意味するか、真実かどうかわからないが、見ることを止めたわたしは立ち上がり、携帯を手に取り走り出した。
「―――」
確かめなくてはいけないと思った。
すべてを話すには時間が足りないし、多すぎるし、手遅れになるかもしれないし、彼方も真矢も携帯で聞いても解らないだろうし、未来だと言うことを明確に理解したわたしは原因を確かめようと外へと飛び出した。
『夢野鈴』
真矢と言い争う少女は光景の中で確かにそう名乗った。
「―――っちょ? 木之本さん?」
「ごめんなさい? 急いでいるんです!?」
半本能的とも言える速度で部屋を飛び出し、強引にだが押し込むように鍵を差し込んで鍵をかけ走り出した。
先ほどやはり気づかぬ間にひどい悲鳴を上げていたのが原因か苦情を言いに来たのか、下の階の住人の男性が進行方向から来ていて注意されたが、振り返りこそしたが何にしても走り出した。
1人暮らしをすることとなった原因は大切なものを失ったことであり、これ以上はさすがに二度と失わないと思っていた。
光景の真偽を確かめ大切なものを失わないためにする方法は、あの光景の中で話していた夢野鈴と言う少女を探し出して話を聞き出すことだ。
どこにいるかも、あの黒基調の制服と言い、何者かもある程度は解っているわたしは半塲暴れるように走って彼方たちがいたあの公園に向かうことに決めた。
見えた光景が事実ならば、うそであってほしいと願いつつも真矢と夢野鈴の言い争う場面に絶対に出くわせると思った。
偶然みたいなものにしてはうまく行き過ぎているし、奇妙な事態に対して好奇心がないとは言えなかった。
彼方を家に送った後、わたしこと真矢はすぐにあの公園に戻っていた。
人が突然消えたと言う訳の分からない事態の上に目的の場所に消えた人間が来ていた。
誰かに言えば、先回りしていたのではないかと思われ、笑い話にされ、不思議には思えないが、倒れていたと言えば、加えて本人がなぜここにいるかも理解していないとあれば、不自然以外の何物でもないと言えた。
「――――――――――」
立っているのは彼方が倒れていた砂場で、調べていると言う状態だとも言えるが、自分は警察でも検査機でも麻薬犬でもないし、解るはずもないと言う状態だった。
「―――っく。」
無情にも時間だけが経過していた。
報道番組や警察事件を特集する特番のようなセリフだが何が起きたかも理解することができず、言葉通りの状況で、空は夕暮れで、暗くなり始めていた。
「―――帰るか。」
過保護と言えば聞こえがいいが、母こと透子が口うるさく厳しいので早く帰らないとうるさいので帰ることにしてそうつぶやき帰ることにした。
「―――」
手がかりなどもあろうはずもなく、彼方が演技をすることもないだろうし、めまいがしていたようだし大丈夫かと考えながら歩いていていると、公園を出た時人気の無い道に、視界の右端に人の姿が見えた。
何かと重い眼を向けるとあのうわさの進学校の女子生徒だった。
同じとは言えないが、下校中のようで、背はわたしよりも少し低いほど、髪は長く三つ編みして眼鏡をかけ、美術部か芸術関係の部活か、授業で必要だったのか、少し大きめのスケッチブックを胸に大事そうに抱えて歩いていた。
「?」
思わず見ていると気付かれ、少し下を向いていた顔を上げ、眼があってしまった。
「―――!?」
「?」
顔が激しく引きつった。
眼が合うとその子は何が起きたかわからないがおどろいたような様子で顔をひきつらせ、スケッチブックを落として身体を激しく硬直させていた。
「―――大丈夫?」
何が起きたかわからないがわたしは声をかけるが硬直して動けないと言う状態に見えた。
「―――どうしたの?」
見ているのはこちらではなくどこか別の場所かと思い周りを見るが特に異様なものなんて見られず近づいてみることにした。
「―――はい?」
すぐにでも逃げ出しそうな様子にも見えたが、怖すぎて逆に動けないのかもしれないが、何にしても近づくと、地面に落としたスケッチブックを拾い、落としたよと言うように言い差し出した。
「ねぇ? どうした―――――」
腰を抜かした。
何が起きているかわからないが、声をかけ近づくと眼の前で勢い良く腰を抜かして倒れてしまった。
「―――――」
眼の色が変わっていたと言うべきか眼が死んでいると言うべきか何にしても普通ではない様子に見えた。
スケッチブックを受け取ることもなく、腰を抜かして少しして、どうしようかと、何があったのかと見ていると、少しずつだが表情が先ほどの引きつった状態へと戻り始め、眼に涙が見えてうるみ泣きかけているように見えた。
後でわかることだが木之本桃子と同じ力に目覚めていた。
簡単に説明するとこういうことになるが、どこの世界に、彼女、言わば桃子の場合、場合が場合で迅速な行動をとることができたが、同じようなことが起きた場合に冷静に判断することが普通の人間にできるわけがなかった。
見えてしまった訳の分からない光景を夢や一時的なものや気のせいだと考えていた中で、同じものを見たならばだれでも同じような反応をすると言えた。
霧島真矢と言う名前の近くの別の中学校の生徒を実際に見た。
「―――」
始めてみた時は名前は詳細には解らなかったが、まぎれもなく桃子に似たようなことを体感してみたことがある少女の姿に仰天してしまった。
「本当に大丈夫?」
おどろきすぎかと思われるが、自分の身に何が起きているかもわからず、見覚えのない光景に悩まされ、中には絵にかけないような酷い光景を見る中で、未来の光景だと思われる中で、実現したとあれば優しく声をかけた真矢であれど恐怖の対象でしかなかった。
「―――――って?」
「いや!? 来ないで!? お願い!? いや!?」
気遣い声をかけ近づき、手を差し伸べようとする真矢を手で払い抵抗しました。
悪気はないことは解っているが、気にかけていることは解るが、繰り返すが同じことが起きた時に冷静な反応などできないのが当然で、気にかけ、声をかける真矢と喧嘩するような形になりました。
当然と言えば当然だけど友達と言えどいつどこで何をしているかは明確にわかるはずもなく、わたしこと、彼方は現状の状態を少しでも理解するために先ほどと変わらない姿勢の状態でしたが深呼吸をしていました。
夢みたいな出来事が事実で、証拠が目の前に存在し、それが生き物で、母親に見られて速ペット決定と言う状態です。
「―――」
生き物は図鑑や何かで知らべればわかるかもしれないが、母こと聖歌が意外な反応を見せ九死に一生を得た状態だが、本題の解決にはなりませんでした。
「かなちゃ~ん? 一緒に見ようよ~?」
話しても信じてもらえそうにない話を抱えているが、問題の1つを作り出した聖歌はと言うとどこ吹く風や知らなかったと言う風な物言いで下の階から声をかけてきました。
見ようと言ったのはおそらく先ほど言った出前の類の注文だと思います。
「は~い!」
何にしても聖歌の声に返事を返し、下の階に降りようと立ち上がりました。
「―――――」
捨ててくるのもどうかと思うし、捨てたら現状聖歌も怒るかひどく泣くかもしれないし、どうしようもなく、一応は人になついているので抱きかかえて降りることにしました。
「お寿司~、中華~、和食~、ピザ~、それともはやりのインド デリバリ~?」
上機嫌な聖歌でした。
降りて聖歌を見てみると朝の一件を払拭や忘れたいのかと言うような上機嫌で、出前関係のチラシ広告を笑顔で見つめていました。
「ペットフードの出前ってないかな~?」
「ないよ!?」
「だよね~?」
我が家では一般的な光景で、それほどとは思ってなかったのですが、わかっているとは思いますが、本人も自覚して言っていると言いますが、聖歌は馬鹿ママです。
不思議系とも言われそうな言葉に勢い良く返事を返し、笑顔で返す聖歌を放置し、冷蔵庫を開けました。
何にしても、この子に何かを上げたいと思いました。
「冷蔵庫の中何かあった~?」
「あるよ? わたし買い物してるから~?」
「お利口ね~? かなちゃ~ん。」
冷蔵庫の中にはあなたが買ってきた大量の冷凍食品が冷凍庫の中にたくさんありますし、言葉通りに買ったものがいくつかありました。
「その子に何かあげたいの~? 牛乳よ~、かなちゃ~ん? 王道よ~?」
餌と言うべきか、何にしても生き物に食べ物を与えようと思っていると、聖歌は何をすべきか指摘してきました。
確かに牛乳上げるのはテレビなどで見たことがあるが、果たしてこの生き物に通用するのかと言う状態とも言えたが、何にしても上げることにしました。
「と? これがいいかな?」
平たい皿を用意して床に置き、牛乳を注ぐ、皿の前に置くと臭いをかぐような動作を見せたが飲み始める中で、冷蔵庫の中から魚肉ソーセージを見つけ取出しました。
「―――おいしいよ?」
牛乳を飲み終えた生き物に、中身を取り出してちぎって与えるが、これ何食べられるのと言うような顔で、心配する必要ないと言うように言い、言うと何とか食べてくれました。
「―――」
よろこんでいました。
何にしても奇妙な生き物だが、表向きには娘が犬か猫のような生き物を拾ってきたと言う状況で、真矢は桃子、加えて現れた鈴のことなど知ることもなく、夢だと思っていたことも気がかりだが、ごく普通な家庭の一時だと言えました。
桃子に不意に起き、口にした『プレコグニション』と呼ばれる現実には信じられない現象と言い、これはまだ始まりの合図程度の時だと言えました。
加えてかなりこことは無縁だと思われる山中さんの証言した内容や矛盾、彼以外にも話を語る者はいますが、このことが彼らを次第にわたしたちを結び付けていく序章と言えましたが、わたしたちはこの時知ることなど、全くと言うほどにも思いませんでした。