風邪
暑い夏が過ぎて、やっと涼しくなってきた。
今までエアコンのきいた閉めきった窓が開け放たれ、爽やかな秋の風邪が心地よい。
いい季節だ。しかし、今朝はやたらと冷えているとミウは思った。
布団を頭まで被っているのに、ガタガタ震えるほど寒い。
それに、なんだか体がだるくて、動く気がしない。
こんな感じは初めてだ。
それは昼前になっても変わらなかった。
布団の中でじっとしていると、
「どうしたんですか? 朝ごはんも食べないで」
カエルが布団の中を覗き込んだ。
「気分でも悪いんですか?」
「ウン、ナンダカ ヘンナノ。サムクテ ウゴケナイ・・・」
ミウが布団からゆっくりと顔を出して言った。
「息が荒いようですね。風でもひいたのですかね。熱もありそうだ。顔が赤いですよ」
「カゼ、ネツ?」
風邪、熱。聞いたことがある。テレビでやっていたドラマで、男の子が布団で寝ていて、母親がその子に向かって言っていた。
「風邪を引いたのね。熱があるわ」って
一緒にテレビを見ていたモンジに、ミウが風邪と熱のことをきくと、それは、病気というもんだと言っていた。
「アタシ ビョウキ ナノ?」
「たぶん」
あのドラマの男の子はお薬と言う物を飲んで、風邪を治した。
そうだ、お薬だ。
「オクスリ ノマナクチャ」
体を起こしてミウが言った。
「マトマに言えばお薬をくれるんじゃないですか。でも、マトマは今、出かけていていませんよ」
「ソウナノ・・・」
ミウは力が抜けて、布団にパタリと倒れた。
「今、帰ってきたみたいですよ」
カエルが玄関の物音をきいて言った。
ミウは布団から出て、よろめきながら下の部屋に向かった。
マトマは買ってきた荷物をテーブルにのせて、ふうっとため息をついたところだった。
「マトマ、アタシ ビョウキ。カゼミタイ。オクスリ チョウダイ」
マトマはビックリした顔をして、
「あら、あなたもなの? フジエさんも風邪ひいたみたいで、熱があるのよ」
しゃがんだマトマがミウのおでこに手を当てた。
「あなたも熱があるわ。すぐ、お薬あげるからね」
マトマは立ち上がって薬をとりにいった。
「熱が下がらないわね」
ミウの小さなおでこに手を当てて、アメリが言った。
「困ったわね。あんたを病院に連れていくわけにはいかないし、頼みの綱のフジエ婆さんのスープもあれじゃあ作ってもらえないし」
アメリが困った顔をした。
「クスリ ノンダノニ カゼナオラナイ」
「ほんとにねえ。人間の薬じゃきかないのかしら。でも、まあ、もう少ししたらきいてくるだしょう」
アメリが珍しく、ミウに微笑みかけた。
ミウはまたうとうとと眠りに落ちていった。




