表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/22

ミウ捨てられる

 ミウはここに来る前は年配の夫婦の家で、三毛猫の母さんと兄弟たちと暮らしていた。

 母さん猫がミウの体を優しくなめて、おいしいお乳を飲ましてくれる。兄弟と追いかけっこをして遊ぶのがすごく楽しかった。

 よしよしと頭を撫でてくれる、やさしいおじさんとおばさん。ずっとこの幸せな生活が続くと思っていた。けれど、いつの頃からか変わってしまった。


 おじさんとおばさんは、ミウだけ他の兄弟のように抱き上げなくなり、兄弟たちからは仲間外れにされるようになった。かわいがってくれた母猫ですら、ミウが近づくとそっぽを向くようになった。

 

 なんとなくわかっていた。自分の姿が母さんや兄弟たちと違ってきたことが。

 そして、運命の夜、おじさんが、ミウだけを箱に入れて車に乗せた。おじさんは一言もしゃべらずに車を運転した。普段のおじさんはおしゃべりで、いつも、陽気に歌をくちずさんでいる人なのに。

 随分走ってから車は止まった。ミウが入っている箱が地面に置かれる。ダンボール箱のふたが開いて、おじさんの顔が見えた。


「ニャオ~」

 ミウはなるべく悲しそうに、みじめそうに、同情をかうように鳴いた。ミウはここにひとりぼっちで置いていかれると知っていたから。でも、もしかして、おじさんの気持ちが変わるかもしれない。ミウは媚びた目でおじさんを見つめた。

 

 けれど、おじさんの表情に哀れみはなかった。

 おじさんは水の入った入れ物と少しのキャットフードを箱の中に入れて、すぐにいなくなった。

 車のエンジンのかかる音がして、車は行ってしまった。

 

 ミウは、車が戻ってくるかもしれないと、淡い期待をもって待った。けれど、そんな気配はなかった。

 あたりが明るくなり始めた頃、ミウはダンボール箱から飛び出て、駆け出した。うっそうと茂る木々の中を夢中で走った。こんな誰もいない寂しいところから早く逃げ出したい。無視されてもいいから、みんなのいる家に戻りたい。

 

 何日も歩いて、やっと街についた。人に姿を見られてはいけない気がして、ミウは夜に歩きまわって家を探した。

 家はそう簡単に見つかるはずもない。ミウは疲れきって嵐の夜にとうとう動けなくなった。

 

 そんな時にモンジに助けられたのだ。

 モンジに見つけてもらえなかったら、あたしは生きていなかっただろうと、ミウは思う。

 そして、この家から追い出されたら、もう行くところはないのだ。誰からも嫌われて死んでいくのだ。

 そんなことを考えて、ミウは体が震えた。

 早く、モンジが帰ってくればいいのに。ミウはベッドの上にのぼり、窓から外を見た。日射しが眩しい。モンジはまだまだ帰らない。


 ミウはモンジが側にいてくれれば、他に誰も必要なかった。この部屋でモンジと過ごす時間がミウに生きる力を与えてくれる。

 モンジとベッドに座って、テレビを見ながらのんびりするのが、ミウは一番好きだ。

 モンジが見ている映画の説明をしてくれる。


「ほら~、怖いぞ~。次、出てくるぞ~。ほらっ、やっぱり、うわ~、やられた~」

 モンジは大げさに膝を叩いて笑った。その横で、ミウも同じように膝を叩いて笑う。

 モンジはミウに言葉も教えた。ミウはもの覚えがよく、教える言葉はすぐに覚えて、モンジの口の形を真似て、声を出すと言葉が口から出た。

 モンジがいない間、ミウは一人で練習した。

 

 ホウチョウ、クチサケオンナ、カンオケ、ユデタマゴ。

 他にも、

 デキマセン、スミマセン、イヤデス、テヤンデイ、など。

 ミウはテレビと、モンジのおかげで、だんだん話せるようになってきた。


 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ