長雨の予感
いよいよやって来た5時間目。
先生が黒板に大きく座席表を描いた。そしてその中にランダムに番号をふっていった。
17と書かれたのは、後ろから3番目で窓際から2番目の席だった。
私は荷物をまとめると、そこへ移動を始めた。
その席へ近づくと、現実と思えない光景が近づいてきた。
私は手に握ったクジと黒板の座席表を何度も見比べる。
私の左隣、窓際の席は30番。そこには、もうイヤになるほど見慣れた顔があった。
「…ねえ、あんた本当に30番なん?」
そこに座っている男子に尋ねる。
「そやけど?」
私は彼の持っているクジを確認する。それは紛れもなく30番。
私は後ろを見た。後ろにいる3人も同じ班になる。
「あんた達も、本当にそこ?」
自分の班のメンバーを確かめる。
班は全部で5人。しかし男子が4人。女子は1人…私だけだ!
それに[うるさいファイブ]のメンバーが1人含まれている。
それは私の真後ろの席。しかも杉原。
右を見る。右側は別の班だ。しかし…右隣もその隣も!
私の前の列も、また別の班だが、そこにも二人男子が並んでいる。
「念のため聞くけど…あんた達もその席で間違いないよね…」
「当たり前じゃ〜ん」
私は単に男子に囲まれただけでなく[うるさいファイブ]にも囲まれていた…!!
「そんなぁ…」
こんな中で12月までいるなんて…めちゃくちゃだよ…。
私は力なく机に顔を伏せた。
「これから同じ班どうし、よろしくな〜、ゴトウンコ」
杉原が笑いながら言った。
「先生…席替えやり直そうよ〜」
さすがに私は助けを求めた。
「う〜ん、確かに少しかわいそうだけど、仕方ないね」
あっさり見放された。
「そうそう、オレはこの席気に入ったから、やり直したくないし」
杉原が言う。
「そりゃ私だって男だったら、こんな良い席ないけど!」
「ええやん、お前も名前に下ネタついてるんやし、男みたいなもんやで」
「それはお前らが勝手に呼んでるだけじゃーーーっ!!」
私はバッと立ち上がった。
「後藤さん、授業中なんだから座りなさいよ」
すかさず、先生にまったりした声で注意されてしまった。
教室中にどっと笑いが巻き起こる。
こっちは笑い事じゃないって…。私はフラフラと座りこんだ。
私の隣で杉原は声を上げて笑っている。私は杉原の顔を見たくないから反対側を向いた。
しかしそこには、[うるさいファイブ]の他のメンバー4人分のニヤケ顔が並んでいた。逃げ場はなかった。
恥ずかしい。悔しい。というか明日からどうなるんだよ…。
降りそうで降らない曇り空。でも私の中では、すでに晩秋の冷たい雨がシトシトと降りだしていた。