壱章……必死の友、絶する力
楓「……下手だな、あんた」
作者「う、うっせ」
え……どう、ゆうことだよ……
え、どうなってんだ……?
昴の胸に刺さってるのは、なんなんだ……?
何故か俺はドサッ、と音を立てて座り込んでしまっ
「……ぁ」
あまりにも唐突過ぎて、声も一度出した後には出なくなっていた
いや、違うな……理解をしたがってないだけか
「あらぁ~?どうされましたのぉ?」
この理解不可な状況を作り出し、異様な気を纏った女がふざけた問いを俺に投げ掛ける
「……昴が……昴は……昴に、あんたは……何を……?」
女はこてん、と首をかしげる
その仕草はそこらの男なら見惚れる可愛さであったであろうが、状況が状況のためにそんなことにわざ
わざ注意していられない
こうしてる間にも何かが刺さっている昴の体から、赤い液体が流れ出ている
「何を、ですか?見ればわかりますでしょう?」
ふぅ、と一息ついてこう言った
「────楽にさせて差し上げたのですわ♪」
満面の笑みだった
そして、俺はその言葉を胸中で復唱した
……言葉の意味を理解するために
だが、すぐに理解が追い付くはずもなく、俺は1分程放心してしまった
その後、何度も真っ赤になって横たわっている昴の姿を、見たりそらしたりを繰り返した
何度も何度も何度も何度もナンドモナンドモ……
「ぁ……ぁあ……あああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっっっっっっっ!!?!?」
理解できてしまったこの出来事に対する、どうしようもない動揺や怒り、憎しみや憤慨が処理できずに口から今まで出したことのない叫びをあげた
「……っっっ!!……してっっっ!!どうしてだよっっっ!!?何で、理由なく、急に現れて、昴をっ……殺したぁぁぁ!?!?」
頭を掻きむしり、感情を出来る限り抑えこむ
あまりの怒りに頭がショートしそうだったが、それでも女に問いかける
すると、女は長い銀髪を靡かせつつ
「理由ですの?それならありますわ~」
と俺を嘲笑い、更に何が面白いのか、フフッ、と少しはにかむ
「だって、『わたくしが一年前の殺人事件の犯人』ですもの♪それに、呼び掛けには答えて差し上げないと可哀想ですわ~♪」
「……んだと……?」
不思議なくらい、あっけらかんという女に、一瞬頭が真っ白になった
「フッざけんなっっっっ!!!何で、何で、こんな……こんなことをしたか、訊いてるんだっ……!!」
右腕の拳を、手のひらから血が出る程に強く握り、顔を俯かせて、言った
自分でも、こんなに人を憎む声も出せたんだ、と少し驚いた
「何で、ですの?何故なら…………」
眼を細めまたもや衝撃的なことを口にした
「わたくしが、『戦乙女』だからですわよ♪」
「いくさ……おとめ……?」
何を言ってやがる……?
意味わかんねぇ……!?
「どうゆうことだ……!?」
ドスのきいた声で問うと、何故か女は狼狽して
「あ、これは関係者でなくては言ってはいけませんでしたわ……」
あらあら……、と渇いた笑い声を出して、昴を殺めた血塗れの左腕で、汗を拭う動作をする
「……関係者、だと?俺はダチがこんな目にあってるのに関係者でないと言うのかっっ?!」
すると、表面上は困った顔をして
「そう言うことではないのですのよ?……まあ、いいですわ」
女は何か一人で勝手に納得して、昴に刺さったままの剣を左手に添えて抜き構える
そして、本当に不意に
「どうせ、あなたも死ぬのですからぁ♪」
という言葉と共に、大きな剣を大振りで頭上より降り下ろされた
「なっっっっ!くっっ!?」
ヒュ、と間一髪、紙一重で女が放った斬撃から無理やり体を捻らせて避ける
すると、その斬撃は背後に向かい……
ズガァァァァァァン!!!
とんでもない爆音が耳にはいった
「……おい……冗談だろ……」
後ろを振り返った俺は眼を疑った
何故ならそれは、明らかに常人の業ではなかったからだ
「あったはずのものが……ない……」
そう、女が放った斬撃の一直線上には、建物や木々など、全てのものが存在していなかった
1メートル近く地面が抉れ、3メートル程の横幅が消失し、10メートル程度の距離が無惨なことになっていた
まるで、元々ただの荒れ地だったかのように……
女は信じられないものを見た顔をする俺に、軽く微笑んで賛美をかける
「フフッ、よく避けれたわねぇ?……でも、次はなぁいですわよぉ?」
ガチャン、ともう一度剣を軽く構え直し、俺に攻撃を仕掛けようとする
こんなにデカイ大剣を、左手だけで軽々と(それも女が)持っていることが俺にはにわかに信じられなかった
それに、あれほどの威力のある攻撃が、普通の人間に行えるわけがないこともわかっている
だとすると先ほどの言葉……
『わたくしが、戦乙女だからですわよ♪』
この言葉の真意がわからなければ、俺にはどうしようもなさそうだな……
考え込んでいる俺を見て、諦めたとでも思ったのか
「そうそう♪諦めも肝心ですわぁよ?では────」
「まあ、待て、隆信。無闇にものを壊すな。事後処理が面倒だ」
「あ、赤赦様!?」
どこからともなく響いてきた渋い男の声と、それに過剰な反応を見せた女に、俺は思考を止めざるをえなかった
「誰だ……?!」
俺が適当な方向を向いて叫ぶと、謎の声は偉そうにこう宣った
「ああ、貴様のような一般人がいたか……実際なら殺さなければならないのだがな、私に免じて貴様がここで起こったことを誰にも漏らさないと約束するならば、ここは逃がしてやろう」
と、有無を言わさぬ声音でいい放った
それで俺は納得するはずもなく、
「お前、こいつとグルの人間かっっ!!そんなやつの言葉なんかに耳を貸すと思うのかっっっ!」
嫌悪感を隠そうともせず、男の提案に思いっきり否定した
すると、男の声は微かに落胆したような声を出した
「そうか……仕方がない…………隆信よ、楽にしてやれ」
「はい♪」
そして、あっさりと俺を殺す指示を出したのだった
怒りの描写はムズい……(ノ_<。)