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輝いた季節へ  作者:
6/8

つかの間の安らぎと、つかの間の錯覚

「えー?後藤さんはまだましだってー」

そう言って、友達が笑いながら私の顔をのぞきこんできた。

今は2時間目と3時間目の間の20分休憩。晴れた日なら校庭へ行くんだけど…。

ここは女子トイレ。

校舎の中ではここだけが、ヤツらが入ってこられない聖域なのだ。今は女子全員でここに避難している。

「でも、ほんの2時間前におもらしコールをされたっていうのに。ほんとひどいよ」

私は友達に反論する。女の子たちは、まだあまり私の苦労が分かってないみたいだ。

「でもね、後藤さんとこは、[うるさいファイブ]は杉原くんしかいないやん。うちんとこは品川くんとマイキくんの2人よ?」

「うちもモンキーとヒョーゴが入った」

あ〜、確かに。周りの班にはメンバーが2人ずつ入った。だけど…。

「でもその班は、女子が3人ずついるやん。私なんか一人で頑張らなきゃいけないんやもん!」

私は必死で訴える。

「まあいいやん、楽しそうやし。班は違うけど品川くんが隣の席だなんて、うらやましいわ」

みんなが口々にそう言う。


確かに[うるさいファイブ]はウルサイけど、クラスを盛り上げてくれる人気者だ。

確かに当番とかはサボるし、女子を追い掛け回したりして困らせるけど、変なあだ名を付けられたりして、集中砲火を浴びているのは私だけだ。

まあ、分かってくれないのも仕方ないかな…。

でも、女の子たちとこうしておしゃべりするしている時だけは、ホッとする。

あまり同情してもらえなかったけど、グチを言ってスッキリしたし。

予鈴が鳴った。

さらば、穏やかなひとときよ。

いざ、闘いの場へ!


教室に戻ると、男子たちはゲームの話で盛り上がっていた。

今かなり流行っているのがテトリス。

高得点を出せば、最後にロケットが飛ぶ画面が出るのだとか。

「俺は昨日ロケット飛ばしたで!」

「お前まだソフト買って1週間経ってないのに?やっぱすごいなぁ、品子は!」

男子たちの称賛を浴びて笑っている彼。

それが品川だ。女の子たちの中で一番人気。

まあまあ男前で、器用だし、体育でも大活躍する。だから人気があるんだと思う。

で、男子たちの間では[品子]と呼ばれている。

4文字で呼ぶのが面倒で3文字に減らしたという安易なものだが、傍目に見ればやっぱり変なあだ名だ(漢字で書くと余計におかしい)。

ついでに杉原も[杉子]と呼ばれている。

あと[うるさいファイブ]のメンバーには、[モンキー]がいる。彼は品川と同じように、いやそれ以上に器用で運動神経がある。

女子からの人気が品川より低いのは、顔のせいだと思う。

あだ名の通りサル顔っぽいんだけど、本人がそれをあっさり認めて笑いに変えているからすごい。

本当に明るくて面白い。

だから結局私をイジるのも笑いを追求するためなんだろう。私にはいい迷惑だけど。

メンバーの中で一番ハンサムなのは[マイキ]。これは苗字そのままで呼ばれている。

ハンサムなのに人気が一番じゃないのは、あまりにもハンサム過ぎるからかも。

しかもそれでいてウルサイというギャップが良くないのかな。私は気取ってなくて良いと思うけど。

前に話した[ヒョーゴ]は下の名前で、そのまま呼ばれている。

呼びやすいし、かっこいい名前だと思う。

前にも言ったように彼はスカートめくりするんだけど、その上、好きな女の子は7人いるらしく、その名前も公開するほど大胆だ。一応それには私も入ってたけど。

でも実は劇団に入って稽古に通っていて、エキストラでテレビに出た事もあるんだって。

というわけで[うるさいファイブ]は見た目も中身も個性派揃いだ。

でも杉原だけは見た目は普通だ。男前じゃないし、ブサイクでもないし。


しかしうるさいのとは、大きなギャップのある繊細な趣味があった。

教室の後ろを見ると、杉原が男子たちに囲まれてオルガンを弾いていた。

そう。彼はピアノができる。私より上手いし、それに男子がピアノを弾くとなぜかかっこいい。女子が弾いても当然って感じなのにね。

でも、頼んでもほとんど弾いてくれない。

恥ずかしいらしい。今弾いているのは、さっきまで女子がトイレに出払っていたからだ。

こう考えてみると、確かに5人とも素敵だよな…。

席が近いのも悪くないかも…。

しかしその考えは1時間ともたなかった。

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