表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/17

朝のミスと、頭の運動会

「なにやってんだ、こら〜!」


朝のオフィスに怒鳴り声が響いた。

怒っているのは田所課長。怒られているのは——私、春日あかり。


「11月10日って書くところを、1月10日って入力してたんだぞ! 小学生でもわかる日にちがわからんのか。バカか。カレンダーの見方もわからんのか。辞めてしまえ。みんなの迷惑じゃ!」


——またやってしまった。

なんで私は、こんな初歩的なミスを……


周りの空気が一気に重くなるのがわかった。

誰も目を合わせない。助けてくれる人もいない。

私はただ、その場に立ち尽くす。


頭の中が、ぐちゃぐちゃだった。


もう完全に頭の中は運動会。


怒鳴り声が拡声器で響き渡って、徒競走の選手(=私の思考)がぐるぐる全力疾走。

競技順を間違えた放送係(=過去の後悔)が「バカです〜!」「またやらかしました〜!」ってずっとアナウンスしてる。


——私は、仕事ができない。

——私は、ダメな人間だ。


そんな言葉が、頭の中をぐるぐる回る。

誰にも責められていない時間ですら、自分の責める声が止まらない。


その少しあと。


「この書類、客に渡すからコピー2部取ってきて」

田所課長の声に、私は「はい」と返事をして立ち上がった。


——だけど、全然頭に入っていなかった。

「2部」という数字だけが、ふわっと記憶の底に沈んでいって。


コピー機の前で、私は無意識のうちに「22」と打ち込んでいた。


ガチャン、ガチャン、という音がずっと鳴っている。

でも、私は何も気にせず、コピーが終わるのを待っていた。

というより——気づいていなかった。


ボーっとしたまま立ち尽くす私の後ろから、怒鳴り声が再び響いた。


「おい、何してんだ!」


振り返ると、田所課長がまた仁王立ちで、顔を真っ赤にしていた。


「2部って言っただろうが! おまえは何部もコピーしてんだよ! ボケッとしやがって! さっきからお前、なーんにも頭に入ってねえじゃねぇか!」


私は、動けなかった。

あぁ、またやった。また私はやってしまった。


「使えねぇな、ほんと。社会人失格だよ! いや、人として終わってるわ!」



怒られたことより、自分の中の声の方がきつい——

そんな朝、ありませんか?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ