死ぬのも難しい
「ミウ、ミウ!」
誰かが呼んでいる声がする。
「おお、気がついたぞ」
モンジの声だ。
「しっかりしろよ! 必ず治るから」
ミウはうす目を開けた。
すぐ近くにみんなの顔があった。
モンジ、アメリ、カルリもマトマもユウヤも。マスクをつけたコタロウとムンキチも。
ミウはほっとして力をぬいた。
捨てられたんじゃなかった。夢だったんだ。
「フジエさん、フジエさん!」
マトマの声がした。
ここはフジエの部屋だ。ミウとフジエは二人並べて寝かされている。
フジエは医者が嫌いだという話を聞かされたことがある。医者に連れて行こうとしたら、返って病気が悪くなったという。
「もう、どうすりゃいいんだ」
モンジが頭をかかえた。
「こんな時にアメリったら、死神なんて連れてくるなんてねえ」
入り口のドアにもたれ、腕を組んで立っているハロルドを、ちらりと見ながらカルリがヒソヒソ声で言った。
「あっ、フジエさんが目を開けましたよ」
マトマが言った。
みんながフジエの方に目を向ける。
「・・・ほよ、まだ、生きとったか。なかなか死なないもんじゃのう。ムハハ・・・」
フジエが荒い息をしながら言った。
「おや、死神さんがいる」
フジエが頭を持ち上げた。
「丁度よかったわい。早く死んで、あんたに頼もうと思っていたんじゃ。なあ、一度に二人はいらんじゃろう。わしだけ連れて行ってくれ。ミウは連れて行かないでくれ」
今度はみんなの目が一斉に、ハロルドの方へ向いた。
ハロルドは腕を組むのを止め、首をかしげながら肩を持ち上げた。
「うう・・・。わしはもう‥死ぬ・・。みんな・・・、さようなら・・・・」
フジエが目を閉じた。
マトマの手の上に重ねていたフジエの手がパタリと布団の上に落ちた。
「フジエさん!」
マトマが叫んだ。
三秒間、静かな時間が流れた。
「死んだの?」
アメリがフジエの顔に自分の顔をちかづけた。
「死んだみたいね」
フジエに向いていた目がまた、ハロルドの方へ向く。
ハロルドはまた肩を上げ、両手のひらを上に向けて上げるジェスチャーをした。
「ミウは?」
アメリがモンジにきいた。
「さっきより、呼吸が楽になったようだ」
モンジがミウの頭を撫でながら言った。
「ハロルドがフジエさんの願いをきいてくれたのね」
カルリがアメリにいった。
その時
「う~ん、死ぬってのも、難しいもんじゃのう」
フジエが急に大声でいったので、みんなはギョッとした。




