表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
徘徊  作者: ねぎポン
5/7

Vol. 5

 4人は最終的に図書館へと避難した。図書館の鍵はなぜか施錠されていなかった。電気も点いている。藤本,長田,春川はドアを入ってすぐの背もたれの無い小さな正方形のソファーの4脚集まった所へと突っ込み,小池は入ってすぐ左側のカウンターの机に寄り掛かった。長田が藤本に言う。

「何なの?あれ……」

「俺が知るかよ……」

「……同じだ……」

「何が?」

 春川の突然の告白に,藤本は反応した。

「今日ながたんと話してた話と……」

「どんな話なんですか?」

 小池も耳を傾ける。

「夏の11日に学校に“出る”って話……」

 話の言い出しっぺである長田は,背筋を凍らせている。

「黒い布で身を隠した,刀を持った幽霊が……」

「そっちも何か見たんですか?」

 春川の力に乏しい声,図書館の重苦しい雰囲気を,聞き覚えのある少年の声が遮った。

「誰?!」

 小池が機敏に反応する。

「俺です,俺」

 声の主は青田だった。4人の許へと歩く青田。

「あおちー!もぅ,どこ行ってたのよ?!」

 長田が嘆く。

「すいません。逃げてて……,隠れる為にここにいたんです……。佑介先輩もいますよ」

「光喜ぃ〜」

 粟田が今にも泣き出しそうな声で近付いて来る。青田はこれまでの経緯を低く小さな声で藤本達に話している。

「で,その赤い浴衣の()の話は?」

 長田は粟田を無視し,青田の体験談を聴いている。

「職員室で背筋に寒気と視線を感じて振り向いたら……,腕を捕まれて……」

 そう言って,青田は隠していた左腕を前に出した。そこには手の形をした青あざのようなものができていた。絶句する藤本達。

「……それで逃げて来たんです」

「佑介は?」

 藤本は話題を切り返す。

「¥Å∞※?@〜☆♪ヶ*%……」

 粟田は動転している。5人は粟田を放置した。

「もう帰りたいよ……」

 長田が嘆く。と,そこで藤本は気が付いた。ソファーから立ち上がり,歩いて行く。その先にはあの本があった。改めてその本のページを繰っていく。どうやらこれは日記のようだ。それにはこう書かれている。


昭和61年9月11日

 私は10才になった。今日から日記をつけようと思う。


 その日以降,日記には毎日の事が丁寧につづられていた。しかし,ある日を境にその内容に変化が現れ始める。どうやらこの少女はいじめに遭っていたようだ。そして,その翌年の11日――。お気に入りの手鏡を隠された彼女は行き場を失い,ついにその手で自らの短い生涯を閉じてしまう……。

「何でこんなのがここにあるんだよ……」

 しかも,この日記には彼女が自殺した事までもが克明に記されている。そして藤本はそのページを試しにめくり,さらに青ざめた。そこにはその後の出来事が年ごとに延々と追加されていたのだ。年こそ異なるものの,同じ日付,それも昭和の年号で。彼女は20年近くの歳月が経過した今も尚,あの日が来ると手鏡を探しにやって来る。今日の事も既に追加されていた。


 鏡が近くにあると思うんだけど、まだ見つからないの……。知らない人が6人。いじめに来たの……?


「これ読んでみ」

 藤本はこの日記を青田に手渡した。

「これって!!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ