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輝いた季節へ  作者:
7/8

曇り空の下

「静かにしてください」

「静かにしてってば」

「…静かにしろっ!」

私の言葉遣いが荒くなっていくのは、1-2時間目と同様だ。


普通に言って聞かないのだから、声を荒げるしかない。

言葉じゃ聞かないのだから、実力行使するしかない。

といっても暴力はダメだから、腕をぐいっと引っ張ったり羽交い締めしたりするぐらいの事だけど。


クラスの女の子たちが絶対使わない荒いしゃべり方が、すっかり定着してしまい、この頃から私のあだ名が増えてしまった。

その名も「スケバン」


これにはさすがに、変に納得してしまった。

何より、下ネタよりはだいぶマシである。


授業中もお構いなしに続くおしゃべり。よくもまあ話題が尽きないものだ。

うちの班の男子4人は、昼休みの計画を立てているようだ。

班長の杉原を中心に何か企んでいるらしい。

その内容はどうでも良いけど、そういう時はせめてヒソヒソしゃべってほしい。

先生の声も聞こえないほどにやかましい。

教室の中でうるさいのは、隣の班とうちの班だが、今は特にうちの班が目立っている。

あーもう絶対怒られそうだな…。

「静かにせんか!!」

ついに落ちた。先生のカミナリが。

私がいくら怒鳴ろうと効果がないのに、先生は一発で皆を黙らせるから凄い。

静まりかえった教室で、先生はさらに続けた。

「特に2班!!」

ドキッ。私の心臓が跳び上がる。やっぱりうちの班が指されてしまった。先生がこっちに近づいてくる。

もうダメだ…!私は目をつぶった。

先生は、私の努力を見てくれていたらしく、副班長としての責任は問わなかった。

それでもうちの班はしっかり叱られた。

自分が怒られているわけじゃないと分かっていても、怖かったしイヤだったし疲れた。

だって先生は班のところまで来て、怒っていた。

つまり通路側の私の席の真横にいたんだから。

間近でこの迫力に触れると、自分が怒られているも同然。

お叱りが終わって先生が黒板の方に戻っていくと、ホッとため息がもれた。

私はさっそく杉原をにらみつけた。

「やっぱり怒られたじゃない!」

すると杉原は満面の笑みを浮かべた。

「ヘヘヘ」

こ、こりてない…。先生のお説教も効かないヤツには効かないのか。

「何話してたんだか知らないけど、休み時間に決めたら良いでしょう?」

「あ、そうだった。さっき昼休みの事決めてたんやけど」

「私には関係ないし」

私は杉原から目をそらして、授業に集中することにした。

前を見ると授業をしつつも、先生がこっちを監視していた。やばいやばい。私まで怒られてしまう。

「昼休みは10分以内に給食食べ終わって校庭に行く」

「班長命令だから」

そうだ、彼は班長。…じゃなくて!

「無理に決まってるじゃない!」


「後藤さん?」

その声に振り向くと先生が私を見ていた。

「あなたまで何しゃべってるの」

本当に私まで怒られてしまった。先生の今の機嫌はかなり悪いようだった。

「ごめんなさい…」

私は涙目になって謝った。

先生のお叱りは私にはかなりの効き目がある。

先生はその事を分かっているみたいで、それ以上何も言わなかった。

私はずっとうつむいていた。悲しくて、顔を上げる事ができなかった。

その後は、その授業の間も、杉原はほとんどしゃべらなかった。

杉原がしゃべらないので、他の3人の男子も静かだった。

安らかな時間が流れていたはずだったのだが、私の心にはそれを満喫する余裕もなかった。

もちろん授業も頭には入らない。ただ黒板の文字をノートに写すだけ。

私の目に映るのは黒と白だけ、モノクロの世界。

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