表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/22

また、やられた・・・

 一週間後、食卓に一同が揃った。

 ハロルドも招待を受けて席に着いていた。

 山盛りのたくさんのごちそうが目の前に並んでいる。

「ゴホン」

 モンジが一つ咳をしながら席を立った。


「みなさん、今日はお集り頂きありがとうございます。お天気もよくていい日になりました。月もきれいに出ています。ミウもフジエばあさんも元気になりました。本当ならあの世に行っていたかもしれないのに、よかった、よかった。ハロルドくんのお陰なのかな。そうだったらハロルドくんにお礼を言わねばいけない。しかし、ハロルドくんは本当に死神なんですか? そこんとこききたいですな。それに、ハロルドくんは」

「その話まだ続くの? お父さん」

 モンジの話しを遮ってアメリが言った。

「そんな話もういいから、早く食べましょうよ」

「そうだ、そうだ!」

 ムンキチがフォークを手に、同意した。


「そ、そうだね。こんな話どうでもいいよな。それじゃあ、乾杯しょう。か、乾杯・・・」

 小さくなってモンジが遠慮がちにグラスを上げた。

「かんぱーい」

 それぞれが飲み物の入ったグラスを持ち上げた。


 ムンキチがから揚げを口一杯にほおばる。

 その横でコタロウが立ち上がって、何から食べようかとキョロキョロと料理を見ている。

 カルリがスパゲッティを自分の皿に山盛り入れた。

 モンジはサンドイッチをほおばり、喉につめたようで急いでビールをあおった。

 ハロルドはいつものすまし顔でワイングラスを傾けている。

 フジエはピザをモグモグやりながら、

「ほれ、ばあさんのスープも飲め」

 と、お玉で紫色のスープをスープ皿にいれた。

 アメリは両手でおにぎりを持って、上品そうにおちょぼ口で食べている。ハロルドの前では猫をかぶっているのだ。


 ミウはなんて幸せな光景だろうと思った。

 みんなとこうして食事ができるのがうれしい。

 あの時自分が死ぬとは思わなかったけれど、もし、死んでいればここにはいなかった。

 死んでいたらどうなっていただろう。

 あの広い野原に骨をまかれて、あの幽霊たちと一緒に空を飛んでいたのだろうか。

 死ななくてよかった。空を飛べて悩み事も苦痛もない、全くの自由であっても、あたしはこの人たちとこの世で生きていたいと思った。


「早く食べないとなくなるぞ」

 モンジがミウのお皿にから揚げを入れながら言った。

 いつの間にか、ほとんどの皿が半分ほどになっている。

「ああ、もういいわ。我慢できない」

 アメリが大口を開けて、ピザ一切れを口の中に放り込んだ。勢いにまかせて、大きなハンバーグも白身魚のフライも、から揚げもみんなひと口だ。

 それを見て、ハロルドは最初びっくりしていたけれど、すぐに目を細めてアメリを見守った。


 みんな優しい。みんな大好きだ。ミウは思った。

「食った、食った」

 全部の料理がなくなって(フジエのスープはまだ半分残っているが)デザートのりんごが出されると、モンジが言った。

「ところで・・・」

 モンジが椅子に座り直した。


「さっきの話しの続きだが、ハロルドくん、君が二人を助けてくれたのかい?」

 モンジがテーブルに肘をついてきいた。

 みんながハロルドに注目した。

「いいえ、ぼくは何もしていませんよ。ただ、二人の寿命がまだあっただけです」

 ハロルドが笑いながら言った。

「なんだ~」

 ムンキチがつまらなそうに言った。

 他のみんなもちょっとがっかりしたようにうなずいた。アメリだけはハロルドの顔をうっとりするように見つめている。


「しかし、ハロルドくん、きみは本当に死神なのかい?」

 真面目な顔でモンジがきいた。

 みんなも真面目な顔でハロルドを見つめた。

 ハロルドはテーブルのまわりを見渡して、ゆっくりと言った。

「もちろん」

「やった~!」

 ムンキチとコタロウがハイタッチをした。

「怖いわ~」

 肩をすくめたカルリがアメリの方を向いて笑って言った。

「へへへっ、くわばら、くわばら」

 フジエがハロルドに、手を合わせた。


 場が和んだところで、

「あっ、そうそう、ミウに元気になったお祝いを持ってきたの」

 カルリが言った。

 カルリは小さな木箱をミウの前に置いた。赤いリボンがむすんである。

「きっと、気にいると思うわ~」

 カルリがにっこりと微笑む。他のみんなも優しい目でミウを見ている。

「ドモ アリガト」

 ミウは嬉しかった。みんながあたしを想ってくれている。

「ささっ、開けてみて」

 カルリが笑顔のまま言った。

「上の蓋をずらして開けるんだよ」

 モンジが開け方を教えてくれた

 何が入っているんだろう。ミウはワクワクした。

 ミウが蓋をゆっくりとずらすと、勢いよく大きなクモが飛び出した。

「ギャッ!」

 ミウは驚いて飛び上がり、一目散に駆け出して、二階の寝床にもぐり込んだ。


 そうだった。この人たちはこういう人たちだった。

「あーはっはっは~」

「ぎゃはははは~」

「う~っははははは~」

 下からみんなの笑い声が響いている。

 やられた。油断していた。もう、引っかかるもんかって思っていたのに、また引っかかるなんて。

 でも、びっくりはしたけれど、不思議と悔しくなかった。

「うふふふ」

 急に笑いが込み上げて、ミウは一人布団の中で笑った。

 

 

               終わり



 


読んで頂きありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ