また、やられた・・・
一週間後、食卓に一同が揃った。
ハロルドも招待を受けて席に着いていた。
山盛りのたくさんのごちそうが目の前に並んでいる。
「ゴホン」
モンジが一つ咳をしながら席を立った。
「みなさん、今日はお集り頂きありがとうございます。お天気もよくていい日になりました。月もきれいに出ています。ミウもフジエばあさんも元気になりました。本当ならあの世に行っていたかもしれないのに、よかった、よかった。ハロルドくんのお陰なのかな。そうだったらハロルドくんにお礼を言わねばいけない。しかし、ハロルドくんは本当に死神なんですか? そこんとこききたいですな。それに、ハロルドくんは」
「その話まだ続くの? お父さん」
モンジの話しを遮ってアメリが言った。
「そんな話もういいから、早く食べましょうよ」
「そうだ、そうだ!」
ムンキチがフォークを手に、同意した。
「そ、そうだね。こんな話どうでもいいよな。それじゃあ、乾杯しょう。か、乾杯・・・」
小さくなってモンジが遠慮がちにグラスを上げた。
「かんぱーい」
それぞれが飲み物の入ったグラスを持ち上げた。
ムンキチがから揚げを口一杯にほおばる。
その横でコタロウが立ち上がって、何から食べようかとキョロキョロと料理を見ている。
カルリがスパゲッティを自分の皿に山盛り入れた。
モンジはサンドイッチをほおばり、喉につめたようで急いでビールをあおった。
ハロルドはいつものすまし顔でワイングラスを傾けている。
フジエはピザをモグモグやりながら、
「ほれ、ばあさんのスープも飲め」
と、お玉で紫色のスープをスープ皿にいれた。
アメリは両手でおにぎりを持って、上品そうにおちょぼ口で食べている。ハロルドの前では猫をかぶっているのだ。
ミウはなんて幸せな光景だろうと思った。
みんなとこうして食事ができるのがうれしい。
あの時自分が死ぬとは思わなかったけれど、もし、死んでいればここにはいなかった。
死んでいたらどうなっていただろう。
あの広い野原に骨をまかれて、あの幽霊たちと一緒に空を飛んでいたのだろうか。
死ななくてよかった。空を飛べて悩み事も苦痛もない、全くの自由であっても、あたしはこの人たちとこの世で生きていたいと思った。
「早く食べないとなくなるぞ」
モンジがミウのお皿にから揚げを入れながら言った。
いつの間にか、ほとんどの皿が半分ほどになっている。
「ああ、もういいわ。我慢できない」
アメリが大口を開けて、ピザ一切れを口の中に放り込んだ。勢いにまかせて、大きなハンバーグも白身魚のフライも、から揚げもみんなひと口だ。
それを見て、ハロルドは最初びっくりしていたけれど、すぐに目を細めてアメリを見守った。
みんな優しい。みんな大好きだ。ミウは思った。
「食った、食った」
全部の料理がなくなって(フジエのスープはまだ半分残っているが)デザートのりんごが出されると、モンジが言った。
「ところで・・・」
モンジが椅子に座り直した。
「さっきの話しの続きだが、ハロルドくん、君が二人を助けてくれたのかい?」
モンジがテーブルに肘をついてきいた。
みんながハロルドに注目した。
「いいえ、ぼくは何もしていませんよ。ただ、二人の寿命がまだあっただけです」
ハロルドが笑いながら言った。
「なんだ~」
ムンキチがつまらなそうに言った。
他のみんなもちょっとがっかりしたようにうなずいた。アメリだけはハロルドの顔をうっとりするように見つめている。
「しかし、ハロルドくん、きみは本当に死神なのかい?」
真面目な顔でモンジがきいた。
みんなも真面目な顔でハロルドを見つめた。
ハロルドはテーブルのまわりを見渡して、ゆっくりと言った。
「もちろん」
「やった~!」
ムンキチとコタロウがハイタッチをした。
「怖いわ~」
肩をすくめたカルリがアメリの方を向いて笑って言った。
「へへへっ、くわばら、くわばら」
フジエがハロルドに、手を合わせた。
場が和んだところで、
「あっ、そうそう、ミウに元気になったお祝いを持ってきたの」
カルリが言った。
カルリは小さな木箱をミウの前に置いた。赤いリボンがむすんである。
「きっと、気にいると思うわ~」
カルリがにっこりと微笑む。他のみんなも優しい目でミウを見ている。
「ドモ アリガト」
ミウは嬉しかった。みんながあたしを想ってくれている。
「ささっ、開けてみて」
カルリが笑顔のまま言った。
「上の蓋をずらして開けるんだよ」
モンジが開け方を教えてくれた
何が入っているんだろう。ミウはワクワクした。
ミウが蓋をゆっくりとずらすと、勢いよく大きなクモが飛び出した。
「ギャッ!」
ミウは驚いて飛び上がり、一目散に駆け出して、二階の寝床にもぐり込んだ。
そうだった。この人たちはこういう人たちだった。
「あーはっはっは~」
「ぎゃはははは~」
「う~っははははは~」
下からみんなの笑い声が響いている。
やられた。油断していた。もう、引っかかるもんかって思っていたのに、また引っかかるなんて。
でも、びっくりはしたけれど、不思議と悔しくなかった。
「うふふふ」
急に笑いが込み上げて、ミウは一人布団の中で笑った。
終わり
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