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勇者になりて魔を裁く

この作品は毎週月曜日更新です。

「アルゴ! 師匠が呼んでるぞ!」

 平凡だった。

「さすがアルゴ、相変わらず底なしの強さだ。そりゃそうだよな、だってお前の強さは師匠のお墨付きだったもんな……。いや、それは関係ねえや。俺はお前なら大丈夫だと思ってたよ」

 俺の人生は平凡だった。当然、涙を流し、憤りを感じることもあった。だが、この魔に満ちた世で、俺の身に何の損傷もなく過ごせてきた日々はやはり平凡だった。しかし、いつまでも平凡ですむわけがないのが世の運命。いつかこうなることは、こんな争いが絶えない時代に産み落とされ、剣を握り、武を志したその時から分かっていたさ。

『種は生き残らねば種になれず。我らは人間という誇らしい種を守るために武器を取り、魔を裁く』

『人間という誇らしい種にとって、魔はすべて味方にあらず。凶悪につき始末せよ』

 この村に来てから、ずっとそう教わってきた。どうやら魔というものは例外なく凶悪な存在のようだ。だが、俺はそんな教えが大嫌いだ。それはこれからも変わることはない。

 師匠。俺にもいよいよ時が来たようだ。俺の素晴らしき平凡な人生は……この瞬間をもって幕を閉じる。


            PrologueEpisode 二大生物


 人間と魔族。今や世の「二大生物」と言われる頂点の二種。この二種は、ともに憎み合い、激しい争いを繰り返していた。だが、これには当然歴史がある。人間と魔族。歩み寄れば良い世になるかもしれないその二種が争う歴史。その歴史を一度まとめよう。


 魔族が世に産み落とされて幾百年。初めは気にすることなどない、世に生息するひとつの新種として扱われていた。だが、時を増すにつれ、魔族は見違えるほどの種の進化を遂げる。人間が本能的に危険を感じたその時には、すでに人間にとってひとつの敵と値するまでになっていた。だが、魔族は人間を襲うことはなく、世で生きる生物の一種として、テリトリーをきちんと守り生活していた。しかし、すでに時は遅し。人間は愚かにも魔族に戦争を仕掛けた。人間は、人間という種のかわいさに、危険分子である魔族を襲ったのだ。この戦争により、奇襲をかけられた魔族はテリトリーを荒らされ、世を追われた。

 それから百年ほどの間、魔族は世に姿を現すことはなかった。だが、こんな暴挙をただ許すほど、種というものは軽いものではない。これは、まだ記憶に新しい二十年ほど前の話となる。もの凄い数の魔族が世に姿を現し、人間のテリトリーを襲撃した。それは、百年ほど前に生息した魔族とは別物のよう。あれだけ温厚であった魔族が、何の躊躇なく人間の命を奪う。しかし、その姿は人間の命を奪うことを楽しんでいるというよりも、ひどく憎悪に満ちていた。例えるならば人間への復讐といったところだろう。いきなり攻め入られた人間は混乱し、泣きわめき、命乞いをした。だが、そんな言葉は憎悪に満ちた魔族には届かない。人間はそんな命乞いなどに耳をかさなかったのだから。

 見渡す限りを人間の血の海に変えた魔族たち。しかし、そんな血の海のなかで、一人だけ人間を生かす。当然、その人間にすごい才能があるとかそういう類のものは一切ない。ただの気まぐれだ。いや、気まぐれというよりは利用するために生かしたというのが正しいだろう。その人間に対し、魔族のなかで一番偉いであろう魔族が静かに口を開き、なんと人語を発した。

「愚かな人間よ。愚かな主の下に帰りこう伝えよ。我の名は魔王ジェドー。貴様ら愚かな人間を根絶やしにする者なり」


 この発言により、人間と魔族の激突は始まった。そして、二十年ほどの争いを経たこの日、首都『キースル』を統べる王の発言によって歴史が動く。

「これ以上、腐った魔をのさばらしてはならぬ! 魔をこの世から滅亡させ、人間の世を平和にせねばならん。そのためにわしは考えた。各村ごとに、武に長ける代表を一人選出し、これより開催する格闘大会へ出場してもらう。そこで見事勝ち抜いた者には、人間代表という意の『勇者』という称号を与え、人間の希望として『魔王討伐』の旅に出てもらう!」

 普通ならばそんな強引な宣言に反感が起こるところだろう。しかし、この世ではそんな反感はまったく起きない。むしろこの決断は英断として称賛を浴びる。この世は魔族の宣戦布告以降、徹底した洗脳教育を施した。それにより、人間は誇らしい種、魔族は凶悪という意識が植え付けられているのだ。

 徹底した洗脳教育により、このむちゃくちゃな格闘大会は大盛り上がりで開催することが決まった。優勝賞品である『勇者』という称号はとても名誉な称号だ。『勇者』の称号を手に入れることにより、魔族から人間を救う英雄になることができる。それは人間にとって名誉なことであり、人間の種としての繁栄に大きくつながる。そんなことがこの世では名誉となる、そんな世なのだ。

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