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AntiHeroQuest

約一か月ぶりの更新となります。そして、この話で物語を区切るならば前章の終わりとなります。

 空に一筋の光が通った。きっと、ラヴィが俺たちを守ってくれた証なのだろう。

 ラヴィ……ラヴィは俺に魔の可能性というものを伝えてくれた大事な友だちであり家族だ。どうして人間というものは命を簡単に奪える。あんなに楽しそうに、あんなに悪気なく、あんなに堂々と……。いや、そうではない。ラヴィも言っていた。魔にもいろいろな性格があり、自分が魔のすべてではないと。となれば、人間だってすべてがそうではないはずだ。

 ほとんどの人間は、ただ腐った王にあやつられているだけ。腐りを除けば、まだ人間にも可能性があるかもしれない。

「アルゴ……あの光なんなんやろ。もしかしたら、ラヴィが……」

「……ラヴィは、俺たちを……家族を守ってくれた。そんな悲しい顔をしてはいけない」

「ごめん……。でも、こんなときにこんなこと言いたないけど、アルゴ、めっちゃ険しい顔しとるで今……」

「……」

 ミクスの言うとおり、今の俺はとても険しい顔をしているのだろう。ヴィレイがあそこまで叙事詩の英雄像に憧れる気持ちが分かった気がする。それほど、俺の中の心の線が一本につながった。


 ――今の俺に迷いはない。俺は、俺の信じる「道」を歩むだけだ――


               Episode27 道


 エヴィルの放った光が空を照らしてしばらく、暗い顔、しかし、何かを決意した顔で坂を下ったアルゴ。こんなアルゴの顔を見るのは初めてのことで、ミクスは声もかけられない。黙ってアルゴの後を追う。

 しかし、坂を下ったのはいいのだが、どこにラビット族が住んでいるのか見当がつかない。しばらく山を散策するが、この広い山だ。そう簡単に見つかるはずがない。気付けば夜も更けていた。

「今日はどこかいい場所を見つけて夜を越そう」

 不意に言葉を発するアルゴ。しかし、その声はいつもと比べどこか違和感があり、ミクスはうなずいて答えるくらいしか頭が回らなかった。

 普段はこんなおかしな状況に対して何か言葉の掛け合いがあったりするものだが、そんなことはなく、ただ黙って寝場所を探す。どちらも気持ちはいっぱいいっぱいだった。

 それ以上特に変わったことはなく、寝場所を見つければ静かに寝る。そして、無言のまま朝日の光に山がつつまれた。

 きっと今日も無言のまま散策が始まるのだろう。そう思ったミクスは早々と出発の支度を始める。しかし、予想外にもアルゴからミクスに声がかかる。

「寝る時に考えていたのだが、そういえばミクスはラヴィから地図をもらっていたな。その地図はどの程度の範囲が記されているんだ?」

「地図……? そうや、地図や!」

 ミクスは場の雰囲気に呑まれてすっかり忘れていた。そういえばミクスはラヴィからもらった地図があった。しかも、記憶で覚えている範囲では、その地図はかなり狭い範囲で記されていたはず。となれば、もしかすると書いてあるかもしれない。

「ビンゴや……」

 そして、その記憶は正確だった。地図の一枚は魔王城への道のり。そして、もう一枚は『ポルッカ山』の地図。そして、ご丁寧にひとつの箇所に印がつけられていた。ここがラビット族が住む場所なのだろう。

 そうと決まればミクスの指示通りに動くのみ。昨日あれだけ散策したのがうそのように、その場所にたどり着いた。


「……」

 そこにはたくさんのラビット族が警戒しながら過ごしていた。いつかラヴィが帰ってくると願って、つねに気を張り巡らせているのだろう。だが、ここにはラヴィの姿がない。考えたくはないが、もうラヴィの命はこの世界にはないのだろう。そう考えると、その場所にどういう顔で入っていけばいいのか、二人には分からなかった。

「いつまでそこでジッとしている気だい。来なよ」

 そんな二人に対し、アルゴにとって懐かしく聞き覚えのある声が耳に入ってきた。

「ヴァニー……」

 声の主はヴァニー。おそらく、何かを勘付いているのだろう。二人を迎え入れるその顔を、必死で保っているように見えた。しかし、せっかく声をかけてくれたのだ。それを無下にするわけにはいかない。二人は黙ってラビット族の輪の中に入る。

 そこにはたくさんのラビット族がおり、みんな心配そうにしている。しかし、何かを知っているであろう二人の姿を見ても詰め寄ってきたりなどはしない。言いづらいことがあるのだろうと気を遣っているのだろう。本当にいい魔族たちである。

「久しぶりだねえ。こんな可愛いお嬢ちゃんまで連れて……本当に、久しぶり」

 作り笑顔だとしても、ヴァニーは笑顔で二人に接した。聞きたいことは山ほどあるだろう。しかし、まずはリラックスできる環境を作ろうとしてくれている。そんなヴァニーの気持ちが二人には痛いほど伝わった。

 だからこそ、まだまだ小さいミクスには耐えられなかった。ラヴィを置いてここまできた自分が許せなかった。

「すんまへん。ホンマ……すんまへん」

 ミクスは、こんな自分たちに優しくしてくれるラビット族に対し、精一杯頭を下げる。こんなことをしてもどうにかなるわけではない。だけど、今の自分にはそれぐらいしかできないから。

「どうしたんだいお嬢ちゃん。頭を上げな」

 ヴァニーの言葉に頭を上げるも、気が気ではない様子。

「……あんたたち、お嬢ちゃんを休ませてあげてくれないかい」

 ヴァニーの言葉で、数人のラビット族が優しいそぶりでミクスを奥に連れていく。気が動転しているミクスには、今から始まる話は酷だと思ったのだろう。

「お嬢ちゃんを不安にさせてしまってすまないねえ。でも、これで分かったよ。ただごとじゃないんだろ?」

「……あぁ」

 深刻そうな顔でうなずくアルゴ。

「……話してくれないかい? 私たちも覚悟はできてるよ」


「……」

 アルゴは包み隠さずに起こった出来事を話した。勇者のことも、光のことも、魔王への招待状や地図のことも。そして、おそらくラヴィは生きていないということも話した。

 それに対し、ヴァニーたちは何も口を出さずにすべてを聞いてくれた。本当にいい魔族たちだ。

「これが……俺の見たすべての出来事だ。光を放った敵がどうなったかは分からない。まだここを動かない方がいいだろう」

 その後、しばらくの沈黙が流れる。そして、感慨深い面持ちでヴァニーが言葉を発する。

「相変わらずな人だねえ。もっともな理由をつけて仲間すべてを守ろうとするんだ。自分のことは棚に上げてね。でも、そのすべては優しさからだった。あたしたち生物には守れる限界がある。不思議な話だよ。奪える限界はないのにね。だけど、夫は……ラヴィは、その守れる限界を超えた範囲のことまで考えてた。それにいつも苦しんで、悩んで、そして、今回もまたあたしたちを守ってくれたんだ。ほんと……優しすぎるのも玉にキズだよ……」

 こらえるのも限界なのだろう。ヴァニーの瞳からきれいな雫が流れ落ちる。そんなヴァニーを見て、よりいっそうアルゴの意志は固まった。

「そうだな。俺もラヴィに守ってもらった者の一人だ。ラヴィが居なければ、あの光にやられていたのは俺だろう。だが、だからこそ俺のこれからの行動はラヴィに謝らなければならないものとなる」

「どういうことだい……?」

 決意を秘めたアルゴの眼に、ただならぬ覚悟を感じたヴァニー。

 アルゴは何の迷いなく答えを返す。


 ――俺は今まで、守って得る共存を目指していた。だが、結局俺の決めた道は違った。俺は、奪って得る共存を目指す――


 その後、数日間ラビット族の住処でお世話になり、旅を再開した。ミクスのサーチにより、エヴィルはすでに『ポルッカ山』にはいないことも確認している。アルゴもミクスも一安心というところだ。

 そして、今回の旅は、いつものような行き当たりばったりではなく、すでに目的地は決まっている。

「ホンマに行くんアルゴ? 下手したら死んでまうで」

 ミクスが心配そうな声でアルゴに尋ねる。だが、アルゴは迷いなく首を縦に振る。

「あぁ。俺は行かなければならない。きっと、ラヴィもそれを察して俺に招待状をくれたのだろう。本当に、最後の最後まで世話になりっぱなしだった」

「せやな! 分かった。うちも覚悟を決めて、グチグチ言わんと着いて行くわ。うちはもっと大人にならんとあかんな」

「いや、ミクスには十分助けられている。ミクスがいなければという場面はいくつもあった。本当に感謝しているぞ」

 そんな不意打ちのようなアルゴの言葉に顔を赤らめるミクス。

「そ、そんなことあらへんよ……あっ、その先を左や!」

 話を変えるように案内役をこなすミクス。しかし、その先といえどかなり遠く、照れ隠しで言った台詞と言うのはすぐにばれる。

 そんなミクスに対し、アルゴに自然と笑みがこぼれる。

「少し昔話がしたくなった。そのまま道案内をしながら、聞き流すように聞いてくれ」

 その言葉に、ミクスの興味が向く。

「昔話? なんのや?」

「笑えない。気が滅入る。そんな昔話だ。これを事情を知らない人に話すのは初めてのことだ。だが、ミクスに話したくなった。嫌というならしないがな」

 事情を知らない人に話すのは初めてのこと。この言葉にミクスは注目した。

 事情を知らない人に話すのは初めてのこと。ということは、ミクスはアルゴにとって特別な存在ということだ。それはやはりうれしいことであり、気が滅入る話であっても聞いておきたい。そう判断したミクスは、アルゴの笑えない昔話を聞くことにした。


 人間と魔族を見極めるために、共存の道を探すために旅に出た反勇者アルゴ。そんなアルゴの旅はここで一度終わりを告げた。

 これからは、人間と魔族の共存のための道を歩む旅となる。それは、自らの意思で剣を抜き、生物を殺めることとなるだろう。だが、アルゴはそれを決めた。

 こうして、新たなアルゴの旅が始まった。

さて、この物語も思った以上に長々と続いたものとなりました。まずは、読んでくださっているみなさまにお礼を申し上げます。

 前書きにもお書きいたしましたが、ここまでで物語を区切るならば前章の終わりとなります。ということでというわけではないのですが、次の更新は新年以降になると思われます。来年というか今年から就活はじめないといけないので、なかなか時間が……。

 ここまで書いたらさすがに完結させなければ!!と思っていますので、よろしければ後章もお読みいただけるとうれしく思います!

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