ヒッチハイク
薄暗い車道の電灯がぽつんと立っている。
時間はまだ午後六時だ。
「ここで、車が通るのを待とう。車が来たら手を上げて車を止めるんだ。こうやってにっこり笑って愛想よく」
モンジがにっこり笑って手を上げ、見本を見せた。
みんなはうなずいて、モンジと同じようににっこり笑って手を上げた。
車はすぐにやってきた。
「来たぞ。みんな引かれないように道の端に寄って、手を上げてにっこり。せーの」
みんな言われた通り、道の端に寄って笑って手を上げた。
ビユーッ。
しかし、車はスピードを緩めることもなく、目の前を通り過ぎていった。
「あら、行っちゃたわ」
アメリが言った。
「どうして、止まってくれなかったのかしら?」
カルリが首をかしげる。
「この人数じゃ乗せられないって思ったのかな? 今の車は五人乗りの車だったから、二人のっていたら、後ろに大人四人は無理だからね」
モンジが言った。
「前に三人乗れるじゃん」
ムンキチが言った。
「おれたちが乗ってきた古い車はベンチシートだったから、前に三人乗れたけど、今の車はほとんど二人しか乗れないんだよ」
モンジがムンキチの頭に手を乗せて言った。
「ふーん」
ムンキチが口をとがらせた。
「たくさん乗れる車が通ってくれるといいんだが」
モンジが道路の先を見つめた。
その後、車はなかなか通らなかった。ニ十分ほど待ってやっと車のライトが見えた。
大勢で待っていたら、止まってくれないとわかったので、モンジ、アメリ、フジエの三人で手上げることにした。他のものは道路脇の草むらに隠れた。
車が近づいてきてスピードをゆるめた。
しめた! 三人は笑って愛想よく手を振った。
車は三人のいるところに止まる・・・と思ったら、急にスピードを上げ、走り去ってしまった。
「あら、行ってしまったわ。止まってくれそうだったのに。運転手一人だけしか乗ってなかったのよ。でも、あの運転手、すごくびっくりした顔をしていたわ。何に驚いていたのかしら、ハハハハハ」
アメリがおかしそうに笑った。
失敗だった。アメリとフジエを選んだのはまずかった。
こんな暗がりで、二人を近くで見たら、誰だってびっくりするかも。だって、魔女とヤマンバだ。
「あ~あ、まただめだった。やっときた車だったのに」
ムンキチがため息まじりに言った。
「次はオレとムンキチとコタロウでやろう。子供と一緒だと、止まってくれるだろう」
モンジが言った。
少しして車のライトが見えた。
今度こそ。
三人は車に向かって手を振った。
今度はたやすく止まってくれた。やっぱり、子連れに限るなモンジは思った。
「どうされました?」
優しそうな中年のおじさんが、窓を開けてたずねてくれた。
「いやあ、道に迷ってしまいましてね。細い道に入り込んで、そこで車が動かなくなってしまいまして。携帯も圏外だし、誰かの車で街の方まで乗せていただけたらなあと思って、ここでまっていたのです」
モンジは本当のことを正直に話した。さいわいにも、乗っていたのは運転手一人だけで、しかも大きな車だ。
「そうですか。それはお困りですね。丁度、街の方にいきますので、お送りしますよ」
おじさんは優しくほほえんだ。
「ありがとうございます。それではお言葉に甘えて」
モンジが後ろを振り返って、
「おおい、みんな乗せてくれるって」
と大きな声で言った。
アメリとカルリがすぐに立ち上がり、フジエとミウも慌てて立ち上がった。
えっ、おじさんが小さい声を出した。
アメリとカルリが、愛想よく笑って近づいてくる。
青白い二人の顔が薄暗い電灯に照れされて、浮かんで見えた。
「申し訳ない、他の車にあたってくれ」
おじさんは窓を閉めて、車を急発進させ、すごいスピードで走り去って行った。
みんな唖然として、車が走り去った方をながめた。
「また、行ってしまった。もう、どうしてかしらね」
アメリが首をかしげて言った。
理由はわかっていた。アメリとカルリが怖すぎる。モンジでさえ、二人の姿を見てゾッとしたくらいだ。
「さ、さあ、どうしてだろうなあ」
まさか、二人のせいだとは言えない。
しかし、どうしたものか、モンジは考えた。
「また、次も、さっきの三人でいこう。車がきたらオレはムンキチを抱いて車を止める。コタロウは道の端に寝転んで、病人を装う。運転手にコタロウを運ぶのを手伝ってくれるようお願いして、運転手が車から降りたら、他の人が車に乗り込む。車に乗り込んでしまえばこっちのもの。運転手はどうしようもない。という作戦だ」
「いいわね。詐欺みたいで。今度はうまくいきそうね」
カルリがいった。
次の車は、すぐにやってきた。さっきの車が行ってから五分とたっていない。




