表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
輝いた季節へ  作者:
2/8

嵐を起こす[うるさいファイブ]

西日が差しこむ放課後の教室。

風に当たるために窓際に集まった友達と、輪になってお喋りしていた。

「後藤さんは好きな人、ほんまにいないん?」

それは女子が集まると、時々出る話題だ。

「2年生までは、いたで」

私は下を向いて答えた。

しかもその子とは両想いで、家も近かったからよく一緒に遊んだ。

だけど付き合ってたとかいう感覚じゃない。

そんな考えがよぎった事もない。友達止まりにしないと、クラスで冷やかされるし。

「でも今のクラスになってからは、いない」

クラス替えで、その子とは別のクラスになった。

それだけでその恋はさめた。というか元々友達のままだったんだしね。そんなもんだ。

「今のクラスになって、もうすぐ1年半やん。なのに好きな人できへんの?」

そう言われて、私はうなずいた。

だってだって!今のクラスの男子は…!

みんなで女子をからかってくるし、悪くて、うるさいんだから!

それは、ヤツらがいるからだ。

私のクラスには、[うるさいファイブ]という集団がいる。

それは超うるさい男子5人組。

小学4年生の男子は、みんなうるさいものかもしれない。

だがこの[うるさいファイブ]は、格が違う。

というかヤツらが、ただでさえうるさい男子全体を、更にうるさくしているのだ!

もううちのクラスの男子は、授業中もじっとしていない。給食や掃除当番は女子に押し付けて逃げる。もう誰にも手に負えないのだ。

休み時間や放課後もヤツらの暴走は止まらない。

「わーーっ!」

突然教室のドアが開くと、雪崩のように男子共が走りこんできた。

窓際で語らっていた私たちは飛び上がった。

「何やってるんよ、早く帰ればいいやん!」

私は友達をかばって前に立つと、怒鳴った。

男子共の手には、折り紙で作った手裏剣。私はギョッとする。

一人の男子がそれを投げつける。これが当たると結構痛い。

「やめてっ!」

私はたまらず教室から逃げだした。だが、ヤツらはしつこく廊下を追いかけてくる。

「悔しかったらお前も手裏剣作って反撃すればいいやん」

手裏剣の折り方なんて、女子はほとんど誰も知らないって!

それは明らかに挑発。私はムッとして声の主を見た。

そいつはニヤニヤしながら私を見ていた。

杉原だ。[うるさいファイブ]のメンバー。この春転校してきたばかりなのに、今や自他共に認めるクラスで一番うるさいヤツなんだから、かなりの実力だ。

杉原を睨んでいると、その隙をついて横から手裏剣が飛んできた。

よけようとした私は、思わず転んで、廊下の硬い床におでこをぶつけてしまった。

痛かった。もう10歳になるのに、声を上げて泣いた。あまりにも痛かったのだ。

友達が先生を呼んできて、駆けつけた先生が男子を叱ってくれた。

でも私のおでこの大きなたんこぶは、自分で勝手に転んでできた物だから、それは私の方が注意されてしまった。

紙の手裏剣が当たるくらいじゃ、たんこぶにならないんだから、落ち着きなさいよって。

悔しいけど、確かにその通りだった。

でも次の日からは、手裏剣を投げられる事はひとまず無くなった。

だけど今度は、言葉での攻撃が始まった。


代表的な攻撃方法は、やはりあだ名になる。

しかし、そこはさすがに小学生の男子というか。

どうしても下ネタに走っていく。

私の苗字に余計なアレンジを加えて、[うるさいファイブ]が最終的に決めた私のあだ名は…。

もう、大体お分かりいただけるだろう。

「ゴトウンコ」


これはあまりにもひどすぎる。

休み時間になるとこれを連呼してくるのだから、恥ずかしいったらありゃしない。黙らせるために追いかけるしかない。

残暑厳しい中でサウナのように蒸せ返る教室の中を、走り回ってクタクタになる。慌ただしい毎日が過ぎていった…。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ