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徘徊  作者: ねぎポン
6/7

Vol. 6

 青田が思わず顔を上げる。その時,図書館のドアが乱暴に叩かれた。臨時避難所の安全は一瞬にして奪われた。

「ここって安全なの?」

 ここに来て初めて粟田に口を利く長田。

「しっ,知らねぇよっ!」

 粟田のみならず,この館内の人間の精神は完全に動転していた。しかし,その中で平静を必死で保とうとしていた青田は,皆に,そして自分に言い聞かせるようにして,こう言い放った。

「裏から逃げましょう!」

 図書館の裏口目がけて青田を先頭に猛然と突っ込む藤本達。その遥か後方ではドアを叩き続ける音が虚しく響いていた。

 裏口から脱出した6人はすぐそこの東階段を転がるように降りて行った。ところが裏口を出たすぐの所で最後尾の粟田が床につんのめって転倒してしまい,彼1人が出遅れた格好となってしまった。必死で追い付こうとする粟田。しかし,彼らに追い付く事はできなかった。

 今にも脚のもつれそうな粟田が3階まで降りて来た時,彼の携帯が突然着信を告げた。

「んわあぁ!!……何だ携帯か……」

 折り畳まれた携帯をゆっくりと開く粟田。

『んわあぁ!!……何だ携帯か……』

 そこには先程の粟田が動画で映し出されていた。その背後で例の少女が少しずつ近付いて来ている。恐る恐る振り返る粟田。その視線の先には,少女の姿が……。その瞬間,粟田の身体は金縛りに遭ったかのようになり,動く事ができなくなってしまった。少女の右手が粟田の視界を覆い尽くす。声にならない悲鳴が南高の校舎を揺るがした。

 その悲鳴は1階に逃げて来たばかりの5人の耳にも届いた。階段を降りてすぐのここの近くには保健室と生徒会室がある。日記を持っていた青田は思わずそれを落としてしまった。日記が開く。日記はまた新たに更新されていた。


 仕返し1人目


「粟田君は?」

 長田が藤本に訊ねる。

「ちと見て来る」

 そう言って藤本は鍵を春川に下投げで放り投げた。

「これ生徒会室の鍵。隠れてろ」

 そう言うや否や,藤本は階段を駆け上がって行ってしまった。

「ちょ,ちょっと先輩!!私も行って来ますね」

 小池が追い掛ける。長田,春川,青田の3人は生徒会室前に取り残される格好となってしまった。

「行っちゃったねぇ〜」

「でも生徒会室なら鍵が掛けられるし安全かも」

 心持ち平静を取り戻し始めている長田と春川。春川が施錠を解くと,生徒会室内へは簡単に入る事ができた。最後尾の青田はその際周囲に妙な気配が感じられない事を確認,慎重に入って行った。

 その頃3階では粟田捜しの続きが始まろうとしていた。

「あれ?佑介のだ」

 3階へ上がってすぐの所に粟田の携帯が落ちているのを発見した藤本は,早速それを手に持ち,開いてみた。粟田の動画が再生される。

「佑介は……?」

 その時,どこからか誰かの足音が聞こえて来た。と同時に小池の全身が硬直してしまった。目を見開いたまま,口をわななかせている。視線の先にはあの男がいた。幸い2人の存在には気付いていないようなものの,こちらに近付いて来ている事だけは確かだ。小池は藤本から離れ,一心不乱に階段を駆け上がって行った。

「バカ!逃げるなら下だろ!」

 藤本はその後を追って,一生懸命走って行った。

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