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テンプレ異世界から無事に帰れた後、美人で可愛い魔王を拾ったので一緒に住んでみた  作者: 春樹凜


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14.謎に家事スキルの高い魔王②


「……しかし、魔王さんも結構大変だったんだな。そんな変態が近くに二人もいるなんて」

「四天王を入れ替えようにも、魔族は完全に実力主義なのだ。魔王の次に強い者達が四天王として任命される故、下手に強いあやつらをどうすることもできんかった。だがそのおかげで主の役に立てたと考えれば、そう悪くはないかもしれんな」

「別に役に立つとか立たないとか気にしなくてもいいのに。俺が魔王さんを連れてきたのは罪滅ぼしみたいなもんだし」


 とはいっても、正直このスキルはありがたい。


 それに多分、この魔王は結構真面目な性格と見た。

 何もしない方が本人的には辛いのかもしれない。


「ならこれから部屋の掃除とかお願いしてもいいか? 俺、そういうの昔から苦手でさ」


 そう伝えたら、俄然やる気が出たように魔王の顔が分かりやすく輝いた。


「それは主の部屋に入った時から感じておった。任せてくれ、我がこれから主にとって快適な生活環境を整えようではないか!」

「分かった、頼りにしてる」


 と、ここでどこからかぐぅぅぅぅという音が聞こえてくる。


 明らかに空腹を知らせる音だ。音の主は俺ではない。


「…………すまぬ」

「いや、もう晩飯の時間だもんな」


 余程恥ずかしかったのか、顔を両手で覆って表情を隠す魔王の姿は妙に愛らしい。


「そんなに気にするなって。こんなのは生理現象だろう。あ、そうそう、今日の晩飯はコンビニじゃなくてだな」


 俺は持ち帰った紙袋をテーブルの上に置く。

 

 テイクアウトの容器に入っているのは、駅近の店で買ったオムライスだ。

 伊吹さんが食べてたのを見て、俺も無性にそれが食べたくなったのだ。

 

 残念ながら昼食時に利用した店は閉まっていたので、仕方なく別の店舗のものを購入したが、こっちもネットで美味しいと高評価だから問題ないだろう。


「オムライスってのでさ、ケチャップライスを卵でくるんだやつなんだが」

「オムライスとな!?」


 途端に顔を上げ反応する魔王。


「え、知ってるのか? もしかして魔界にもあったり」

「あちらにはそんなものはない! ただ今日、テレビでオムライスとやらの特集をやっているのをたまたま見てな。食べてみたいと思っていたのだ!」


 どうもタイムリーな物を俺は持ってきたらしい。


 物がなくなって綺麗になったテーブルの上にオムライスを並べ、冷蔵庫から昨日コンビニで買ったサラダと酎ハイを二本出す。


 サンドイッチはなくなっていたから昼に食べたんだろう。


 だがみたらし団子は残っていた。

 デザートはまだしまったままにしておこう。

 

 初めて食べたオムライスに、予想通り魔王はとても喜んでいた。

 勿論食後のみたらし団子にもだ。


 魔王のニコニコ顔を前にしていると、自然と酒が進む。

 

 だが、そろそろ酒も補充しに行かねばならない。

 既に今お互いに飲んでいるのでラストだ。


 ああ、それに飯もだな。

 あとあるのはカップ麺とみそ汁、と、菓子パン一つだけだ。


 とここで、魔王が意外なことを口にした。


「材料とレシピさえあれば、今後は我が作るぞ」


 なんとこの魔王、ご飯すら自分で作っていたらしい。

 曰く、例のヤバい二人組に、食事の中に催淫剤や睡眠薬を仕込まれるからだそうで。


「己の身は己で守る他なかったからな」

「ほんと、とんでもない部下を持って魔王さんも苦労してんだな」


 しかし、狂わせるほどにこの魔王には魅力があるのだろう。

 もしくはその二人が端からいかれてるだけかもしれんが、分からんわけではない。


 圧倒的な美貌を持ち、そして美人な見た目に反して可愛いところも多々ある。


 実際昨日今日と僅かな時間だが接してみて、俺もそれなりに好意を持ってしまうほどだ。

 あ、別に付き合いたいとか、あいつらみたいに下着盗みたいとかそういうんじゃないが。


 そういえば、下着で思い出した。

 

 ないといえば、魔王の服も下着もない。

 あとベッドとか食器とか、その他諸々と生活必需品も含めて、ここには一人分しかない。


 だがとりあえずは服だよなぁと、魔王が着ているものを今更ながらに見て思う。


 今の寝間着よりは元々魔王が着ていた服のほうが外には出られそうだが、あれもなかなかにまずい。

 夜の店の出勤着としては満点の装いだが、普段着には到底見えない。

 もうちょい普通の服がいるだろう。

 あと、連絡手段も欲しい。


 俺はスマホを取り出すと、予定を確認する。

 

 今週末は休日出勤はないから、土日はまるまる休みだ。


 予定? 

 そんなものは当然ない。


「魔王さん、明後日は俺仕事休みだから、一緒に買い物に行こう。ついでにスーパーとか諸々の場所も教えるから」


 果たしてたったの二日で欲しいもん全て揃えられるかは分からんが、必要不可欠のものだけは買っておきたい。

 それまでは俺の服でも貸しとくか。


「あ、魔王さん、今日は掃除とかしてもらって汗かいたんじゃないか? よかったら風呂使ってくれ」


 魔王の答えは即答だった。


「よいのか!?」

「あー、っていっても今から風呂沸かすのは正直めんどいんで、シャワーだけになるけど」

「しゃわー、とな?」


 初めての単語にこてんと首を傾げる魔王。

 はい可愛い。

 それはおいといて。

 

 俺は実際に見せた方が早いと、風呂場に連れていくと、シャワーを出して見せる。


「ほうっ、これで頭や体を洗うと!?」

「そう、で、これがシャンプーって頭洗うやつで、青い入れ物が体洗う石鹸みたいなもんだから。こっちのチューブみたいなんは顔洗う時に使ってくれ」


 そして一通りの説明を終えた俺は、着替えとタオルを洗濯機の上に置くと、さっさと洗面所から出て扉を閉める。


 さすがに女物の下着はないから、俺の新品パンツで我慢してもらうしかない。

 ないよりはマシなはずだ。


 食べ終わったものの片付けを終わらせたところで上がってきた魔王の着た服を見て、身長的には元カノよりも俺との方が近いからか、あの寝間着よりはまだ違和感はなかった。

 ズボンはゆるそうだが、紐かベルトで締めりゃなんとかなるだろう。


 なんにせよ、久しぶりに休日の予定が決まった。


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