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輝いた季節へ  作者:
5/8

ランドセルとスカートめくり

朝起きると、すでに雨が降っていた。

学校に着いた頃には、私の服はしっかりと濡れていた。

傘をさすにもランドセルをかばおうとするので、前が濡れるのだ。

だから以前1度だけ、雨に濡れないようランドセルにカバーを着けた事もあるんだけど、1年生かって思いきり笑われた。男子だけじゃなくて女子からも。

しかしあのカバー…何で黄色しかないんだろう。

雨の日に目立つようになんだろうけど、ちゃんと車に気をつけて登下校できる歳になったんだから、そんなに目立たなくて良い。

ただ純粋に雨から守るためだけの地味なカバーがあれば笑われないのにな。

私はランドセルを人一倍大切にしていた。

親がずば抜けて一番安いのを買っていたのを覚えているが、みんなのより型が崩れやすく、大切にしなきゃいけなかった。

それに、型が崩れるとランドセルの横側の、フタとの間にある隙間が大きくなる。

そこに雨が降りこむので、教科書やノートも濡れる。

自分が濡れてもランドセルをかばうのは、そういうわけだった。

タオルで体をふきながら、教室へ向かう廊下を歩く。

「よう、ゴトウンコ」

後ろから杉原が来て、私を抜かしていった。

そして私より5mくらい前に行ったところで振り返って、後ろ向きに歩きだした。

「お前また濡れてるやん。傘さすの下手やな〜」

「ん…」

私はうわの空だった。反発する気力もない。

それは体をふくのに必死になってるから…いや、それだけじゃない。昨日の席替えのせいだ。

あれはもうひどかった。ただの悪い夢だったと思いたい。

でも教室に入れば、それは現実となる。

それも冬休みになるまで続いていく長い悪夢の世界。

男子ばかりの班になって、しかも周りには[うるさいファイブ]のフルメンバー。

班がうるさくなるのは当たり前で、それを静める事なんてできるわけがない。その責任だけは負いたくなかった。


昨日、席替えの後で班長を決めるジャンケンをした。

結局、私は班長にはならなかった。

だがホッとしたのはつかの間。

今思えば、いっそのこと、私が班長になっておけば良かったとさえ思う。

私は、副班長になってしまった。しかも班長は杉原。

だから杉原にリーダー権があるわけで。

しかし[うるさいファイブ]の彼が班の授業態度を注意してくれるわけでもない。ますます手に負えなくなるだけなのだ。

そしてそのツケが回るのは、副班長の私というわけだ。


うんざりしながら、自分の席に着く。

「あ、ゴトウンコだ」

「おっすゴトウンコ」

「ゴトウンコずぶぬれや、かっこわるー」

いきなりフルメンバー達の攻撃を次々に受ける。

「…うるさいなー」

言い返したものの、かっこ悪いと言われただけに、さらに体をふくのに集中した、その時。

「ひゃっ!!」

タオルを持つ手の動きが止まった。

「パンツも少しぬれてるで」

不敵な笑みを浮かべて、そいつが言った。

ヒョーゴだ。

彼も[うるさいファイブ]の一人だが、クラスで一番小さくてかわいい顔してるくせに、クラスでたった一人スカートめくりを習慣としている大胆なヤツだ。

掃除のために机を全部後ろに下げている時間は、特に要注意。

広くなった空間をかけ回って、女子たちのスカートを次々とめくる。

しかしこう席が近いと、掃除の時間じゃなくてもねらわれやすいわけだ。

「おもらしやー」

「「おもらしおもらし〜」」

やっぱりメンバー達の格好のネタにされてしまい、1時間目が始まるまで、おもらしコールが続いた。

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