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輝いた季節へ  作者:
3/8

揚げパンをのりこえて

ある朝、私は胸を弾ませて学校へと歩いていた。青空高く浮かぶ鱗雲を眺めながら。

あの雲は秋になったしるしなんだよって、母さんが言ってた。面白い形で、大好き。

そういえばようやく残暑から解放されて、朝と夕方は寒いくらいだ。

秋らしくなったよなぁ。

私は教室に走りこんでランドセルを置くと机を片付け始めた。今日は楽しみにしていた席替えだ。

2学期が終わるまで2ヶ月半過ごす席が、これで決まってしまうので、今回は特に大事な席替えなのだ。

2学期が終わるのは12月。

真冬だ。着る物も今はシャツだけど、セーターに変わって、コートまで着るんだから。

気が遠くなるくらい長い期間だ。絶対良い席に当たりますようにっ!

席替えくらいでこんなにドキドキしてるなんて、大げさだと思うかもしれない。でも小学生の席替えは重要なのだ。

近くの席になった4〜5人ずつで班を作るからだ。

班は、給食を一緒に食べるメンバーになるし、あと当番とかも一緒になる。

それに授業の時も班ごとに色々やらなくちゃいけない。

しかもうちのクラスは、班の中でお互いに授業態度を注意し合わないといけないのだ。

連帯責任ってやつ。

誰かがうるさいと、それを注意しなければ、班全員が怒られる。特に班長の責任が重い。

うちのクラスの席替えは、男女を一緒に混ぜて行うので、男子の列と女子の列が決まっていない。

前の席の時は、恵まれたことに、全員が女子の班になって、平和な日々を過ごした。

もちろん休み時間と放課後は、班は関係なしに男子共の嵐が吹き荒れていたが。

そして現在の班は、男女2人ずつという普通な感じ。

だから今度の席替えでは、また女子だけの楽園になることを期待していた。

待ちに待った昼休み。

教壇の上に大きな箱が置かれた。

「給食食べ終わった人から、クジをひいてください。席替えは5時間目に始めます」

先生が呼びかけた。

食べるのが早くない私は、必死で食べた。しかも今日の給食は、揚げパンだ。

ほとんどみんなが大好きな人気メニュー。みんな食べるのが早い早い。

だが、残念ながら私は揚げパンが苦手だった。

ドーナツと似ていて美味しいってみんなは言うけれど、油を吸ってベチョっとした感じになっているのが私はイヤだった。

それに砂糖じゃなくて、きな粉がまぶしてある。私はきな粉も嫌いだった。

喉につっかえそうになりながら、涙目になって飲み込む。

これを片づけるまで、おかずに手を伸ばす余裕はない。

ふと空を見上げると、どんよりとした雲が増えてきていた。

朝はあんなに良い天気だったのに…。

いつもは銀色をしているアルミの食器も、今日はあの雲みたいに暗い灰色に見えた。

配膳台に食器を返したのは、クラスで最後から5番目だった。

頑張った。いつもなら揚げパンの日は最後から2番目くらい。ちなみにそれ以外は、真ん中より少し後って感じだ。

私は教壇へ行くと、箱に残った5枚のクジを見つめた。

そして考えに考えた。

1つ手に取っては戻し…次の人が来るまでそれを繰り返して、やっと1枚を握りしめて席に戻った。

クジを開くと、番号は17番。でもこれだけでは、まだどの席か分からない。

どの番号がどの席に当たるかは、昼休み明けの5時間目に決まる。

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