第1話 ありふれない回復術師
元々、短編だったのが長くなりました。
次は12:00に投降します。
完結まで連続投降するのでよろしくお願いします。
俺はありふれてない回復術師のエレン。
町の診療所で頼れるお医者さんをやっているが、秘密がある。
実は転生者なのである。
トラックにひかれてしんだんごー。
神様出てきて、ごめんなさい。
さあ、特典持って異世界においきなさい。
って、感じでこっち来ました。
「右よし、左よし。誰も見てないな」
と、周囲を確認してから、診療所の厚いカーテンを閉め、ガンで余命いくばくもないおじいさんを完璧に治癒する。
これか俺のチート。完全治癒だ。
この世界の治癒魔法は打撲や、裂傷といった怪我にしか効果がない。
しかし、俺の治癒魔法は例外だ。
傷はもちろん、身体の欠損から、病に呪い。
寿命以外ならなんでもこいだ。
どうだすごいだろ。
すごすぎて、あれ、これバレたらやばくねとなったのは内緒だ。
考えても見てくれ。
治癒魔法が使えるのが100人に1人。
そこから、実用レベルまで使用できるのは10人に1人。
そんな環境の中で、欠損、病。余裕で治せますと言ってみろ。
誰かを殺してでも、俺を奪い取るになるに決まっている。
「さすがは主様。素晴らしき神の御業です」
この病院専属のナースというべき金髪に長い耳を持った少女、エレナが平身低頭。
今にも地面にひざまずきかねない姿勢で現れた。
その目はものの見事にがんぎまっていた。
長命種ではあるものの、数が少なく、閉鎖的でその多くが森から出ることもない。
人によっては一生その姿を見ることもない希少種族であるエルフ。
それがどうしてこんなとこのにいるのかと言うと。
それはまだ俺が転生を自覚してすぐのころだ。
「いやっほー! 俺の時代来た…これで勝つる!」
なにせ、チートで異世界だ。
これで調子に乗らないやついる、いねぇよな!
もう、はしゃぎにはしゃいでいた。
俺はこの神様からいただいた素晴らしい力を使って、ハーレムを築くんだ!
希望に満ちたキラキラお目々で、まずはテンプレ通り奴隷を買い漁ることにした。
とはいえだ、まだ10代なかばの小僧が夢の美少女奴隷を買えるはずもない。
しかし、俺には治癒魔法がある。
練習台にするということで、病なり怪我をしている奴隷を格安で買おうと思い立った。
そこで見つけたのは、火傷でもはや顔も判別できないエルフの少女、エレナだった。
「エルフということもあり、何かに使えると踏んでここにい置いていますが、もうこの娘は……。
死んだとしても、当店は一切責任を持ちませんからな」
と、奴隷商人は何度も何度も念を押してきた。
まぁ、こいつからしたら、奴隷の埋葬代金が浮くだけで満足なんだろうな。
「だ……れ……っ」
意識がもうろうとしていたこの少女も、背中のゆれで、どうにか意識を取り戻したのだろう。
声をかけられた。
「そうだな、俺は通りすがりの正義の味方だよ」
正確には、お前を買ったご主人様なんだけど、言えるか、そんなもん。
「もの……ずきね……」
あれ、反応が薄い。
てっきり、よくも私を奴隷にしたなくらいは言われると思ったのに……!
そうか! 自分が奴隷として買われた自覚がないんだな!
俺のことは、傷つき捨てられた自分を介護してくれている物好き程度に思ってるんだろう。
都合がいいので、その勘違い利用させてもらうぜ。
「実は俺、見習いの治癒術師でね。
君には練習台になってほしいんだ」
「あ、りがとうございます」
きっと、こいつの中では俺はただの物好きな親切なお兄さん、いや、エルフだから、俺よりも年上か。
親切な少年に見えているのかな。
さて、改めて、この少女の容態を確認しよう。
全身に火傷。
処置が雑だったり遅れていたせいか、膿だってたまっていてちょっと、いや、かなり臭い。
これまで、かなり劣悪な衛生環境の中にいたのだろう。
足の方も、あらぬ方向に曲がっている。
恐らくは骨折だろう。
ただでさえ、治癒魔法では細胞が完全に死滅する火傷の治療が難しい。
熟練の治癒魔術師であろうとも、こいつの治療は難しいのだろうな。
だが、俺は例外だ。
【ヒール】
清浄なる浄化の光がエルフの少女を包み込む。
「こ、これは!」
俺の転生特典によって行われた、神の如き御業に驚愕しているのだろう。
「火傷が、それに、骨折も治っている。それもたった一瞬で。
うそでしょ、こんなことがあり得るの!」
少女は、慌てて鏡の前で自分の容態を確認する。
いまだにこれが現実だとは思えないのだろう。
まぁ、俺自身もまるで巻き戻ししたみたいに傷が消えたんだ。
自分でやっても、まだ信じられないもん。
「せ、聖者様ぁ!」
エルフの少女は、最後に、頬をつねり、これが夢ではないということを確認した。
そして、夢ではないという確信ができると、いきなり俺の足元に膝まづく。
その時の、彼女の目はもう、がんぎまっていた。
「……えっと、聖者様って一体何かな」
こえぇよ、でも恐怖から逃げるだけじゃ何にもならない。
「死に体だった私を一瞬で癒したのです。
そんなもの、聖典に出てくる聖者様でなければできるはずもありません」
「ちょっと、まって。
俺は聖者なんかじゃない。まじでそんなんじゃないから」
「分かります分かります。本物の聖者というのは自分で自分のことをそう呼びませんものね」
おい、分かったような顔して、まったく俺の思い分かってないよな。
「この奇跡をもって、もっと多くの人を救いに行きましょう」
ああ、あなたに出会い、こうしてつかえるために、神は私に試練を与えたのですね。
と、エルフの少女は感極まっている。
いやまぁ、俺は転生者で、実際に神にあって力貰ったから間違いではないかもしれんけど……。
この様子を見て、俺は一つのことを確信した。
これはまずい。
このまま、俺はこのチート回復魔法を使って、身を立てるつもりだったのだが、それをやっていけば、まちがいなく、俺は神の使いにされる。
絶対それ面倒だぞ。
だった、聖者だぞ聖者。
前世が日本人で、宗教というものにうさん臭さしか感じない俺としては、そんな認定を受けるのは地雷原の上でタップダンスを踊るようなものだ、
「まぁ、この程度のことで、わざわざ名乗り出るようなことでもないだろう。
とりあえず、俺の名前はフリード」
「エレナです。聖者様」
はきはきと答えるエレナに対して、その呼びかけだけはやめてくれと頼み込んだ。
「では、ご主人様というのはどうでしょうか」
コテンと首を傾げ、上目使いでこちらを覗き込んでくる彼女を見て、俺は可愛いと思った。




